AM5初のオープンソースBIOS登場|Dasharo v0.9.0とAMD openSILでRyzen 8000Gは何が変わるのか
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AM5マザーボードのBIOSは、長年メーカーが独自に作り込んだ非公開のファームウェアで動いてきました。中身がどのように初期化されているのか、外部の開発者やセキュリティ研究者が確認する手段はほとんどありませんでした。
そんな状況に一石を投じるファームウェアが、2026年7月30日に公開された「Dasharo v0.9.0」です。開発元であるポーランドの企業3mdebは、coreboot、EDK II、AMD openSILを組み合わせてMSI PRO B850-P WIFI向けに構築したこのファームウェアを、現代のAMD Ryzenデスクトップ向けとして初めて登場したオープンソースファームウェアと位置付けています。
ただし、対象はMSI PRO B850-P WIFIという1機種と、Phoenix世代のRyzen 8000Gシリーズに限られます。Ryzen 7 9800X3DやRyzen 9000シリーズを積んだ一般的なゲーミングPCでは、このファームウェアを導入できません。この記事では3mdeb公式の一次情報をもとに、対応範囲、AMD openSILの仕組み、既知の不具合、AM5全体への影響まで整理します。
出典:3mdeb公式ブログ「MSI PRO B850-P WIFI Dasharo v0.9.0 Released」、Dasharo公式ドキュメント「Openness Score」、AMD openSIL公式GitHubリポジトリにもとづきます(2026年8月時点)。
目次
要点MSI PRO B850-P WIFI向けにDasharo v0.9.0が登場
Windows 11から見れば、一般的なUEFIマザーボードと変わらない起動体験になります。ブート順序の変更、UEFI Secure Boot、fTPM、NVMe起動、USB起動、セットアップパスワードなどが利用できるため、コマンドラインだけで操作する開発者専用ファームウェアではありません。
位置付け「AM5初」と呼べる理由
corebootを採用したPCや、オープンソースファームウェアを利用できるAMD製品は以前から存在しました。ただし、その多くは古い世代のプラットフォーム、組み込み機器、AMD EPYCを搭載したサーバー(Gigabyte MZ33-AR1など)、あるいはMSI PRO Z690-A・PRO Z790-PといったIntelプラットフォームに限られていました。
Dasharo v0.9.0は、現行世代のB850チップセットを搭載した市販のデスクトップ向けAM5マザーボードで動作します。3mdebはこれを、現代のAMD Ryzenデスクトップ向けとして初めてのオープンソースファームウェアと説明しています。
今回の開発では、もともとモバイル向けPhoenixプロセッサーを想定していたopenSILの実験的なコード(phoenix_pocブランチ)を、デスクトップAM5環境へ拡張する作業が必要でした。モバイル版Phoenixは外部チップセットを前提としていませんが、MSI PRO B850-P WIFIではCPUとB850チップセットをPCI Expressで接続し、チップセットを認証・初期化しなければなりません。3mdebはopenSIL側の処理を追加し、Promontory系チップセットを使用するAM5デスクトップでも起動できるようにしています。既存のcorebootを単にマザーボードへ移植しただけでなく、AMD openSILのデスクトップ対応を進めた点が今回の特徴です。
開発の背景3mdebとDasharoについて
Dasharoは、ポーランド・グダニスクを拠点とするファームウェア企業3mdebが開発するオープンソースファームウェアです。単独の起動プログラムではなく、coreboot、EDK II、iPXEなど複数のオープンソースプロジェクトを組み合わせ、一般的なUEFI環境として提供されています。
MSI PRO B850-P WIFI向けDasharo v0.9.0は、coreboot 25.12タグ、edk2-stable202602(2026年2月版のEDK II)、iPXE 2026.02、そしてAMD openSILのphoenix_pocブランチを基盤にしています。使用しているソフトウェアの構成はSBOM(Software Bill of Materials)として公開され、ファームウェアイメージ内にも組み込まれています。開発資金の一部は非営利団体NLnet Foundationの助成を受けています。
