Marvel’s Wolverine(ウルヴァリン)がPS5エミュでPC描画|2日で本編シーンへ、公式ビルドは起動せず【2026年10月】
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2fpsのタイトル画面から2日足らずで本編の夜のシーンへ。ただし配布中の公式ビルドでは起動しません
出典:PS5版の発売はSony Interactive Entertainmentのプレスリリース、実演はJose Coixao氏の画像の投稿と動画の投稿、Cary Golomb氏の9月29日の投稿(いずれもX。画面上部のタイトルバーに表示されたビルド番号・構成・fpsを確認)、報道の見出しと本文はVideoCardzの9月28日の記事と9月29日の記事、エミュレータの状況はKytyPS5のGitHubリポジトリ(README・ビルド番号の生成処理・プルリクエスト#937)と公式サイトの互換性リスト、2023年の流出はAxiosとDSOGamingの報道にもとづきます。GitHubの情報は10月1日にGitHub APIと互換性リストの元データから直接取得しました。日付と時刻はすべて日本時間です。
9月15日にPS5専用タイトルとして発売された『Marvel’s Wolverine』(マーベル ウルヴァリン)が、発売から2週間でPCの画面に映りました。使われたのは、PS5用のゲームをWindowsやLinuxのPCで動かすことを目指すオープンソースのエミュレータ「KytyPS5」です。9月28日朝に出たのはRTX 5090で2fpsのタイトル画面でしたが、9月30日未明には、体力ゲージの付いた本編の夜のシーンをRTX 4070で描画した画像が共有されています。
それでも、PCでWolverineが遊べるようになったわけではありません。実演に使われた3つのビルドはどれも個人がソースコードから手元で作ったもので、KytyPS5の公式リポジトリには存在しないコミットでした。配布中の公式ビルドで試した互換性報告は「起動しない」です。本編の描画にこぎ着けた修正は、72コミット・約1万5,600行のプルリクエストとして9月30日に提出されたばかりで、本体には取り込まれていません。
以下では、実演画面のタイトルバーから読み取れるビルドと構成、プルリクエストに書かれた修正の中身、KytyPS5自身の互換性区分で見た現在地を順に確かめます。「Wolverine PC」で検索すると2023年に流出した開発版PCビルドの映像も出てきますが、今回とは成り立ちがまったく違います。その見分け方も後半で説明します。
目次
経緯タイトル画面から本編の夜のシーンまで2日足らず

『Marvel’s Wolverine』は、『Marvel’s Spider-Man』シリーズのInsomniac Gamesが開発したアクションアドベンチャーです。ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)は9月15日付のプレスリリースで、本作を「PlayStation 5独占」で世界同時発売したと発表しています。
PCで動かす試みの画像や動画は、発売から2週間たった9月28日から相次いで出てきました。どの画面にも、ウィンドウ上部のタイトルバーにビルド番号・ゲームの製品コード・構成・fpsが表示されています。時系列で並べると次のとおりです。
| 日時 | 出てきたもの | ビルドと構成 |
|---|---|---|
| 9月15日 発売日 | PS5版を世界同時発売 SIEがPS5専用タイトルとして発表 | 製品コードPPSA03671 公式PC版の発表はなし |
| 9月28日 7時台 画像 | タイトル画面を2fpsで表示 背景の森まで描画され「PRESS X TO START」が出ている | Source build b21bef4-dirty RTX 5090+Ryzen 7 7800X3D |
| 9月28日 10時台 約2分の動画 | 同じタイトル画面とメニューを8fpsで表示 起動ロゴは55〜60fps。セーブ選択や設定の画面も切り替えている | Source build 36ea01f-dirty 同じRTX 5090+Ryzen 7 7800X3D |
| 9月30日 1時台 画像 | 本編の夜のシーンを3fpsで描画 燃える森の中のローガンと、左上の体力ゲージが写っている | Source build 95ec65f RTX 4070+Core i9-13900K |
| 9月30日 7時台 互換性報告 | 「Doesn’t boot(起動しない)」 最初のロゴも出ずに停止 | Official build 2026-09-29-05057c9 RTX 3050 8GB+Ryzen 5 5600X |
