オープンソース版Windows「ReactOS」のARM64版でx64ゲームが起動|FEX経由のマリオ64、音は出ず640×480
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音は出ておらず、解像度は640×480、SSEは無効化されています
出典:Ahmed Arif(SidiHmeed)氏の投稿とデモ動画(2026年9月6日)、ReactOS公式アカウントの投稿(2026年9月9日)、ReactOS公式ダウンロードページ、Microsoft Learn「How emulation works on Arm」、FEX-Emu公式リポジトリ(いずれも2026年9月11日取得)。
Windowsではない何かの上で、Windowsのゲームが動く。しかもCPUの種類まで違う。そういう話が出てきました。
ReactOSは、Windowsのアプリやドライバーとバイナリ互換で動くことを目標に、ゼロから書かれているオープンソースOSです。その実験的なARM64版で、x64向けのWindowsアプリが起動しました。開発者のAhmed Arif氏が2026年9月6日に投稿し、9月9日にReactOS公式アカウントも取り上げています。
ただし「x64ゲームが動いた」という一行だけでは、何がどこまで動いたのかが分かりません。公開されたデモ動画には、動作条件がそのまま映り込んでいます。そこを数えたうえで評価します。
目次
要点先に結論だけ押さえる
実測デモ動画に映っている数字を読み取りました
動画は104秒で、デスクトップ全体が映っています。ゲーム画面だけでなく、タスクマネージャーとコマンドプロンプトのログも同時に表示されていました。
まず、動いていたソフトの正体です。ウィンドウのタイトルバーには「Mupen64Plus OpenGL Video Plugin by Rice v2.6.0」と出ています。Mupen64PlusはNINTENDO 64のエミュレーターで、そのx64 Windows版が起動し、中でスーパーマリオ64が実行されている状態です。
つまり、x64のPCゲームが直接動いたわけではありません。x64版のエミュレーターがFEXでARM64へ変換されて動き、その中でさらにN64のゲームが動くという二段構えです。
ここからが本題です。コンソールログには、動作条件がそのまま出力されていました。
| 項目 | ログ・画面の表示 | 意味 |
|---|---|---|
| 音声 | No audio plugin attached. There will be no sound output. | 音声プラグインが未接続で、音は出ていません |
| 解像度 | Setting 32-bit video mode: 640x480 | 640×480で描画しています |
| 命令セット | Video: Disabled SSE processing. | 描画プラグイン側のSSE処理を切っています |
| 設定ファイル | Reading .ini file: RiceVideoLinux.ini | Linux版由来の設定を読み込んでいます |
| 描画API | Failed to set GL_BUFFER_SIZE to 32. (it's 24) | 要求した色深度が通らず24bitで動作しています |
| ROM | Found ROM 'SUPER MARIO 64' | 読み込まれたのはマリオ64です |
音が出ていないという点は、記事の見出しからは分からない部分です。SSE処理を無効化しているのも見逃せません。SSEはx86系CPUの拡張命令で、変換の負担が大きい部分にあたります。
次に負荷です。タスクマネージャーのパフォーマンスタブが開かれており、実行中の数字が読み取れました。
| 指標 | 表示値 | 補足 |
|---|---|---|
| CPU使用率 | 31〜40% | 動画内で変動していました |
| 使用メモリ | 227MB | 物理メモリは約8GB |
| プロセス数 | 29 | fexprof.exeも動いています |
| CPUコア数 | 4 | 使用率グラフが4枚あります |
4コア・メモリ8GBという構成は、この開発者がこれまで対象にしてきたシングルボードコンピューターと整合します。ただし機材そのものは映っていないため、機種は特定できません。
画面右下のバージョン表示は「ReactOS Version 0.4.17-arm64-dev」で、ビルド番号は20260906、コンパイラーはClang 23.1.0でした。
同じ場所に「Target: Windows 11 24H2 build 26100」とも書かれています。ReactOSは長らく古いWindowsとの互換性を軸に開発されてきましたが、少なくともこのARM64ビルドが目標に置いているのは現行のWindows 11です。
仕組みFEXが受け持つのは命令変換だけです
FEXは、ARM64上でx86およびx86-64のプログラムを実行するためのオープンソースのエミュレーターです。開発元自身が「Arm64 Linux向けの高速なユーザーモードx86・x86-64エミュレーター」と説明しており、本来はLinuxを前提にした道具でした。
