DDR5高騰でメモリメーカーは儲かっている?Corsair決算で見えた「メモリは売れてもPCが組まれない」現実【2026年8月】
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Corsair決算で見えた「メモリは売れてもPCが組まれない」現実
出典:Corsair Gaming 第2四半期決算リリース(SEC提出) / Corsair Gaming Form 10-Q(2026年6月30日期) / Corsair Gaming Form 10-Q(2026年3月31日期) / TrendForce(2026年第1四半期DRAM市場) / TrendForce(2026年第3四半期メモリ価格見通し)
DDR5メモリの値上がりが止まりません。32GBキットの価格を見るたびに、「これだけ高いなら、メモリを売っている会社はさぞ儲かっているのだろう」と感じている方も多いのではないでしょうか。
その答えの一部が、VengeanceやDominatorといったメモリで知られるCorsairの決算に出ています。同社が2026年8月6日に発表した第2四半期決算は、粗利益率が33.2%と創業以来の最高値を記録しました。ただし中身を製品カテゴリー別に開けてみると、単純に「値上げで儲かった」とは言えない数字が並んでいます。
この記事では、Corsairが米国証券取引委員会(SEC)へ提出した決算書類の数字をもとに、DDR5高騰でメモリを売る側に何が起きているのか、そしてそれがゲーミングPCを組もうとしている人にどう跳ね返ってくるのかを整理します。
目次
要点メモリは伸びたのに、それ以外のPCパーツが3割消えた
Corsairの第2四半期は、メモリ製品の売上が1億2,301万ドルへ17.2%増えました。ところが電源ユニットやPCケース、冷却製品などを含むその他コンポーネント製品は7,544万ドルと32.9%減っています。両者を含むゲーミングコンポーネント・システム部門の売上は1億9,845万ドルで、前年同期から8.7%の減少となりました。メモリ単体は伸びているのに、部門全体では沈んでいるという状態です。
前提CorsairはDRAMそのものを製造している会社ではない
最初に「メモリメーカー」という言葉を分けておく必要があります。SamsungやSK hynix、Micronは、DDR5メモリの中身にあたるDRAMチップを自社工場で生産する半導体メーカーです。DRAMとは、PCの主記憶に使われる揮発性の半導体メモリを指します。
一方のCorsairは、そのDRAMチップを外部から調達し、基板に実装してVengeanceやDominatorといった製品に仕上げて売る側です。Corsair自身も決算書類のなかで、集積回路(IC)が高性能メモリ製品の製造コストの大半を占めると説明しています。
つまりDRAMチップが値上がりすれば、Corsairが売るメモリモジュールの平均単価も上がりますが、同時に仕入れコストも上がります。値上げの恩恵をそのまま受け取れる立場ではなく、上がった分をどこまで販売価格へ乗せられるかで利益が決まる立場です。この差は、後述するDRAMメーカー側の数字と比べると一目で分かります。
内訳部門売上8.7%減の中身を製品カテゴリー別に分解する
Corsairの決算書類には、製品カテゴリー別の売上が開示されています。第2四半期(2026年4月から6月)の数字を前年同期と並べると、何が起きているのかがはっきりします。
| 製品カテゴリー | 2026年第2四半期の売上 | 前年同期比 |
|---|---|---|
| ゲーマー・クリエイター向け周辺機器 | 1億1,588万ドル | 12.9%増 |
| メモリ製品 | 1億2,301万ドル | 17.2%増 |
| その他コンポーネント製品 | 7,544万ドル | 32.9%減 |
| 全社合計 | 3億1,434万ドル | 1.8%減 |
その他コンポーネント製品には、電源ユニット、PCケース、CPUクーラーや水冷といった冷却製品、ファン、ケーブルなどが含まれます。ゲーミングPCを1台組むときに、メモリと一緒にカゴへ入る類のパーツです。ここが1年で3分の1近く消えたことになります。
