RTX 50 ホットスポット温度問題 / 2026年7月12日
RTX 50の「見えないホットスポット温度」問題|表示67℃の裏で107℃到達・こっそりスロットリング
RTX 5070 Tiが表示67℃でも内部は100℃超 ・ 原因はグリス塗布不良 ・ 温度が低い=安心とは限らない
RTX 50シリーズ(Blackwell)では、GPU内部の最高温度である「ホットスポット温度」を一般の監視ソフトから見られなくなっています。2026年7月11日、修理業者がNVIDIAの内部ツールで実測したところ、Windows上の表示は約67℃なのに、実際のホットスポットは100℃を超え、上限の107℃に達してこっそり性能を落としていた個体が見つかりました。この記事では、何が起きたのかを正確に整理し、自分のカードで異常を見分ける方法と、塗り直し・保証交換の判断基準まで解説します。
3つの別事象を正確に整理自分のカードでの見分け方塗り直しvs保証交換の判断
グラフィックボードには、GPUチップ全体の温度(エッジ温度)とは別に、チップ内部で最も熱くなる一点を測る「ホットスポット温度(ジャンクション温度)」というセンサーがあります。冷却がうまくいっているかを判断するうえで、実はこのホットスポット温度が重要です。
ところがRTX 50シリーズでは、このホットスポット温度がGPU-ZやHWiNFOといった一般的な監視ソフトから見られなくなっています。そして2026年7月11日、修理業者がNVIDIAの内部診断ツールで実測したところ、表示上は67℃と涼しげなカードが、内部では100℃を超えて上限の107℃に達し、密かに性能を落としていた——という事例が明らかになりました。
この記事では、混同されがちなこの問題を正確に整理したうえで、一般ユーザーが自分のカードで異常を疑う方法、そしてグリス塗り直しと保証交換(RMA)のどちらを選ぶべきかの判断基準まで解説します。
何が起きたか表示67℃・実測100℃超という乖離
ブラジルの修理業者が、過熱と動作不安定で持ち込まれたGIGABYTE製のRTX 5070 Tiを、NVIDIAの内部診断ツール「MODS」で調べました。その結果が次の通りです。
表示67℃でも、内部ホットスポットは100℃超Windows上の監視ソフトが示すGPU温度は約67〜68℃と正常に見えたにもかかわらず、内部ツールが示した実際のホットスポットは100℃を超えていました(技術者は「表示68℃を見て冷えていると思っても、ホットスポットは既に104℃」と説明)。表示温度だけを見ていては気づけない状態です。
上限107℃に到達し、こっそりスロットリングNVIDIAがRTX 50に設定したサーマルスロットリングの上限は107℃で、1回のテスト中にこの107℃へ5回到達し、そのたびにクロック(動作周波数)を落としていました。つまり、ユーザーが気づかないうちに性能が下げられていたことになります。
原因はグリス(TIM)の塗布不良分解して調べると、GPUチップとヒートシンクの間の熱伝導グリスが外周に寄り、コア中央がほぼ乾いていました。これは製造・組立時の塗布不良です。グリスを塗り直したところ、ピーク温度が106〜107℃から約100℃まで下がり、内部診断の温度テストもパス(合格)してスロットリングが解消しました。数℃の差でも、上限107℃に張り付いていた状態から解放されればスロットリングは止まります。
整理混同しやすい「3つの別々の話」
この件は、時期の異なる別々の話が一緒くたに語られがちです。正確に切り分けると次のようになります。ここを混同すると「RTX 50は全部欠陥」といった誤解につながります。
つまり「ホットスポットが見えないこと」自体は1年半前から知られていた既知の仕様で、新しいのは「内部ツールでなら読み出せると実証されたこと」「表示温度と実温度の大きな乖離が具体的に示されたこと」「その原因が個体のグリス塗布不良だったこと」の3点です。
冷静に「RTX 50は全部欠陥」ではない
今回問題が見つかったのは、あくまで組立時のグリス塗布不良という個体の品質問題であり、RTX 50すべてに共通する設計欠陥という話ではありません。ただし、この修理業者は同様の症状(グリス塗布不良やヒートシンクの接触不良)を複数の個体で確認しているとも述べています。
