AMD Ryzen「TPM 2.0」に脆弱性|Ryzen 3000〜9000が対象、BIOS更新での対処法【2026年8月】
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Ryzen 3000〜9000が対象、BIOS更新での対処法
出典:AMD公式セキュリティ告知「Trusted Platform Module (TPM) Reference Code Errata」(AMD-SB-7064)にもとづきます。本記事の情報は2026年8月14日時点のものです。
Trusted Computing Group(TCG)のVulnerability Response Team(VRT)が、TPM 2.0リファレンス実装コードに存在する脆弱性を報告し、AMDが自社プラットフォームを調査した結果、AMD製CPUのFirmware TPM(fTPM)もこの脆弱性の影響を受けると確認しました。対象はデスクトップのRyzen 3000〜9000シリーズをはじめ、Threadripper、Ryzen AI 300/400/AI Max 300、携帯機向けのRyzen Z1/Z2まで及びます。
CVEの深刻度はCVSS 4.0でCVE-2026-6726が8.5、CVE-2026-6727が8.3、いずれも「High」です。悪用されるとTPMが偽の鍵に対する証明書を取得したり、TPM 2.0のAttestation(証明)を偽装したりできる可能性があります。ただし攻撃にはローカル環境での高い権限が前提になるため、リモートから無条件に突破されるタイプの脆弱性ではありません。
この記事では、2件のCVEの中身、自分のRyzenが対象か確認する方法、世代別の修正BIOS(AGESA/PI)の提供状況、そして最新のRyzen AI世代で残る注意点まで、AMD公式のセキュリティ告知にもとづいて整理します。
目次
要点まず何が起きたか
概要「non-AMD」表記の意味、TCGリファレンス実装由来の問題
今回の2件のCVEには、いずれも「(non-AMD)」という注記が付いています。これはAMD製CPU固有の設計ミスとして見つかったものではなく、業界団体Trusted Computing Group(TCG)が策定するTPM 2.0のリファレンス実装コード側で報告された問題を、AMDのFirmware TPMも取り込んでいるために影響を受ける、という位置づけを示しています。AMD公式の謝辞欄には、TCGへこの問題を報告したのはIntelのセキュリティ研究者だと明記されています。競合であるIntel側の研究者がTPM 2.0仕様共通の問題を見つけ、TCG経由でAMDにも共有された形です。
CVE詳解2件の脆弱性の中身
CVE-2026-6726は、ローカルの高い権限を持つ攻撃者が情報漏えいを利用し、偽造したTPMキー(Attestation Key、Device Identity Key、TLS認証キーなど)に対する認証局の証明書を取得し、そのキーで他のTPM 2.0 Attestationを偽装できる可能性がある脆弱性です。CVSS 4.0のスコアは8.5(High)です。
CVE-2026-6727は、RSA OAEP復号処理におけるタイミングサイドチャネルの脆弱性です。ローカルの高い権限を持つ攻撃者が、RSA Endorsement Key向けに暗号化されたImport Blob・Credential Blob・Session Saltなどの暗号文を復号したり、TPM 2.0 Attestation Keyを偽造したりできる可能性があります。CVSS 4.0のスコアは8.3(High)です。
Attestation(証明)は、TPMが「このPCの状態は改ざんされていない」ことを暗号的に証明する仕組みです。企業のリモートワーク端末の健全性チェックや、一部のオンラインサービスの不正対策などに使われます。今回の脆弱性はこのAttestationを偽装できる可能性がある点が問題視されています。
対象Ryzen 3000〜9000まで極めて広範囲
対象CPUは非常に広く、デスクトップのRyzen 3000〜9000シリーズ全世代のほか、Threadripper、Ryzen AI 300/400/AI Max 300、携帯機向けのRyzen Z1/Z2、さらにEPYCやRyzen Embeddedシリーズにも及びます。ゲーミングPC用途で特に関係が深い世代を、AMD公式が示す修正済みPI(Platform Initialization)/AGESAバージョンとあわせて整理します。
| 世代 | 修正済みPI/AGESA | AMDからOEMへの提供日 |
|---|---|---|
| Ryzen 3000シリーズ (デスクトップ) | ComboAM4PI 1.0.0.11 | 2026年5月18日 |
| Ryzen 4000/5000シリーズ (デスクトップ) | ComboAM4v2PI 1.2.0.12 | 2026年5月27日 |
| Ryzen 7000シリーズ (デスクトップ) | ComboAM5PI 1.0.0.F〜1.3.0.1bチップセット世代により複数系統 | 2026年5月8日〜31日 |
| Ryzen 8000シリーズ (デスクトップ) | ComboAM5PI 1.1.0.3h〜1.3.0.1bチップセット世代により複数系統 | 2026年5月21日〜31日 |
