中国YMTCがNAND出荷シェアで世界3位に|キオクシアと公開値は同じ14%でも「逆転」と言える理由、AIサーバー向けは出荷の48%
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キオクシアと公開値は同じ14%でも「逆転」と言える理由、AIサーバー向けは出荷の48%
出典:Counterpoint Research「Server-Led eSSDs Hit 48% of NAND Shipments; YMTC Enters Global Top Three」、TrendForce「NAND Flash Supply Growth to Outpace Demand in 2027」、米商務省BISEntity List追加公告(2022年12月)にもとづきます。本記事の情報は2026年8月14日時点のものです。
2026年第2四半期の世界NAND市場で、中国のYMTCが出荷ビットシェアで初めて世界3位に浮上し、前四半期まで3位だったキオクシアが4位へ後退しました。Counterpoint Researchによると、Samsungが25%で首位、SK hynixグループ(SK hynix単体とSolidigmの合算)が22%で2位、YMTCが14%で3位となっています。
ここで重要なのは、これが「SSDの販売台数シェア」ではなく「NANDフラッシュの出荷ビット量を基準にしたシェア」だという点です。YMTC製SSDが世界の店頭で3番目に売れている、という意味ではありません。さらに、YMTCは出荷ビット量で3位になった一方、売上高ベースでは5位にとどまっています。単純な「中国メーカーの躍進」という構図だけでは説明できない、市場構造そのものの変化が背景にあります。
この記事では、YMTCがキオクシアを逆転した具体的な要因、両社の製品構成の違い、そしてAIサーバー向けSSDが市場を塗り替えつつある大きな流れまで、Counterpoint Researchなどの一次資料にもとづき整理します。
目次
要点まず何が起きたか
順位「14%対14%」でもYMTCが3位になる理由
公開されているCounterpointのグラフでは、YMTCもキオクシアも14%と表示されています。一方、Counterpoint本文では、YMTCがキオクシアを「narrowly edging out(僅差で上回った)」と明記されています。したがって、グラフ上の数値は整数へ丸められており、内部の実数値ではYMTCがわずかに上回ったと考えるのが自然です。
SK hynixグループの22%も、SK hynix本体と傘下のSolidigmを合算した数値です。Counterpointの出荷ビットシェア内訳は、Samsung25%、SK hynixグループ22%、YMTC14%、キオクシア14%、Micron13%、SanDisk11%となっています。Solidigmの出荷ビット量は前四半期比40%増と急伸しており、グループ全体のシェアを押し上げる要因になっています。
背景YMTCが急成長した理由
YMTCのNANDビット出荷量は、前年同期比22%増、前四半期比でも5%増加しました。Counterpointは、世界的なNAND供給不足をYMTCが活用し、中国国内OEMへの供給を広げたことを成長要因として挙げています。
技術面でもYMTCは267層3D NANDを量産しており、独自のXtackingアーキテクチャを使った300層超のNANDも開発中とされています。単に旧世代NANDを大量生産してシェアを伸ばしている、という状況ではありません。なお、YMTCは2022年12月16日付で米商務省BISのEntity Listへ追加されており、対米輸出規制の対象となっています。それでも出荷規模を拡大して世界3位まで上がってきた点は、今回のニュースの背景として押さえておきたいところです。
背景なぜキオクシアはYMTCに抜かれたのか
キオクシアが単純に競争力を失った、という話ではありません。Counterpointによると、キオクシアは現在、NAND出荷量の30%以上をサーバー用途へ振り向けています。ところがサーバー向けSSD価格が上昇したことで顧客側に買い控えが発生し、ビット出荷量の伸びがYMTCを下回りました。
一方のYMTCは、他社がAIサーバーや高採算製品へ生産を振り向けている間に、供給が不足したコンシューマー市場や中国国内OEMへの出荷を伸ばしました。「高価格・高収益のサーバーを取るキオクシア」と「出荷量を伸ばすYMTC」という製品構成の違いが、今回の順位逆転につながっています。
売上出荷は3位でも売上高ベースではキオクシアの方が上
今回もっとも重要な注意点の一つです。YMTCは出荷ビット量では3位になりましたが、売上高ベースでは5位です。Counterpointによると、YMTCはMicronとキオクシアの両社より売上順位が下になっています。
理由は製品構成です。YMTCは比較的単価の低いコンシューマー向けNANDの比率が高く、高価格なデータセンター向けエンタープライズSSDの比率がまだ低いためです。つまり「容量を多く出荷した企業」と「より多く稼いだ企業」の順位が異なります。YMTC自身もこの弱点を認識しているとみられ、2026年後半には製品構成をエンタープライズSSD側へさらにシフトし、世界3位の地位を固める計画だとCounterpointは報告しています。