Dasharoは過去にもMSI PRO Z690-AやPRO Z790-Pへ対応していましたが、これらはIntelプラットフォーム向けです。MSI PRO B850-P WIFI版は、Dasharoの対応範囲をAMDの現行デスクトッププラットフォームへ広げた最初のリリースとなります。
技術基盤corebootとAMD openSILの役割
AMD openSILは、CPUやメモリ、PCI Expressなどを起動時に初期化するためのオープンソースライブラリです。名称のSILは「Silicon Initialization Library」を意味します。
AMD公式の説明によると、openSILはxSIM(x86 Silicon Initialization Libraries)、xPRF(x86 Platform Reference Library)、xUSL(x86 Utilities & Services Library)という3つのライブラリで構成されます。xSIMはCPUやメモリなどのシリコン初期化を、xPRFはGPIOやSMMといったマザーボード固有の設定を、xUSLはハードウェア抽象化と両者が利用する共通機能を担当します。これらはコンパイル時にホストファームウェアへ静的リンクされる仕組みです。
openSIL自体は、画面付きのBIOSメニューを提供するわけではありません。CPUやメモリを起動できる状態にした後、corebootのようなホストファームウェアへ制御を渡すための土台です。今回のDasharoでは、openSILがAMD製ハードウェアの初期化を担当し、corebootがプラットフォーム全体を制御した上で、EDK IIが一般的なUEFI画面とOS起動環境を提供しています。
仕組みの違いAGESAを使わない理由
一般的なAMDマザーボードでは、CPUやメモリの初期化にAGESAと呼ばれるAMD製の非公開コードが使われています。AGESAはマザーボードメーカーへ提供され、各社のUEFI BIOSへ組み込まれますが、内部実装を外部の開発者が確認することはできません。AMDは、AGESAがUEFIを前提に設計されているため、corebootなど別のホストファームウェアへ柔軟に組み込みにくいという課題を説明しています。
openSILは特定のUEFI実装へ依存せず、コンパイル時にホストファームウェアへ静的リンクできる構造です。coreboot、EDK II、LinuxBootなど、異なる起動環境へ統合しやすい設計が目指されています。コードを公開することで、第三者が不具合や脆弱性を調査し、変更履歴を追跡しやすくなる利点もあります。
ただし、openSILへ移行しただけで、すべてのAMDファームウェアが公開されるわけではありません。CPU内部のマイクロコードやAMD Platform Security Processor(PSP)用ファームウェアなど、引き続き非公開となる部分も残ります。
対応範囲Ryzen 8000Gシリーズのみサポート
Dasharo v0.9.0を利用できるのは、MSI PRO B850-P WIFIとPhoenix世代のAM5プロセッサーを組み合わせた環境です。3mdebは、MSIのCPU互換性リストでPhoenixに分類されるRyzen™ 8700・8600・8500・8400・8300シリーズ(Ryzen 7 8700G、Ryzen 5 8600G、Ryzen 5 8500G、Ryzen 5 8400F、Ryzen 3 8300Gなど)を対象として挙げています。最も性能が高い対応CPUは、8コア16スレッドのRyzen 7 8700Gです。
開発チームが実際の検証に使用したCPUはRyzen 5 8600Gで、4枚のCrucial製DDR5メモリ(各8GB)、Silicon Power製NVMe SSD、Qualcomm製Wi-Fi 7カード、Realtek製5GbEなどを組み合わせてテストしています。
| CPU | Dasharo v0.9.0での対応状況 |
|---|---|
| Ryzen 7 8700G | 対応。最も性能が高い検証対象CPU(8コア16スレッド) |
| Ryzen 5 8600G | 対応。3mdebが実機検証に使用したCPU |
| Ryzen 5 8500G/Ryzen 5 8400F/Ryzen 3 8300G | 対応。MSIのCPU互換性リストでPhoenixに分類される製品 |
| Ryzen 7000シリーズ(Raphael) | 非対応。異なるSoCのためopenSILの初期化コードが対応していない |
| Ryzen 9000シリーズ(Granite Ridge) | 非対応。AMDがGranite Ridge向けopenSILブランドを未公開 |
