GeForce RTX 50でGDDR7メモリ温度を個別監視可能に|Afterburner・HWiNFOで冷却偏りとサーマルパッド不良を診断
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MSI Afterburner非公式プラグインとHWiNFOベータ版で、測定点ごとの冷却状態を確認
出典:igor’sLAB「GeForce RTX 50 GDDR7 Temperature Zones」解析記事 / VideoCardz「モジュール別GDDR7温度の解除」報道 / VideoCardz「ホットスポットセンサー削除」経緯 / Tom’s Hardware「RTX 5070 Ti・107℃・MODS」実測記事 / igor’sLAB「基板設計と冷却の局所高温」(2025年4月)にもとづきます。
グラフィックボードの温度を監視ソフトで確認しても、表示されるのはGPUコアの代表的な数値と、メモリ全体をまとめた1つの温度だけというケースがほとんどでした。基板のどこかで冷却に偏りが起きていても、平均的な数値の裏に隠れてしまい、サーマルパッドの接触不良なのか単なる個体差なのかを切り分ける手段はほとんどありませんでした。
GPU修理やハードウェア解析に携わる開発者らの共同作業により、GeForce RTX 50シリーズが搭載するGDDR7メモリについて、測定点ごとの個別温度を読み取る方法が明らかになりました。MSI Afterburner向けの非公式プラグイン「Hotspot.dll」や、HWiNFOのベータ版を通じて確認でき、GeForce RTX 5090では16個のメモリパッケージに対して8つの測定値を取得できます。
GPUコアの「ホットスポット温度」が非公開になっている問題や、基板上のVRM周辺で起きる局所的な発熱も、今回のGDDR7個別温度としばしば混同されます。実際には、GPUコアのホットスポット問題はRTX 50発売当初からの別の懸案であり、VRM周辺の局所高温も2025年4月に報告された全く別の事案です。測定対象も時期も異なる3つの温度情報だという点に注意してください。
要点まず何が起きたか
GPU修理やハードウェア解析に携わるPaulo Gomes氏のチーム、MSI AfterburnerおよびRivaTuner Statistics Serverの開発者であるAlexey「Unwinder」Nicolaychuk氏、Overclock.netのAsder00氏、HWiNFO開発者のMartin「Mumak」Malík氏らの共同作業により、GeForce RTX 50シリーズのGDDR7メモリについて、NVIDIAが一般公開していない内部の温度情報を読み出す方法が明らかになりました。MSI Afterburner向け非公式プラグイン「Hotspot.dll」のバージョン1.4・1.5と、HWiNFOのベータ版を通じて確認できます。GeForce RTX 5090では16個のメモリパッケージに対し8つの測定値が取得でき、局所的な冷却の偏りに気づきやすくなります。
解析開発者チームによるレジスター解析の中身
今回の成果は、複数の開発者による共同作業から生まれました。それぞれの役割を整理すると次のとおりです。
開発者らは、NVIDIAが一般公開していないメモリ関連のレジスターを解析し、GDDR7メモリが内部で保持している温度情報を読み出す方法を調べました。この作業には、複数のメモリチップがどのようにグループ化されて1つの測定値にまとめられているかを判定する処理も含まれています。GeForce RTX 5090の場合、16個のメモリパッケージに対し8つの測定値が出力されており、通常の監視APIでは公開されていない情報をもとに、このグループ分けの判定が行われています。
MSI Afterburnerでは、Asder00氏が開発する非公式プラグイン「Hotspot.dll」のバージョン1.4および1.5で、GDDR7の温度情報が新たに追加されました。同プラグインはこれまでにも、Blackwell世代GPU内部の複数の温度チャンネル、算出されたGPUホットスポット温度、通常のGPU温度との差を示す「ホットスポットデルタ」、メモリジャンクション温度などを表示していました。今回の更新で、これらに加えてGDDR7側の複数の温度情報が確認できるようになっています。
測定点RTX 5090は16個のメモリに対して8つの測定値
ここで注意したいのは、「GDDR7メモリをチップ単位で完全に個別監視できる」というわけではない点です。GeForce RTX 5090は、合計16個のGDDR7メモリパッケージを搭載しています。一方、今回確認された温度の測定点は8つで、2個のメモリを1組として1つの値が出力されるとみられています。そのため、RTX 5090では16個のメモリそれぞれの温度を完全に分離して取得できるわけではありません。
| 項目 | RTX 5090 | RTX 5060 Ti 16GB |
|---|---|---|
| GDDR7メモリ搭載数 | 16個 | 本記事の一次情報には具体的な個数の記載なし |
| 確認できた測定点 | 8点(表裏2個を1組として1系統の温度を出力) | 2点 |
