RTX Mega Geometryとは|2.0でVRAMへ必要な分だけ読み込み、fpsが上がるゲームと下がるゲーム【2026年9月】
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RTX Mega Geometryは、レイトレーシング用の当たり判定データ(BVH)を三角形のクラスタ単位で組み立て直すNVIDIAの技術です。
2026年9月22日、NVIDIAはRTX Mega Geometry 2.0を正式に案内しました。2.0では、細かいジオメトリを必要な分だけVRAMへ読み込むCluster LODが加わっています。
同じ技術でも、既存の素材に使えばfpsが上がり、形状の精細化に使えばfpsが下がります。Alan Wake 2とNVIDIAのデモの実測値から、対応ゲームでどちらに振れるのかを整理します。
RTX Mega Geometryは、ゲーム内の膨大な三角形を最大256個ずつのクラスタにまとめ、レイトレーシングの当たり判定データ(BVH)をクラスタ単位で組み立て直す技術です。組み立て直しの手間が大きく減るため、これまでレイトレーシングに回せなかった細かい形状まで影や反射に反映できます。
効き方は、ゲーム側の使い方で逆になります。Alan Wake 2は既存の素材のまま効率化に使い、RTX 4090で約13%速くなり、VRAMも約1GB減りました。一方、Naniteの細かい形状をそのまま影や反射に使うNVIDIAのデモでは、RTX 5090でも2割以上fpsが下がります。
2026年9月22日に案内された2.0では、シーン全体のジオメトリをVRAMに置かなくても済む仕組みが加わりました。ここでは、2.0で何が変わったか、実測値から見た効き方、対応ゲーム、VRAM 8GBのグラボで期待してよい範囲を順に整理します。技術の全体像はThe Witcher 4のRTX Mega Geometry採用解説でも扱っています。
目次
01 / 2.0RTX Mega Geometry 2.0で何が変わったか
2.0の要点は、シーンのジオメトリを全部VRAMに載せる前提をやめたことです。GitHubで公開されているRTX Mega Geometry SDKのリリースノートには、Cluster LODによって「シーンの元ジオメトリがVRAMに収まる必要がなくなった」と明記されています。
SDK 2.0.0がGitHubに公開されたのは2026年8月28日で、9月9日公開のRTX Kit 2026.3にも収録されました。9月22日のNVIDIA開発者ブログは、公開済みのSDKを改めて正式に案内したものです。NVIDIAはGDC 2026(3月)の時点で「Mega Geometryの最新成果を年内にオープンソース化する」と予告しており、2.0はその約束の中身にあたります。
| 項目 | 1.x(Cluster Tessellation) | 2.0で追加(Cluster LOD) |
|---|---|---|
| 対象の形状 | サブディビジョンサーフェス(規則的に細分化できる曲面) | 写真測量モデルやNanite級の高密度メッシュなど、規則性のない形状 |
| 三角形の用意の仕方 | 実行中に細分化して生成する | 事前にクラスタへ分けてキャッシュ(_nvsngeo)に保存し、初回読み込み時だけ処理する |
| 細かさの切り替え | 細分化の量を調整する | 連続的なLOD階層から、クラスタごとに毎フレーム選ぶ |
| VRAMの使い方 | 生成したジオメトリをVRAMに置く | 必要なクラスタだけを固定サイズのメモリプールへ読み込む |
VRAMが足りなくなると形状を粗くして収める
2.0で読者に最も関係するのは、メモリプールが埋まりかけたときの挙動です。リリースノートには「プールが逼迫している間はLOD判定の許容誤差を引き上げ、予算を超えるシーンはスラッシングせずに粗い詳細度で落ち着く」とあります。
スラッシングとは、読み込んだデータをすぐ追い出し、また読み込む処理が延々と続く状態です。PCIe転送が詰まり、カクつきの原因になります。2.0の参照実装は、VRAMが足りない場面でfpsを崩す代わりに、影や反射に使う形状の細かさを先に下げる設計になっています。
この仕組みの規模は、NVIDIAが公開しているZorahデモのデータで分かります。元データだけで約16.3億、インスタンスを含めると約189億の三角形があり、NVIDIA自身が「事前読み込みは不可能で、ストリーミングが必須」と注記しています。