| Ryzen 7 7800X3D/Ryzen 9 7950X3D/Ryzen 7 9800X3D/Ryzen 9 9950X3D | 非対応。Phoenix世代に3D V-Cache搭載モデルは存在しない |
B850マザーボードそのものはRyzen 7000・9000シリーズへ対応していても、Dasharo側の初期化コードがそのCPUへ対応していなければ使用できません。3mdebは公式FAQで、Ryzen 9 9950X3Dについて具体的に問い合わせを受けたことを明かした上で「別のSoCであり、まだ一般公開されていないopenSILブランドが必要」と回答しています。現時点では、X3D CPUを搭載した一般的なゲーミングPCへ導入するファームウェアではありません。
OS互換性Windows 11とUbuntuで起動を確認
Dasharo v0.9.0では、Windows 11 25H2とUbuntu 26.04 LTSの起動が確認されています。公式リリースではWindows 11の起動、Ubuntu LTSの起動、NVMe起動、USB起動、標準的なUEFI互換インターフェースがサポートされています。
オープンソースファームウェアだからLinux専用になるわけではありません。EDK IIによる標準的なUEFI環境が用意されているため、通常のWindowsインストールメディアやUEFI対応SSDから起動できます。既存のOSを自動検出し、EFIシステムパーティションを検索してブート項目を作成する機能も搭載されています。
ただし、DasharoはMSI純正BIOSの画面や設定項目を再現したファームウェアではなく、独自のcoreboot・UEFI環境です。Windows上で利用できるMSI独自のユーティリティが、純正BIOSと同じように動作するとは限りません。
セキュリティSecure BootとfTPMを標準搭載
オープンソースファームウェアはセキュリティ機能が不足すると思われがちですが、Dasharo v0.9.0には日常利用に必要な機能がひととおり用意されています。
透明性の指標非公開コードは79.1%削減
Dasharo v0.9.0はオープンソースファームウェアですが、ROMイメージ内のすべてがソースコードとして公開されているわけではありません。Dasharoが公開しているOpenness Scoreによると、MSI PRO B850-P WIFI向けv0.9.0(msi_ms7e56_v0.9.0.rom)は、オープンソースコードの割合が20.0%、非公開コードの割合が80.0%と計算されています。
この数字だけを見ると「ほとんどオープンソースではない」と感じるかもしれません。一方、3mdebはMSI純正ファームウェア(E7E56AMSI.2A92)と比較して、非公開コードの量を79.1%削減できたと説明しています。20.0%と79.1%は同じ意味の数字ではありません。20.0%はDasharoイメージ内で分類されたオープンソースコードと非公開コードの比率、79.1%はMSI純正ファームウェアと比べてDasharoが非公開コードの量をどれだけ減らしたかを示す指標です。
残っている非公開部分の大半は、AMD PSP用ファームウェアです。CPUのマイクロコードや内蔵GPU用のOption ROMなども非公開として含まれています。したがって、Dasharo v0.9.0は完全に自由なAM5ファームウェアではなく、従来よりも検査・変更できる範囲を大幅に増やしたファームウェアと捉えるのが正確です。
ファームウェアにはSBOM(CycloneDX形式)が組み込まれており、coreboot・EDK II・iPXE・AMD openSILの各リビジョンに加え、PSP用バイナリや映像・LANドライバーなど非公開コンポーネントの情報も記録されています。脆弱性が見つかった際、どのバージョンが使われているかを追跡しやすくなる点は、メーカー製BIOSの「セキュリティを改善」とだけ書かれた更新履歴との大きな違いです。
性能面fpsが伸びるファームウェアではない
Dasharoへ変更しただけで、ゲームの平均fpsが大きく上がる可能性は低いと考えられます。ファームウェアはCPU、メモリ、PCI Express、GPUなどを初期化しますが、ゲーム中の基本的な性能はCPUとGPU、メモリ構成、Windows、ドライバー、電力設定などによって決まります。
