16年前のSanDisk SSD P4が9PB書き込み|14万回超の全容量書き換えでもSMART「PASSED」は健康の証明ではない
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14万回超の全容量書き換えでも、SMART「PASSED」は健康の証明ではない
出典:Level1Techs Forumsの投稿者による経過報告、SanDisk「SSD P4 Solid State Drive Product Manual Rev 1.1」(2010年10月)、smartmontools公式ドキュメントにもとづきます。投稿は2026年8月27日時点のものです。
「16年前のSSDが公称の225倍書いてもまだ健康」——そう見えるニュースですが、結論から言うとこの解釈は正確ではありません。投稿者自身が、物理NANDへの書き込みを可能な限り避けながらホスト側の書き込みカウンターだけを増やす特殊な方法を使っていると説明しているためです。
加えて、smartctlのログをよく見るとReported_Uncorrectableが2,234件、Device Error Countが181件記録されており、ドライブの先頭セクター(LBA 0)で訂正不能な読み取りエラーが繰り返し発生しています。総合判定は「PASSED」でも、このSSDは健全な状態とは言えません。
この記事では、9PB・14万回という数字が実際に何を測っているのか、SanDisk公式マニュアルの耐久性表、そして「SMART PASSED」が意味することと意味しないことを、現行のNVMe SSDにも通じる考え方として整理します。
目次
概要SanDisk SSD P4とは|2010年発売のSATA II世代64GBモデル
今回話題になっている「SanDisk SSD P4」は、SanDiskが2010年10月に製品マニュアルを発行したSATA接続のSSDです。公式マニュアルによると、4GB・8GB・16GB・32GB・64GB・128GBの6容量で展開され、インターフェースはSATA II(ver.2.6、3.0Gbps)、NANDには32nm世代のMLCフラッシュを採用しています。64GBモデルの公式スペックはシーケンシャルリード最大160MB/s、シーケンシャルライト最大100MB/sで、現行のPCIe 4.0/5.0 NVMe SSDと比べると大幅に低速ですが、当時のネットブックや組み込み機器向けSSDとして使われていた製品です。
SanDisk公式マニュアルは、この製品の長期データ耐久性(Long Term Data Endurance, LDE)をTBW(Terabytes Written)で定義しています。容量ごとの数値は次のとおりです。
| 容量 | LDE(公称耐久性) |
|---|---|
| 4GB | 2.5TBW |
| 8GB | 5TBW |
| 16GB | 10TBW |
| 32GB | 20TBW |
| 64GB(今回の対象) | 40TBW |
| 128GB | 80TBW |
※SanDisk「SSD P4 Solid State Drive Product Manual Rev 1.1」Table 2-3にもとづきます。同マニュアルはLDEについて「典型的なWindows OSのワークロードにもとづいて算出される、ユーザーの書き込みパターンに直接依存する数値」と定義しています。
実測ログ投稿されたsmartctlの内容
2026年8月27日にRedditへ投稿され、Level1Techs Forumsでも継続報告されているsmartctlのログでは、次の値が確認できます。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 対象機種 | SanDisk SSD P4 64GB |
| Total_LBAs_Written | 18,916,297,464,160(セクタ) |
| 換算後の総書き込み量 | 約9PB(1セクタ512バイト換算) |
| Power_On_Hours(通電時間) | 61,625時間(約7年相当) |
| Power_Cycle_Count(電源投入回数) | 1,173回 |
| Reallocated_Sector_Count | 0 |
| Reported_Uncorrectable | 2,234件 |
| Device Error Count(エラーログ) | 181件 |
| SMART Overall Health | PASSED |
※Total_LBAs_Writtenはセクタサイズを512バイトとして換算しています。投稿者はこの書き込み量をSSD容量の64GBで割り、全容量を書き換える操作に換算して「14万回以上」と説明しています。
最重要9PBはNANDに物理的に書き込まれた量ではない
今回のニュースで最も誤解されやすい部分です。投稿者は、このテストが一般的なSSD耐久テストとは異なる方法で行われていることを明言しています。物理NANDへの書き込みを避けるため、継続的な高速キャッシュループを使い、データをSSDの揮発性キャッシュ層に留めたままホスト側の書き込みカウンターだけを増加させる手法です。投稿者自身の表現を借りれば、「揮発性キャッシュ層への書き込みによって物理MLCフラッシュセルの焼失は防げるが、コントローラーのロジックには極度の負荷がかかる」という戦略です。
