CPUグリスの選び方と塗り方|種類比較・交換タイミング・失敗しない手順【2026年版】
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塗り替えが必要な場面と、高温の原因を見分ける
CPUとクーラーの底面は、見た目には密着していても、顕微鏡で見ると細かな凹凸が残っています。その隙間に入った空気は熱を通しにくく、グリス(サーマルペースト)はそこを埋めて熱の通り道をつくる材料です。
選び方の結論は、初めてなら電気を通さない定番品で十分です。高価なグリスに替えても差は数℃に収まることが多く、2026年8月の実測では、1年半使ったKryonaut系のグリスを新品の別製品に替えても、各試行の最高温度の3回平均は78.3℃から78.2℃へ、差は0.07℃でした。
クーラーを外したら、両接触面を清掃して新しいグリスで再装着します。温度が高いときは、室温・負荷・電力設定、CPU別の上限、固定やファン・ポンプの作動を先に確認してください。温度上昇だけでグリス不足や劣化とは判断できません。
目次
種類グリスの種類と選び方
市販のグリスは、導電性の有無と用途で4つに分けると選びやすくなります。
ArcticはMX-6、NoctuaはNT-H1・NT-H2で、熱伝導率の数値を公表していません。Noctuaは理由として、試験方法によって結果が揃わないこと、実際の性能は塗り広がりや接触圧、接触面の質にも左右されることを挙げています。パッケージや販売ページの数字は、メーカー間で比べられるものではありません。
製品おすすめグリスの選び分け
迷ったら、入手しやすい定番品のArctic MX-6です。ArcticはMX-6を前世代のMX-4より約20%性能が上がったとしており、電気を通さず、-50〜150℃で使えて、慣らし運転は不要と説明しています。MX-4はまだ流通していますが、新しく買うなら価格差が小さいMX-6で足ります。


※価格・在庫は変動します。最新の価格はAmazonの商品ページでご確認ください。
このほか、サイズから2026年8月に発売されたMAXTOR CTG12は、公称18W/m・Kで980円からと安い製品です。冷却性能の根拠になっている検証条件は公開されていないため、安さで試す位置づけです。
効果グリスを替えると温度は下がるのか
答えは、替える前の状態によります。1年半使ったグリスから新品に替えた検証では差が出ませんでした。一方で、出荷時のグリスが冷却のボトルネックになっていた機種では、塗り直しだけで性能が大きく動いた例があります。
| 条件 | 各試行の最高温度の3回平均 | スコア(3回平均) |
|---|---|---|
| 交換前(Kryonaut系を1年半使用) | 78.3℃ | 3,381pts |
| 交換後(Ninja 060を新品で塗布) | 78.2℃ | 3,381pts |
測定環境はRyzen 7 7800X3D、360mm簡易水冷、室温26℃、Cinebench 2026のマルチコアを各条件3回です。前後の測定の詳細はNinja 060の実測記事にまとめています。この構成では交換前後の差が小さかったものの、クーラー容量だけで原因は断定できません。接触状態や発熱量、測定のばらつきなどを切り分けた結果ではありません。
| 状況 | 塗り直しの効果 | 理由 |
|---|---|---|
| クーラーを一度外した | 清掃・再塗布 | CPUとクーラー底面を清掃し、乾燥確認後に新しいグリスで再装着します |
| 購入時の出荷グリスのまま | 出ることがある | GeekBook M16のレビュー機では、塗り直しでCinebenchのマルチコアが約690から最大895に上がりました。1台の結果で、全機種には当てはまりません |
| 高負荷で上限温度に張り付いている | 出ることがある | 上限で頭打ちになっていると、熱抵抗のわずかな差がクロックの差に出ます |
| ハイエンドグリスを1〜2年使用・温度に余裕あり | 構成次第 | 上記の単一構成では小差でした。他のグリスや使用年数全般の効果を保証する結果ではありません |
