Steam新作の3割がAI使用を開示——開発者の52%は「悪影響」と回答。データで見る2026年のゲームとAI
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2026年7月時点で、Steamの新作の約3本に1本が生成AIの使用を開示しています。一方、GDC 2026の調査では業界関係者の52%が「AIは業界に悪影響」と回答。数字の意味と見方を整理します
- Steamの新作のうち、生成AIの使用を開示した作品は2026年半ばで約3本に1本。ただし「全編AI製」ではなく、1枚の絵から実行中の生成まで含む「使った」の申告の数
- GDC 2026調査で業界関係者の52%が「悪影響」、好影響は7%。悪影響は2024年の18%、2025年の30%から増え続けている
- Clair Obscur: Expedition 33は、開発中の仮素材に生成AIが残っていたとしてIndie Game Awardsの2部門を取り消しに
目次
数字で見る「AI開示」の広がり
「3割がAI製」と聞くと、3割のゲームをAIが作ったように読めます。実際の数字が測っているのは、ストアページに「AI Generated Content Disclosure」の欄があるかどうかです。Steamは2024年1月から、開発者に生成AIの使用を申告させています。
開発者のHaroは、2023年7月〜2026年7月にSteamで発売された53,597本を全数調べ、2026年7月に結果を公開しました。2026年半ばには、新作の約3本に1本が発売時点でAIの開示をしています。制度が始まった直後の2024年2月は約7%で、そこから増え続けた形です。
月間の発売数が増えた分のうち、60〜90%はAI開示作品だとHaroは試算しています。AI開示のない作品は月約1,030本から約1,320本へ緩やかに増えただけで、記録的な発売本数の伸びはAI開示作品が支えている形です。
2026年の年明けには、個人のSteamユーザーが1週間の新作を数えた例もあります。1月最初の7日間に発売された230本のうち81本(約35%)がAI使用を開示し、元日だけで42本のうち半数近くが該当しました。ただし1週間の数え上げなので、年間の割合を示す数字ではありません。
「開示」が意味する範囲
Steamが開示を求めているのは、プレイヤーが遊ぶ中で触れるコンテンツです。アートワーク、音声、物語、ローカライズなどが例に挙がっています。コードの補助など、開発環境に組み込まれたAIツールで作業が速くなる分は、開示の主眼ではないと明記されています。
区分は2つあります。開発中にAIで作った素材をそのまま出す「Pre-Generated」と、ゲームの実行中にAIが生成する「Live-Generated」です。後者は違法なコンテンツを生成させないための対策も申告する必要があります。つまり、開示欄がある作品の多くは「一部の素材にAIを使った」ものです。Haro自身も、開示は「AIに触れた」という合図であり、使用量の指標ではないと注意しています。
逆に、開示欄がないからAIを使っていないとも言い切れません。申告制なので、書かれていないものは外から確かめられません。
売上はどうなっているか
発売本数が増えても、売れる本数が同じように増えているわけではありません。Haroの推計(レビュー数×30を販売本数とし、価格を掛けた概算)では、Steam全体で上位1%の作品が売上の約94%、上位10本だけで約62%を占めます。AI開示作品が売上全体に占める割合は2024年の3〜6%から、2025年末〜2026年に10〜27%へ上がりましたが、発売本数の割合(約33%)には届いていません。
1本あたりでも差があります。発売月をそろえて比べると、レビュー100件以上(販売数でおよそ3,000本)に届く確率は、AI開示作品が非開示作品の約55%で、この比率は2年間改善していません。この売上額は割引や地域価格、Steamの手数料を反映しない概算なので、個別のゲームの収益としては使えません。
開発者の52%が「悪影響」——2年で3倍に急増
GDC 2026の調査は、ゲーム業界で働く2,300人超が対象です。開発者だけでなく、マーケター、経営者、投資家なども含まれ、今年は対象と設問を見直しています。
「悪影響」は2024年の18%から52%へ、約2.9倍です。好影響は13%から7%に下がりました。職種別ではビジュアル・テクニカルアートの64%、ゲームデザイン・ナラティブの63%、プログラミングの59%が否定的です。毎年同じ人に聞いたわけではないので、同じ人たちの気持ちが変わった数字ではなく、調査ごとの回答者全体の傾向として見るものです。
使っている人と、評価している人は別
同じ調査で、仕事で生成AIを使っている人は36%でした。ここには所属による大きな差があります。
使い道の中心は調べ物・アイデア出し(81%)、メール作成などの日常業務とコード補助(各47%)、プロトタイプ作り(35%)です。ツールはChatGPTが74%、Google Geminiが37%、Microsoft Copilotが22%でした。ゲームの素材そのものを作るというより、周辺の作業で使われている姿が見えます。一方で、好影響と答える割合は全体で7%にとどまります。使うことと、業界にとって良いと評価することは別の問いです。
Clair Obscur Expedition 33——Indie Game Awardsの取り消し
AI使用が賞に響いた例が、2025年末にありました。Clair Obscur: Expedition 33は2025年12月18日のIndie Game Awardsで、Indie Game of the YearとBest Debut Gameを受賞しました。その2日後、主催のSix One Indieは、応募時にゲームの制作で生成AIは使われていないという確認を得ていたものの実際は異なったとして、失格を発表しました。
問題になったのは、発売直後にプレイヤーが気づいた新聞の切り抜き風の背景テクスチャなど、仮素材として使われた生成AIの画像です。これらは数日後のパッチで手描きの素材に差し替えられました。2部門の受賞は次点の作品に渡り、Best Debut GameはSorry We’re Closed、Indie Game of the YearはBlue Princeになりました。AV Clubなどが報じています。The Game Awardsの受賞とは別の賞で、規定が「生成AI不使用」だったことが取り消しの理由です。
Steamの対応——「何を開示すべきか」の線引き
開示の対象は上で触れたとおり、プレイヤーが消費するAI生成コンテンツです。Haroは、売上が大きい作品の22%が発売後にAI開示を追加しており、その時期が2026年1月のSteamの規定改定の前後に集中していると報告しています。現在の開示数の一部は、既存作品の申告し直しが含まれている可能性があります。
一方で、Steamの検索でAIコンテンツを除外する機能は、現時点では見つかっていません。購入前に確かめたい場合は、ストアページのAI開示の欄を自分で読むことになります。
PCゲーマーが購入前に確かめること
開示の数字だけでは作品の質はわかりません。購入前にできることを整理します。
評価の面では、Haroの別の集計(評価が表示されるだけのレビューがある約26,000作品)で、ストアの好評率の平均はAI開示作品が77%、非開示作品が81%でした。中央値は80%対85%です。発売時期や作品の種類が違うため、AIが評価を下げたと言える数字ではありませんが、判断材料のひとつにはなります。
まとめ——「AI製」と「AIを使った」は違う
Steamの「約3本に1本」は、一部の素材にAIを使った作品も、全編をAIで量産した作品も含む数です。大手タイトルが翻訳やQAにAIを使うことと、素材をほぼ生成AIに任せて量産することは、まったく別の話です。
問題は、その違いが「開示あり」の一語に括られ、外から区別しにくいことです。開発者の52%が悪影響と答える一方、仕事で使う人も36%いる。この二つが同時に成り立っているのが、2026年の実態です。見る数字は、作品数(Steamの開示)、業界の意識(GDC)、プレイヤーの評価(レビュー)の三つに分け、どれも「AIの普及率」としてつなげて読まないことが大切です。
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