Steam Client Betaが9月9日更新|高遅延回線のDL改善はLinux限定、Steam Inputの軽量化は翌日に不具合修正
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高遅延回線のダウンロード改善はLinuxセクションの項目で、Windowsは対象外
出典:Steam Client Beta – September 9th/Steam Client Beta – September 10th。変更点はいずれも2026年9月11日にValveの公式アップデートノートで確認した原文にもとづきます。
Steam Client Betaは、正式版へ降りてくる前の変更を試せる先行版です。2026年9月9日の更新はかなり項目数が多く、Big Picture Modeに「Big Art Mode」やスクリーンセーバーが追加されたことが話題になりました。
ただ、ゲーミングPCを使う側にとって効いてくるのは見た目ではありません。Steam InputのCPU性能改善、一部D3D12ゲームでのGame Recording負荷軽減、スクリーンショット撮影時のフレームレートのヒッチ修正といった、ゲームと同時に動くSteam側の処理が軽くなった部分です。
この記事では、更新内容をどのセクションに書かれていたかまで含めて整理します。読み違えやすいのが「高遅延回線のダウンロード速度改善」で、これはLinuxセクションの項目です。あわせて、この更新の一部が翌9月10日のベータで不具合修正を受けた点にも触れます。
9月9日のベータで性能に関わる変更は4点。Steamクライアントの起動性能、Steam InputのCPU性能、一部D3D12ゲームでのGame Recording負荷、D3D11/D3D12でのスクリーンショット時のヒッチです。高遅延回線のダウンロード改善はLinuxセクションにあり、Windowsは対象外。そしてSteam InputとProton選択UIの変更は、いずれも翌9月10日のベータでリグレッション修正が入りました。
目次
概要性能に関わる変更はこの4点
アップデートノートは項目数が多いので、ゲームの動作に関係するものだけを抜き出します。かっこ内は、Valveがその項目を置いているセクション名です。
| 項目 | 変更内容 | 対象 |
|---|---|---|
| クライアント起動 | Steamクライアントの起動性能を改善 | 全般(General) |
| Steam Input | 実行時と設定読み込み時のCPU性能を改善 | Steam Input |
| Game Recording | 一部のD3D12ゲームで録画による性能への影響を軽減 | Windows |
| スクリーンショット | D3D11・D3D12で撮影時のフレームレートのヒッチを修正 | Windows(In-Game Overlay) |
| Vulkanオーバーレイ | 複数ウィンドウを作るVulkanゲームでオーバーレイが描画されない問題を修正 | Vulkan(In-Game Overlay) |
| ダウンロード | 高遅延回線でのダウンロード速度を改善 | Linux |
| 互換ツール選択 | Proton等の選択ドロップダウンを常時表示し、推奨をDefaultとして先頭に | Linux |
| Remote Play | リモート端末へのダウンロードにPINが不要に(インストールとストリーミングには引き続き必要) | Remote Play |
Valveは今回、どの項目についても改善率やフレームレートの差といった数値を公開していません。「何パーセント速くなったか」は現時点では分からない、という前提で読む必要があります。
切り分け高遅延回線のダウンロード改善はLinuxの項目
今回いちばん読み違えやすいのが、ダウンロード速度の改善です。アップデートノートの原文はこうなっています。
「Improved download speeds on high latency connections.」
この一文はLinuxという見出しの下にあり、その直後にはProtonの互換ツール選択やSteamOS関連の項目が続きます。Windows版Steamで一律にダウンロードが速くなるという更新ではありません。
ここでいう遅延(レイテンシー)は、回線速度そのものとは別の話です。同じ1Gbps回線でも、配信サーバーまでの距離が遠い、VPNを経由している、モバイル回線や衛星回線を使っているといった条件では、通信の往復に時間がかかります。契約上の最大速度が出ていても、往復遅延が大きいと転送効率が落ちる、という現象です。
Valveは、具体的に通信処理のどこをどう変えたのかを説明していません。したがって「低遅延の光回線でSteamのダウンロードが大幅に速くなる」と期待する種類の更新ではないと見るのが妥当です。これまでLinux版で高遅延回線を使ったときに速度が伸びにくかった環境向けの改善、という位置づけになります。
Windows環境でダウンロードが遅い場合は、別の要因を順に当たる必要があります。ダウンロード地域の設定、回線の混雑、Wi-Fiの品質、SSDの書き込み速度、そして展開とパッチ適用の処理です。特に最後の2つは見落とされがちで、ネットワーク使用率が落ちてもディスク側で処理が続いていることがあります。この切り分けはSteamのアップデートがダウンロード後に長い原因で詳しく扱っています。
