1年半使ったCPUグリスを新品に替えたら温度は下がるのか|日本製Ninja 060をRyzen 7 7800X3Dで前後3回ずつ実測
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日本製グリス「Ninja 060」をRyzen 7 7800X3Dで実際に試しました
出典:NINJA GREASE公式よくある質問・同・製品の特長・同・製品ラインナップ・同・運営情報・製品同梱の取扱説明書・Amazon.co.jp商品ページ・アイネックス GS-08・サイズ MAXTOR CTG12-4G・親和産業 OC Master SMZ-01Rにもとづきます。本記事の情報は2026年8月31日時点のものです。
CPUグリスは何年かで劣化するので、そろそろ塗り替えたほうがいいと言われます。ただ、実際に替えて温度がどれだけ下がるのかを数字で示した話は、意外と多くありません。ハイエンドのグリスを買えばそのぶん冷えるのか、というのも同じです。
今回取り上げるのは、Ninja Grease Japanの「Ninja 060」です。日本発のブランドで、シリコーンフリー、銅製ヒートシンク対応をうたう製品です。Amazon.co.jpでの取り扱いは2025年末に始まったばかりで、まだ実際に使った話がほとんど出回っていません。
そこで、1年半使ったグリスが塗られたRyzen 7 7800X3Dを実際に塗り替えて、前後で同じ負荷をかけて測りました。結果を先に書くと、温度は変わりませんでした。ただし交換前に塗ってあったのはオーバークロック向けの定番として知られるグリスで、国内に出てまだ半年ほどのNinja 060がそれと同じ温度域に並んだ、という見方もできます。開封から塗った感触、実測値、そして「どんなときに替える意味があるか」までまとめます。
目次
要点この記事で分かる4つのこと
製品Ninja 060はどんなグリスか

Ninja 060は、Ninja Grease Japanが展開するサーマルグリスブランド「NINJA GREASE」の製品です。同社は長野県上田市と徳島県徳島市に事業拠点を置き、熱インターフェース材料の企画・開発・販売を手がけています。Amazon.co.jpでの取り扱いは5gが2025年12月24日、1.5gが同31日に始まっており、2026年8月31日時点のレビューは37件、平均4.5と表示されています。
公式が想定用途として挙げているのは、プロ用のゲーミングPCや高解像度の3Dレンダリング、データセンターやAIサーバー、4K・8K動画編集といった発熱の大きい環境です。市販されているのは1.5gと5gの2種類で、2026年8月31日時点ではAmazon.co.jpから購入できます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 熱伝導率 | 非公表(公式FAQで数値を公開しない方針を明記) |
| 使用温度域 | パッケージ裏面は-50〜125℃、公式よくある質問は-50℃〜150℃と記載(記述に食い違いあり) |
| 組成 | 熱伝導性フィラー(絶縁性セラミック粒子)と特殊オイル |
| 導電性 | なし(絶縁タイプのフィラーとオイルを使用) |
| シリコーン | シリコーンフリー。揮発性溶剤も不使用 |
| 耐タレ性 | 125℃環境下でも形状を保持(公式は125℃×1000時間の社内実験としています) |
| 耐ポンプアウト性 | 高温環境でも保持性を維持し、ポンプアウトしにくい設計と説明(ポンプアウトが起きたときの症状) |
| 保証 | 商品到着後30日間の初期不良対応(返品または交換) |
| 対応ヒートシンク | 銅製にも対応(銅との反応による劣化を抑制) |
| 適さない用途 | 300μmを超える隙間の充填、潤滑目的、吸油性素材への塗布 |
| 内容量と価格 | 1.5g(約0.3ml)/1,680円、5g(約1ml)/3,360円(いずれも税込。2026年8月31日時点でAmazon.co.jpの1.5gはセール中) |
| 製造販売元 | パッケージ裏面に株式会社Commpro(東京都渋谷区)と記載。公式サイトの運営情報には法人名の記載なし |
| 同梱物 | シリンジ、キャップ、ヘラ、日本語の取扱説明書 |
なお、このメーカーは熱伝導率のW/m・K表記を公表しておらず、公式のよくある質問でも「あえて公開していません」としています。数値で他製品と比べたい人には物足りない部分です。

シリコーンフリーである点は、グリスの選び方としては地味に効いてきます。シリコーン系グリスから揮発するシロキサンは、スイッチの接点不良やカメラのレンズ・センサーの汚染につながることがあるためです。この性質はCPUグリスの選び方と塗り方でも触れていますが、密閉されたPCケースの中だけを考えるなら過度に気にする必要はなく、光学機器やセンサーが近くにある用途で意味を持つ違いです。
