ソニーのAIマッチング特許、相性は何で判定する?|請求項は検索履歴・カート情報、チャットや顔認識は実施例、PS5搭載は未定
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請求項は検索履歴・カート情報、チャットや顔認識は実施例、PS5搭載は未定
出典:Justia Patents「US 2026/0263948 A1」、Google Patents「US11065549B2」、Google Patents「US12528019B2」、PlayStation「プライバシーポリシー」、PlayStation「プライバシー設定を管理する方法」、PlayStation「データリクエスト」
ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)が米国で出願した特許「USING ML MODELS TO MATCH PLAYERS TOGETHER FOR GAME PLAY」(US 2026/0263948 A1)が、2026年9月10日に公開されました。プレイヤー本人が選んだ希望と、プレイ中の行動などから予測した好みを機械学習モデルで組み合わせ、一緒に遊ぶ相手の候補を相性の%付きで示す仕組みです。
「チャット履歴を分析する」という紹介が目立ちますが、権利として請求している範囲(請求項)に入力として書かれているのは、タイトルごとのプレイ時間・スキル・ショッピングカート・SNS・検索履歴の5つです。チャット・音声・顔認識・生体データは、発明を説明する本文で「ほかの入力」の例として挙がっているにとどまります。どちらにしても、PS5やPlayStation Network(PSN)への搭載が決まったわけではありません。
公報を読むと、相性の物差しは「強さが近いか」ではなく、会話の量・進める速さ・遊ぶ時間帯・やめる区切りが合うか、足りないスキルを補えるかです。相性%としきい値の扱い、あえて逆の好みを組み合わせる例、現行のPlayStationプライバシーポリシーとの重なり、今のうちに見直せる設定まで順に見ていきます。
目次
要点まず何が起きたか
2025年3月5日に出願された特許出願が、米国の制度どおり出願から約18か月後の2026年9月10日に公開されました。審査はこれからで、請求項は審査の過程で狭まることがあります。SIEはこの技術をPS5やPSNに入れるとは発表していません。
概要特許出願US 2026/0263948 A1の基本情報
公開されたのは特許の「出願」で、権利が成立した特許ではありません。米国では原則として出願から18か月たつと、出願人が発表するかどうかに関係なく内容が公開されます。今回の公開日もこの期限にあたり、SIEが何かを発表したタイミングではありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 公開番号 | US 2026/0263948 A1(出願番号 19/071,594) |
| 名称 | USING ML MODELS TO MATCH PLAYERS TOGETHER FOR GAME PLAY |
| 出願人 | Sony Interactive Entertainment Inc.(東京) |
| 発明者 | Abigail Edwards、Snigdha Sah、Syrsha Harveyの3人(いずれも米国カリフォルニア州サンフランシスコ) |
| 出願日・公開日 | 2025年3月5日出願、2026年9月10日公開 |
| 国際特許分類 | A63F 13/795(ほかのプレイヤー探しやチーム編成に関する分類) |
| 請求項 | 全20項。方法(1〜7)・システム(8〜14)・記録媒体(15〜20)の3系統でほぼ同じ内容を請求 |
| 状態 | 審査前の公開。登録(権利化)はされていない |
仕組み明示情報と暗黙情報を機械学習で組み合わせる
中心にあるのは、プレイヤーが自分で入力する「明示的な情報(explicit user gameplay information)」と、行動からシステムが集める「暗黙的な情報(implicit user gameplay information)」の2本立てです。機械学習モデルは暗黙情報から好みを予測し、それと本人の希望を合わせて、一緒に遊ぶ相手の候補を出します。
明示情報の例として挙がっているのは、マッチした相手と遊びたい期間(そのセッションだけ、クリアまで、特定のレベルだけ)、相手に求めるスキルの種類、遊びたいタイトルです。プロフィールの作成時やゲームを始める前に尋ねる形が請求項3に入っています。
出力は自動で対戦相手を決めるキューではなく、相性%を付けた候補のメニューです。候補になった相手が「一緒に遊ぶ」申し込みを承諾してから始める流れも書かれており、ランクマッチの自動マッチングより、協力プレイの仲間探しに近い形をとっています。マッチングのエンジンはクラウドのサーバーなどで動かし、各プレイヤーの機器ではアプリが動く構成が例として示されています。
