Steam DeckでPS5エミュレータ「SharpEmu」が起動成功|『ASTRO’s PLAYROOM』は0.5~1FPS、まだ遊べない
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『ASTRO’s PLAYROOM』は0.5~1FPS、まだ遊べない
出典:SharpEmu公式GitHub、SharpEmu公式互換性データベース、Valve公式Steam Deck技術仕様にもとづきます。本記事の情報は2026年8月15日時点のものです。
Steam Deck上で、PlayStation 5向けゲームをPS5エミュレータ「SharpEmu」を使って直接起動するデモが公開されました。動作が確認されたのは、PS5にプリインストールされている『ASTRO’s PLAYROOM』です。公開されたデモではSteamOS上で『ASTRO’s PLAYROOM』が起動し、PlayStation Studiosのロゴやロード画面付近まで進んでいますが、フレームレートは約0.5~1FPS。実際のゲームプレイには到達していません。音声についても途切れ途切れで、現在は実用的なエミュレーションというより技術的な動作確認に近い状態です。
それでも注目したいのは、Windows搭載の高性能ゲーミングPCではなく、LinuxベースのSteamOSを搭載したSteam Deck上でPS5ソフトの実行処理がここまで進んだことです。SharpEmuはWindowsだけでなくLinux・macOSも正式にサポートしており、この特徴がSteamOS上での動作を可能にしています。
この記事では、SharpEmuとはどのようなPS5エミュレータなのか、Steam Deckで『ASTRO’s PLAYROOM』はどこまで動いたのか、公式の互換性データベースが示す開発の現在地、そして将来的にPS5ゲームをSteam Deckで遊べる可能性があるのかを、公式情報にもとづいて整理します。
目次
要点まず何が起きたか
起動成功Steam DeckのSteamOS上でASTRO’s PLAYROOMを起動
今回公開された映像では、Steam DeckのSteamOSデスクトップモード上でSharpEmuを実行し、『ASTRO’s PLAYROOM』をローカルで起動しています。PS5からSteam Deckへ映像を飛ばすRemote Playや、クラウドゲーミングを利用しているわけではありません。海外メディアの報道によると、公開された映像ではSteam Deck本体でSharpEmuが動作し、『ASTRO’s PLAYROOM』がPlayStation Studiosのロード画面を表示するところまで進んでおり、表示されているパフォーマンス情報では、おおむね0.5~1FPSで推移しています。複数の海外メディアが同じデモについて、SteamOS上でローカル動作していることを確認しており、ゲームプレイには到達していないとしています。デモを公開したのは、SharpEmuのコミュニティメンバーとされています。
つまり今回確認できたのは、「Steam DeckでPS5版『ASTRO’s PLAYROOM』の起動処理が進み、映像出力まで到達した」という技術的な成果です。「Steam Deckで『ASTRO’s PLAYROOM』をプレイできた」というニュースではありません。この違いはかなり重要です。
0.5~1FPSの意味「あと少し最適化すれば」という段階ではない
今回のデモで最も分かりやすい問題がフレームレートです。表示されている数値は約0.5~1FPSなので、1秒間に1フレーム表示できるかどうかという水準です。一般的なゲームで目標とされる30FPSや60FPSとは大きな差があります。しかも、この0.5~1FPSという数字は実際のステージを操作している場面ではなく、現時点ではPlayStation Studiosのシーケンスやロード画面付近で止まっており、3Dステージを自由に操作できる状態には到達していません。
そのため、「あと少し最適化すれば30FPSになる」と考える段階でもありません。ゲームが要求するPS5固有の機能をSharpEmu側で再現し、正常に描画し、入力や音声まで処理したうえで実際のステージを動かす必要があります。現在の0.5~1FPSだけを見て、将来的なゲーム中のフレームレートを予測することはできません。
SharpEmuとは互換性より正確性と基盤構築を優先する開発初期段階のエミュレータ
SharpEmuは、PlayStation 5を対象としたオープンソースの実験的エミュレータです。公式GitHubでは、Windows x64、Linux x64、macOS x64をサポートしており、C#でゼロから開発しているPS5エミュレータと説明されています。2026年7月にコミュニティ主導のオープンソースプロジェクトへ移行しました。
