DirectX 12レイトレのVRAM90%削減は本当か|減るのは加速構造だけ、ゲームのVRAM不足は直らない【2026年11月】
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減るのは加速構造のメモリだけ
「DirectX 12のレイトレーシングでVRAM使用量が90%減る」という見出しが広まり、VRAM 8GBや12GBのグラボでも重いゲームが動くようになるのか、と気にする人が増えています。
結論から言うと、ゲームのVRAMが9割減る話ではありません。90%は、Microsoftが配布するテスト用サンプルで測った、レイトレーシング用データ(加速構造)のメモリの減り方です。7,519MiBが774MiBになった一方、ビルド時の作業用メモリ(スクラッチ)は逆に増えています。
Microsoft自身が「ゲームでこの規模の改善を期待しないでほしい」と書いていて、製品版のゲームで近い技術を使った例(Alan Wake 2)でも、減ったVRAMは約1GBです。VRAMが足りなくて困っているなら、この更新を待たずに、足りない原因を切り分けて設定かグラボを選ぶのが現実的です。
目次
要点90%の正体は「加速構造」の7,519MiB→774MiB
Microsoftが2026年10月28日にAgility SDK 1.722 Previewで公開したClustered Geometryのサンプルを、Radeon RX 9070で動かした結果です。指標は「加速構造のメモリ(TLAS込みの合計)」で、7,519MiBから774MiB(89.7%減)。サンプルの絵は確認用の簡素な素材(programmer art)です。
加速構造は、光線がどの三角形に当たるかを素早く調べるためにVRAMへ置くデータです。テクスチャやフレームバッファ(画面に出す画像の置き場)とは別に確保されるため、減ったのはVRAMの使い道のうちの1つにあたります。仕組みと対応GPUの一覧はAgility SDK 1.620と1.722 Previewの違いにまとめています。
内訳減ったのは動く物体の分で、作業用メモリは増えた
Microsoftの表を静止している分と動いている分に分けると、削減の中身が見えます。差し引きは計算した値です。
| 項目 | 従来のBLAS再構築 → Clustered Geometry | 変化 |
|---|---|---|
| アニメーションする分の加速構造 | 6,794MiB → 244MiB | 96.4%減(6,550MiB減) |
| 静的な分の加速構造 | 723MiB → 527MiB | 27.0%減(196MiB減) |
| 加速構造の合計 TLAS込み | 7,519MiB → 774MiB | 89.7%減(6,745MiB減) |
| 静的ビルドの作業用メモリ | 1.83MiB → 526MiB | 増加 |
| アニメーションのビルドの作業用メモリ | 8.25MiB → 179MiB | 増加 |
削減量6,745MiBのうち、約97%(6,550MiB)はアニメーションする側です。毎フレーム作り直す大きな加速構造を、再利用できる小さな塊(クラスター)に置き換えた効果が、そのまま数字に出ています。静止した形状は27%減にとどまります。
一方で、ビルド時の作業用メモリは、静的ビルドで1.83MiBから526MiB、アニメーションで8.25MiBから179MiBへ増えました。VRAM全体の節約額は、この増加分を引いて見る必要があります。
サンプルの説明には、測定が1つの構成のものであり、設定・負荷・GPUで結果は変わるとあります。さらに「ゲームがこの規模の改善になると考えないでほしい。これはテスト用の遊び場にすぎない」と大文字で書かれています。レイトレーシングの時間が延びても、フレームごとのシーン構築の節約が上回る場合がある、という程度の効果を見込む書き方です。
実ゲーム製品版に近い例では、減ったVRAMは約1GB
Clustered Geometryと同じ考え方を製品版で使っているのが、NVIDIA独自APIのRTX Mega Geometryです。NVIDIAは今回のDirectX 12の標準APIを、RTX Mega Geometryの標準化と位置づけています。
Alan Wake 2は、2025年初頭のアップデート1.2.8でこの技術を取り入れました。Remedyは形状を増やさず、既存の素材を効率化する使い方を選んでいます。RTX 4090で1.2.8と導入前の1.2.7を比べた海外の計測では、最高設定・パストレーシング有効の条件で、ネイティブ4Kでも4K+DLSS Qualityでも、VRAMは約1GB減り、fpsは約13%上がりました。
| 比べるもの | 条件 | VRAMの減り方 |
|---|---|---|
| Microsoftのサンプル | RX 9070、確認用の素材、毎フレーム再構築と比較 | 加速構造が7,519MiB→774MiB |
| Alan Wake 2 RTX Mega Geometry | RTX 4090、4K、最高設定・パストレーシング、既存素材に適用 | 約1GB減 |
