Steam新作ゲームの37%が生成AI利用を開示|5万3597本と50万レビューから見る成功作・失敗作、プレイヤー評価【2026年】
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売れたAIゲームと沈んだAIゲームは、AIの使い道と開示の書き方が違った
Steamのストアページで「AI生成コンテンツの開示」という欄を見かけることが増えました。2026年半ばの新作では37%がこの開示を出しています。ただ、開示のあるゲームを避けるべきなのか、AIを使ったゲームは本当に評価が低いのかは、割合だけでは判断できません。
結論から書くと、AI開示作の評価は非開示作より低めですが、差を生んでいるのはAIの有無よりも使い方です。売れなかったAI開示作の72%は画像生成AIを開示し、開示文は中央値13語と短めでした。一方、レビュー1,000件超の成功作は、AIボイスやローカライズにも使い、人の手で確かめたと書く割合が高くなっています。50万件超のレビューを調べた研究でも、AIに触れた低評価の中心は「誰も手をかけていないように見える」という不満でした。
買う側の分かれ目は、開示欄に「何にAIを使ったか」と「人が確認したか」が書かれているか、そして基本無料の作品かどうかです。基本無料の生成AI作品は推奨率が50.1%まで下がり、有料作品の78.9%と大きく開きます。
目次
要点まず押さえたいこと
Steamの開示は「プレイヤーが触れる完成物にAIの生成物が入っているか」を示すもので、AIで作った割合ではありません。2026年1〜8月の新作では、開示の約4分の3が画像などのビジュアル用途です。成功作と失敗作を比べると、失敗作は画像生成への偏りが強く、開示文も短めでした。レビューでは、AIに触れた投稿だけ推奨率が49.5%まで下がります。
割合2026年半ばの新作の37%、1〜6月の平均では30.8%
2023年7月から2026年7月までにSteamで発売されたゲーム53,597本を全数調べたSulka Haro氏の集計では、生成AIの使用を開示した新作の割合は2024年が10.9%、2025年が19.9%、2026年は6月までの平均で30.8%でした。伸びは止まっておらず、2026年半ばの月では新作の37%が開示作になっています。
| 調査 | 対象 | 2026年のAI開示率 |
|---|---|---|
| Sulka Haro氏の全数調査 年の平均 | 2023年7月〜2026年7月の53,597本 | 30.8%(1〜6月) |
| 同じ調査の月別 | 2026年半ばの1か月の新作 | 37% |
| Flockbayの抽出調査 | 2023年7月以降の62,612本から16,968本を抽出(2026年分は4,766本) | 35.04%(1〜8月、95%信頼区間33.70〜36.41%) |
集め方の違う2つの調査が、2026年をどちらも30%台半ばと出しています。Flockbayは生成AIでゲームを作るツールを手がける会社ですが、抽出の方法と信頼区間を公開しており、全数を数えたHaro氏の結果とも大きくずれていません。
ただし、開示の割合は後から動きます。Haro氏の集計では、レビュー2,000件以上のAI開示作73本のうち16本(22%)が、発売後に開示を追加していました。追加は、2026年1月にSteamworksの申告フォームの説明が書き換えられた前後に集中しています。過去の作品にも、あとから開示が付いて割合が上がる余地があります。
開示作の月間本数が十数本から約530本に増えた経緯や、ジャンル別の開示率はSteam新作の約31%が生成AI利用を開示した3年間の全数調査で詳しく扱っています。
開示「AI生成コンテンツの開示」はAIで作った割合ではない
Steamの開示を読むときに最初に押さえたいのが、何を申告させているかです。Steamworksの申告フォームの説明では、開発環境に組み込まれたAIツールで作業を効率化すること自体は、この項目の焦点ではないとしています。対象は、ゲームに収録されてプレイヤーが消費するコンテンツで、例としてアート、サウンド、ストーリー、ローカライズが挙がっています。申告は2種類に分かれます。
| 区分 | 中身 | 追加の条件 |
|---|---|---|
| 事前生成(Pre-Generated) | 開発中にAIツールの助けを借りて作り、ゲームに収録してプレイヤーが消費するコンテンツ | 発売前の審査で、AIを使っていないコンテンツと同じ基準で確認される |
| ライブ生成(Live-Generated) | ゲームの実行中にAIツールで生成されるコンテンツ | 違法なコンテンツを生成させないためのガードレールを申告する必要がある |