LinuxでWindowsゲームを動かす場合、FEXはWineやProtonと組み合わせて使われます。CPU命令の変換をFEXが担当し、Windows APIの提供はWineが担当する分担です。
ReactOSの場合、この分担が変わります。ReactOS自身がWindows互換のAPIを持っているため、Wineを挟む必要がありません。FEXの仕事はx86-64命令をARM64命令へ変換する部分だけになります。
Microsoftも同じ課題をPrismで解いています。公式ドキュメントによれば、Prismはx86命令のまとまりをARM64命令へその場でコンパイルし、変換済みのコードをキャッシュして次回以降の負担を減らす仕組みです。Windows 11 24H2から導入され、Snapdragon向けに最適化されているとも明記されています。
役割だけを見れば、ReactOSにとってのFEXはWindowsにとってのPrismにあたります。違いは、片方がMicrosoftの製品に組み込まれた機能で、もう片方が独立した2つのオープンソースプロジェクトの組み合わせだという点です。Snapdragon X搭載PCでゲームがどこまで動くかは別途まとめています。
課題残っている壁は、命令変換の外側にあります
今回動いたのはCPU命令の変換部分です。最新のPCゲームを動かすには、その先にいくつも別の層があります。
ひとつは描画です。デモで使われたのはOpenGLの描画プラグインで、しかも色深度の要求が通らず24bitに落ちています。現在のPCゲームが使うDirectX 11やDirectX 12は、OSのドライバーモデルに深く依存します。ReactOS上で最新のグラフィックスドライバーが動く状態にはなっていません。
もうひとつがアンチチートです。こちらはMicrosoftの公式ドキュメントに、そのまま答えが書かれています。
Microsoftは「エミュレーションはユーザーモードのコードのみをサポートし、ドライバーはサポートしない。カーネルモードのコンポーネントはArm64としてコンパイルされる必要がある」と明記しています。
Easy Anti-CheatやBattlEyeはカーネルモードのドライバーを使います。命令変換の層がどれだけ優秀でも、ここは変換では越えられません。ReactOSでもWindows 11 on Armでも、この制約は共通です。
この構造は、Linuxでアンチチート付きのゲームが動かない理由とも重なります。詳しくはLinuxでEAC・BattlEye・Vanguardがどこまで対応しているかで整理しています。
さらにReactOS自身の完成度もあります。公式ダウンロードページには「ReactOSはまだアルファ段階であり、安定性もファイルの安全性も保証しない」と書かれています。最新版の0.4.16が2026年8月29日に出たばかりで、ARM64版はそれよりさらに実験的な位置づけです。
読み方PCゲーマーにとっての意味は、ReactOSの外にあります
正直に書くと、今すぐ動く必要はありません。手持ちのWindows 11を消してReactOSに入れ替えるような話ではないからです。
それでも見ておく価値があるのは、「既存のx64ゲーム資産をARMのPCでどう動かすか」という問題が、これから自分の買い物に関わってくるからです。
ARM版のOSが完成しても、Steamで売られているゲームの大半はx64のままです。各社が一斉にARM64版を用意するとは考えにくく、だからこそ変換層の出来が実用性を決めます。Windows側ではPrismがそれを担い、ReactOSではFEXがその位置に入りました。同じ問題に、別の答えが2つ出てきたということです。
今回のデモが示したのは、その2つ目の答えが机上の空論ではなかったという点です。音は出ず、640×480で、SSEを切った状態ではありますが、実際にウィンドウが開いてゲーム画面が描画されました。数か月前まではARM64で起動すること自体がニュースだったことを踏まえると、進み方は速いといえます。
FAQよくある質問
まとめ動いたのは事実ですが、条件込みで見る話です
ReactOSのARM64版でFEXが動き、x64のWindowsアプリが実行されました。デモではx64版のMupen64Plusが起動し、その中でスーパーマリオ64が描画されています。
一方で動画から読み取れる条件は、音声プラグインなし、640×480、SSE処理は無効、CPU使用率31〜40%というものでした。
「オープンソース版WindowsでPCゲームが動くようになった」と読むのは行きすぎです。動いたのは命令変換の層で、描画ドライバーもアンチチートもその外側に残っています。特にアンチチートは、Microsoft自身がエミュレーションでは扱えないと書いている領域です。
それでも、x64の資産をARMへ持っていく道筋がオープンソースの組み合わせでも成立しうると示された意味は小さくありません。次に見るべきは、一般的なx64ゲームの互換性、変換による性能低下の実測、そしてReactOS上での3D描画の3点です。