Dasharo v0.9.0では、AMD CPU温度のACPI経由での取得、メモリコンテキストの保存と復元によるFast Boot、Quiet Bootなどが実装されています。ただし、公式リリースノートにはPBO、Curve Optimizer、EXPO、CPUオーバークロックといった機能は案内されていません。3mdebのFAQによると、AMDプラットフォームの設定値の大半はAPCB(AGESA PSP Configuration Block)を経由しており、corebootは現時点でAPCBを書き換える手段を持っていません。チューニング機能や項目の拡充は「すぐには実現しない」と3mdeb自身が説明しています。
一方で、Phoenixの内蔵GPU初期化には対応しています。開発途中ではopenSIL側のグラフィックス初期化、AMD GOPドライバー、ACPI周りの実装が必要でしたが、最終的にはLinuxとWindowsでグラフィカルな起動が可能になっています。Ryzen 7 8700GやRyzen 5 8600Gの内蔵GPUを使い、グラフィックボードなしで組む構成も対象になります。NVIDIAやRadeonの外付けGPUを組み合わせたすべての構成が検証されているわけではないため、利用を検討する場合はDasharoのハードウェア互換性情報を事前に確認する必要があります。
ゲーミングPCで重要な利点は、fps向上よりもファームウェアの透明性、起動経路の検証、不要な機能の削減、長期的な更新可能性にあります。
既知の問題v0.9.0に残る4つの制限
Dasharo v0.9.0は最初の正式リリースであり、3mdeb自身が4つの主要な既知の制限を公表しています。
| 既知の制限 | 内容と回避策 |
|---|---|
| UEFI Capsule更新がリセットをまたがない | ステージング型の更新はリセット後に失われるため、Capsule on Diskによる即時更新のみ利用できます |
| 電源断後の状態復帰が動作しない | 「常にオン」「常にオフ」設定は正常に動作しますが、停電前の電源状態へ自動復帰する機能は機能しません |
| Ubuntu 26.04でまれに起動が停止 | シリアルコンソールを有効にした状態で発生する場合があります。設定を無効化すると回避できます |
| 内蔵Wi-Fiが一時的に消える | PCI Express上から一時的に見えなくなる不具合です。CMOSクリアで復旧でき、同じ症状はMSI純正BIOSでも確認されています |
このほか、公式リリースノートには、ファームウェアを書き込んだ場合と初期設定へ戻した場合とでMeasured Bootの測定値が一致しない問題も記載されています。WindowsやUbuntuを起動できる段階には達していますが、メーカー純正BIOSと同等の成熟度を期待するのは早い状態です。
配布経路通常のBIOS更新のようには手に入らない
MSI PRO B850-P WIFI向けDasharo v0.9.0は、一般的なマザーボードBIOSのように、メーカーサイトから誰でも更新ファイルをダウンロードして導入できる形式ではありません。公式のプリビルドファームウェアは、3mdebが販売するMSI PRO B850-P WIFI本体とDasharoを組み合わせた「Full Build」を通じて提供されており、ファームウェアだけを入手する単独のDasharo Pro Packageサブスクリプションは、このプラットフォームでは用意されていません。
coreboot・Dasharo・openSILのソースコードから自分でビルドすることは技術的には可能です。しかし、マザーボード固有の設定、非公開バイナリの配置、署名、フラッシュ領域などを扱う必要があり、通常のBIOS更新よりも難易度は高くなります。現時点では、ファームウェア開発者、セキュリティ研究者、corebootを検証したい企業や上級者が中心になる製品です。
ファームウェアの書き換えに失敗するとPCが起動しなくなる可能性があります。MSI PRO B850-P WIFI向けDasharoは、マザーボード背面のFlash BIOSボタンによる書き込みと復旧に対応しています。FAT32でフォーマットしたUSBメモリへROMファイルを保存し、指定のファイル名へ変更して所定のUSBポートへ挿入すれば、CPUやOSを起動せずにファームウェアを書き込めます。Dasharoだけでなく、MSI純正BIOSへ戻す場合にも利用できる機能です。
今後の展望AM5全体へ広がる土台になるか
今回のリリースによって、すぐにASUS、MSI、GIGABYTE、ASRockなどの市販マザーボードがオープンソースBIOSへ切り替わるわけではありません。Dasharo v0.9.0が対応するのは、MSI PRO B850-P WIFIとPhoenix系CPUの組み合わせだけです。