つまり今回の9PBは、「ホストからSSDに対して9PB相当の書き込み処理が発行・記録された」ことを示す数字であり、「NANDセルへ9PB分のデータが実際にプログラムされた」ことを証明する数字ではありません。この違いを区別せずに「NANDが公称の225倍に耐えた」と受け取ると、実験の趣旨を誤読することになります。
補足「14万回」もNANDのP/Eサイクル回数ではない
同じ理由で、「14万回書き換えた」という数字にも注意が必要です。投稿者は総書き込み量をSSD容量の64GBで割り、全容量を書き込んだ回数に換算しています。これはDrive Writes Per Dayのような「全容量書き込み相当回数」をイメージするには分かりやすい指標ですが、「NANDセル1個1個が14万回のProgram/Eraseサイクルを経た」という意味ではありません。SSD内部ではFTL(Flash Translation Layer)が論理アドレスと物理NANDを変換し、ウェアレベリングやガベージコレクションも行っています。さらに今回はキャッシュとTRIMを積極的に使うことで物理NANDへの書き込み自体を減らす設計のため、「64GB SSDに9PBのホスト書き込みが記録された」という事実から、「14万回の物理P/Eサイクルに耐えた」と結論づけることはできません。
見方NANDではなくコントローラーの耐久テストとして興味深い
とはいえ、今回の結果に意味がないわけではありません。SSDはNANDフラッシュだけで構成されているわけではなく、コントローラーがホストからのコマンド処理、FTLの管理、キャッシュ・TRIM・エラー訂正までを担っています。今回のテストは、2010年設計の古いコントローラーとファームウェアが、当時想定していなかったであろう巨大な書き込みカウンターの処理を、9PB相当まで継続できているかを見る実験に近いものです。投稿者によれば、9PBに到達した時点でもコントローラー・ファームウェアは動作を続けており、ベンダー固有のSMART属性も更新され続けています。「NANDが9PB分の書き込みに耐えた」というより、「16年前のSSDコントローラーが、9PB級まで膨らんだ書き込みテレメトリの処理を継続している」と捉えるのが、この実験の実態に近い見方です。
重要それでも「健康」とは言えない理由
ここが今回のログで見落とされやすいポイントです。smartctlの総合判定は確かに「PASSED」ですが、その下に並ぶ個別の属性を見ると、Reported_Uncorrectableが2,234件まで増加しています。さらにSMART Extended Comprehensive Error LogではDevice Error Countが181件に達しており、エラーログには次のような記録が繰り返し残されています。
UNCはUncorrectable(訂正不能)を意味します。smartmontools公式ドキュメントでも、UNCは読み出したデータとECC(誤り訂正符号)の整合性が取れず、そのデータを訂正できない、実質的には「読み出せない」状態を指すと説明されています。LBA 0はドライブの先頭にあたる論理セクターで、パーティション形式によって内容は異なるものの、正常に読み出せない領域が存在すること自体は、重要なデータを安心して保存できる状態ではないことを示します。
「まだSATAデバイスとして認識される」ことと「正常に機能している」ことは別問題です。今回のSanDisk P4は前者ではありますが、後者ではありません。
核心SMARTの「PASSED」が意味すること・意味しないこと
今回のログで最も参考になるのが、この点です。SMARTの「PASSED」は「ドライブ内のすべてのデータが正常」という意味ではありません。ATAドライブのSMART総合判定は、基本的にはドライブが返すSMART RETURN STATUSなどをもとに判定される仕組みで、smartmontools公式ドキュメントも、FAILEDが返された場合はドライブが既に故障している、または故障を予測しているためすぐにデータを退避するよう案内する一方、PASSEDだからといって個別のSMART属性・セルフテスト結果・エラーログまで問題がないことを保証するものではないとしています。今回のSanDisk P4はまさにその典型例で、総合判定はPASSEDのまま、Reported_Uncorrectableが2,234件、エラーログにもUNCが並んでいます。
これは現行のゲーミングPCでも同じ考え方が当てはまります。CrystalDiskInfoなどのSMART確認ツールで「正常」と表示されているからといって、SSDに絶対に問題がないとは限りません。SMART属性のRaw Valueをどう解釈するかはメーカー・コントローラー依存の部分が多く、総合判定という一つの結果だけでなく、Reported Uncorrectable・Reallocated Sector Count・エラーログなども合わせて確認する必要があります。