請求項請求項に入っている入力と、実施例だけの入力
報道で並べて語られがちなデータも、公報の中での重みは同じではありません。請求項(クレーム)は権利として主張する範囲で、本文の詳細な説明は「こういう形でも実施できる」という例の幅を示す部分です。チャットや顔認識は後者にしか出てきません。
| データ・機能 | 公報での位置 | 書かれている内容 |
|---|---|---|
| タイトルごとのプレイ時間 | 請求項4 | 暗黙情報を集める入力。遊ぶ時間帯が重なる相手を選ぶ材料にもなる |
| プレイヤーのスキル | 請求項4 | 暗黙情報の入力。請求項5では暗黙情報から本人のスキルを判定する |
| カート情報・検索履歴 | 請求項4 | ストアの検索・購入履歴から興味を読み取る。新しいジャンルに興味を持った人を、そのジャンルを遊んでいる人と組ませる例 |
| SNSの情報 | 請求項4 | 暗黙情報を集める入力。ソーシャルメディアのアプリから集める実施例もある |
| 補い合うスキル | 請求項5・6 | 本人のスキルを判定し、それを補うスキルを持つ相手を選ぶ。スキルは武器や能力などの「ツール」でもよい |
| 一定間隔のフィードバック | 請求項7 | ゲーム中に決まった間隔で本人の意見を求め、予測した好みを修正する |
| チャット・音声・映像 | 説明のみ | 追跡する行動の例にビデオ・音声・テキストのやり取りを、ほかの入力の例にチャット情報と音声データを挙げる |
| 顔認識・生体データ | 説明のみ | 本体などに組み込んだ顔認識技術による生体情報を、ほかの入力の例として挙げる |
| 相性%・しきい値・重み | 説明のみ | 相性を%で出し、80%・85%・90%などの基準に届く候補だけを表示する例 |
| 逆の好みの組み合わせ | 説明のみ | 似た興味の相手だけでなく、長く遊び続けてもらうために逆の好みを持つ相手を組ませる例 |
請求項4は5種類の入力を並べて書いていますが、本文の説明では「これらの任意の組み合わせ」とされており、すべてを常に使うという意味ではありません。逆に、説明だけに出てくるチャットや顔認識も、出願人が想定している実施の形の1つであることは確かです。どちらかを無視せず、強さの違いとして読むのが妥当です。
海外の一部報道は見出しで「網膜スキャン(retina scans)」と紹介していますが、公報の本文にretina(網膜)やiris(虹彩)の語はありません。生体情報として書かれているのはfacial recognition(顔認識)で、それも説明の中の入力例です。
相性相性を決めるのは会話の量・進める速さ・時間帯・やめる区切り
SIEが背景で挙げている問題は、強さの差ではありません。ゲーム機のマイクで話したい人と、チャットアプリでやり取りしたい人は、腕前が近くても相性がよくない可能性がある、という例から公報は始まっています。
機械学習モデルが予測する好みとして挙がっているのは、次の4つです。
- コミュニケーションの量:どれくらい話したいか。ボイスかチャットかという手段の違いは、重み付けの例で別の項目として出てきます
- ゲームを進める速さ:一気に駆け抜けたい人どうしは、すべて集めたい人と組むより近い相手になる、という例があります
- 遊ぶ時間帯の重なり:普段プレイしている時間帯が重なる相手を選びます
- やめる区切り:チェックポイント、戦闘の後、レベルの始まりや終わりなど、どこでプレイを切り上げるかが似ている相手を選びます
どれもレーティングには表れない要素です。野良の協力プレイで「自分は探索したいのに味方が先へ進む」「1試合で抜けられる」といった不満は実力差と別のところで起きており、公報はその部分を予測の対象にしています。
じっくり組む相手探しだけでなく、パーティーゲームのような気軽なタイトルで相手をすぐにつなぐ使い方も挙がっています。
補完似た人だけでなく、足りないスキルを補う人を選ぶ
請求項5は、本人のスキルを機械学習で判定し、それを補う「complimentary skill」を持つ相手を候補に選ぶ構成です。請求項6では、スキルを本人が使える「第1のツール」と、相手が使える「第2のツール」としても書いており、本文はその例として特定の武器や能力を挙げています。
| 場面 | 公報にある組み合わせの例 |
|---|---|
| スポーツゲーム | 攻撃のスキルと守備のスキル |
| シューター | エイムのスキルと空間把握のスキル |
| シューターの役割分担 | 近距離のエイムと回復のスキルが、遠距離のエイムを補う |
| アドベンチャー | 空間把握が苦手と判定された人に、空間把握が得意な相手を勧める |
| ボス戦 | ボスを倒すのが好きな人と、その要素が好きではない人 |
アドベンチャーの例では、苦手の判定に今遊んでいるゲームだけでなく、ほかのゲームでのプレイも使えるとしています。1本のタイトルの成績ではなく、プラットフォーム全体のプレイから得意・不得意を判断する前提です。