それでも、市販のAM5マザーボードでcorebootとAMD openSILを使いながらWindows 11を起動し、Secure Boot、fTPM、NVMe、内蔵GPU、B850チップセットを実用レベルで動かせた意味は小さくありません。これまでAMDのオープンソースファームウェアは、サーバーやリファレンスプラットフォームを中心に進められてきました。今回の成果によって、openSILをデスクトップ向けAM5へ適応する際に必要な、チップセット認証、PCI Express、USB、グラフィックス、fTPM、メモリコンテキスト保存などの実装例が生まれました。
3mdebは公式ブログで、今後の目標として、Phoenix SoCとMSI PRO B850-Pのコードをcoreboot本体へ取り込むこと、Phoenix向けopenSILの変更をAMD側へ還元すること、既知の不具合の修正、ファームウェアPOST時のIOMMU設定によるプリブートDMA保護、Suspend-to-idle(モダンスタンバイ)対応などを挙げています。今回のコードがそのまま別のCPUやマザーボードで使えるわけではありませんが、次のAM5対応を進めるための土台にはなります。
世代の誤解に注意Zen 6用ファームウェアではない
AMD openSILは次世代CPUとの関連で語られることが多いため、Dasharo v0.9.0がZen 6対応のファームウェアであると誤解される可能性があります。しかし、今回使用されているのはPhoenix向けのphoenix_pocブランチです。Zen 4世代のRyzen 8000Gを対象としており、Zen 6用の初期化コードではありません。
MSI PRO B850-P WIFIへ将来Zen 6世代のCPUを装着できたとしても、Dasharo v0.9.0のままでは起動できません。新しいCPUを動かすには、対応するopenSILコード、CPUマイクロコード、メモリ初期化、PCI Express、電力管理、ACPIなどの更新が必要です。AMDはRyzen 9000シリーズ(Granite Ridge)向けのopenSILブランドすら、この記事の時点で一般公開していません。
今回のリリースが示したのは、現在のAM5マザーボードでもopenSILとcorebootを利用したファームウェアを構築できるという技術的な実例です。Zen 6の製品版ファームウェアがどのような構成になるかは、Dasharo v0.9.0だけでは判断できません。
判断軸導入すべき人・様子見でよい人
- MSI PRO B850-P WIFI+Ryzen 8000Gの組み合わせで、ファームウェアの透明性を重視する人
- corebootやAMD openSILの実装を実際に検証したい開発者・セキュリティ研究者
- Measured BootやSBOMを活用し、起動経路を厳密に管理したい組織
- Ryzen 7 9800X3DやRyzen 9000シリーズを使う一般的なゲーミングPC利用者(そもそも起動しません)
- PBO・Curve Optimizer・EXPOなど、細かなチューニング機能を重視する人
- BIOS更新のように手軽に導入したい、上級者向け作業に不慣れな人
FAQよくある質問
総括まとめ|透明性を高める最初の一歩
Dasharo v0.9.0は、MSI PRO B850-P WIFI向けに登場したAM5初の本格的なオープンソースファームウェアです。coreboot、EDK II、AMD openSILを組み合わせ、Windows 11とUbuntuの起動、UEFI Secure Boot、AMD fTPM、Measured Boot、NVMe・USB起動、内蔵GPU、Fast Bootなどを実現しています。
一方で、対応CPUはPhoenix世代のRyzen 8000Gシリーズに限られます。Ryzen 7000、Ryzen 9000、X3Dシリーズには対応しておらず、非対応CPUを装着しても起動しません。ファームウェア全体が完全に公開されたわけでもなく、AMD PSP、CPUマイクロコード、映像関連の一部バイナリは引き続き非公開です。Openness Scoreではオープンソース部分が20.0%と計算されていますが、MSI純正ファームウェアと比べると非公開コードの量は79.1%削減されています。
ゲームのfpsを上げるためのBIOSではなく、ファームウェアの検証性・透明性・セキュリティ・長期的な保守性を高めることが主な目的です。一般ユーザーがメーカー公式サイトから簡単に導入できる段階ではありませんが、市販のB850マザーボードでopenSILとcorebootを実用レベルまで動かしたことは、AMDデスクトップ環境にとって大きな前進といえます。将来、対応CPUやマザーボードが増えれば、ゲーミングPCのマザーボード選びでも性能や価格だけでなく「ファームウェアの透明性」が比較項目に加わる可能性があります。