実物開けて、塗ってみた
届いたのは1.5gと5gの2本です。中身はシリンジ入りのグリス本体と、白いヘラ、そして日本語の取扱説明書。取扱説明書には塗布手順のイラストのほか、後述する製品寿命の目安がグラフと表で載っています。シリンジ外筒とキャップがポリプロピレン、プランジャーがポリエチレン、ヘラがポリアセタールと、廃棄時の分別まで書かれているのは日本メーカーらしいところです。

ひとつ実物で気づいたのは、シリンジのラベルが本体をぐるりと覆っていて、中のグリスがどれだけ残っているのか外から見えないことです。これは筆者だけの感想ではなく、メーカーも2026年8月25日に「シリンジ残量表示に関する新仕様(案)」というお知らせを出しています。現行品はラベルで残量が見えにくいという意見を受けて、ラベルに隙間を設ける仕様を検討中とのことで、資料には「検討中」と明記されています。切り替えは製造開始から在庫が置き換わるまで数か月かかる見込みで、現行品を使っている場合はラベルの一部を剥がすか切り込みを入れて確認してほしい、という案内になっています。5gを買って何度かに分けて使うつもりなら、この点は知っておいたほうがいいところです。
付属のヘラを使ってCPU上面に伸ばしています。触った印象としては、ヘラを動かすときに少し重さを感じました。柔らかくてすっと広がるタイプではありません。
公式サイトもNinja 060を高粘度のグリスとして位置づけており、この手応えは仕様どおりです。塗りにくいというほどではありませんが、柔らかいグリスに慣れていると最初は少し戸惑うかもしれません。ヘラが付いてくるのは、この粘度なら妥当な構成だと感じました。
付属の取扱説明書では、米粒法のような量の指定ではなく、ヘラでCPU上面全体に広げたときに下地が透けて見えなくなる厚みを目安として示しています。メーカーはヘラで塗り広げる方法を推奨していますが、よくある質問では中央への1点置きやX字塗りも可としています。
実測1年半使ったグリスから替えて、温度は変わったか
ここが今回いちばん知りたかったところです。塗り替えの前後で同じ負荷をかけ、同じ指標で温度を測りました。交換前に塗ってあったのはAINEX GS-08です。アイネックス公式の製品情報では、ブランドがThermal Grizzly、製品名がThermal Grizzly Kryonautと明記されており、型番だけがGS-08になっている製品です。位置づけは「オーバークロック向け高性能熱伝導グリス」で、公式の説明も「オーバークロックコミュニティの高い期待と極めて厳しい用途のため、特別に開発された」「極低温環境でその真の能力を示す」という書き方です。熱伝導率12.5W/m・K、粘度130〜170Pas、使用温度は-200〜350℃。液体窒素を使うような極端な環境まで想定した製品で、比較相手としてはかなり手強い部類に入ります。塗布からおよそ1年半が経過していました。つまり今回試したのは「安いグリスからの乗り換え」ではなく、「1年半使ったオーバークロック向けグリスを新品に替えたらどうなるか」です。


| 項目 | 内容 |
|---|---|
| CPU | Ryzen 7 7800X3D(8コア16スレッド) |
| CPUクーラー | PCCOOLER CPS DA360-ARGB-BK(360mm簡易水冷) |
| マザーボード | MSI MAG B650 TOMAHAWK WIFI |
| GPU | GeForce RTX 3060(GPU側のグリスは交換していません) |
| 負荷テスト | Cinebench 2026/CPU (Multiple Threads)、各条件3回 |
| 計測 | HWiNFO64のCPU (Tctl/Tdie)、ログをCSVで取得 |
| 室温 | 26℃(交換前後とも同じ) |
| その他の条件 | BIOS設定は前後で変更なし。各回ともアイドルまで冷ましてから実行 |
結果は次のとおりです。3回それぞれの最高温度と、Cinebenchのスコアを並べています。
最高温度:79.2℃/77.8℃/77.9℃。スコア:3265/3467/3410pts。3回の平均:78.3℃、3381pts。サーマルスロットリングは3回とも発生していません。
最高温度:77.4℃/78.4℃/78.9℃。スコア:3356/3363/3423pts。3回の平均:78.2℃、3381pts。こちらもサーマルスロットリングは発生していません。
答えは「変わらなかった」です。平均の差は0.07℃、スコアにいたっては3回の合計がどちらも10142ptsで完全に一致しました。3回それぞれの数値も、どちらの条件でも77℃台後半から79℃台前半の同じ幅に収まっています。温度を下げる目的で替えたのであれば、この構成では意味がなかったことになります。