公式リポジトリによると、現在はPS5ゲームのeboot.binやELFファイルの読み込み、ネイティブCPU命令の実行、ゲーム情報の取得、システムモジュール読み込み、一部カーネル機能、シェーダーやリソース処理、ゲームによっては映像出力などが実装されています。一方で、重要な機能がまだ複数欠けていることも公式に明記されています。
SharpEmu開発チームは公式リポジトリで「現在の重点は、ゲームごとの互換性ではなく正確性とインフラ整備にある(The current focus is on accuracy and infrastructure setup rather than game-specific compatibility)」と明記しています。完成済みのPS5エミュレータではなく、PS5ソフトがどこまで実行できるかを研究しながら機能を実装している開発初期段階のプロジェクトと考えるのが適切です。
Linux対応SteamOSとの相性を生むクロスプラットフォーム設計
今回Steam Deckで動作できた大きな理由のひとつが、SharpEmuがLinuxを正式にサポートしていることです。SharpEmuではWindowsとLinuxの映像出力にVulkanを使用しており、macOSではMoltenVKを利用しています。Steam Deckの標準OSであるSteamOSはLinuxをベースとしているため、WindowsをSteam Deckへインストールして無理に起動したわけではなく、SteamOSのデスクトップモード上でLinux版SharpEmuをそのまま動かせることが、今回のデモにつながっています。
Steam Deckユーザーにとっては、将来的にPS5エミュレーションの完成度が高まった場合も、WindowsへOSを変更せずSteamOS上で利用できる可能性があります。ただし、現時点のLinux対応もSharpEmu公式が実験的な位置づけとしており、OSやGPUドライバー、ゲームによって互換性や性能が変化すると説明しています。Linux版が存在することと、PS5ゲームを快適に遊べることは別問題です。
Steam Deckの性能PS5と同じAMD系でも、エミュレーションが簡単になるわけではない
Steam DeckはAMD製APUを搭載しています。Valve公式仕様によると、CPU部分はZen 2の4コア8スレッド、GPU部分はRDNA 2の8 Compute Unitsで、GPU演算性能は最大1.6TFLOPS、APUの消費電力は4~15Wです。携帯型ゲーミングPCとしてゲームを動かすには優秀な性能ですが、PS5エミュレーションでは話が変わります。
エミュレータでは、単純にPS5向けプログラムをSteam DeckのGPUで描画すればよいわけではなく、PS5側のOSやAPI、GPU命令、カーネル機能などをPC側で再現または変換しなければならず、その処理自体にも負荷が発生します。Steam DeckとPS5はどちらもAMDのZen 2世代CPU技術とRDNA系GPU技術を採用しているため、まったく異なるアーキテクチャ同士をエミュレーションする場合より有利に見えるかもしれません。しかし、ハードウェアの基本設計が近いからといってPS5ゲームをそのまま起動できるわけではなく、SharpEmuはカーネル機能・システムモジュール・シェーダー・GPUコマンドなど多数の処理を段階的に実装している途中です。現在0.5~1FPSにとどまっている原因も、Steam DeckのGPU性能だけでなく、SharpEmu側で未実装・未最適化の処理が多数残っていることによります。
対象ゲームASTRO’s PLAYROOMはPS5の機能を強く利用するゲーム
今回テストされた『ASTRO’s PLAYROOM』はPS5本体にプリインストールされているアクションプラットフォーマーで、DualSenseのハプティックフィードバック、アダプティブトリガー、モーションセンサー、タッチパッドなどPS5の機能を体験するために設計された作品です。つまり、映像だけを表示できれば完全再現できるゲームではありません。将来的にSharpEmu上でステージまで動作するようになったとしても、本来の体験を再現するにはDualSense関連の入力やフィードバックまで適切に処理する必要があり、今回のデモはまだそこを評価できる段階には到達していません。
ここで注意したいのが、2020年にPS5へプリインストールされた『ASTRO’s PLAYROOM』と、2024年に発売されたPS5用『ASTRO BOT』は別作品だという点です。SharpEmuでは『ASTRO BOT』についても開発が進んでおり、直近のアップデートでは「Astro Botに必要なインポート」「Astro BotのVulkan修正」といった変更が複数回加えられています。PC上では『ASTRO BOT』の起動処理が進んだという報告もありますが、今回のSteam Deck映像とは別の話です。「Steam Deckで2024年版『ASTRO BOT』が動いた」と誤解しないよう注意してください。
互換性データベース8,844タイトルを追跡、テスト済みは30本のみ