つまりSteamのAI開示率は、AIでゲームを作った割合ではありません。AIで生成したものがプレイヤーの目や耳に届く作品の割合に近い数字です。背景画像を1枚だけ生成した作品も、NPCとの会話をその場でAIに作らせる作品も、同じ「開示あり」に入ります。
日本語のストアページでは、説明文の下に「AI生成コンテンツの開示」という見出しで表示されます。中の文章は開発者が書いたものがそのまま載るため、日本語のストアでも英語のまま表示されることがあります。
用途開示の約4分の3は画像などのビジュアル用途
開示文を用途ごとに分類したFlockbayの集計では、2026年1〜8月の新作(抽出4,766本)のうち、何らかのAI開示があったのは35.04%でした。用途別の割合は次のとおりです。1本が複数の用途を開示していることがあるため、合計は35.04%と一致しません。
| 用途 | 2026年1〜8月の新作に占める割合 | AI開示作に占める割合(試算) |
|---|---|---|
| 画像・テクスチャなどのビジュアル | 26.29% | 約75% |
| 音声・サウンド | 9.32% | 約27% |
| 翻訳 | 5.14% | 約15% |
| コード | 4.91% | 約14% |
右の列は、開示率35.04%を分母にして割り直した値です。開示作のおよそ4分の3がビジュアル用途を挙げています。いまSteamで「AIゲーム」と呼ばれているものの多くは、AIと会話するゲームでも、AIがコードを書いたゲームでもなく、AIで作ったイラスト・背景・テクスチャを含むゲームです。
この偏りは、評価の話にもつながります。コードは画面に出ませんし、翻訳は人が直していれば見分けにくくなります。一方、指の数がおかしい人物や崩れた背景の文字、場面ごとに変わる画風は、画面に残り続けます。いちばん多い使い道が、いちばんプレイヤーに気づかれやすい使い道でもあります。
成功と失敗成功作138本と失敗作400本ではAIの使い道が違った
Haro氏は、AI開示作のうちレビュー1,000件以上の138本を「成功作」、発売から9か月以上たってもレビューが50件未満の作品から無作為に選んだ400本を「失敗作」として、ストアページの開示文を読み比べています。それぞれのグループで、開示文がどの用途に触れていたかの割合は次のとおりです。
どちらのグループでも画像系がいちばん多いものの、失敗作では72%と偏りが強く、成功作は57%です。反対に成功作は、AIボイス(24%対8%)とローカライズ(18%対6%)でそれぞれ3倍、文章・会話(18%対10%)や音楽(15%対11%)でも上回っています。Haro氏は失敗作の典型を「画像素材にAIを使い、それ以外はほとんど何もしていない作品」と表しています。
ここから「画像生成AIを使うと売れない」とは言えません。外注費を抑えたい小さな作品ほど画像生成に頼りやすく、ボイス収録や多言語展開がある作品はもともと規模が大きい、という見方もできるからです。Haro氏自身も、多言語の作品ほど売れている点には「ヒット作だから翻訳される」という逆向きの関係が一部含まれると断っています。AI開示作のうち英語だけの作品はレビュー数の中央値が2件、10言語以上に対応した作品は13件でした。
言えるのは、売れたAI開示作と売れなかったAI開示作では、AIの役割が同じではないということです。失敗作は画像の生成で完成品の見た目を埋めることに使い、成功作はボイスや翻訳のように、作品を届ける範囲を広げる工程にも使っていました。
開示文成功作の開示文は長く、人の確認まで書いている
開示文の書き方にも、2つのグループではっきりした差がありました。
| 開示文の特徴 | 成功作138本 | 失敗作400本 |
|---|---|---|
| 語数の中央値 | 22語 | 13語 |
| 10語以下の1行だけの開示 | 13% | 35% |
| 人が確認・調整したと書いている | 21% | 12% |
| 「補助」「補足的」などの控えめな言い回し | 59% | 41% |
失敗作の開示には「AIで生成した絵画がいくつかあります」といった1行で済ませたものが目立ちます。成功作では、何に使い、人がどう手を入れたかまで書く例が増えます。たとえば『inZOI』の開示文は、プレイヤーがテキストから衣装のテクスチャを作れる機能などを説明したうえで、制作の過程で生成したものは開発チームが入念に確認し、手作業で仕上げてから製品に入れたと書いています。
