MINISFORUM S5正式発表|ファンレスでNVMe SSDを5基搭載、PCIe 4.0 x1でも10GbE NASなら十分?
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ファンレスでNVMe SSDを5基搭載、全スロットPCIe 4.0 x1の理由を検証
出典:MINISFORUM公式「S5 All-Flash NAS」製品ページ、Intel公式「Core 3 processor 304」製品仕様、ServeTheHome「Minisforum S5 All-Flash NAS Shown Based on Intel’s Wildcat Lake Platform」、VideoCardz「Minisforum S5 fanless NAS is official with Core 3 304 and five NVMe slots」、MINISFORUM日本公式ストア「N5 Air」製品ページにもとづきます。
MINISFORUMが、ファンレスのオールフラッシュNAS「S5」の製品ページを公開しました。M.2 NVMe SSDを最大5基搭載でき、最大容量は40TB。10GbEと2.5GbE、Wi-Fi 7、USB4を2基備えながら、HDDだけでなくシステムファンも搭載しない完全ファンレス設計です。発売は2026年10月中旬の予定で、2026年9月19日時点で正式価格は発表されていません。
ただしスペックをよく見ると、5基あるM.2スロットはすべて「PCIe 4.0 x1」接続です。一般的なPCIe 4.0 NVMe SSDはx4接続が主流のため、「NVMeを5台積めるのにx1では遅いのでは」と感じても不思議ではありません。
しかしS5を10GbE NASとして見ると、このx1接続には明確な理由があります。搭載するIntel Core 3 304が持つPCIeレーンはわずか6本。5台のSSDと10GbEへそのレーンをどう振り分けるかという制約から逆算すると、x1接続はむしろ合理的な選択です。CPUのレーン構成、帯域の実際の余裕、そしてファンレス設計との関係まで、一次情報にもとづき整理します。
目次
概要MINISFORUM S5の主要スペック
| 項目 | MINISFORUM S5 |
|---|---|
| CPU | Intel Core 3 304(Wildcat Lake・1P+4LP Eコア・5コア5スレッド・最大4.3GHz) |
| メモリ | 16GB LPDDR5オンボード(システム用に64GB UFSを別途搭載) |
| ストレージ | M.2 2280 NVMe×5(各PCIe 4.0 x1)・最大40TB(8TB×5時) |
| ネットワーク | 10GbE・2.5GbE・Wi-Fi 7 |
| その他I/O | USB4(40Gbps)×2・USB Type-A・HDMI |
| 冷却 | 完全ファンレス(アルミ筐体をヒートシンク化) |
| OS | MinisCloud OS |
| 発売 | 2026年10月中旬予定・価格未発表 |
検証なぜ全スロットPCIe 4.0 x1なのか——Core 3 304は6レーンしかない
S5の構成を理解するうえで重要なのが、搭載CPU「Core 3 304」のPCI Express仕様です。Intelの公式仕様ページによると、Core 3 304が持つPCIe 4.0レーンは最大6レーンで、構成としては「x4+x2」や「x1を6本」といった組み合わせを利用できます。
一方、S5にはM.2 2280 PCIe 4.0 x1スロットが5基あります。COMPUTEX 2026でS5の実機を確認した海外メディアの取材によると、6レーンのうち5レーンを5基のM.2 SSDへ1レーンずつ割り当て、残った1レーンをRealtek RTL8127の10GbEコントローラーに使用する構成になっていました。
つまりS5の「M.2がx1しかない」という仕様は、単純なコストダウンというより、6本しかないPCIeレーンから5台のNVMe SSDと10GbEを両立させるための設計です。Core 3 304という低消費電力CPUを使いながら5ベイのNVMe NASを成立させるための、かなり割り切ったレーン配分といえます。
帯域PCIe 4.0 x1でも約2GB/sあり、10GbEより高速
では、PCIe 4.0 x1は実際どれくらい遅いのでしょうか。PCIe 4.0は1レーンあたり16GT/sで通信し、128b/130bエンコーディングを使用するため、理論上のデータ転送帯域は約1.97GB/sです。一方、S5が搭載する10GbEの通信速度は10Gbpsなので、バイト換算した理論上限は約1.25GB/sです。
一般的なPCIe 4.0 x4 SSDはシーケンシャルリード7GB/s前後に達する製品もありますが、10GbE経由で別のPCへ転送する場合、SSDより先にネットワーク側が上限に到達します。PCIe 4.0 x1の約1.97GB/sという帯域でも、1台のSSDから10GbEへデータを送り出すだけなら理論上は10GbEを上回っているため、「x4ではないから10GbE NASとして遅い」とは単純に言えません。むしろ10GbEまでの用途に限定するなら、SSD1台あたりx4を与えるよりx1にしてベイ数を増やした方が実用的とも考えられます。