見えない形状は読み込まない、BVHは使い回す
LODの選択には、カメラの視野外を除くフラスタムカリングと、手前の物体に隠れた部分を除く階層Zオクルージョンカリングの結果が反映されます。カメラの近くにある精細な岩でも、建物の裏に隠れていれば最高品質で読み込む必要はありません。
クラスタの組み合わせが変わるたびにBVHを作り直すと、それ自体が新しいボトルネックになります。2.0はBLASの共有・キャッシュ・マージを標準で有効にし、同じ木や岩を大量に配置しても、BVHの構築コストが配置数に比例して増えないようにしています。
出典:NVIDIA Technical Blog(2026年9月22日) / NVIDIA-RTX/RTXMG Releases(v2.0.0) / nvpro-samples/vk_lod_clusters(Zorahのデータ規模)
2.0はゲームが実装して初めて効くSDKの公開だけで既存のゲームやドライバーの挙動は変わらず、プレイヤー側で設定するものもありません。VRAMが足りないときに形状を粗くする挙動もNVIDIAの参照実装の設計で、各ゲームが同じ実装を採るとは限りません。
02 / 仕組みBVHをクラスタ単位で組み立てる
レイトレーシングでは、光線がどの三角形に当たるかを素早く調べるため、BVH(Bounding Volume Hierarchy)というツリー型のデータを使います。BVHは、シーン全体を束ねるTLASと、個々の物体の形状を持つBLASの2階層でできています。
形状が動いたり細かさが変わったりするたびにBLASを三角形単位で作り直すと、三角形が多いシーンほど構築の負担が重くなります。Naniteのように細かさを刻々と切り替える描画と、従来のレイトレーシングの相性が悪かったのはこのためです。
RTX Mega Geometryは、三角形を最大256個ずつのCLAS(Cluster Level Acceleration Structure)にまとめ、BLASをクラスタの組み合わせとして組み立てます。一度作ったクラスタは複数のフレームや物体で使い回せます。NVIDIAは、シーンの更新が従来の最大100倍速くなると説明しています。
DLSSとは役割が違うDLSSは画面のピクセルを生成・補完する技術で、Mega GeometryはBVHの構築を担います。競合する技術ではなく、対応ゲームではパストレーシング、DLSS Ray Reconstructionと組み合わせて使われています。
03 / 実測既存素材なら速く、精細化に使えば重くなる
RTX Mega Geometryの効果は、既存の素材に適用すれば性能が上がりVRAMが減り、代用メッシュをやめて精細さを上げる使い方では性能を支払う、という2通りに分かれます。実測値もこの区分どおりに出ています。
Alan Wake 2(既存素材の効率化)
Remedyは、2025年初頭のアップデート1.2.8でMega Geometryを導入しました。形状を増やさず、既存の素材のまま効率化に使っています。
RTX 4090で1.2.8と導入前の1.2.7を比べた海外の検証では、最高設定かつパストレーシング有効の条件で、ネイティブ4K、4K+DLSS Qualityのどちらでも約13%速くなり、VRAMは約1GB減りました。
GPUの世代を変えて比べた別の検証では、古い世代ほど効きが大きい結果が出ています。RTX 2080 Tiはネイティブ1080pで13%、RTX 3080は10%向上し、RTX 4090と5090はおよそ1%にとどまっています。
突出しているのはRTX 4060の最大60%向上です。VRAMの削減量は約300MBで、8GBのVRAMから溢れていた分が収まったことによる伸びでした。ギリギリで溢れていたケースに限られる数字で、8GBのグラボなら一律に6割速くなるわけではありません。
同じRTX 4090でも、4K・パストレ最高設定の計測では+13%、GPU世代比較の計測では約+1%でした。どちらかが誤りなのではなく、計測シーンと解像度が違います。形状の負荷が重いシーンほど伸びが大きくなるため、上位GPUでの差は「シーン次第で数%〜1割強」と見ておくのが妥当です。
RTX Bonsai Diorama Demo(精細化に使うケース)