問題の本質は、欠陥率そのものよりも、「表示温度が低いから安心」と判断できなくなっている点にあります。ホットスポットが見えない以上、塗布不良の個体を引いても、表示温度からは異常に気づけません。だからこそ、次に説明する「間接的な見分け方」が重要になります。
なお、GPUの一点だけが局所的に高温になる問題は今回が初めてではありません。RTX 30世代では、GDDR6Xメモリのサーマルパッドの品質・接触不足でメモリ温度だけが異常上昇(110℃到達)する事例が知られていました。今回はメモリではなくGPUコアのホットスポットという違いはありますが、「全体温度は正常でも一部だけ危険な高温になり得る」という点は共通しており、表示される平均的な温度だけを見る危うさを改めて示しています。
見分け方MODSがなくても異常を疑う方法
MODSは修理店向けの内部ツールで、一般ユーザーは使えません。代わりに、GPU-ZやHWiNFO、MSI Afterburnerで見られる指標から、間接的に異常を疑うことができます。
温度は普通なのにクロックが伸びない・急に落ちるスロットリングが起きると、エッジ温度は正常に見えてもコアクロックが仕様のブースト値まで上がらない、あるいは負荷中にクロックが周期的にストンと落ちるという挙動が出ます。GPU-Z/Afterburnerでクロックとfpsの推移を記録し、温度が低いのにクロックが不安定なら要注意です。
fpsが不安定・以前より明確に落ちたスロットリングは断続的にクロックを下げるため、平均温度が低くてもフレームレートが周期的に波打つことがあります。また、買った当初と同じゲーム・同じ設定でfpsが明確に下がった場合は、グリスやサーマルパッドの劣化・接触不良を疑う根拠になります。
「ホットスポット欄が空欄」は仕様RTX 50ではGPU-Z等でホットスポット温度の欄が表示されない・空欄になりますが、これは故障ではなくNVIDIAの仕様です。RTX 40以前では見えていた項目なので戸惑いますが、欠落自体を不具合と早合点しないでください。
※参考までに、一般的にはエッジ温度とホットスポット温度の差は10〜15℃程度、高密度なRTX 50世代でも30℃程度までは正常とされます(NVIDIA公式の閾値ではなく、あくまで一般的な目安です)。当サイトのGPU適正温度ガイドでは旧世代基準で「差25℃以上は接触不良を疑う」としていますが、RTX 50は高密度設計でエッジとの差がもともと大きく出やすいため、その基準をそのまま当てはめないでください。今回の「エッジ67℃・ホットスポット100℃超」は差が30℃を大きく超えており、明確な異常域です。NVIDIA公式に確認できているのは「スロットリング上限=107℃」という数字だけです。
対処塗り直しと保証交換(RMA)の判断
保証期間内ならまずRMA(保証交換)を検討今回のような製造時のグリス塗布不良は、本来メーカー側の責任です。保証期間内なら、自分で開ける前にまず購入店・メーカーに相談するのが基本です。一般ユーザーは内部温度を数値で示せないため、「性能が仕様より出ない・クロックが落ちる・以前よりfpsが下がった」といった症状ベースで相談する形になります。
グリス塗り直しは自己責任・保証失効に注意グリスの塗り直しは根本的な解決になりますが、封印シールを破ると保証が失効する可能性が高いうえ、分解・再組立の失敗リスクもあります。特に液体金属は扱いを誤ると導電性でショートし、別のユーザーが自分で塗ったRTX 5070 Ti(今回の個体とは別のカード)をコアの割れで再起不能にした事例も報告されています。初心者にはおすすめしません。塗り直すなら保証が切れてから、導電性がなく扱いやすい通常のグリスで、が基本です。
アンダーボルトは緩和策として先に試せるアンダーボルト(同じクロックで電圧を下げる設定)は、発熱を抑えてホットスポットを下げるのに有効な、カードを開けずに試せる低リスクな手段です。ただし、今回のように原因がグリスの接触不良の場合は根本解決にはならず、あくまで一時的な緩和策です。
結論「温度が低いから安心」をやめる
この件の一番のメッセージは、RTX 50では表示温度が低くても、それだけで冷却が正常とは判断できないということです。ホットスポットが見えない以上、温度の数字ではなくクロックとfpsの挙動で異常を疑う習慣が大切になります。