| Ryzen 9000シリーズ (デスクトップ) | ComboAM5PI 1.2.0.3k/1.3.0.1b | 2026年5月21日〜31日 |
| Threadripper 7000 /PRO 7000 WX | StormPeakPI-SP6系 | 2026年5月11日 |
| Ryzen Z1/Z2 (携帯機) | PhoenixPI-FP8-FP7系/StrixKrackanPI-FP8系 | 2026年5月26日〜6月1日 |
| Ryzen AI 300/400 /AI Max 300 | fTPM分は系統ごとに提供済みPluton分は別枠、後述 | 2026年5〜6月(fTPM分) |
上記はゲーミングPC用途で代表的な世代の抜粋です。モバイル向けのRyzen 6000〜7045シリーズやEPYC、Ryzen Embeddedシリーズなど、さらに細かい型番区分も対象に含まれます。正確な対象型番はAMD公式のセキュリティ告知で確認してください。
実際のリスク攻撃にはローカルの高い権限が必要
2件のCVEはいずれも「ローカルの攻撃者が高い権限(PR:H)を持っている」ことが攻撃の前提条件です。つまり、インターネットに接続しているだけで外部から勝手に悪用されるタイプの脆弱性ではありません。すでに管理者権限相当のマルウェアに感染しているなど、別の手段で高い権限を得た攻撃者が、さらにTPMの保護を突破するために使う性質の脆弱性です。
とはいえ、TPMはBitLockerのディスク暗号化キーや各種認証情報の保護に使われる重要な機能です。放置してよい理由にはならないため、該当する世代を使っている場合は修正BIOSの提供状況を確認しておくことをおすすめします。なお、BIOS更新後にBitLockerの回復キーを求められるケースがある点は、BitLocker回復キーの対処法で詳しく解説しています。
対処BIOS更新の入手経路と確認方法
AMDはPI(Platform Initialization)ファームウェアの修正版をマザーボードメーカーやPCメーカー(OEM)へ提供済みですが、これは「AMDが修正版を用意した日」であって「ユーザーが実際にBIOSを入手できる日」ではありません。AMDからASUS、MSI、GIGABYTE、ASRockといった各社、あるいはノートPC・BTOメーカーへPIが渡され、その後各社が自社製品向けのBIOSに組み込んで配布する流れになります。そのため、自分のマザーボードやPCで対応BIOSがすでに公開されているかは、個別に確認が必要です。
実際のBIOS更新手順(EZ Flash・M-Flash・Q-Flashなどメーカー別の操作方法)は、BIOSアップデートのやり方で詳しく解説しています。
Ryzen AI最新世代はfTPMとPlutonで対応時期が違う
Ryzen AI 300/400/AI Max 300シリーズでは、事情が少し複雑です。AMD公式の一覧表によると、Firmware TPM(fTPM)向けの修正はすでに2026年5〜6月に各系統で提供済みである一方、Microsoft Pluton側の対応は「2026年8月予定」と別枠で記載されています。PlutonはMicrosoftが設計するセキュリティプロセッサで、AMDの一部の最新CPUに統合されています。fTPMとPlutonは別の仕組みのため、修正の提供時期もそれぞれ異なるわけです。最新のRyzen AI搭載ノートを使っていて、TPMの実装としてPlutonを有効にしている場合は、この8月の対応時期を待つ必要がある点に注意してください。
Q&Aよくある質問
総括まとめ|対象は広いが、慌てず対応BIOSを待って更新
今回のTPM 2.0脆弱性は、TCGのリファレンス実装コード由来の問題にAMDのFirmware TPMも影響を受けるというもので、対象はRyzen 3000〜9000シリーズを中心に非常に広範囲です。CVSSスコアは最大8.5(High)と高く、Attestation偽装などにつながる恐れがありますが、攻撃にはローカルでの高い権限が必要なため、今すぐ遠隔から乗っ取られるような性質のものではありません。
対処は、マザーボードやPCメーカーが配布するBIOS(AGESA/PI)アップデートを適用することです。AMDからメーカーへの提供は2026年5〜7月に進んでいますが、実際にユーザーが入手できるBIOSの公開時期はメーカーごとに異なります。自分の製品のサポートページを確認し、対応BIOSが出たら更新してください。
AMDは2026年8月11日、Ryzen向けFirmware TPMに関わる2件の脆弱性(CVE-2026-6726/CVSS 8.5、CVE-2026-6727/CVSS 8.3)を確認したと発表しました。TCGのTPM 2.0リファレンス実装コード由来の問題で、対象はRyzen 3000〜9000シリーズ、Threadripper、Ryzen AI 300/400/AI Max 300、Ryzen Z1/Z2など極めて広範囲です。攻撃にはローカルでの高い権限が必要で、悪用されるとTPM鍵の偽造やAttestationの偽装につながる恐れがあります。対処はBIOS(AGESA/PI)アップデートで、AMDは2026年5〜7月に各メーカーへ修正版を提供済みですが、ユーザーが実際に入手できる時期はメーカー次第です。Ryzen AI世代はfTPM分が提供済みでもMicrosoft Pluton分は2026年8月予定という差がある点にも注意してください。