| 9月30日 9時台 プルリクエスト | Wolverine向けの修正を提出 オープニングの映像から夜のシーンまで進める内容 | #937・72コミット 10月1日時点で本体に未統合 |
広く出回った「RTX 5090で2fps」は、9月28日朝の画像1枚に表示された数字です。同じ人が約3時間後に投稿した動画は別のビルドで、同じRTX 5090・同じタイトル画面が8fpsで表示されています。セーブスロットの選択、難易度の選択、グラフィック設定の画面も8fpsのまま切り替わり、起動ロゴの場面は55〜60fpsでした。
9月30日未明の画像は、ビルドも構成も別の環境によるものです。画面には炎と煙が上がる夜の森を進むローガン(ウルヴァリン)が描かれ、左上には体力ゲージが出ています。メニューを越え、ゲーム本編の3D空間を描画する段階に入ったことはこの画像からはっきり分かります。同じ投稿には、別のPS5エミュレータSharpEmuの開発版で『Ghost of Yōtei』がRTX 5070で0.5fpsの画面を出している画像も含まれていました。
現在地「gameplayに到達」の見出しと、本文の「まだgameplayではない」
9月30日未明の画像を受けて、海外のハードウェア系ニュースサイトは「Marvel’s Wolverine already reaches gameplay on PC(PCでゲームプレイに到達)」という見出しの記事を出しました。ところが同じ記事の本文には「It’s not quite the gameplay yet(まだ厳密にはゲームプレイではない)」とあり、シネマティック(演出シーン)を描画できたこと自体が大きな前進だと説明しています。見出しだけを訳すと、実態より一段先に進んだ話になってしまいます。
どちらが実態に近いかは、KytyPS5自身の物差しで確かめられます。KytyPS5はGitHubのIssueテンプレートで、ゲームごとの到達段階を次の4つに分けています。
「Doesn’t boot」は最初のロゴや起動画面も出ない段階、「Logo」はロゴは出るがメインメニューに届かない段階、「Main menu」はメニューまで進むがゲームプレイに入れない段階です。最上位の「In game」は「操作できるゲームプレイに到達。不具合で最後まで遊べない場合も含む」と定義されています。
画像に体力ゲージが写っていても、操作できたかどうかは静止画からは分かりません。後で触れるプルリクエストの説明も「オープニングの映像を通過して夜のシーンに入る」という書き方で、操作できるプレイについては触れていません。10月1日時点で互換性リストに載っているWolverineの報告は1件だけで、その区分は最下位の「Doesn’t boot」です。公式の物差しでは「In game」はもちろん、「Main menu」にもまだ届いていません。
ビルド3つの実演はすべて公式リポジトリにない個人ビルド
タイトルバーの「Source build」という表記には決まった意味があります。KytyPS5のソースコードにはビルドの種類を表示する処理があり、配布されている公式ビルドは「Official build」、フォークのリポジトリで作られたものは「Fork build」、それ以外の手元でソースコードから作ったものは「Source build」と表示されます。3つの実演は、いずれも配布版ではなく手元で作ったビルドでした。
2つに付いている「-dirty」は、そのコミットにまだ記録していない変更を加えた状態でビルドしたことを示します。KytyPS5のビルド処理が、作業中のファイルとコミットの内容を比べて差分があれば付ける印です。
表示されていたコミット(b21bef4・36ea01f・95ec65f)を、10月1日にGitHub APIで照会しました。3つともKytyPS5の公式リポジトリには存在せず、Wolverine向けの修正を提出した3人の開発者のフォークにも見当たりませんでした。公開されていない作業用のブランチか、手元だけの変更です。9月上旬のPS5版GTA Vや、9月27日のDemon’s Souls(40〜50fps)の実演と同じ構図で、詳しい経緯はPS5エミュレータの現状をまとめた記事で扱っています。
では、配布されている公式ビルドではどうなるのか。9月30日朝に互換性リストへ寄せられた報告は、9月29日版の公式ビルドをRyzen 5 5600XとRTX 3050 8GBのWindows環境で試したもので、結果は「Doesn’t boot」でした。添付されたログは、GPUのプログラム(シェーダー)をPC向けに変換する処理の途中でエラーを出して止まっています。次の節で見る修正の多くも、このシェーダー変換の部分に入っています。