実測した修理業者は、内部ツールを持たない一般ユーザーがホットスポットを確認できないままでは、冷却不良の個体に気づけず早期故障につながりかねないとして、NVIDIAに対し一般の監視ソフトでの表示復活を求めています。ユーザーが自衛するには、現状は次の手順を踏むしかありません。
これからRTX 50シリーズを買う人は、冷却に定評のある3連ファンなどのしっかりした冷却モデルを選び、購入後にクロックとfpsが仕様どおり出ているかを一度確認しておくと安心です。すでに使っている人も、以前よりfpsが落ちた・クロックが不安定と感じたら、保証期間を確認したうえで販売店に相談するのが良いでしょう。
定番の3連ファンRTX 5070 TiMSI RTX 5070 Ti VENTUS 3X OC 16GB3連ファンで冷却に余裕のあるRTX 5070 Ti。ただし今回のようなグリス塗布不良はモデルの良し悪しでは防げないため、買ったら必ずクロックとfpsが仕様どおり出ているかを確認しておくのがおすすめです。VRAM 16GB・DLSS 4対応で長く使える一枚です(※価格は変動します。最新はリンク先で確認)価格目安:約180,000円~Amazonで価格を見る
保証切れ後の塗り直しに|定番グリスNoctua NT-H1 高性能熱伝導グリス保証が切れたカードを自分で塗り直す場合の定番グリス。導電性がなくショートの心配がないため、初めてのグリス交換でも扱いやすい一本です。保証期間内はまずメーカー相談が基本で、塗り直しは保証失効に注意してください(※価格は変動します。最新はリンク先で確認)価格目安:約2,200円~Amazonで価格を見る
FAQよくある質問
自分のRTX 50も同じ問題を抱えていますか?
全てのカードが該当するわけではありません。今回はグリス塗布不良という個体の品質問題です。ただし表示温度だけでは見抜けないため、温度が低いのにクロックが伸びない・fpsが不安定・以前よりfpsが落ちた、といった症状があれば疑う価値があります。
なぜホットスポット温度が見られないのですか?
RTX 50シリーズでは、NVIDIAが2025年1月頃から一般の監視ソフトでホットスポット温度を表示できないようにしています。センサー自体はハードとして生きていますが、GPU-ZやHWiNFOからは読み出せません。RTX 40以前では表示できていた項目です。
グリスを塗り直せば直りますか?
原因がグリス塗布不良なら大きく改善します(今回の例ではピーク温度が約100℃まで低下)。ただし分解は保証失効のリスクが高く、液体金属の使用は破損事故もあります。保証期間内なら、自分で開ける前にメーカー・購入店へRMA(保証交換)を相談するのが先決です。
NVIDIAやメーカーは何かコメントしていますか?
今回のグリス塗布不良・内部ツール実測の件について、現時点でNVIDIAやボードメーカーの公式なコメントは確認できていません。動きがあれば追記します。
RTX 50は買わないほうがいいですか?
そこまでの話ではありません。今回は個体の組立品質の問題で、多くのカードは正常に動作しています。ただし冷却に定評のあるモデルを選び、購入後にクロックとfpsを一度確認しておくと、万一の個体差にも早く気づけます。
まとめ数字ではなく「挙動」で冷却を判断する時代
RTX 50世代でホットスポット温度が見えなくなったことで、「表示温度が低い=冷却は正常」という従来の判断が通用しなくなりました。今回明らかになったのは、表示67℃の裏で内部が100℃を超え、上限107℃で密かにスロットリングしていた個体の存在です。原因はグリス塗布不良という個体の品質問題でしたが、それを表示温度から見抜けないのが本質的な問題です。
対策はシンプルです。温度の数字だけで安心せず、クロックとfpsが仕様どおり安定して出ているかで冷却の健全性を判断すること。異常を感じたら、保証期間を確認してまずメーカーに相談する。この2点を押さえておけば、見えないホットスポットに振り回されずに済みます。適正温度の目安や冷却の基本は、GPUの適正温度ガイドもあわせてご覧ください。
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