ただし、この結果はNinja 060にとって悪いものではありません。相手はオーバークロック向けとして評価が確立しているKryonautです。国内で流通し始めて半年ほどの新しいブランドの製品が、その定番と同じ温度域に並んだ、というのが今回の実測が示していることです。最高温度で見ればNinja 060の3回はいずれも79℃を超えず、GS-08側の最高だった79.2℃より低く収まりました。誤差の範囲内ではありますが、少なくとも替えて温度が上がることはありませんでした。
安定性の面でも問題は見当たりません。3回の最高温度は77.4℃から78.9℃までの1.5℃幅に収まり、測り直しても同じところに落ち着きました。TjMaxの89℃に対して10℃以上の余裕があり、HTCとPROCHOTのどちらも一度も作動していません。全コアに10分以上の連続負荷をかけ続けても、温度が原因でクロックが削られる場面はありませんでした。
つまり「Kryonautから替えても冷却面で損はしない」というのが、この検証で確認できた範囲です。逆に言えば、温度をさらに下げたいという動機で買うと期待外れになります。次の章で、その線引きを整理します。
診断グリスを替えても温度が下がらないのはどんなときか
「替えても変わらない」という結果は珍しいものではありません。グリス交換で温度が大きく下がるのは条件がそろったときだけで、そうでなければ効果は誤差に埋もれます。今回差が出なかった理由は3つに整理できます。
1つ目は、比較相手のGS-08がオーバークロック用途に振ったKryonautで、上位帯どうしの入れ替えになったこと。1年半経っていたとはいえ、そもそも差が付きにくい相手でした。2つ目は、360mm簡易水冷という冷却余力の大きい環境では、ダイからラジエーターまでの熱の通り道のうちグリス層が占める割合が小さく、グリスを替えても全体があまり動かないこと。3つ目は、7800X3DのTjMaxである89℃に対して実測が78℃台にとどまっており、そもそも冷却が足りていない状態ではなかったことです。
裏を返せば、次のどれかに当てはまるなら、グリス交換で目に見える改善が出る可能性があります。自分の環境を照らし合わせてみてください。
高負荷時にTjMaxへ張り付いてクロックが落ちている。温度上限で頭打ちになっているなら、わずかな熱抵抗の差が性能差として現れます。購入時のグリスがそのまま。メーカー出荷時のグリスは塗布量や品質にばらつきがあり、塗り直しだけで大きく変わる例があります。塗布から3年以上経っている、またはノートPCやミニPCで100℃前後まで上がる。高温環境ほど劣化が早く進みます。
すでにハイエンドグリスを使っている。上位帯どうしの入れ替えでは差が誤差に埋もれます。大型空冷や簡易水冷で温度に余裕がある。冷却系全体の能力が足りているなら、グリス層の寄与は相対的に小さくなります。塗布から1〜2年程度で、温度上昇も感じていない。劣化がまだ性能に出ていない段階です。
実際、出荷時のグリスが原因で冷却が追いついていなかったケースでは、塗り直しだけでCPU性能が約30%改善したミニPCの事例もあります。逆に今回のように冷却が足りている環境では、グリスを上位品に替えても数字は動きません。交換前に自分がどちらの状態にあるかを見極めるほうが、製品選びより先に効きます。判断に迷うならCPUグリスの選び方と塗り方で交換タイミングの目安を確認してください。
寿命公式が示している製品寿命の目安
今回の実測では差が出ませんでしたが、同梱の取扱説明書に載っている情報のなかで、他社があまり明示しない項目がありました。使用温度ごとの製品寿命の目安です。同社はこれを「熱伝導性が初期性能の80%以下になる点」と定義したうえで、次の数値を示しています。
| 使用温度 | 寿命の目安 |
|---|---|
| 90℃ | 7年 |
| 100℃ | 3.5年 |
| 110℃ | 1.5年 |
| 120℃ | 1年 |
| 130℃ | 6か月 |
| 150℃ | 1か月 |
温度が10℃上がるごとに、寿命がおおよそ半分前後まで縮んでいく形です。取扱説明書には、この数値が塗布素材や形状、ヒートサイクルの有無でも前後する目安であり、性能を保証するものではないことも併記されています。また、この寿命は本製品固有の値であって他社グリスには適用できない、という注意書きもあります。
実用面で言えば、ゲーム用途のCPUが常時90℃を超え続けることは通常ありません。今回の実測のように高負荷時で78℃程度に収まる環境なら、表の上限である7年よりさらに長い期間を見込める計算になります。逆にノートPCやミニPCのように100℃前後まで上がる機体では、3年程度で塗り替えを検討する目安になる数字です。グリス交換のタイミングそのものについてはCPUの交換・換装のやり方でも手順とあわせて解説しています。