InputSteam InputのCPU性能改善と、機能面の4点
Windowsユーザーにも関係するのがSteam Inputです。原文は「Improved CPU performance at runtime and in configuration loading」で、ゲーム実行中と設定読み込み時の両方が対象と書かれています。
Steam Inputは、Xbox・PlayStation・Nintendo Switch系を含む各種コントローラーをSteamのゲームで使うための仕組みです。ボタンのリマップだけでなく、ジャイロ、トラックパッド、アクションセット、仮想マウス・キーボード入力といった処理も担っています。その実行処理が軽くなった、という変更になります。
ただしこれを「ゲームのフレームレートが上がる」と読むのは行き過ぎです。Valveは削減されたCPU使用率もフレームレートの差も公開していません。一般的なゲーミングPCでSteam InputがCPU負荷の大半を占めるとは考えにくく、GPUがボトルネックになっているタイトルで平均フレームレートが大きく変わる可能性は低いはずです。
逆に効きやすいのは、CPU性能が限られる環境、高フレームレートを狙うタイトル、複雑なSteam Input設定を使っている場合です。確認するなら平均フレームレートより、CPU使用率とフレームタイムを見るほうが変化を拾えます。
機能面では次の4点が入りました。Steam Input APIが必須のゲームで互換性のある設定をConfigurator Browserに表示、未発売ゲームでコントローラー対応情報がないときに「このゲームはコントローラーに対応していません」と誤表示する問題の修正、デスクトップUIのログイン画面でデスクトップ設定が適用されない問題の修正、トラックパッドのエミュレートジョイスティック用アダプティブセンタリング設定の追加です。
コントローラーが認識されているのにゲーム内で動かない、という症状はSteam Inputの設定に起因することが多い部分です。切り分け方はSteamではコントローラーを認識するのにゲーム内で動かない原因でまとめています。
録画D3D12ゲームの録画負荷と、撮影時のヒッチ
Windowsのゲーミング環境でいちばん直接的に効きそうなのがGame Recordingです。原文は「Decreased performance impact of game recording for some D3D12 games on Windows」となっています。
注目したいのがsome(一部の)という語です。Steam録画を使っているDirectX 12ゲームのすべてでフレームレートが上がる、という更新ではありません。対象タイトル、対象GPU、改善前後の数値、エンコード方式のいずれもValveは公開していないため、現時点で分かるのは「Windows上の一部D3D12ゲームで、録画を有効にしたときの性能低下が小さくなった」ということまでです。
もうひとつ重要な性質があります。これはゲーム本体のDirectX 12処理を速くする変更ではなく、録画機能が与える影響を減らす修正です。したがって録画を使っていない環境では、この変更でフレームレートは動きません。効果を確かめたいなら、見るべきは録画OFF時の絶対値ではなく録画OFF時とON時の差です。
検証するなら平均フレームレートだけでは足りません。1% Low、0.1% Low、フレームタイム、CPU使用率、GPU使用率、GPUのビデオエンコード使用率、SSDへの書き込み量まで見ると変化を拾えます。平均が変わらなくても、録画中に出ていた瞬間的なフレームタイムのスパイクが減れば体感は改善するからです。高リフレッシュレート環境ほど小さな乱れが気になるので、240Hzや360Hzで競技系タイトルを録画しながら遊ぶ人には関係してきます。
録画とは別に、In-Game Overlayにも2件の修正が入りました。ひとつはWindowsのD3D11・D3D12ゲームで、スクリーンショット撮影時に起きるフレームレートのヒッチの修正です。撮った瞬間に一瞬カクついていた環境では改善する可能性があります。もうひとつは、複数ウィンドウを作るVulkanゲームでオーバーレイが正しく描画されない問題の修正で、スクリーンショットや録画などオーバーレイ経由の機能もあわせて対象です。
なおこのVulkanの修正は、LinuxセクションではなくIn-Game Overlayセクションに置かれています。VulkanはWindowsでも使われるAPIなので、Linux専用の修正と読まないほうが正確です。
翌日この更新の2件は、翌9月10日に不具合修正を受けた
ここが、9月9日の更新だけを見ていると抜ける部分です。Valveは翌9月10日にもSteam Client Betaを更新しており、その中身は次のようになっています。
- Steam Input。設定を編集するとアクションセットのレイヤーバインドが壊れる問題を修正
- Linux。既定の互換ツールをアンインストール済みの状態で互換ツール選択ドロップダウンを操作するとクライアントが落ちる問題を修正
- SteamRT3 Experimental Beta。Gentoo Linuxでクライアントが起動しなくなる問題を修正
- 9月9日に改善されたSteam Inputと互換ツール選択は、どちらも翌日に修正が必要だった