サンプルが7GB近く減ったのは、毎フレーム作り直す前提の従来方式との比較だったからです。実際のゲームは、すでに加速構造の更新を工夫して作られています。そのため、同じ技術を入れても減る量は1GB前後にとどまりました。
減ったメモリの使い道は、開発側が決めます。Alan Wake 2は効率化に使いましたが、形状をさらに精細にする使い方も選べます。精細化に振れば、VRAMもfpsも節約分を使い切る可能性があります。
対象対象GPUは限られ、ゲームの採用はこれから
標準APIの新機能を試せるのは、NVIDIAの全RTX GPU、AMDのRadeon RX 9000シリーズ、IntelのArc BシリーズとCore Ultra(200V・Series 3)です。RX 7000とArc Aは、新DXR機能の対象欄にありません。
ゲームが使うには、1.722 Previewのヘッダーとランタイム、対応ドライバー、Windowsの開発者モードが必要です。製品版のゲームが標準APIで使える形になるのはRetailに入ってからで、Microsoftは時期を示していません。「できるだけ早くRetailへ進めたい」という趣旨で、そのために開発者のフィードバックを求めています。
- レイトレーシングやパストレーシングをオンにして遊ぶ
- 動く物体が多く、加速構造の更新が重いゲーム
- 対応GPUと、新機能を採用したゲームの組み合わせ
- レイトレーシングをオフにして遊ぶ(加速構造を使わない)
- VRAMを使い切る原因がテクスチャや解像度の場合
- RX 7000・Arc AなどPreview対象外のGPU
8GB・12GBVRAM不足の原因を先に切り分ける
VRAMが足りないゲームでは、レイトレーシング用のデータが原因とは限りません。テクスチャの品質、解像度、フレーム生成などもVRAMを使うため、何が大きいかはゲームと設定で変わります。次の手順で確かめられます。
- 同じ場面でレイトレーシングをオン・オフして比べます。タスクマネージャーの「パフォーマンス」→GPUで、「専用GPUメモリ」の使用量を見ます。差が小さいなら、加速構造は主因ではありません。
- テクスチャ品質を1段下げて、同じ場面で比べます。こちらの減り方が大きければ、VRAMの主な使い道はテクスチャです。
- 差が大きかった項目から設定を落とします。8GBで重いゲームの落とす順番は、Phantom Blade Zeroの8GB設定が実例です。
それでも足りないなら、VRAM容量そのものを増やすのが確実です。型番ごとの搭載量はグラボ型番別VRAM容量一覧、テクスチャ側のVRAMを減らす技術はニューラルテクスチャ圧縮の解説で確認できます。
GPU選びRT重視で選ぶなら容量の余裕を取る
今回の更新を理由に買い替えを延ばす必要はありません。新機能の対象世代で、VRAMに余裕のあるカードを選ぶと、対応ゲームが出たときにも設定を落とさずに済む可能性があります。
まとめ90%減はサンプルの数字、VRAM不足は原因から直す
MicrosoftのDXR更新で9割減ったのは、Radeon RX 9070のテスト用サンプルにおける加速構造のメモリ(7,519MiB→774MiB)です。削減の約97%はアニメーションする分で、ビルド時の作業用メモリは増えました。ゲーム全体のVRAMが9割減る話ではありません。
製品版に近い例のAlan Wake 2(RTX Mega Geometry)では、RTX 4090・4Kで約1GB減でした。標準APIの新機能は、Preview段階でRetailの時期も未定です。VRAMが足りないなら、レイトレーシングのオン・オフとテクスチャ品質の比較で原因を絞り、設定を落とすか容量の多いグラボを選ぶのが先です。
VRAM 90%減は、加速構造メモリのサンプル値。ゲームで期待できるのは1GB前後の例で、8GB・12GBの買い替えは待たなくてよい。
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出典公式資料と計測
出典:Microsoft DirectX Developer Blog「[PREVIEW] Raytracing: Clustered Geometry, Partitioned TLAS, Indirect Acceleration Structure Builds」 / Microsoft DirectX Developer Blog「Announcing Agility SDK 1.620 Retail and 1.722 Preview」 / Microsoft DirectX-Specs「DirectX Raytracing (DXR) Functional Spec, Part 2」 / NVIDIA「Clustered Geometry and Partitioned TLAS Launch in DirectX 12, Standardizing RTX Mega Geometry」 / Tom’s Hardware「Testing Nvidia’s RTX Mega Geometry tech」 / AMD「AMD Software: Agility SDK Developer Preview Edition 26.20.12.01」 / Intel「Intel Graphics Beta Preview Feature Driver」