開示文を長くすれば売れるわけではありません。ただ、生成したものを選び、直し、確かめる工程があるかどうかは開示文に表れやすく、プレイヤーもそこを読んでいます。熱心なSteamユーザー約3,800人への調査では、44%が開示文を詳しく読み、45%がざっと目を通すと答えています。次に見るレビューの分析では、開示の範囲と実際のゲームが食い違うと、それだけで信頼を失う様子がはっきり出ています。
売上新作の37%がAI開示でも、売れ筋上位100本では約11%
売上の面では、AI開示作はまだ上位に届いていません。Haro氏が月ごとの新作をレビュー数で並べた上位100本(売れ筋の代わりの指標)を見ると、2026年半ばに新作の37%がAI開示作だったのに対し、上位100本に入ったAI開示作は約11%でした。2025年11月には22%に跳ねていますが、これは『風燕伝(Where Winds Meet)』のような1本のヒットが入ったためです。
同じ発売月の作品どうしで比べても、レビュー100件(販売3,000本ほど)に届く割合は、AI開示作が非開示作の約55%で、この比率は2年間改善していません。ストアの好評率は平均77%対81%、中央値80%対85%と低めですが、AI開示作の71%は「やや好評」の目安になる70%以上を保っています。総崩れというほどの差ではありません。売上が上位1%の作品に集中するSteam全体の構造はSteam新作の6割は売上300ドル以下という売上分布で扱っています。
レビュー50万件のレビューでは、生成AI作品の推奨率が68.4%
プレイヤー側の反応を大きな規模で調べたのが、米ノースイースタン大学のMahsa Bazzaz氏とSeth Cooper氏が2026年8月に公開した論文「Player Perceptions of Generative AI in Games: A Steam Review Analysis」です。2010〜2025年に発売された作品のSteam英語レビュー508,192件を集め、生成AIの開示がある5,970本と、昔から使われてきた自動生成の技術であるプロシージャル生成(PCG)のタグが付いた5,186本を比べています。
| 指標 | 生成AI開示作 | PCGタグの作品 |
|---|---|---|
| 分析したレビュー | 166,745件(5,970本) | 341,447件(5,186本) |
| 「おすすめ」の割合 | 68.4% | 86.3% |
| 文章が肯定的と判定された割合 | 53.0% | 69.0% |
| 投稿時のプレイ時間(中央値) | 148分(約2.4時間) | 370分(約6.1時間) |
推奨率の差は17.9ポイントです。文章の肯定・否定はDistilBERTという言語モデルで判定しています。基本無料かどうか、早期アクセスかどうか、プレイ時間を考慮した回帰分析でも、生成AIの開示は低評価といちばん強く結びついていました(オッズ比0.63)。
そもそも作品の顔ぶれも違います。生成AI開示作は基本無料の割合が22.4%(PCGタグの作品は12.5%)、有料作品の平均価格が10.23ドル(同14.70ドル)と安く、カジュアルゲームが28.7%(同13.4%)を占めます。レビューを比べた研究なので、AIを使ったこと自体が評価を下げたとまでは言い切れません。分析は英語のレビューに限られていて、日本語のレビューでも同じ傾向になるとは限りません。
基本無料と正式版で差が広がる
差の出どころを分けると、有料か基本無料か、早期アクセスか正式版かで様子が大きく変わります。
| 区分 | 生成AI開示作の推奨率 | PCGタグの作品の推奨率 |
|---|---|---|
| 有料 | 78.9% | 86.9% |
| 基本無料 | 50.1% | 83.1% |
| 早期アクセス | 77.8% | 85.8% |
| 正式版 | 65.7% | 86.8% |
有料の生成AI作品は78.9%で、PCGの作品との差は8ポイントほどです。論文は、全体の差の大部分が基本無料の生成AI作品で生じていると指摘しています。早期アクセスの作品も差が8ポイントに縮まり、「開発途中だから仮の素材だろう」と大目に見るプレイヤーがいることがうかがえます。厳しく見られるのは、正式版として出したのに手をかけていないように見える作品です。
プレイ時間の差も見逃せません。生成AI作品のレビューは中央値2.4時間で書かれていて、PCG作品の6.1時間より早く見切られています。プレイ2時間未満のレビューを除くと、生成AI作品の推奨率は69.1%から79.5%へ10.4ポイント上がりました(PCGは4.3ポイント)。Steamの返金の目安である2時間のうちに離れる人が、生成AI作品では多いということです。
言及AIに触れたレビューは4.7%、その推奨率は49.5%