- ベータは前日の変更が翌日に巻き戻ることがある、という実例になっている
- 性能改善だけを目的にメインPCで切り替える動機としては弱い
9月10日の更新ではこのほか、ダウンロードページで「ダウンロードの一時的な制限」が正しく更新されない問題も修正されています。いずれも小さな項目ですが、前日に手を入れた箇所がそのまま不具合になっていたという点は押さえておく価値があります。
ベータの更新頻度は高く、直近では9月2日、9月6日、9月9日、9月10日と続いています。特定の日付の変更点だけを見て判断するより、数日あとの版まで追ってから評価するほうが実態に近くなります。
見た目Big Art Modeとスクリーンセーバーの追加
性能以外では、Big Picture Modeが大きく変わりました。新しいBig Art Modeはホーム画面のゲームアートを大きく表示するオプションで、設定のホーム項目から有効にできます。Recommendedタブには個人向けのカレンダーも追加されました。
スクリーンセーバー機能も入りました。設定のカスタマイズ項目から選べて、既定は最近プレイしたゲームのアートと最近のゲーム内スクリーンショットを表示するスライドショーです。もうひとつはレトロ風のバウンドするロゴで、さらに独自のスクリーンセーバーを読み込ませることもできます。Steamのインストール先にある設定フォルダー内の専用ディレクトリへ置く方式で、同梱のバウンドロゴを雛形にできると案内されています。
このほかBig Picture Modeでは、実行中のゲームを終了させる操作のときに電源メニューへ明示的な警告文が出るようになり、ライブラリ用やヒーロー用のアートがないアプリの既定アートも変更されました。リビングのPCや携帯型ゲーミングPCでSteamを家庭用ゲーム機のように使っている人には、性能面より体験が変わる部分です。
参加ベータへの入り方と、戻し方
今回の変更はSteam Client Beta向けで、通常の安定版へ即座に適用されたわけではありません。PCで試す場合は、Steamの設定からインターフェイス項目を開き、クライアントベータへの参加でSteam Beta Updateを選んでSteamを再起動します。Steam Deckの場合は、設定のシステム項目にあるベータへの参加から、システム更新チャンネルをベータに変更します。
戻したいときは同じ場所で参加しない設定に切り替えます。Valve自身も、ゲームやSteamに問題が起きた際の切り分け手段としてベータから通常版へ戻す方法を案内しています。
そのうえで判断を書きます。安定性を優先するメインのゲーミングPCなら、今回の性能改善だけを目的にベータへ切り替える必要はありません。数値が公開されていないうえ、前述のとおり9月9日の変更のうち2件が翌日に修正を受けています。正式版へ降りてくるのを待って問題のない内容です。
FAQよくある質問
今回の変更では対象外です。高遅延回線のダウンロード速度改善はアップデートノートのLinuxセクションに置かれた項目で、Windows向けの変更としては記載されていません。
Valveは数値を公開していないため断定できません。一般的なゲーミングPCではSteam InputがCPU負荷の大半を占めるとは考えにくく、GPUボトルネックのタイトルで平均フレームレートが大きく動く可能性は低いと考えられます。確認するならCPU使用率とフレームタイムを見るほうが適しています。
なりません。これはゲーム本体のDirectX 12処理を速くする変更ではなく、Game Recordingが性能へ与える影響を減らす修正です。録画を使っていない環境では変化しません。
いいえ。原文は「some D3D12 games」で、一部のタイトルが対象です。どのタイトルが該当するかは公開されていません。
メインのゲーミングPCなら急ぐ理由は薄いです。改善量が数値で示されておらず、9月9日の変更のうちSteam Inputと互換ツール選択の2件は翌9月10日にリグレッション修正を受けています。正式版への反映を待つのが無難です。
戻せます。参加したときと同じ設定項目でベータに参加しない状態へ切り替え、Steamを再起動します。Valveも問題の切り分け手段としてこの手順を案内しています。
まとめ軽くなったのはゲームではなくSteam側の処理
2026年9月9日のSteam Client Betaは、見た目の変更が目立つ一方で、ゲームと同時に動くSteam側の処理にも手が入りました。クライアントの起動性能、Steam InputのCPU性能、一部D3D12ゲームでの録画負荷、そしてD3D11・D3D12でのスクリーンショット撮影時のヒッチです。
読み違えやすい高遅延回線のダウンロード改善はLinuxセクションの項目で、Windowsは対象外でした。またValveは、どの項目についても改善量を数値で示していません。
この更新を「ベータにするとゲームが速くなる」と受け取るのは正確ではありません。速くなったのはゲームそのものではなく、Steam InputやGame Recordingといった、ゲームと並行して動くSteam側の処理です。効果が出るのは録画を常用している人、複雑なコントローラー設定を使っている人、Linuxで高遅延回線を使っていた人に限られます。しかも9月9日の変更のうち2件は翌9月10日に不具合修正を受けました。メインのゲーミングPCなら、正式版へ降りてくるのを待って問題ありません。