もう一歩踏み込んだ記述もあります。候補は似た興味を持つ人どうしを組ませるように作ってもよいし、「プレイを長く続けてもらうために」逆の好みを持つ人どうしを組ませてもよい、という一文です。相性のよさを「似ていること」と同じにしていない点が、従来の条件指定型の仲間探しとの違いです。
表示相性は%で並び、基準に届かない候補は出さない
実施例では、候補ごとに「percentage compatibility(相性の%)」を出し、高い順・低い順に並べられます。%は入力と、本人と相手の好みの近さから計算します。
表示する候補には基準を設けられ、例として80%・85%・90%が挙がっています。基準を決めるのは本人またはゲーム開発者で、候補が当たっていたかという本人の反応を受けて、エンジン側が基準を調整することもできます。
入力ごとの重みも固定ではありません。重みは本人やゲーム開発者が事前に決められ、本人が明示した希望を予測した好みより重く扱う例や、「会話の手段(ボイスかチャットか)が合うこと」より「遊ぶ時間帯が重なること」を優先する例が書かれています。同じ仕組みでも、どの重みを誰が決めるかで出てくる相手は変わります。
学習行動が変わるとAIが確認の質問を出す
名称にある「adaptive」は、プロフィールを一度作って終わりにしないという意味です。普段と違うプレイをすると、モデルはその変化を認識して新しい行動に合わせます。
さらに、予測した好みがまだ正しいかを確かめる質問をモデルが作り、答えに応じて予測を直す流れも書かれています。決まった間隔で本人の意見を求めて予測を修正する部分は請求項7に入っています。週1回・月1回・四半期に1回といった間隔でプロフィールの更新を促す例もあります。
以前はボイスチャットを使っていた人がほとんど話さなくなった場合、テキスト派の相手を勧める前に「最近はボイスを使わないか」を確かめる、という使い方が想定できます。勝手に好みを書き換えるだけでなく、本人に確認する手順が入っている点は押さえておきたいところです。
データ現行のPlayStationプライバシーポリシーと重なるデータ
特許に挙がった入力の多くは、PlayStationが今のプライバシーポリシーで収集すると明記しているデータと重なります。照合したのは日本向けのプライバシーポリシー(バージョン10、2026年08月)です。
| 特許の入力 | 現行ポリシーの記載 | 重なり |
|---|---|---|
| プレイ時間・タイトル | 使用日時、プレイしたゲーム、アクセスしたサービスとアクセス時間 | あり |
| スキル | トロフィー・スコア・ランキング、ゲーム内の操作の記録 | あり |
| ショッピングカート | PlayStation Storeの「ショッピングカート」に追加したコンテンツ、購入した商品などの取引情報 | あり |
| チャット | 送受信するメッセージ(内容を含む)、チャットなどのコミュニケーションアプリの使用頻度 | あり |
| 音声 | 音声メッセージ。ボイストランスクリプション改善用の文字起こしデータは収集するかを選べる | あり |
| SNS | アカウントと連携したゲーム会社やソーシャルメディア企業から受け取る個人情報 | 連携した場合 |
| 検索履歴 | 検索履歴という明記はない(閲覧・ダウンロードしたコンテンツの記載はある) | 明記なし |
| 顔認識・生体データ | 記載なし | なし |
ポリシーは集めた情報を組み合わせて処理することがあるとし、利用目的として「おすすめのパーソナライズ」と、新しい技術の開発に伴う「人工知能および機械学習モデルの開発とトレーニング」を挙げています。仕組みの上では、特許の入力の大半は今のPlayStationでも集めている種類のデータです。
ただし、今集めているデータがこの特許のマッチングに使われているという事実は確認できません。データが重なることと、そのデータでマッチングしていることは別の話です。また、PCなどPlayStation機器以外の端末でSIEのサービスにアクセスする場合も同じポリシーの対象で、『MARVEL Tōkon』PC版のようにPSNアカウントでのサインインが必要なゲームを遊ぶ人も無関係ではありません。
設定いまPS5とPSNアカウントで見直せる設定
特許の技術が使われているかどうかに関係なく、PlayStationへ渡すデータと他人に見せる範囲は今の設定で絞れます。将来AIマッチングのような機能が来たときにも、この設定が出発点になります。
- PS5で[設定]>[ユーザーとアカウント]>[プライバシー]を開き、[プロフィールを選択してプライバシー設定を変更]から既定のプロファイルを選びます。「幅広くいろんな人と遊ぶ」「チームプレイを楽しむ」「フレンドとだけ遊ぶ」「ひとりで集中して遊ぶ」の4段階で、細かく決めたいときは[プライバシー設定の確認とカスタマイズ]に進みます
- PCやスマホからは、ブラウザで[アカウント管理]>[プライバシー設定]を開くと、同じ設定を機能ごとに変えられます。設定はアカウントに紐づくので、変更はすべての機器に反映されます
