ニューラルテクスチャ圧縮とは?NTC・TSNC・NTBCの違いと対応GPU、VRAM不足への効果
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NTC・TSNC・NTBCの違いと、VRAM不足への効き方
「ニューラルテクスチャ圧縮でVRAM 8GBの不足は解消するのか」。この疑問で最初に分けておきたいのが、小さくなる対象です。ゲームのインストール容量やロード時の転送量が減る方式と、描画中にVRAMへ置くテクスチャまで減る方式があります。
答えは方式次第です。NVIDIAのNTCは、公式の計算例で2048×2048・8チャンネルの材質が、BCnの12MBから2.5MBへ縮みます。ただしロード時にBCnへ戻す使い方ではVRAMは12MBのままで、描画時に復号する使い方でVRAMも2.5MBになります。
圧縮率はテクスチャだけの数字で、ゲーム全体のVRAM使用量が同じ割合で減るわけではありません。ジオメトリやフレームバッファは別枠です。しかも対応にはゲーム側の組み込みが必要なので、今のGPU選びではVRAM容量を優先するのが安全です。
仕組みニューラルテクスチャ圧縮とは
ゲームのテクスチャは、色・法線・粗さ・金属感・遮蔽といった複数の画像(チャンネル)で1つの材質を作っています。従来はこれを1枚ずつBCnというブロック圧縮で小さくしてきました。BCnは圧縮率が形式ごとに固定で、GPUが専用回路で高速に読み出せる点が強みです。
NVIDIAのNTCは、同じ材質のテクスチャをまとめて扱います。元データを、小さなニューラルネットワーク(デコーダ)の重みと、潜在特徴と呼ばれるデータの塊に変換して保存します。表示するときは潜在特徴を読み、デコーダに通して色を作り直します。チャンネルは最大16まで1セットにでき、一般的なPBR材質は9〜10チャンネルです。
得意なのは、アルベドの模様と法線の凹凸のように、チャンネル同士に相関があるテクスチャです。公式の説明では、8チャンネルの材質(生データで1テクセル64ビット)をBCnにすると24ビットで、NTCはBCn並みの画質(PSNR 40〜50dB)を約5ビットで得られる例が示されています。約4.8倍の差です。
非可逆圧縮です:NTCは固定のデータ量で元の画像に近づける非可逆圧縮です。公式の品質ガイドは、PSNR 35〜40dBを多くの用途で十分、50dBを知覚的に無損失と説明しています。圧縮の設定次第で、チャンネル間の特徴が混ざるなどの誤差が出ます。
違いNTC・TSNC・NTBCの違い
3つはどれも「ニューラルネットワークでテクスチャを小さくする」点が共通で、復号のタイミングと対象が違います。比べるときは、圧縮率の数字より先に「どの段階の容量が減るのか」を見ます。
| 方式 | 復号のタイミング | 小さくなるもの | 動作条件 |
|---|---|---|---|
| NVIDIA NTC (On Load) | ロード時に展開し、BCnへ変換 | ディスク容量・転送量。VRAM上は同等のBCnと同じ | 最低はShader Model 6。推奨はRTX 2000番台以降 |
| NVIDIA NTC (On Sample) | 描画中、テクスチャを参照するたびに復号 | ディスク容量・転送量・VRAMのテクスチャ | 最低はShader Model 6だが非常に低速。推奨はRTX 4000番台以降 |
| NVIDIA NTC (On Feedback) | 画面に映る部分のタイルだけをBCnへ展開 | 常にBCnを全面展開する場合よりVRAMを節約(公式テストで最大6倍) | Sampler Feedbackが必要。公式サンプルはWindowsのDirectX 12のみ |
| Intel TSNC | Cooperative Vectorsで復号する研究・デモ | テクスチャセットの保存容量とVRAM | 公開サンプルはAgility SDK 1.717-previewを使用。Arc A/B系列とCore Ultra シリーズ2が対象と説明 |
| AMD NTBC | ロード時に通常のブロック圧縮テクスチャへ復元 | ディスク上の保存容量(実験で最大約70%減) | ゲーム側のシェーダー変更が不要な方式として提案された研究 |