レビューの本文を見ると、生成AI開示作に付いたレビューのうち、生成AIにはっきり触れていたのは7,834件で、全体の4.7%でした。残りの95%あまりは、AIの話をせず、遊びの中身や価格、不具合について書いています。
| 指標 | AIに触れたレビュー | 生成AI開示作のレビュー全体 |
|---|---|---|
| 「おすすめ」の割合 | 49.5% | 68.4% |
| 文章が否定的と判定された割合 | 63.7% | 47.0% |
AIに触れたレビューだけを取り出すと、推奨率は半分を切ります。生成AI開示作を遊んだ人がそろってAIを理由に低評価を付けているのではなく、AIが目についたときに、それが大きな減点の理由として書かれる、と読むのが自然です。
不満の中身低評価の中心は「誰も手をかけていないように見える」
研究チームは、AIに触れたレビューから600件を選んで3人で読み、内容を5つのテーマに分類しています。
| テーマ | プレイヤーの言い分 | レビューに出てくる具体例 |
|---|---|---|
| 品質の不足 | 誰も気にかけていないように見える | 指が多い人物や崩れた体の比率、没入感を壊す機械的なAIボイス、人が校正していないとわかる翻訳の誤り |
| 思想・倫理からの拒否 | ゲームにAIの居場所はない | 「画家に払えないなら支持しない」という、作り方そのものへの反発 |
| 受け入れ | AIの正しい使い方 | 元の絵をAIで高解像度化しただけの作品や、AIとの会話そのものが遊びになっている作品は好意的に評価 |
| 透明性と信頼 | 隠そうとした | 開示の範囲が実際より狭い、指摘されてから開示した、Wayback Machineで過去のストアページと突き合わせる |
| 求める水準の上昇 | なぜ使わなかったのか | AIツールがあるのに直さなかった翻訳の粗さへの不満 |
否定的な見方でいちばん多いのが1つ目です。プレイヤーはAIの生成物を「急ごしらえ」「手抜き」「魂がない」と表し、その印象が素材だけでなくゲーム全体の評価に広がっていました。問題にされているのは、AIツールを使った事実よりも、生成したものがそのまま製品に流し込まれ、誰も確かめていないように見えることです。
反対に5つ目のテーマでは、翻訳の質が低い作品に「AIで直せたはずだ」と不満を向けるプレイヤーもいます。論文は、生成AIを受け入れてもらうには「開発を安くするためではなく、プレイヤーが必要としているものに使う」ことが要ると結論づけています。
思い込みAI製だと思っただけで、楽しさの評価が下がる
同じBazzaz氏とCooper氏は、2026年4月のCHI 2026で別の実験も発表しています。参加者に『スーパーマリオブラザーズ』と『倉庫番(Sokoban)』のステージを、人が作ったものと自動生成したものから遊んでもらい、「AIが作ったか、人が作ったか」を答えてもらう実験です。集めた154人のうち、最後まで回答した142人分を分析しています。
正答率は53%で、偶然と区別できない水準でした。それなのに、人が作ったと思ったステージは「楽しい」「見た目が良い」と評価され、AIが作ったと思ったステージは「イライラする」「難しい」と評価されました。体験の評価は、実際に誰が作ったかより、誰が作ったと思ったかと強く結びついていました。
実験の自動生成ステージは既存の生成手法で作ったもので、いまの画像生成AIとは別物です。それでも「AI製だと思われた時点で評価が下がる」傾向は、Steamの開示とも無関係ではありません。開示は購入の判断に必要な情報ですが、表示そのものが期待値を下げることもあります。だからこそ「AI使用」と1行で書くより、何に使い、人がどこを確かめたかを書く意味があります。
分類AIゲームは「見える置き換え」「裏方」「遊びそのもの」に分けて見る
ここまでのデータを見ると、「AIゲーム」というひとつの言葉でまとめること自体に無理があります。AIの役割で3つに分けると、評価の違いが見えやすくなります。
| 型 | AIの役割 | プレイヤーから見えること |
|---|---|---|
| 見える置き換え | イラスト・背景・テクスチャなど、完成品の素材をAIで作る | AIの出来がそのまま商品の見た目になる。いまの開示作の大半で、失敗作ほど多い |
| 裏方の補助 | 翻訳、ボイス、文章、制作工程の補助 | 人が確認していればAIは前に出にくい。成功作で割合が高い |
| 遊びそのもの | NPCとの自由な会話、プレイヤーが使う生成機能 | AIを使うこと自体が機能になる。開示作の中ではまだごく少数 |
『風燕伝(Where Winds Meet)』はNPCとの会話にAIを使う