グリスがなくても条件によっては起動・動作しますが、高負荷では温度制限による性能低下や保護停止が起こり得ます。グリスなしで約3年動いたと報じられたCore i7-12700Kの事例では、壊れなかったことが冷えていた証拠にはなりませんでした。
塗り方グリスの塗り方3種類
初回の量と配置は、対象CPU・グリス・クーラーの公式手順で決めます。中央1点を全CPU共通の基本にはせず、少量で温度を試してから足す方法も標準手順にしません。
| 方法 | 向く場面 | 注意点 |
|---|---|---|
| 米粒法(中央に1点) | 中央1点を指定する製品・CPUの組み合わせ | 粒の大きさは説明書を優先。NT-H2の小型CPU向け指定例は直径3〜4mm |
| 複数点塗布 | NT-H2をAM5で使う場合など、複数点の指定がある組み合わせ | NT-H2のAM5指定は四隅付近に約2mmを4点、中央に3〜4mmを1点(いずれも直径) |
| 全面に薄く伸ばす | Kryonautなど、ヘラでの塗布を指定する製品 | 製品指定の厚みと範囲を守ります。Kryonautは接触面を薄く均一に覆う指定です |
塗り方の推奨は製品で異なります。たとえばNinja 060は、ヘラでCPU上面全体に下地が透けない厚みまで伸ばす方法が取扱説明書の目安で、中央に1点置く塗り方も公式の質問ページで可とされています。取扱説明書が付いている製品は、その指定を優先してください。
温度が高いだけで量不足とは判断できません。固定やファン・ポンプの作動、設定を先に確認します。クーラーを外した場合は、CPUとクーラー底面の残留グリスを清掃し、乾燥を確認してから新しいグリスを指定量で塗って再装着します。古い層への継ぎ足しはしません。
塗布・再装着の出典:Noctua 塗布・除去FAQ、NT-H2 AM5 Edition公式手順(PDF)、Kryonaut 塗布・清掃の公式案内、Intel 高温時の対処
手順グリス塗り替えの手順
用意するものは、グリス、無水エタノール(Amazonの無水エタノール)、繊維が残らない拭き取り紙(キムワイプやコーヒーフィルター)、綿棒です。
- 電源を切り、電源ケーブルを抜く。ケースの金属部分に触れて静電気を逃がしてから作業します。
- クーラーのネジを対角順に少しずつ緩めて外す。片側だけ一気に外すと、斜めに外れてCPUのピンを傷める恐れがあります。
- 古いグリスを拭き取る。乾いた拭き取り紙で大まかに取り、無水エタノールを少量含ませて円を描くように拭きます。CPU側とクーラー側の両方をきれいにします。ティッシュは繊維が残るので避けます。
- 清掃した面の乾燥を確認する。使用したクリーナーと部品の説明書に従い、液体や拭き取りくずが残っていないことを確認してから塗布します。固定の秒数で乾燥完了とは判断せず、ソケットや端子に洗浄液を入れないようにします。通電も乾燥確認後です。
- 新しいグリスを指定量・配置で塗る。対象CPU・グリス・クーラーの説明書に従います。塗布済みクーラーを新品で使う場合も、まず付属グリスの扱いを説明書で確認し、追加で重ね塗りしません。
- クーラーを真上から載せ、対角順に少しずつ締める。ずらしながら押し付けるとグリスが偏ります。締め付けは、クーラーの取扱説明書にある手順とトルクに従います。
- 起動して温度を確認する。HWiNFO64などで、アイドル時と高負荷時の温度とクロックを見ます。CPU別の上限と照らし合わせ、室温・負荷・電力設定をそろえて判断します。
クーラー自体の取り付け方や、空冷から簡易水冷への載せ替えはCPUクーラーの取り付け・交換のやり方で扱っています。
温度温度の見方と、塗り直しが必要なサイン
絶対温度だけで良し悪しは決まりません。CPUごとに上限(Tjmax)が違うため、まず自分のCPUの上限を確認します。
温度とクロックの比較は、取り外す前に室温・負荷・電力設定をそろえて行ってください。固定の緩み、保護フィルムの剥がし忘れ、ファンやポンプの給電・回転、ほこりや通風も確認してください。保護フィルムや接触面の確認でクーラーを外す場合は、その後に清掃・乾燥・再塗布が必要です。
| CPU | 最大動作温度 | 見方 |
|---|---|---|