※NTCはNVIDIA公式のREADME・Renderer資料、TSNCはIntelの公式解説と研究論文、NTBCはAMDの研究論文をもとに整理しています。方式ごとに元データ・画質の条件が異なるため、圧縮率の数字どうしは直接比べられません。
IntelのTSNCは、Texture Set Neural Compressionの略です。Intelは2025年に、既存のブロック圧縮形式で潜在特徴を保存する研究を公開しています。GPUのテクスチャフィルタリング機能をそのまま使える点が特徴で、4Kのテクスチャセット(9チャンネル)を1080pで異方性フィルタリング付きで描画し、1セット28MB、Arc B580で0.55msと報告されています。詳しい発表内容は、Intel TSNCの解説記事にまとめています。
AMDのNTBCは、ニューラルネットワークでブロック圧縮テクスチャを作る研究です。ゲーム側は通常のBCテクスチャとして扱えるため、シェーダーを変えずに済みます。その代わり、小さくなるのはディスク上の保存容量で、論文は最大約70%の削減を報告しています。VRAM使用量が70%減るという意味ではありません。
VRAMどの方式でVRAMが減るのか
NVIDIAの公式READMEは、2048×2048・8チャンネルの材質(MIPチェーンは除外)で、段階ごとの容量を示しています。BCnはディスク・転送・VRAMのすべてが12MBです。NTCは、ディスクと転送がどちらも2.5MBになります。
分かれ目は、復号をいつ行うかです。On Loadはロード時にBCnへ戻して持つので、VRAMにあるのは普通のBCnと同じ12MBです。ダウンロード容量やSSDからの読み出しが軽くなっても、VRAMの不足は解けません。On Sampleは圧縮したまま持ち、参照のたびに復号するため、VRAMも2.5MBです。
公式サンプルにはOn Feedbackもあります。Sampler Feedbackで今の画面に必要なタイルだけを調べて、そこをBCnに展開する方式です。公式のテストでは、全面をBCnで置く場合より最大6倍のメモリ節約になり、その計算には圧縮したNTCテクスチャがVRAMに載っている分も含まれています。一方でGPUとCPUの処理負荷が増えます。
テクスチャの削減率とゲーム全体は別物:公式サンプルでの検証では、On Sampleでテクスチャメモリが約85%減りました。ただしこれはテクスチャに限った数字です。ゲームのVRAMにはジオメトリ、レンダーターゲット、レイトレーシング用のデータも載っています。「VRAMが85%減る」とは読み替えられません。
対応GPU対応GPUの条件
NVIDIAのRTXNTCは、方式ごとに最低条件と推奨条件が分かれています。「RTXでなければ動かない」わけではありません。
| 処理 | 最低条件 | 推奨GPU |
|---|---|---|
| 圧縮(制作側) | RTX 2000番台 | RTX 4000番台以降 |
| On Load(ロード時復号) | Shader Model 6対応GPU | RTX 2000番台以降 |
| On Sample(描画時復号) | Shader Model 6対応GPU(動作するが非常に低速) | RTX 4000番台以降 |
※NVIDIA RTXNTC公式READMEのSystem Requirementsより。
公式は、SDKの機能を検証した最も古いGPUとして、GeForce GTX 1000番台、Radeon RX 6000シリーズ、Intel Arc Aシリーズを挙げています。非RTXでも、DP4aや通常の整数演算によるフォールバックで動作します。ただし「動く」と「描画時に使える速さが出る」は別で、推奨はOn SampleでRTX 4000番台以降です。
速い経路は、行列演算を高速化するCooperative Vectorsです。DirectX 12ではSM 6.10のLinAlgに統合され、Microsoftは2026年4月に、SM 6.10のプレビューとして発表しています。RTXNTCのv0.10 Betaの時点では、DirectX 12でLinAlgを使うにはプレビュー版のドライバーとAgility SDK、Windowsの開発者モードが必要で、製品の出荷用ではありません。Vulkan版はNVIDIAのR570以降のドライバーで使えます。
Intelの解説は、Arc AとB系列、Core Ultra(シリーズ2)の内蔵GPUをCooperative Vectorsの対象としています。公開サンプルは、Agility SDK 1.717-previewを使います。