『風燕伝(Where Winds Meet)』の開示欄には、プレイヤーの入力にリアルタイムで応えるAI駆動のNPCのテキスト・ボイスチャットと、アップロードした画像や音声から顔を作る任意の機能が書かれています。背景を安く作るための使い方ではなく、プレイヤーがAIに話しかけ、その反応を受け取ることが遊びの一部です。
Steamのレビューは2026年10月6日時点で全言語115,618件、好評率86.4%(英語は64,247件で86.6%)の「非常に好評」です。この評価がAIのNPCから来ているとは言えませんが、生成AIを表に出した機能を持つ大型作品でも、高い評価は成り立っています。PC版の重さと設定は風燕伝のPC版推奨スペックと設定ガイドで扱っています。
『inZOI』はプレイヤーが生成機能を使う
『inZOI』は、テキストから衣装やアイテムのテクスチャを作る、2D画像から3Dのオブジェクトを作る、動画からキャラクターの動きを作るといった、プレイヤーが使う生成機能を開示しています。キャラクターの行動や思考には、テキストで働きかけられるSLM(小規模言語モデル)の技術を使っています。Haro氏は、こうしたプレイヤー向けの生成を持つ「AIネイティブ」な作品は、約9,400本のAI開示作の中でごく少数だとしています。
『CODEX MORTIS』はAIで作り、人が直した
コード、文章、アート、サウンド、音楽のすべてにAIを使ったと開示しているのが『CODEX MORTIS』です。Claude Codeで開発されたこの作品は、早期アクセスの約半年で視点をトップダウンからクォータービューに切り替えてキャラクターのスプライトを作り直し、開発者が設計を組み直したうえで、テスターが見つけた約100件のバグを直してから正式版になりました。AIで速く作れた分を、人が設計と検証に回した例です。Steamのレビューは全言語102件で好評率76.5%の「やや好評」です。
『紅の砂漠』『ARC Raiders』は「AIで作ったゲーム」ではない
売れているAI開示作として名前が挙がるのが『紅の砂漠(Crimson Desert)』と『ARC Raiders』です。ただ、Haro氏が指摘するとおり、どちらも今の生成AIツールが役に立つようになる前から開発が始まっていた大型作品で、『紅の砂漠』は開発に約7年かかっています。
開示文の中身も、AI中心の作品とは違います。『ARC Raiders』は、開発の過程でプロシージャルやAIベースのツールを制作の補助に使うことがあるが、最終的な製品は開発チームの創造性と表現を反映している、という説明です。『紅の砂漠』は、一部の2D小物の制作で補助的に生成AIを使い、そうした素材は制作工程の中でアート・開発チームが差し替えると書いています。『紅の砂漠』は発売時にこの開示がなく、AI生成の素材が見つかって謝罪した経緯があります。こうした作品を「AIで作れば大ヒットする」例として読むことはできません。
受け入れ条件プレイヤーが受け入れるのは、体験が増えるAI
どんなAIなら受け入れられるのかを、使い道ごとに聞いた調査もあります。中国伝媒大学などの研究チームによる論文(ICEC 2026に採択)で、310人のアンケートから1,856件の自由回答を集め、次の8つの使い道について賛否の理由を分析しました。
- 賢いNPCを動かす
- ストーリーやクエストをその場で生む
- 難易度やバランスを動的に調整する
- マッチングやおすすめを個人に合わせる
- 通報の審査やコミュニティの管理
- アート素材の生成
- AIと一緒に作る遊び
- ゲームプレイそのものが変化していく仕組み
回答者は、AIが没入感、自分に合わせた体験、新鮮さ、効率、便利さを高めるときは歓迎し、創造性、感情の本物らしさ、プレイヤーの主体性、公平さ、システムの安定、作者性、責任の所在を損なうときは反発していました。回答者は中国のSNSで集めた17〜34歳で、論文も予備的な結果と位置づけていますが、Steamのレビュー分析と同じ方向を向いています。
熱心なSteamユーザーの4割は、開示があっても気にしない
Steamのユーザー側の受け止め方は、ゲームの発見と販売を分析するGameDiscoverCoが2026年6月25日〜7月2日に行った調査で分かります。懸賞を通じて集めた熱心なSteamユーザー約3,800人の回答です。
| 質問 | 回答 | 読み取れること |
|---|---|---|
| AI開示のあるゲームを買うことについて | 問題はない約43%、どちらでもない26%、否定的約31%(うち8%は買わない) | 開示だけで買うのをやめる人は少数 |
| ストアの開示文を読むか | 詳しく読む44%、ざっと見る45%、読まない約11% | 開示文の書き方は購入前に読まれている |
| 開発者は音や映像のAI使用をすべて開示しているか | すべて開示していると思う17%、「一部だけ」と思う35% | 開示そのものが信用されきっていない |