| Ryzen 9000シリーズ9600X・9700X・9800X3D・9850X3D・9900X3D・9950X3D | 95℃ | 高負荷で上限近くまで上がる設計です。上限に張り付いてクロックが落ちているかを見ます |
| Core Ultra 200S285K・265KF | 105℃ | Intel ARKの最大動作温度です。100℃を超える前に冷却を見直します |
| Core i7-12700K | 100℃ | 100℃は上限であって、余裕のある温度ではありません |
上限に近づくと、CPUは壊れる前にクロックを下げて温度を守ります。ゲーム中にfpsが急に落ちるときは、温度とクロックを同時に記録して、クロックが下がっていないかを確認してください。原因の切り分けはサーマルスロットリングでfpsが落ちるときの診断が参考になります。
時期グリスを交換するタイミング
年数や温度上昇だけで劣化と決めず、取り外し後の再塗布と、高温の原因調査を分けて考えます。
- クーラーを取り外したとき。再装着のたびに、古いグリスを拭いて塗り直します。
- 購入直後から温度が高いとき。室温・負荷・電力設定を確認し、固定、保護フィルム、ファンやポンプの動作を調べます。温度だけで出荷グリスを原因と決めません。
- 同じ室温・負荷・電力設定でも温度が以前より上がったとき。グリスの劣化のほか、クーラーのネジの緩みやファンのほこりも同時に疑います。
- 高負荷でスロットリングが頻発するようになったとき。固定の緩みやケース内のエアフローも合わせて確認します。
Noctuaは、NT-H2をCPU上で使う期間の目安を最長5年、未使用での保管を最長3年としています。これは同社製品の案内で、全グリスの交換周期ではありません。1年半使用した単一構成の結果から、別製品の寿命は判断できません。
NGやってはいけない塗り方
- 大量に塗る。多いほど冷えるわけではなく、はみ出してソケット周りを汚します。
- 指で伸ばす。皮脂や汚れが混ざります。伸ばすならヘラかプラスチックのカードを使います。
- 古いグリスの上から重ね塗りする。古いグリスが残っていると密着が改善しません。CPUとクーラー底面の両方を清掃し、乾燥確認後に新しいグリスを塗ります。
- クーラーを横にずらして押し付ける。グリスが偏る原因になります。真上から載せます。
- 液体金属を普通のクーラーに使う。メーカーは電気を通すと明記し、アルミのクーラーには使えないとしています。はみ出しが基板に触れれば故障につながるため、普通の組み立てには向きません。
FAQよくある質問
まとめまとめ|グリスは定番で足り、替える理由があるときだけ替える
初めての塗り替えは、Arctic MX-6のような電気を通さない定番品で十分です。高性能グリスは、発熱が大きいCPUや電力を上げた構成で効いてきます。初回の量・配置はCPUと製品の公式指定を優先します。クーラーを外したら、両接触面を清掃し、乾燥を確認して新しいグリスで再装着します。
高温やスロットリングが出たら、室温・負荷・電力設定、クーラーの固定、保護フィルム、ファン・ポンプと通風を先に確認します。温度だけを理由にグリスを足さず、外す必要があれば清掃・乾燥・再塗布を一組で行ってください。
初回はArctic MX-6かNoctua NT-H1で足ります。1年半後の交換で小差だった結果は、測定した1構成・各条件3回の範囲です。全グリスの寿命や性能差には一般化せず、高温の原因を切り分け、外したら清掃・乾燥後に新しく塗り直してください。液体金属は通常の組み立てでは選びません。
出典:Noctua FAQ「熱伝導率を公表しない理由」、Noctua NT-H1とNT-H2の性能比較、Noctua NT-H2 仕様、ARCTIC MX-6 製品ページ、Thermal Grizzly Conductonaut Extreme 製品ページ、AMD Ryzen 7 9800X3D 製品仕様、Intel ARK Core Ultra 9 285K 製品仕様。Ryzen 9000の最大動作温度は9600X・9700X・9850X3D・9900X3D・9950X3Dの各製品ページも確認しています。