| テスト条件・結果 | 本記事の一次情報には実測値の記載なし | 3DMark Steel Nomadのストレステスト中に68℃・64℃を記録 |
※記事冒頭の出典に挙げた解析記事にもとづきます(2026年7月時点)。
それでも、従来のようにメモリ全体を代表する1つの温度しか確認できなかった状態と比べれば、冷却状態をかなり詳しく調べられるようになります。GeForce RTX 5060 Ti 16GBを用いたテストでは、2つのGDDR7温度が表示され、3DMark Steel Nomadのストレステスト中にそれぞれ68℃と64℃を記録したと報告されています。
利点メモリ冷却の偏りを発見しやすくなる
複数のGDDR7温度を確認できる最大の利点は、メモリ全体の温度だけでは分からなかった局所的な異常を見つけやすくなることです。例えば、複数ある測定値のうち1つだけがほかより大幅に高い場合、次のような問題が考えられます。
- サーマルパッドの位置ずれ
- サーマルパッドの厚さ不足
- クーラーの締め付け圧力の偏り
- メモリとヒートシンクの接触不良
- 経年劣化によるサーマルパッドの硬化
- 基板表裏での冷却能力の差
特にGeForce RTX 5090のように、多数のメモリパッケージを搭載するモデルでは、測定点どうしの差から冷却の偏りに気づく材料になります。もっとも、現在表示される各測定値が基板上のどのメモリグループに対応しているかは完全には特定されていません。そのため、温度の偏りは把握できても「基板の右上にあるメモリのサーマルパッドが原因」といった位置まで断定できる段階ではありません。
- 複数の測定点間で温度に差があるかどうか
- RTX 5090なら8つの測定点のうち、どのグループの傾向が高いかの目安
- サーマルパッドの位置ずれや厚さ不足など、局所的な冷却不良を疑うきっかけ
- どの測定点が基板上のどの位置のメモリに対応するかは未特定
- RTX 5090の16個のメモリを1つずつ完全に分離して監視することはできない
- ツールが異なれば数値が完全に一致するとは限らない(非公式・ベータ段階の機能のため)
背景GPUコアのホットスポット温度も長らく非公開だった
GDDR7の個別温度とは別に、RTX 50シリーズでは発売当初からGPUコア側の「ホットスポット温度」の公開範囲も問題視されてきました。ホットスポットとは、GPUチップ内部で最も高温になっている一点を指す温度で、GPU全体の平均温度とは異なります。
従来のGeForce RTX 30・RTX 40シリーズでは、GPU-Zなどの監視ツールでホットスポット温度を確認できました。ところがBlackwell世代のRTX 50シリーズでは、一般向けAPIからホットスポット温度を正常に取得できなくなり、発売直後には255℃という明らかに異常な値が表示されるケースもありました。GPU-Z開発者はRTX 5090でホットスポット情報が利用できないとして、バージョン2.62.0でRTX 50系のみホットスポット表示欄自体を削除する対応を取っています(RTX 40系は引き続き表示されます)。
この問題については、ブラジルのGPU修理専門家Paulo Gomes氏のチームが調査したGeForce RTX 5070 Tiの事例がよく知られています。監視ソフト上ではGPU温度が67〜68℃程度と正常に見えていたにもかかわらず、NVIDIAの内部診断ツール「MODS」(Modular Diagnostics Software、NVIDIAが製造・RMA診断向けに使う非公開ツール)で調べたところ、ホットスポット温度は107℃に達していました。分解調査ではGPUコア中央部分のサーマルグリスが十分に接触しておらず、グリスを塗り直した後はホットスポット温度が約100℃まで低下したと報告されています。平均的なGPU温度だけを見ていたのでは、こうした冷却不良の原因を突き止めるのは困難でした。この事例の詳しい経緯や、監視ソフト側のその後の対応状況は、RTX 50のホットスポット温度問題を扱った別記事で詳しく解説しています。
今回のGDDR7個別温度は、このホットスポット温度とは別の情報です。GPUコア内部の一点ではなく、メモリチップ側の温度を複数の測定点に分けて確認できるようになった、という点に違いがあります。
別件VRM周辺の局所高温は2025年4月に報告された別の問題
RTX 50シリーズでは、GPUコアやGDDR7メモリとは別に、基板上の電源回路(VRM)周辺で局所的な高温が発生する可能性が2025年4月に指摘されています。これは、ここまで解説してきたGDDR7の個別温度や、GPUコアのホットスポット非公開問題とは測定対象も報告時期も異なる、別の事案です。3つを混同しないよう注意してください。
具体的には、RTX 5080・RTX 5070 Ti・RTX 5070・RTX 5060 Tiなど複数モデルにおいて、基板裏側の電源回路付近に熱が集中する事例が確認されました。GPUコア自体が一律に高温になる問題ではなく、PCB内部の電流経路やVRM付近のビア、クーラーとの熱的な接続が弱い部分に熱が集中すると説明されています。
比較HWiNFOベータ版とMSI Afterburnerの違い