この落ち込みは第2四半期だけの話ではありません。同じカテゴリーは第1四半期にも8,164万ドルと前年同期から30.0%減っており、2四半期続けて3割前後の減少が続いています。メモリ価格の高騰が、メモリ以外のパーツの売れ行きを削っているという構図が数字に出ています。
転換点メモリの粗利益率は31.4%から23.4%へ、第4四半期は10%台後半の見通し
ここまでは売上の話ですが、利益のほうを見るとさらに事情が分かります。Corsairはメモリ製品の粗利益も四半期ごとに開示しており、その推移は明確な山を描いています。
| 四半期 | メモリ製品の粗利益率 | メモリ製品の粗利益 |
|---|---|---|
| 2025年 第2四半期 | 15.6% | 1,633万ドル |
| 2026年 第1四半期 | 31.4% | 4,697万ドル |
| 2026年 第2四半期 | 23.4% | 2,873万ドル |
| 2026年 第4四半期(会社見通し) | 10%台後半 | 開示なし |
2026年第1四半期の31.4%が現時点でのピークです。このときCorsairは、部門の粗利益率が670ベーシスポイント改善したうち520ベーシスポイントがメモリの値上げと有利な製品構成によるものだと説明しており、DDR5高騰が確かに利益を押し上げていたことが分かります。
ところが第2四半期には23.4%まで下がりました。売上は伸びているのに粗利益額そのものが4,697万ドルから2,873万ドルへ減っています。さらにCorsairは決算説明会で、メモリの粗利益率は第3四半期も第2四半期と同水準、第4四半期には10%台後半まで下がる見通しを示しています。
理由は仕入れです。安く確保していた在庫を売り切ったあとは、高騰した相場でDRAMを買い直すことになります。販売価格の上昇が続いても、仕入れ値の上昇がそれ以上のペースで進めば、利幅は削られていきます。値上げの旨みは、下流に行くほど早く剥がれるということです。
誤解注意自作PC離れの理由はDDR5の価格だけではない
Corsairは決算書類で、自作PC市場の需要が弱まった理由として「大きなGPU主導のアップグレードサイクルが存在しないこと」と「メモリ価格の高止まり」の2つを挙げています。メモリ高騰だけが原因という書き方はしていません。
この点は日本のゲーミングPCユーザーにも実感があるはずです。2026年はここまで新しいゲーミングGPUの投入がなく、RTX 50 SuperシリーズについてもGDDR7メモリのコスト高を理由に投入が見送られていると伝えられています。「これを買うためにPCを組み替えたい」と思わせる新製品が不在のまま、メモリだけが高くなった年になっているわけです。
PCを1台組み替える動機は、たいてい新しいGPUが引き金になります。その引き金が今年は引かれなかったところへ、メモリ価格が追い打ちをかけた。この2つが重なった結果が、その他コンポーネント32.9%減という数字だと考えるほうが実態に近いでしょう。メモリ価格だけを犯人にすると、原因を見誤ります。
上流DRAMを作る側が受け取っている恩恵は桁が違う
では、DRAMそのものを製造している側はどうなっているのでしょうか。半導体市場を調査する台湾のTrendForceによると、2026年第1四半期の従来型DRAM契約価格は前四半期比で約93%から98%上昇し、DRAM業界全体の売上高は前四半期比81%増の970億ドルへ拡大しました。
企業別ではSamsungが373億ドルでシェア38.5%、SK hynixが前四半期比62.5%増の279億8,000万ドルでシェア28.8%、Micronが同81.6%増の217億5,000万ドルでシェア22.4%となっています。1四半期で売上が6割から9割増える世界です。
同じ「メモリで儲かっているか」という問いでも、四半期売上が9割増える上流と、粗利益率が31.4%から23.4%へ下がり始めた下流とでは、まったく別の話をしていることになります。値上がりしたDRAMを買う側であるCorsairのようなモジュールメーカー、そこからさらにPCメーカーや購入者へと、コストは順番に転嫁されていきます。