さらに5基のSSDにそれぞれPCIe 4.0 x1が割り当てられているなら、単純計算した5基分のリンク帯域は約9.8GB/sになります。もちろん実際にはCPU・メモリ・ストレージコントローラー・RAID・ファイルシステムなどが関係するため、この数値どおりに読み書きできるわけではありません。それでも10GbEの1.25GB/sに対してストレージ側にはかなり余裕があり、S5は「1台のSSDを限界まで速くするNAS」ではなく、「複数のSSDで容量とランダムアクセス性能を確保しつつ、10GbEを使い切れるNAS」と考えると仕様の意味が見えてきます。HDDからオールフラッシュ化するメリットは最大速度だけでなく、シークが不要なNVMeによる多数の小さなファイルへの応答性の高さも大きな部分です。
「10GbEより速いからPCIe 4.0 x1で問題ない」と考えるのも極端です。SSD単体のローカル処理ではPCIe 4.0 x4本来の性能を利用できず、RAID再構築時や複数SSD間でのデータ移動、複数の高速インターフェースから同時にアクセスする場面では、1台あたり約2GB/sという上限が見えてくる可能性があります。S5には10GbEに加えて40Gbps USB4も2基あるため、特殊な高負荷環境ではストレージ側のx1接続が制限になりえます。ただし一般家庭や小規模オフィスで10GbEを1本使ったファイルサーバー用途なら、過度に心配する必要はなさそうです。
設計x1接続はファンレス化にも都合がいい
PCIe 4.0 x1という仕様には、もう一つ理由が考えられます。発熱です。NVMe SSDは高負荷時に意外と発熱し、高性能なPCIe 4.0 x4 SSDを5台同時にフルスピードで動作させれば、CPUだけでなくSSD側の冷却も課題になります。S5はシステムファンを搭載せず、MINISFORUMはアルミ筐体そのものを大型ヒートシンクとして利用する完全パッシブ冷却を採用しています。COMPUTEX時点の実機でも、筐体には放熱用のフィンが確認されました。
SSD1台あたりのインターフェースをx1に制限してピーク時の転送量を抑えることは、限られたPCIeレーンを有効利用するだけでなく、発熱を抑える方向にも働くと考えられます。MINISFORUMが公式に「冷却目的でx1にした」と説明しているわけではありませんが、ファンレスで5台のNVMe SSDを収容する設計を考えれば合理的なトレードオフです。発売後にまず確認したいのは最大転送速度より、5台のSSDへ長時間書き込みを続けた場合にサーマルスロットリングが発生しないかという点でしょう。
容量最大40TBだが「40TB使える」わけではない
S5では8TBのM.2 SSDを5台搭載することで、最大40TBのストレージを構築できます。ただし40TBはあくまで物理的な合計容量です。データ保護のために冗長化すれば、実際に使える容量は減ります。たとえば8TB SSD5台で1台分をパリティ相当に使う構成なら単純計算で約32TB、2台分の冗長性を持たせれば約24TBです。実際にはファイルシステムや容量表記の違いもあるため、OS上で利用できる容量はこれよりさらに少なくなります。
また8TBのNVMe SSDを5台用意するコストも無視できません。容量単価では依然としてHDDの方が有利なので、写真や動画の長期保存を目的に数十TB欲しいだけなら、HDDベイを備えたNASの方が安く構築できる可能性があります。S5は容量単価ではなく、静音性・小型化・ランダムアクセス性能を優先するNASです。
AI性能「AI NAS」よりメディアサーバーとして面白い
MINISFORUMはS5を「AI NAS」としても訴求しています。Core 3 304にはNPUが搭載されており、Intel公式仕様ではNPUが最大15TOPS(Int8)、内蔵GPU(Xe3)もInt8で最大9TOPSの演算性能を持っています。MinisCloud OSでは、写真を自然言語で検索するといったAI機能も想定されています。ただしCore 3 304は1Pコア+4LP Eコアの5コアCPUで、NPUも15TOPSです。大量のメモリを使うLLMや本格的な生成AI推論を高速に実行するためのAIワークステーションとは性格が異なり、S5では「AI」という名称より、ファイル整理や写真検索などNASと相性のいい軽量なAI処理をローカルで利用できることに意味がありそうです。
むしろ注目したいのはメディアサーバー用途です。Core 3 304の内蔵GPUはAV1のハードウェアエンコード・デコードに対応し、Intel Quick Sync Videoもサポートしています。そのためハードウェア自体には、動画を保存するだけでなくトランスコードを行うメディアサーバーとして使える素地があります。MINISFORUM自身もS5を4Kメディアライブラリ、ロスレス音楽、ホームシアターなどの用途に位置付けています。NAS本体からHDDの回転音もファンノイズも発生しないため、テレビやオーディオ機器の近くに置く用途では一般的なHDD NASにはない魅力があります。ただしJellyfinやPlexなどでQuick Syncを実際に利用できるかはドライバーやコンテナ環境次第のため、発売後にMinisCloud OS上での動作を確認したいところです。
比較S5とN5 Airはかなり性格が違う