| AIのコーディング支援も開示すべきか | 開示すべき56%、不要8%、どちらでもない37% | いまのSteamの開示より広い範囲を知りたい人が多い |
自由回答では、分析できた約2,100件のうち約51%が「用途によっては受け入れる」という条件付きの答えでした。受け入れられる用途として最も多く挙がったのはコーディング支援(約239件)で、試作や仮の素材(119件)、単調な繰り返し作業(101件)が続きます。回答者は一般のプレイヤーより関心の高い層ですが、ここでもAIそのものより、何に使うかが問われています。
同じ生成AIでも、「予算を削るために人の絵をAIの絵に置き換えた」と見えれば反発を受け、「これまでできなかった自由な会話ができる」と感じられれば遊びとして評価されます。境目は技術そのものより、プレイヤーの体験が増えたのか、作る側のコストが減っただけに見えるのかにあります。
買う前にAI開示のあるゲームを買う前に確かめる4つのこと
開示があるだけで避ける必要はありません。見るべきなのは、開示の中身と、その作品がどう売られているかです。
- 開示欄で用途を読む。「AI生成コンテンツの開示」に、画像・ボイス・翻訳・リアルタイム生成のどれに使ったかが書かれています。キャラクターの絵やキービジュアルそのものが生成なのか、翻訳だけなのかで、遊んだときに目につく度合いが変わります。
- 人が確認・修正したと書いてあるかを見る。成功作の21%は人の確認を明記していました。用途も書かない1行だけの開示は、失敗作の35%に見られた書き方です。
- 基本無料と正式版の作品は、最近のレビューを先に読む。基本無料の生成AI作品は推奨率50.1%、正式版は65.7%と、有料や早期アクセスの作品より厳しく評価されています。画像の崩れや翻訳への不満が続いていないかを確かめてから始めると安心です。
- 合わなければ2時間以内に判断する。Steamは購入から2週間以内でプレイ時間が2時間未満なら、理由を問わず返金を受け付けています。生成AI作品のレビューは中央値2.4時間で書かれており、早めに見切る人が多い分野です。
Q&Aよくある質問
まとめまとめ|AIを使ったかより、どこまで手をかけたかが見られている
2026年半ばのSteam新作の37%が生成AIの使用を開示し、その約4分の3は画像などのビジュアル用途です。成功作と失敗作を比べると、失敗作は画像生成に偏り、開示文も1行で済ませがちでした。成功作はボイスや翻訳にも使い、人の確認まで書いています。
50万件超のレビュー分析では、生成AI開示作の推奨率は68.4%で、AIに触れたレビューに限ると49.5%まで下がりました。ただ、AIに触れたレビューは全体の4.7%にすぎず、不満の中心は「誰も手をかけていないように見える」ことでした。AIでゲームを作れる人は確実に増えましたが、遊びたいと思わせる工程まではAIが肩代わりしてくれません。
AI開示のあるゲームを避ける必要はありません。開示欄で「何に使ったか」と「人が確認したか」を読み、基本無料や正式版の作品は最近のレビューで画像や翻訳への不満が続いていないかを確かめてください。合わなければ、購入から2週間以内・プレイ2時間未満のうちに返金を申請できます。
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出典:Sulka Haro「Three years of AI on Steam」/Sulka Haro「AI flagged games on Steam, Part 2」/Flockbay「AI disclosure on Steam」/Bazzaz, Cooper「Player Perceptions of Generative AI in Games: A Steam Review Analysis」/Bazzaz, Cooper「Playing the Imitation Game」(CHI 2026)/Hsu et al.「”It depends on where AI is used”」(ICEC 2026)/GameDiscoverCo「What do Steam fans really think about AI in games?」/Steamworks「コンテンツ調査」/Steam「返金について」/Steam『風燕伝(Where Winds Meet)』/Steam『inZOI』/Steam『ARC Raiders』/Steam『紅の砂漠(Crimson Desert Enhanced)』/Steam『CODEX MORTIS』(レビュー数は2026年10月6日時点)