NVIDIAが一般公開しているRTX Bonsai Diorama Demoは、Unreal Engine 5のNaniteメッシュを、細部を省かずにそのままパストレーシングで描くデモです。Mega Geometryを切ると影や反射に簡略化した代用メッシュが使われ、葉が欠けたり影が崩れたりします。
この使い方では、Mega Geometryを有効にするとfpsが下がります。海外の計測では、RTX 5090で1080p 23%、1440p 24%、4K 21%、RTX 5070で1080p 27%、1440p 26%の低下でした。デモの推奨GPUとされているRTX 5060は、DLSSとフレーム生成なしでは平均30fpsを下回ります。
| 使い方 | fpsとVRAMへの影響 |
|---|---|
| 既存素材の効率化(Alan Wake 2) | fpsが上がりVRAMが減る。RTX 4090で+13%・約1GB減、RTX 4060で最大+60%・約300MB減 |
| Naniteの形状をそのままRTへ(Bonsai Demo) | fpsが2割強下がる。引き換えに影・反射の欠けや崩れが消える |
| 発売前ビルドのGears of War: E-Day | 約10%低下(海外の先行計測、RTX 5090・4K・DLSS Performance) |
出典:Tom’s Hardware(2026年5月9日) / Digital Foundry:Alan Wake 2 RTX Mega Geometry Tested(2025年2月)
E-Dayの先行計測と、NaniteとFallback Meshの関係は『Gears of War: E-Day』のRTX Mega Geometry解説で詳しく扱っています。
04 / 対応タイトルAlan Wake 2・Control Resonant・E-Day・Witcher 4
2026年9月時点で、RTX Mega Geometryの採用が公表されている主なゲームは次の4本です。パストレーシングやDLSS 4.5に対応するゲームは多数ありますが、Mega Geometryまで使うゲームはまだ限られます。
| タイトル | 発売日 | Mega Geometryの使い方 | 備考 |
|---|---|---|---|
| Alan Wake 2 | 2023年(1.2.8で対応) | 既存素材の効率化 | 最初の実装。fps向上とVRAM削減 |
| CONTROL Resonant | 2026年9月24日 | パストレーシングと併用 | 発売時点で対応。DLSS 4.5 Dynamic MFG・Ray Reconstructionにも対応 |
| Gears of War: E-Day | 2026年10月6日 | NaniteのジオメトリをRTへ正確に反映 | NVIDIAはNaniteの形状を正確にレイトレーシングする初の実装と説明 |
| The Witcher 4 | 2028年目標 | 植生向けのLODシステム | CD PROJEKT REDとの共同開発 |
E-Dayは、Unreal Engine 5のNaniteとMega Geometryを組み合わせた最初の製品になります。ゲームごとに効率化と精細化のどちらに使っているかが違うため、fpsへの影響は発売後の検証を見て判断するのが確実です。
出典:NVIDIA:CONTROL Resonant Launching September 24th / NVIDIA:CONTROL Resonant, Gears E-Day Game Ready
05 / Witcher 45兆超の三角形をRTX 5090で4K 80fps前後
GDC 2026では、The Witcher 4向けに開発中のRTX Mega Geometry Foliage Systemが公開されました。森の植生に特化したLODシステムで、カメラの動きに応じて必要な部分だけを更新し、LODの切り替わりが目に見える「ポップイン」を起こさずに描きます。
デモは5km四方の地形に、植物6,000万本と樹木100万本を置いています。針葉1本単位まで形状で作り込み、大きな木は1本で1,000万ポリゴンを超えます。NVIDIAは、フルLODに展開すると5兆を超える三角形になると説明しています。
- シーン規模|5km×5kmの地形、植物6,000万本・樹木100万本
- フルLOD換算|5兆トライアングル超
- RTX 5090|4K・パストレーシング・DLSS Quality で約80fps