構造本当の主役はAIサーバー向けSSD
今回のランキング変動以上に大きいのが、NAND市場そのものの変化です。2025年第2四半期には世界のNANDビット出荷の26%だったエンタープライズSSD向けが、2026年第2四半期には48%まで拡大しました。わずか1年間でほぼ倍増しています。Counterpointは、AIワークロードが学習中心から推論中心へ移行し、大容量ストレージやKVキャッシュ用途の需要が急増していることを背景に挙げています。
Counterpointはさらに、2026年末までにサーバー向けSSDが世界のNANDビット出荷の半分以上を吸収すると予測しています。供給逼迫によってコンシューマー向けNANDの平均販売価格(ASP)も過去最高水準まで上昇したとしています。つまり今回の「YMTCがキオクシアを抜いた」という現象も、背景には「NANDメーカー各社がAIサーバー市場へ集中し、PC向けSSDなどの市場構造が変化している」という大きな流れがあります。
動向Samsungのシェア低下も「失速」とは限らない
Samsungは依然25%で首位ですが、2024年第2四半期には32%だったためシェア自体は低下しています。Counterpointは、Samsungが高利益率のDRAMを優先し、NAND生産能力に制約が生じたことを背景として挙げています。
SK hynixグループは22%で2位。特にSolidigmのNANDビット出荷が前四半期比40%増となっており、AIサーバー向け大容量SSD需要の恩恵を強く受けています。今回のランキングは単純な「NAND技術力ランキング」ではなく、各社が限られた製造能力をDRAM、コンシューマーNAND、エンタープライズSSDのどこへ配分したかという経営判断にも大きく左右されています。
見通し2026年は供給不足、緩和は2027年後半から
TrendForceは、2026年のNAND市場を4〜5%の供給不足と予測しています。一方、2027年には中国メーカーの増産などで供給量の伸びが需要を上回り、2027年後半から供給逼迫が徐々に緩和する可能性があるとしています。中国メーカーの世界NANDビット生産シェアは、2027年に約19%まで上昇する見通しです。
この「中国メーカーの供給拡大」というTrendForceの予測は、今回YMTCが世界3位になったニュースと相性のよい追加材料といえます。ただし、TrendForceの一次資料はあくまで2027年後半から需給が緩和する「可能性」を示しているだけで、具体的な製品価格の下落時期までは予測していません。
実際、国内の消費者向けSSD価格には今のところ大きな動きは出ていません。当サイトで継続的に追跡している実勢価格でも、2026年8月時点でGen4 NVMe SSDの1TBは2万5,000円前後、2TBは4万7,000円前後という高止まりの水準が続いています。YMTCの増産効果が店頭価格へ波及するかどうかは、今後の四半期でも注視が必要です。
Q&Aよくある質問
総括まとめ|順位変動の裏にあるAIサーバー市場の拡大
2026年第2四半期、中国のYMTCがNAND出荷ビットシェアで世界3位に浮上し、キオクシアが4位へ後退しました。ただし、これは販売台数ではなく出荷ビット量の順位であり、売上高ベースではYMTCはむしろ5位にとどまっています。キオクシアがサーバー向けの高価格帯へ製品構成を寄せている間に、YMTCが供給不足のコンシューマー市場・中国国内OEM向けの出荷を伸ばしたことが、今回の順位逆転の実態です。
その背景にあるのが、NAND市場全体で進むAIサーバー向けSSDへのシフトです。エンタープライズSSD向けの出荷比率は1年で26%から48%へほぼ倍増し、コンシューマー向けNANDの平均販売価格も過去最高水準まで上昇しています。TrendForceは2026年も4〜5%の供給不足が続くとしており、緩和が見込まれるのは2027年後半からです。「YMTCがキオクシアを抜いた」という一つの順位変動の裏には、NANDメーカー各社がAIサーバー市場へ生産能力を集中させ、PC向けSSDの市場構造そのものが変化しているという大きな流れがあります。
Counterpoint Researchによると、2026年第2四半期の世界NANDフラッシュ出荷ビットシェアで、中国YMTCが14%でキオクシアの14%を僅差で上回り、初めて世界3位に浮上しました(Samsung25%・SK hynixグループ22%に続く順位)。ただし出荷ビット量の順位であり、売上高ベースではYMTCは5位にとどまります。要因はキオクシアがNAND出荷の30%以上をサーバー向けへ振り向け価格上昇による買い控えの影響を受けた一方、YMTCは供給不足のコンシューマー市場・中国国内OEM向け出荷を伸ばしたためです。YMTCは267層3D NANDを量産し300層超のXtacking技術も開発中ですが、2022年12月に米商務省BISのEntity Listへ追加されている企業でもあります。背景にはAIサーバー向けSSDが世界のNAND出荷に占める比率が前年の26%から48%へ急拡大した市場構造の変化があり、TrendForceは2026年も4〜5%の供給不足が続き、緩和は2027年後半からと予測しています。