購入価格と、どんな人に向くか
Ninja 060の通常価格は1.5gが税込1,680円、5gが税込3,360円です。2026年8月31日時点では1.5gがセールで1,480円になっていますが、判断の基準としては通常価格で見ておくのが安全です。g単価に直すと1.5gが約1,120円、5gが約672円で、5gのほうがおよそ4割安い計算になります。1回の塗布で使う量はごくわずかなので、CPUとGPUの両方に使う人や複数台をメンテナンスする人でなければ、1.5gでも数回分はまかなえます。ただし同梱の取扱説明書には「商品は長期間保管すると塗布性能が低下する恐れがあります。購入後はできるだけ早めにご使用ください」と書かれています。5gを数年かけて少しずつ使う運用は、メーカー自身が想定していないことになります。塗り替えの頻度が高くないなら、g単価が高くても1.5gを選んで使い切るほうが理にかなっています。
国内の他製品と並べると、価格帯の位置づけがはっきりします。サイズが扱うMAXTOR CTG12は2g入りの市場想定売価が税込980円でg単価にすると約490円、親和産業のOC Master SMZ-01Rはツクモでの2g入り税込1,078円でg単価が約539円です。海外勢でもAlphacoolが17.3W/mKをうたうApex 2のように、熱伝導率を看板にして売るのが一般的です。Ninja 060の1.5gはg単価でこれらの2倍以上、5gを選んでも依然として上回ります。
冷却性能で妥協したくないが、定番以外も試したい人。今回の実測では、OC向けとして評価が確立しているKryonautと同じ温度域に並びました。乗り換えても冷却面で損をする製品ではありません。シリコーンフリーを条件にしている人。光学機器やセンサーが近い環境、シロキサンによる接点障害を避けたい用途では、選択肢がそもそも限られます。使用温度ごとの寿命目安が公開されている点を評価する人。塗り替え時期を数字で判断したい人には、この情報を出しているメーカー自体が多くありません。銅製ヒートシンクや高温環境で長期間放置する用途。耐銅性と125℃での耐タレ性を明示している製品です。
カタログスペックで納得してから買いたい人。このメーカーは熱伝導率の数値を公表していないため、数字を並べて他製品と比較する買い方はできません。コストを抑えたい人。g単価では国内の主要な選択肢より2倍以上高くなります。いま使っているグリスの温度に不満があって、下げる目的で買う人。Kryonautクラスから替えても温度は動きませんでした。冷却が足りていないなら、原因はグリスではなくクーラーやエアフロー側にあります。
整理すると、Ninja 060は冷却性能で選んでも外れない製品です。今回の実測では定番のKryonautと同じ温度域に並び、3回とも安定していました。そのうえでシリコーンフリー、耐銅性、寿命の目安といった、カタログの一行では伝わりにくい部分に価値を置いています。g単価は国内の主要な選択肢より高いので、そこに納得できるかどうかが判断の分かれ目です。ただし「いま温度が高くて困っている」という動機で買うなら、先に見直すべきはクーラーやエアフローのほうです。
Q&Aよくある質問
1年半使ったグリスを新品のNinja 060に替えて温度は下がるのか、という問いへの答えは「変わらなかった」でした。ただし比較相手はオーバークロック向けの定番であるKryonautです。国内に出てまだ半年ほどのブランドの製品が、その定番と同じ温度域に並び、3回とも安定していた。冷却性能そのものは十分に評価できる結果です。
実際に使ってみた印象としては、ヘラを動かすのにやや力が要るグリスでした。公式サイトも高粘度のグリスとして位置づけているので、感触は仕様どおりです。Ryzen 7 7800X3Dと360mm簡易水冷という構成で、1年半使ったAINEX GS-08から塗り替えて測ったところ、Cinebench 2026を3回ずつ回した平均最高温度は78.3℃と78.2℃、スコアの合計は完全に一致しました。この環境では温度は下がっていません。
差が出なかったのは、比較相手が強かったことと、360mm簡易水冷という冷却に余裕のある構成だったことの両方によるものです。裏を返せば、温度上限に張り付いている機体や出荷時のグリスがそのままの機体なら、結果は違ってきます。交換前に自分がどちらの状態にあるかを見極めるほうが、製品選びより先に効きます。そのうえでNinja 060を選ぶ理由があるとすれば、冷却面で定番と遜色ないことに加えて、シリコーンフリーであること、使用温度ごとの寿命目安が数字で示されていること、銅製ヒートシンクへの対応が明記されていることです。価格は1.5gが1,680円、5gが3,360円で、g単価では5gのほうがおよそ4割安くなります。