修正の中身本編の描画に必要だった修正は72コミット・約1万5,600行
Wolverineを動かすための修正は、9月30日にKytyPS5のGitHubへプルリクエスト#937として提出されました。題名は「Wolverine: recompiler, bindless, mesh and renderer fixes」です。説明文によると、目的は「起動からオープニングの映像を通過し、夜のシーンに入るまで」を動かすことで、3人の開発者による51コミットで構成されています。
このプルリクエストは、同じ開発者が9月23日に出した『Marvel’s Spider-Man: Miles Morales』向けのプルリクエスト(#780)の21コミットの上に積まれています。どちらもInsomniac Gamesの作品で、Miles Morales向けの修正を土台にWolverineが動き始めた形です。合計すると72コミット、変更ファイルは144、追加は約1万5,600行に上ります。10月1日時点では、#780も#937も本体に取り込まれていません。
| 分野 | 主な修正 | 何のための修正か |
|---|---|---|
| シェーダー変換 最も修正が多い部分 | 未対応だったGPU命令の追加、メッシュシェーダーの扱いなど 大きなシェーダーの構造化処理が21〜84秒から0.8秒に短縮 | PS5のGPU(RDNA 2ベース)向けのプログラムを、PCのVulkan向けに正しく翻訳する |
| テクスチャの参照 bindless | テクスチャをまとめて参照する方式に対応 初期状態ではオフで、起動時の指定が必要 | ゲームが大量のテクスチャを一括で扱う描画に合わせる |
| 描画処理 レンダラー | GPU上で描画の指示を読み取る処理、GPUの待ち時間の削減など | 画面を正しく完成させ、無駄な停止を減らす |
| システム機能 ライブラリ | 音声の形式(ATRAC9・Opus)、画像保存、セーブデータの変換など | ゲームが呼び出すPS5の機能を肩代わりする |
動かし方にも条件があります。説明文には、Wolverineを動かすには「–bindless」「–tessellation」などの起動オプションと、2つの環境変数を指定する必要があると書かれています。既知の問題として「夜のシーンで特定のシェーダーがGPUを止めることがある」「実行中にウィンドウの大きさを変えたり最小化したりするとデバイスが失われることがある」の2点も挙げられています。本体に取り込まれても、すぐに誰でも最初から最後まで通せる状態ではありません。
fpsの意味RTX 5090で2fpsは「GPUが足りない」という意味ではない
「RTX 5090でも2fps」と聞くと、よほど重いゲームに思えます。ただ、今のfpsを決めているのはGPUの性能ではなく、エミュレータの翻訳処理がどこまで出来上がっているかです。同じRTX 5090・同じタイトル画面でも、ビルドが違うだけで2fpsと8fpsに分かれました。ランクの低いRTX 4070でも、別のビルドなら本編の夜のシーンを3fpsで描画しています。夜のシーンは場面も違うので単純には比べられませんが、GPUのランクで数字が決まっていないことは読み取れます。
プルリクエストの修正にも、それが表れています。2,000ブロック規模のシェーダーの構造化処理が21〜84秒から0.8秒に縮んだという項目は、fpsそのものの数字ではありませんが、1つの修正で処理時間が26〜105分の1になる例です。エミュレータではこうした修正の積み重ねで、動作の速さが短期間に大きく変わります。Demon’s Soulsは9月中旬に1fps前後から1週間足らずで30fps前後になり、9月27日には40〜50fpsの動画が出ました。
ただしDemon’s Soulsも、速い動画はどれも公式リポジトリにないビルドによるもので、公式ビルドでは今もWindowsで起動しない報告が出ています。Wolverineが同じ速さで伸びる保証はありません。ゲームごとに使うGPU命令やシステム機能が違うためです。iGPUのRadeon 840MでPS5版サイレントヒル2を約3.9fpsで描画した例も同じで、今の数字はGPUの実力ではなく、エミュレータの到達点を表しています。
そのため、Wolverineのエミュレーションを理由にGPUを買い替えるのは筋違いです。RTX 5090を買うべきかは、今遊べるPCゲームで判断してください。
混同に注意2023年に流出した開発版PCビルドとは別物
「Wolverine PC」で検索すると、2023〜2024年の「PCで動くWolverine」の映像も見つかります。それらは今回のKytyPS5とは出どころがまったく違います。