- RTX 4070|1440p・DLSS Quality で58fps前後
- 遠景の扱い|Opacity Micromapで軽量に表現(RTX 40/50シリーズはハードウェア処理)
2.0のCluster LODと同じく、「全部を最高精細で持たず、見える範囲と距離に応じて細かさを選ぶ」という発想です。Witcher 4は2028年の発売を目標にしており、デモの数値は開発中のものです。
出典:NVIDIA:GeForce @ GDC 2026 / VideoCardz:The Witcher 4 RTX Mega Geometry demo
06 / VRAMVRAM 8GBのグラボは救われるのか
結論から言うと、Mega Geometryを理由に8GBのグラボを選ぶ判断は勧められません。RTX 4060の+60%は「VRAMから溢れていたAlan Wake 2が収まった」という条件付きの数字で、精細化に使うゲームでは逆にfpsが下がります。
2.0のストリーミングで減らせるのは、ジオメトリとそのBVHが使う分だけです。テクスチャ、レンダーターゲット、フレーム生成用のバッファなど、VRAMのほかの使い道はそのまま残ります。VRAMが足りない場合に参照実装が下げるのは形状の細かさなので、8GBのグラボで遊べても、影や反射の精細さは16GBのグラボより先に落ちる設計です。
手持ちのグラボのVRAM容量はグラボ型番別VRAM容量一覧で確認できます。
07 / 標準化DXR 2.0のClustered GeometryとAMD DGF
MicrosoftのDirectX Raytracingの次期仕様には、Clustered Geometryが機能として定義されています。三角形256個・固有頂点256個までのCLASを部品にしてBLASを組み立てる仕組みで、Mega Geometryと同じ発想をDirectXの標準APIにしたものです。
仕様書は、この機能群が既存のレイトレーシング対応ハードウェアでもうまく動くと説明しています。DXR Tier 1.1のハードウェアの一部は、ドライバー更新だけで対応できる可能性もあります。標準APIに入れば、NVIDIA専用のSDKを使わないゲームでも同じ手法を採れるようになります。GDC 2026で発表されたDXR 2.0の全体像はDirectX GDC 2026発表の解説にまとめています。
AMDは別の方向から同じ問題に取り組んでいます。DGF(Dense Geometry Format)は、ジオメトリをブロック単位で圧縮する形式で、テクスチャ圧縮のジオメトリ版にあたります。最大64頂点・64三角形のメッシュレットを128バイトのブロックに収め、将来のRDNA世代でハードウェア対応を予定しています。
出典:Microsoft:DirectX Raytracing Functional Spec, Part 2 / AMD GPUOpen:Dense Geometry Compression Format SDK
LODという仕組みそのものは、ゲームの設定画面にある「描画距離」「LOD」の項目とも地続きです。設定での効き方はLOD・描画距離の解説で扱っています。
08 / 選び方パストレーシング前提ならVRAM 16GBを選ぶ
Mega Geometry対応ゲームをパストレーシングで遊ぶ前提なら、効率化型のゲームでも精細化型のゲームでも困りにくいのはVRAM 16GBのモデルです。予算別に2枚を挙げます。
09 / FAQRTX Mega Geometryのよくある質問
RTX Mega Geometryは、BVHをクラスタ単位で組み立てることで、これまでレイトレーシングに回せなかった細かい形状を影や反射に使えるようにする技術です。2.0のCluster LODで、シーン全体をVRAMに載せず、必要な細かさだけを読み込む段階に進みました。
fpsへの効き方はゲームの使い方で逆になります。Alan Wake 2のような効率化ではRTX 4090で+13%・VRAM約1GB減、Naniteの形状をそのまま使う精細化ではRTX 5090でも2割強の低下です。
すでに持っているグラボを買い替える理由にはなりません。これから選ぶなら、VRAMはMega Geometryに頼らず16GBを基準にするのが確実です。次に見るべきは、発売されたCONTROL Resonantと10月6日発売のE-Dayで、Mega Geometryのオンとオフでどれだけfpsと画質が変わるかです。