TBWの読み方公称値を超えても即壊れるわけではないが、225倍を鵜呑みにもできない
今回の話から、TBWについて2つのことが言えます。1つ目は、TBWは「この数字を超えた瞬間にSSDが停止するハードウェア上のキルスイッチではない」ということです。SanDiskはLDEについて、典型的なワークロードを前提に評価した耐久性の目安と説明しており、公称値を超えたからといって即座に故障するわけではありません。
2つ目は、だからといって「公称40TBWのSSDが9PBまで動いたのだから、メーカーのTBW表示自体が過小評価だった」とは言えないということです。今回のテストは、投稿者自身がキャッシュとTRIMによって物理NANDへの書き込みを意図的に減らしながらホスト側の書き込みカウンターを増加させる、通常のTBW評価とは条件がまったく異なる実験です。9PBを40TBWで割って225倍という数字を計算すること自体はできますが、測っている対象が違う以上、「SanDiskが耐久性を225分の1に過小評価していた」「このNANDは設計寿命の225倍に耐えた」という結論には結びつきません。
補足古いMLCだから耐えた、とも断定できない
SanDisk SSD P4は32nm世代のMLC NANDを採用しています。一般論として、1セルあたり2bitを記録するMLCはTLC・QLCより少ない電圧状態を扱うため、書き換え耐久性を高く設計しやすい傾向があります。ただし今回の記録は、物理NANDへ実際に14万回のP/Eサイクルを行ったテストではないため、そのまま「昔のMLCは14万回書き換えても壊れない」という証拠にはできません。現行のTLC・QLC SSDとの耐久性比較に、今回の9PBという数字を直接あてはめることもできない点は押さえておく必要があります。
結論今回のテストから実際に分かること
- 2010年設計のSSDコントローラーが、9PB級まで膨らんだ書き込みカウンターの処理を継続できている
- SMART総合判定が「PASSED」でも、個別属性やエラーログには問題が記録され得ること
- TBWは超過した瞬間に故障するキルスイッチではないこと
- NANDフラッシュが物理的に9PB分の書き込みに耐えたという証明ではない
- NANDセルが実際に14万回のP/Eサイクルを経たという証明ではない
- 公称TBWが225分の1に過小評価されていたという証明ではない
- このSSDが重要データの保存先として今も健全という証明ではない
教訓現行のゲーミングPCユーザーが参考にできること
現行のNVMe SSDでは、Percentage Used・Available Spare・Media and Data Integrity Errorsなど、今回のSATA/ATA世代とは異なるSMART項目でドライブの状態を確認します。指標の名前は違っても、考え方は今回のケースと同じです。「総合判定が正常」という一つの数字だけで判断せず、個別のエラー項目・実際に発生している症状まで合わせて確認することが重要です。
ゲーム中に読み込みエラーが発生する、Steamでファイル破損が繰り返される、といった症状がSMARTの総合表示が「正常」のまま起きている場合は、詳細なエラーログまで確認したうえで、重要なデータのバックアップを優先してください。SSDはコントローラーが故障するとドライブごと突然認識されなくなることがあり、HDDのように異音で予兆を把握できるとは限りません。
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価格は2026年8月時点の目安です(変動します。最新はリンク先でご確認ください)。
FAQよくある質問
まとめ9PBはコントローラーの実験結果・健康の証明ではない
2010年発売のSanDisk SSD P4(64GB)が、Redditの投稿で約9PBの書き込み(全容量換算で14万回超)を記録し話題になりました。公称耐久性40TBWの225倍以上にあたりますが、投稿者自身がキャッシュとTRIMを使って物理NANDへの書き込みを抑えながらホスト側の書き込みカウンターを増加させる、コントローラー耐久テストだと説明しています。
NANDフラッシュが実際に9PB分の書き込みに耐えた、あるいは14万回の物理P/Eサイクルに耐えたことを証明する実験ではありません。むしろ興味深いのは、2010年設計の古いコントローラーとファームウェアが、9PB級まで膨らんだ書き込みテレメトリの処理を今も継続している点です。
そしてこのSSDは完全に健康な状態でもありません。smartctlの総合判定は「PASSED」でも、Reported_Uncorrectableは2,234件、Device Error Countは181件に達し、ドライブ先頭のLBA 0では訂正不能な読み取りエラーが繰り返し記録されています。SMARTの総合判定だけで「正常」「健康」と判断せず、個別のエラー項目まで確認する習慣は、2010年のSATA SSDでも2026年のNVMe SSDでも変わりません。
※本記事の情報は2026年8月29日時点のLevel1Techs Forumsの投稿・SanDisk公式マニュアル・smartmontools公式ドキュメントにもとづきます。