MINISFORUM製NASを検討している場合、S5と比較したいのが同社の「N5 Air」です。CPU性能・メモリ拡張性・最大容量・仮想化などを重視するならN5 Airの方が明らかに余裕がありますが、N5 AirにはHDD冷却用の大型ファンが搭載されています。S5はCPU性能や拡張性を削る代わりに、HDDとファンの両方をなくした製品です。
| 項目 | MINISFORUM S5 | MINISFORUM N5 Air |
|---|---|---|
| CPU | Intel Core 3 304(5コア5スレッド・15W) | AMD Ryzen 7 255(8コア16スレッド・最大4.9GHz) |
| メモリ上限 | 16GB(オンボード) | DDR5-5600 最大96GB |
| ストレージ | M.2 NVMe×5(PCIe4.0 x1)のみ | 3.5/2.5インチ×5+M.2 NVMe×3(PCIe4.0 x1) |
| ネットワーク | 10GbE+2.5GbE・Wi-Fi 7 | 10GbE+5GbE |
| 冷却 | 完全ファンレス | ファン搭載 |
| 価格帯 | 未発表(2026年10月中旬発売) | MINISFORUM公式ストアでセール中の¥87,999から |
大容量やDocker・VM・さまざまなサーバー用途を1台へ集約するならN5 Air、デスク横やリビングに設置し、10GbEクラスの高速ストレージを無音で使いたいならS5、という住み分けになりそうです。
価格価格次第で評価が大きく変わる、公式サイトの表示にも注意
S5最大の問題は、まだ価格が発表されていないことです。Core 3 304はエントリークラスのCPUで、メモリもオンボード方式のため、単純な低価格NASにはなりにくいと見られる一方、10GbE・Wi-Fi 7・USB4×2・アルミ製ファンレス筐体・5基のM.2スロットを搭載するため、コスト的な余裕もそれほどありません。現在N5 Airが公式ストアのセールで¥87,999から購入できるため、日本でS5を評価する際にはこの価格が一つの基準になりそうです。
なお2026年9月19日時点のMINISFORUM日本公式サイトでは、NASカテゴリ一覧ページにS5-304の「通常価格¥153,999」という表示がある一方、S5-304の個別商品ページを開くと価格表示は一切なく「間もなく登場」というプレースホルダーのみでした。一覧ページと個別ページで表示が食い違っているため、現時点の¥153,999という数字は正式仕様として扱わない方がよく、価格は発売時に公式発表を確認するのが安全です。
仕様変更メモリ容量は12GBから16GBへ変更されていた
S5については、開発中から仕様が変わっています。2026年6月のCOMPUTEX展示時には、12GBのLPDDR5X-7500と64GB UFS 2.2を搭載すると紹介されていました。一方、9月18日の正式発表では16GBメモリと64GB UFSを搭載すると説明されており、COMPUTEXの試作段階から製品版までの間にメモリ容量が増やされたことになります。展示会の試作機と製品版で仕様が変わること自体は珍しくないため、今後もし細部の仕様変更が入る可能性は踏まえておくとよいでしょう。
結論誰が買うべきか
- デスク横やリビングに置くため、ファンノイズもHDDの回転音も避けたい人
- 10GbE程度までの用途で、大容量より静音性・応答性を重視するNASが欲しい人
- 4Kメディアライブラリやロスレス音楽など、ホームシアター用途のメディアサーバーを探している人
- Docker・写真整理・バックアップなど、軽量な常時稼働タスクを低消費電力でこなしたい人
- 数十TB規模の大容量ストレージを容量単価重視で組みたい人(HDD NASの方が安価)
- 仮想化・複数VM・重いDocker環境など、CPU性能とメモリ拡張性が要る用途の人
- PCIe 4.0 x4 SSD本来の速度をローカルで引き出したい人
- 価格が判明する前に購入を決めたい人(2026年9月19日時点で価格未発表)
選択肢今すぐ選ぶなら・S5に備えるなら
S5は発売時期・価格ともまだ確定していません。今すぐMINISFORUM製のNASが欲しい場合の現実的な選択肢と、S5が発売された際にM.2スロットを埋めるためのNVMe SSDを紹介します。
FAQよくある質問
まとめまとめ|「SSDを最速で使うNAS」ではない
MINISFORUM S5は、5基のM.2スロットがすべてPCIe 4.0 x1という部分だけを見ると弱点に見えるかもしれません。しかし搭載するCore 3 304にはPCIeレーンが6本しかなく、S5はその限られたI/Oを5基のNVMe SSDと10GbEへ振り分け、CPUも15Wクラスに抑えることで、5ベイNVMe+10GbE+完全ファンレスという構成を成立させています。PCIe 4.0 x1の理論帯域は約1.97GB/sあり、10GbEの理論上限約1.25GB/sより高速なため、1台のPCから10GbE経由でアクセスする一般的な使い方でM.2がx1だからという理由だけで大きな性能不足になる可能性は低いでしょう。反対に、最大容量や容量単価、CPU性能、メモリ拡張性を優先するなら、N5 AirなどHDDを搭載できるNASの方が向いています。最終的な評価は価格次第ですが、少なくとも「PCIe 4.0 x1だから遅いNAS」と判断するのは早い製品です。