2023年12月、Insomniac Gamesはランサムウェア集団「Rhysida」の攻撃を受けました。身代金200万ドルの支払いを拒んだ結果、約1.67TB・130万を超えるファイルが犯行グループのサイトで公開され、その中に開発途中のWolverineのPC向けビルドが含まれていました。2024年7月には、この開発ビルドを元にした非公式PC版の2時間を超えるプレイ映像も出回っています。仮の素材が残ったアルファ版で、製品版とは中身が違います。
| 比べる点 | 2023〜2024年の映像 | 2026年9月のKytyPS5 |
|---|---|---|
| 元になったもの | 攻撃で盗まれた開発途中のPC向けビルド | 発売されたPS5の製品版 バージョン01.001.005 |
| 中身 | 開発途中のアルファ版 仮の素材が多く残る | 製品版そのもの 製品コードPPSA03671 |
| PCで動く仕組み | もともとPC向けに作られたビルドを実行 | PS5用のソフトをエミュレータがPC向けに変換しながら実行 |
| 入手の問題 | 盗まれたデータで、手に入れること自体に問題がある | エミュレータはゲームを含まず、合法に入手したゲームファイルのみを使うよう明記 |
見分けるいちばん簡単な方法は、映像の日付です。製品版が出たのは2026年9月15日なので、それより前の「PCで動くWolverine」の映像は、エミュレータではなく流出した開発ビルド系です。KytyPS5の実演なら、ウィンドウ上部に「Source build」などのビルド表記と製品コードPPSA03671も表示されています。

評価進展は本物、ただし「PCで遊べる」とは別の話
- 発売2週間のPS5専用タイトルが、メニューを越えて本編の3D空間を描画した
- 修正は分野ごとのコミットに分けて公開され、中身を誰でも確かめられる
- Miles Morales向けの修正を土台にしており、同じInsomniac作品の間で修正が引き継がれている
- 実演の3ビルドはどれも公式リポジトリになく、同じビルドを誰でも入手できるわけではない
- 公式ビルドで試した唯一の報告は「起動しない」
- fpsは2〜8fps程度で、操作できるプレイに入ったかどうかも確認されていない
今回の進展が示しているのは、「最新のPS5専用タイトルでも、修正を積めば短期間で本編の描画まで持っていける」ということです。一方で、その結果が配布版に入り、ほかの人の環境で再現されるまでには、まだ段階が残っています。
今後「遊べる」に近づいたと言える3つの目印
Wolverineの続報を見るときは、最高fpsよりも次の3点を確かめると、進み具合を取り違えずに済みます。
- プルリクエスト#937(と土台の#780)が本体に取り込まれ、公式ビルドに入ること
- 公式サイトの互換性リストに、Wolverineの「In game」の報告が載ること
- 夜のシーンでGPUが止まる問題が解消され、その先のステージや戦闘、セーブとロードを通れるようになること
1つ目が満たされない限り、動画や画像がどれだけ増えても、一般に配布されている版で同じ結果は出ません。反対に、互換性リストに操作できるプレイの報告が載れば、公式の物差しでも一段上がったと判断できます。
FAQよくある質問
まとめまとめ|本編は描画できたが、配布版ではまだ起動しない
『Marvel’s Wolverine』は、発売から2週間でPS5エミュレータKytyPS5によりPC上に描画され、9月30日未明には本編の夜のシーンまで進みました。ただし実演はすべて個人のソースビルドで、修正は本体に取り込まれる前の段階です。公式の互換性リストでは今も「Doesn’t boot」で、PCで遊べる状態ではありません。
PS5専用で9月15日に発売された『Marvel’s Wolverine』が、KytyPS5でPC上に描画されました。9月28日朝のタイトル画面(RTX 5090で2fps、別ビルドの動画では8fps)から、9月30日未明には体力ゲージ付きの本編の夜のシーン(RTX 4070で3fps)まで進んでいます。ただし3つの実演はいずれも公式リポジトリにないコミットから手元で作ったビルドで、9月29日版の公式ビルドで試した報告は「Doesn’t boot」でした。本編描画までの修正は72コミット・約1万5,600行のプルリクエストとして提出されたばかりで、本体には未統合です。2023年に流出した開発版PCビルドの映像とは別物で、公式PC版は発表されていません。今遊ぶならPS5版で、エミュレーションのためにPCを買い替える段階ではありません。