GDDR7の個別温度を確認する方法は、現時点で2通りあります。HWiNFOのベータ版を使うか、MSI Afterburnerに非公式プラグイン「Hotspot.dll」を追加するかです。特にGeForce RTX 5090のように多数のメモリパッケージを搭載するモデルでは、複数のチップをグループ化して1つの測定値にまとめる処理を適切に認識する必要があります。HWiNFOのベータ版では、この構成を考慮した温度表示が実装されていると報告されています。
| 比較項目 | HWiNFOベータ版 | MSI Afterburner+Hotspot.dll |
|---|---|---|
| 導入のしやすさ | 比較的分かりやすい | 非公式プラグインの追加導入が必要 |
| センサー確認のしやすさ | 一覧でまとめて確認しやすい | ゲーム中のオンスクリーン表示やグラフ化に組み込みやすい |
| 連携・拡張性 | RTX 5090のメモリグループ分けを考慮した表示に対応 | RivaTuner Statistics Serverと組み合わせやすい |
| 提供形態・注意点 | 正式な安定版ではなくベータ版 | 非公式DLLのため配布元の信頼性を慎重に確認する必要がある |
一方、MSI Afterburnerで確認する場合は、標準機能だけでは表示できません。非公式のHotspot.dllプラグインを別途導入する必要があります。
注意非公式プラグインの導入とグラボ分解のリスク
Hotspot.dllは、MSI Afterburnerの標準パッケージに含まれる正式機能ではありません。インターネット上で配布されるDLLファイルは、悪意のあるプログラムを実行する手段として悪用されることもあります。検索結果に表示されたミラーサイトや、出所の分からないファイル共有サービスからダウンロードするのは避けたほうが安全です。導入する場合は、開発者本人の投稿や、開発経緯を確認できるコミュニティの正式な配布場所を利用し、ファイルの更新履歴や利用者の報告も確認してください。
グラフィックボードを分解すると、基板やコネクターの破損、サーマルパッドの位置ずれ、保証対応への影響といったリスクがあります。GDDR7の測定点に温度差が確認されたとしても、それだけで分解に踏み切るのではなく、まずはメーカーや販売店のサポートに相談するほうが安全です。
判断測定値だけで故障とは断定できない
複数のGDDR7温度に差があったとしても、それだけで故障や組み立て不良と断定することはできません。メモリの配置、GPUクーラーの構造、エアフロー、バックプレートの有無、電源回路から伝わる熱などによって、測定点ごとに一定の温度差が生じる可能性があります。確認すべきなのは、単純な最高温度だけでなく、次のような挙動です。
- 特定の測定点だけ温度が急上昇する
- 複数の測定点に大きな温度差が続く
- ファン回転数が異常に高くなる
- GPUクロックが周期的に低下する
- ゲーム性能が時間経過とともに落ちる
- メモリエラーや画面の乱れが発生する
- 購入直後と比べて温度が大きく上昇している
温度表示にはツール側の解析や換算処理も含まれるため、現時点では異なるソフトウェア間で数値が完全に一致するとは限りません。非公式またはベータ段階の機能であることを踏まえたうえで、絶対値だけでなく相対的な温度差や、負荷中の変化を見ることが重要です。
FAQよくある質問
まとめまとめ|GDDR7個別温度はNVIDIAの正式対応が望まれる新しい診断材料
今回の解析により、RTX 50シリーズのハードウェア内部には、一般ユーザーがこれまで確認できなかった温度情報が数多く存在することが改めて示されました。ただし現状では、NVIDIAの公開APIを通じて正式に提供されている機能ではなく、独立した開発者によるレジスター解析に依存しています。NVIDIAはBlackwell GPUのホットスポット情報の復活や温度センサーの文書化について問い合わせが行われていますが、本稿執筆時点で回答は確認されていません。
RTX 5090をはじめとするRTX 50シリーズは高価なグラフィックボードであり、自分のカードの冷却状態を確認したいと考えるのは自然な発想です。平均的なGPU温度だけでは見つけられない冷却不良が実際に確認されている以上、ホットスポット温度やメモリごとの温度情報は、オーバークロック愛好家だけのものではありません。製品の不具合を調べ、サーマルスロットリングや性能低下の原因を判断するための診断情報としても価値があります。NVIDIAが将来的に正式な監視APIを整備し、非公式プラグインを使わなくても安全に温度を確認できるようにすることが期待されます。
GeForce RTX 50シリーズのGDDR7メモリについて、測定点ごとの個別温度を確認できる手法が判明しました。MSI Afterburner向け非公式プラグイン「Hotspot.dll」v1.4・1.5とHWiNFOベータ版で確認でき、RTX 5090では16個のメモリパッケージに対し8つの測定値が取得できます。サーマルパッドの位置ずれや接触不良など、局所的な冷却の偏りに気づきやすくなる一方、測定点が基板上のどの位置に対応するかまでは特定できていません。
非公式プラグインの導入にはファイルの入手元を確認する注意が必要で、温度確認のためだけの分解もおすすめできません。測定値に差があっても即座に故障と断定せず、ファン回転数やクロックの挙動もあわせて確認してください。NVIDIAが正式な監視APIを整備することが今後期待されます。