負荷と画質復号の負荷と画質の限界
描画時に復号するOn Sampleは、VRAMを節約する代わりにフレームタイムを使います。公式サンプルにIntel Sponzaのシーンを加えた検証では、BCnへ変換する場合に対するOn Sampleの追加コストは次の通りでした。
| GPU・解像度 | 追加のフレームタイム | 備考 |
|---|---|---|
| RTX 5060・1080p | 約0.60〜0.70ms | 条件によって幅がある |
| RTX 5070・1440p | 約0.50〜0.70ms | 条件によって幅がある |
| RTX 5070・4K | 約1.20ms | 解像度が高いほど増える |
※2026年4月11日公開の検証記事(出典欄)の測定。Ryzen 7 9800X3D、Windows 11 25H2、NVIDIA Developer Driver 590.26。描画処理の少ない公式サンプルでの値で、実ゲームの結果ではありません。
1msを60fps(1フレーム約16.7ms)に当てはめると、1フレームの約6%です。ただし描画処理の重い実ゲームでは、フレームタイムが長いぶん相対的な割合は小さくなると、検証記事も述べています。ここで注意したいのは、ゲーム側が影響する範囲です。復号の重さは、材質の数や画面に映るテクスチャの量で変わります。
画質は「劣化ゼロ」ではありません。NVIDIAの品質ガイドは圧縮誤差を前提に、目標のPSNRを決めて圧縮量を調整する運用を説明しています。AMDの研究も、色の劣化やブロック状の誤差、細部のぼけを課題に挙げています。
購入判断GPU選びにどう影響するか
ニューラルテクスチャ圧縮の効果は、GPUを買った時点で自動的に得られるものではありません。ゲームの開発側が材質をNTCなどの形式へ変換し、描画の仕組みに組み込む必要があります。どのタイトルが対応するかは、今のところ判断材料にできません。
- ゲームの容量やロード時の転送量を減らす用途に関心がある人
- RTX 4000番台以降を持っていて、新技術の対応タイトルを待てる人
- 開発者として、SDKの動作を自分のGPUで試したい人
- 今遊んでいるゲームのVRAM不足を、圧縮技術で解決したい人
- 8GBのGPUを買い足す理由に、将来の圧縮技術を使いたい人
- テクスチャの削減率を、そのままゲーム全体のVRAM削減率として見積もる人
今のゲームでVRAMが足りないなら、設定を下げるか、容量の大きいGPUを選ぶのが確実です。症状の見分け方と対処は、VRAM不足の見分け方と対処法で整理しています。1080p〜1440pで余裕を持たせたいなら16GBが目安になります。
FAQよくある質問
まとめまとめ|小さくなるのは方式しだい。VRAMは今は容量で確保する
ニューラルテクスチャ圧縮は、テクスチャを小さなニューラルネットワークで表す技術です。NTCのOn Loadはディスクと転送を、On SampleとOn FeedbackはVRAMも減らします。IntelのTSNCは保存容量とVRAM、AMDのNTBCは保存容量が主な対象です。
数字を見るときは、テクスチャの削減率とゲーム全体のVRAM使用量を分けます。今のGPU選びには、まだ圧縮技術を織り込まず、必要なVRAM容量で選ぶのが安全です。
ニューラルテクスチャ圧縮は、方式ごとに「何が小さくなるか」が違う技術です。対応タイトルとゲーム側の実装が見えるまでは、VRAM不足への備えはGPUの容量で確保するのが堅実です。
出典:NVIDIA「RTXNTC」公式GitHub、RTXNTC README(容量比較・動作要件)、RTXNTC 品質ガイド、RTXNTC Renderer資料、Microsoft DirectX「D3D12 LinAlg preview」、Intel「Cooperative Vectors demo」、Intel研究「Hardware Accelerated Neural Block Texture Compression with Cooperative Vectors」、AMD研究「Neural Texture Block Compression」、Tom’s Hardware「Benchmarking Nvidia’s RTX Neural Texture Compression」