SharpEmuの進歩は『ASTRO’s PLAYROOM』だけではありません。公式の互換性データベースでは、本記事執筆時点で8,844本のPS5タイトルが登録され、そのうち30本についてテスト結果が報告されています。分類は「Nothing」が11本、「Boots」が11本、「Menus」が3本、「Ingame」が2本、「Playable」が3本です。個別には、『Demon’s Souls』が「Boots」(起動画面を越える程度)、『Grand Theft Auto V』が「Menus」(メニュー付近まで到達)と分類されています。
ただし、この「Playable」という数字だけを見て、最新のPS5 AAAタイトルまで遊べると考えるべきではありません。海外報道では、比較的軽量な2Dタイトルの方がより高いフレームレートで動作しているとも伝えられており、SharpEmu公式も、ゲームごとの互換性ではなく基盤構築を優先していると明言しています。PS5エミュレーション全体としては急速に進歩していますが、多くの大型3Dゲームを普通に遊べる状況とはまだ大きな差があります。
類似プロジェクトKytyPS5との違いはクロスプラットフォーム対応
PS5エミュレータはSharpEmuだけではありません。KytyPS5もPS5エミュレーションの開発を進めているプロジェクトで、SharpEmu公式もGitHub上の謝辞でKyty系プロジェクトを「ネイティブコード実行の研究に非常に役立った」として挙げています。実際に起動できるゲームという面ではKytyPS5の方が先行しているとの報道もある一方、SharpEmuの大きな特徴としてLinuxやmacOSを含むクロスプラットフォーム対応が挙げられます。SharpEmuがSteam Deckで注目されている理由もここにあり、SteamOSをそのまま使ってLinux版を実行できるため、Windows専用エミュレータより相性のよい開発方向になっています。ただしPS5エミュレーションはまだ開発初期段階なので、現時点で「どちらが最強のPS5エミュレータ」と決める意味はあまりなく、今後の実装状況によって大きく変化する可能性があります。
注意点PS5がなくてもSteam Deckだけで遊べるわけではない
今回のデモを見て、「PS5を持っていなくてもSteam Deckだけ買えばPS5ゲームを遊べる」と考えるのも適切ではありません。SharpEmu公式は海賊版を支持していないことを明記しており、開発・テストには所有するゲーム機から合法的にダンプしたゲームを使用していると説明しています。ユーザーにも合法的に入手したゲームデータを使用するよう求めており、SharpEmu自体にも、著作権で保護されたシステムファームウェア、ゲームデータ、PlayStation独自のアセットは含まれていません。エミュレータ本体がオープンソースで公開されていることと、PS5ゲームを自由にダウンロードしてよいことは別問題です。
Q&Aよくある質問
総括まとめ|重要なのはFPSではなく「SteamOSで起動したこと」
今回のニュースでは「0.5~1FPS」という数字が目立ちますが、SharpEmuの現在の開発段階を考えると、本当に重要なのはフレームレートではありません。LinuxベースのSteamOSを搭載したSteam Deck上でSharpEmuを直接実行し、実際のPS5ゲームの起動処理を進め、映像出力まで到達したことです。SharpEmu公式が説明する現在の目標も、ゲームを高FPSで動かすことより、PS5ゲームが必要とする機能を正確に実装することにあります。
Steam DeckでPS5タイトルが30FPSや60FPSで遊べる未来が近づいたと判断できる段階ではありませんが、PS5エミュレーションがLinux・Steam Deckまで広がり始めたことを示す興味深い技術的マイルストーンです。
オープンソースのPS5エミュレータ「SharpEmu」を使い、Steam DeckのSteamOS上で『ASTRO’s PLAYROOM』を直接起動するデモが公開されました。Remote Playやクラウドストリーミングではなく、Linux版SharpEmuをSteam Deck本体で動かしたもので、PlayStation Studiosのロード画面付近まで進み、約0.5~1FPSで動作しています。ただし実際のゲームプレイには到達しておらず、現時点で「Steam DeckがPS5エミュレータ機になった」と表現するのは過大評価です。SharpEmu公式の互換性データベースでは8,844タイトルを追跡中で、テスト済み30本のうちPlayableはわずか3本。開発チームは現在、ゲーム互換性より正確性や基盤機能の実装を優先しています。WindowsだけでなくLinuxを正式な対応プラットフォームとしているSharpEmuが、SteamOS上で実際のPS5ソフトを映像出力まで進めた点には意味があり、PS5エミュレーションがSteam Deckまで広がり始めたことを示す技術的マイルストーンといえます。