- データの扱いでは、ポリシーの「選択肢と権利」にある項目を確認します。パーソナライズされた購入おすすめ情報・パーソナライズされた広告に自分のデータを使うか、デバイスデータを基本データだけにするか詳細データまで渡すか(本体の「デバイスデータについて」に説明があります)、文字起こしデータを提供するかを選べます
- SIEが自分について何を持っているか知りたいときは、PlayStationのデータリクエストから開示を求められます
プロファイルを「ひとりで集中して遊ぶ」にすると、フレンドからもチャットに招待されなくなるなど、交流機能も一緒に絞られます。全部を最小にするより、ボイスチャットを使わないならチャットの招待範囲を狭める、といったように遊び方に合わせて選ぶのが現実的です。
系譜SIEはコーチングや感情でも相手選びの特許を持つ
SIEがAIで「誰と遊ばせるか」を扱った特許は今回が初めてではありません。2019年の出願ではプレイの仕方をAIでモデル化してセッションに振り分け、2022年を優先日とする特許では感情の予測から相手を選んでいます。
| 特許 | 日付 | 相手選びの物差し |
|---|---|---|
| AI modeling for video game coaching and matchmaking US11065549B2 | 2019年3月15日出願、2021年7月20日登録 | プレイを真似るよう学習させたモデルをゲームの場面に当てて分類し、その分類で次のセッションに振り分ける |
| Player selection system and method US12528019B2 | 2022年5月18日優先日、2026年1月20日登録 | 本人の今の感情と相手の感情の傾向から、組んだときの感情の結果を予測し、基準を満たす相手を選ぶ |
| USING ML MODELS TO MATCH PLAYERS TOGETHER FOR GAME PLAY US 2026/0263948 A1 | 2025年3月5日出願、2026年9月10日公開(審査前) | 明示した希望と、行動から予測した好み・補い合うスキルを合わせて相性を出す |
3件とも発明者は別の顔ぶれで、1つの製品計画の続きとは言えません。それでも、腕前・感情・好みと物差しを変えながら、相手選びをAIで行う出願を続けていることは公報から確認できます。ゲーム会社の特許でカメラや行動データが入力に並ぶのはSIEに限らず、Microsoftも生成AIで物語を書き換える特許でカメラによる表情の読み取りを、ボス戦後に広告を出す特許で機械学習によるゲーム内イベントの検出を記載しています。
影響SBMMとの違いと、何を最適化するかという論点
SBMM(スキルベースマッチメイキング)は、数値化した実力が近い相手を組ませる考え方です。今回の特許は実力も入力の1つにしていますが、挙がっている例は話し方・進め方・時間帯・役割の相性で、どれも対戦の公平性より協力プレイの居心地に関わるものです。協力派と対戦派という遊び方の好みの違いをどう扱うかは、プレイヤー間ダメージを無効にする「PvE Toggle」をテストするARC Raidersのように、対戦色の強いゲームでも課題になっています。
- ボイス派とテキスト派、駆け抜け派と収集派のような、腕前以外の不一致を減らせる
- 補い合うスキルで組ませれば、似た強さを集めるより役割の偏りが減る
- 重みと基準を本人が決める例があり、AIが確認の質問を出す設計になっている
- 「長く遊び続けてもらう」ための組み合わせは、本人にとって快適な相手と一致するとは限らない
- 検索履歴やカート情報など、マッチングと結び付けて考えにくいデータまで入力に入っている
- 重みや基準をゲーム開発者が決める場合、何を優先した結果なのかが本人から見えにくい
製品になるとしたら、見るべき点は3つです。どの入力を使うかを選べるか(特に検索履歴・SNS・音声)、相性%の根拠と重みが本人に見えるか、そして「気の合う相手」と「長く遊ばせる相手」のどちらを優先しているかが示されるかです。
FAQよくある質問
まとめまとめ|請求項は行動・購買データ、チャットと顔認識は実施例
SIEのUS 2026/0263948 A1は、本人の希望と行動から予測した好みを機械学習で合わせ、相性%付きの候補を出す仕組みです。請求項の入力はプレイ時間・スキル・ショッピングカート・SNS・検索履歴で、チャット・音声・顔認識・生体データは説明の中の例にとどまります。
相性の物差しは会話の量・進める速さ・時間帯・やめる区切り・補い合うスキルで、逆の好みを組ませて長く遊ばせる例まで入っています。2019年のコーチング・マッチメイキング特許、感情で相手を選ぶ特許に続く、相手選びをAIで行う出願の1つです。
PS5やPSNへの搭載は決まっておらず、今のPlayStationがこの方式でマッチングしているという事実もありません。ただ、入力の多くは現行のプライバシーポリシーで収集すると書かれたデータと重なります。気になる人は、PS5のプライバシープロファイルと、購入おすすめ・デバイスデータ・音声データの選択肢を今のうちに見直しておくと安心です。