見通し第3四半期も契約価格は上がるが、上げ幅は縮んでいる
気になるのは、この状況がいつまで続くのかという点です。TrendForceが2026年7月3日に公開した見通しでは、第3四半期の従来型DRAM契約価格は前四半期比13%から18%の上昇が見込まれています。少なくとも業界の契約価格ベースでは、DDR5がすぐ大幅に安くなる流れにはなっていません。
ただし上げ幅は明確に縮んでいます。第1四半期が93%から98%、第2四半期の予測が58%から63%、そして第3四半期が13%から18%です。TrendForceはその理由として、記録的な契約価格によってPCやスマートフォンといった消費者向け市場の顧客が支払える限界に近づいていることを挙げています。
これはCorsairの決算が示していることと同じ現象を、供給側から見た表現だといえます。値上げを続ければ1枚あたりの売上は増えますが、あるところを超えると顧客が買うのをやめてしまう。その境界が2026年後半に見え始めている、というのが両者に共通する見立てです。
経営視点Corsairは需要が消えたのではなく先送りされたと見ている
CorsairのThi La最高経営責任者は、決算リリースのなかで、メモリ価格の高止まりが自作PCの組み立てを遅らせ続けているとしたうえで、その需要は失われたのではなく先送りされたと考えている、市場環境が正常化すればCorsairはその恩恵を受けられる立場にあると述べています。
実際、同社は2026年通期の売上見通しを14億ドルから14億7,000万ドルへ引き上げ、調整後EBITDAの見通しも上方修正しました。ただしその根拠はメモリではありません。Fanatec、Elgato、Stream Deckを中心とした周辺機器部門の2桁成長が続くことと、第4四半期に予定されている『グランド・セフト・オートVI』の発売がコンソールと周辺機器の需要を押し上げる想定です。ゲーミングコンポーネント・システム部門については、メモリ高騰がDIY需要を遅らせる状態が続くと明記されています。
もうひとつ見落とせないのが、Corsairの完成PC事業です。同社はAI向けワークステーションが前年から堅調に伸びていると説明する一方で、GPUの割り当てが逼迫しており、この事業が意味のある売上として効いてくるのは2027年後半以降になるとの見方も示しています。ゲーマー向けのGPUが足りない状況と、同じ供給制約の裏表です。
補足過去最高の粗利益率33.2%は、値上げだけで作られた数字ではない
Corsair全社の第2四半期は、粗利益が前年同期比21%増の1億430万ドル、粗利益率は過去最高の33.2%、営業損益は1,690万ドルの赤字から760万ドルの黒字へ転じました。ここだけ切り取れば「やはりDDR5高騰で大儲け」と読めます。
しかし内訳を見ると別の絵が出てきます。第2四半期には、過去に支払った関税の払い戻しとして約1,560万ドルが粗利益へ計上されており、これだけで粗利益率を約500ベーシスポイント押し上げています。Corsair自身も、この関税払い戻しを除けば570万ドルの純損失だったと開示しています。
加えて、利益率が最も高いのは周辺機器部門です。同部門は売上が前年同期比13%増、粗利益が27%増、粗利益率は44.9%に達しています。全社の利益改善を押し上げているのはメモリではなく、関税の一時的な戻りと周辺機器のほうだというのが決算の実像です。
購入判断ゲーミングPCを組みたい人はこの決算をどう読めばよいか
ここまでの数字から、ゲーミングPCの購入を検討している方が持ち帰れる材料は3つあります。
1つ目は、DDR5が安くなるまで待つという判断が、思ったほど安全ではないことです。契約価格は第3四半期も上昇見通しで、下がる材料はまだ出ていません。一方で上げ幅は縮んでおり、これ以上の急騰を前提に慌てて買う必要もありません。
2つ目は、メモリ単体の価格だけを見て判断しないことです。Corsairの決算が示しているのは、購入を先送りしている人が実際に増えているという事実です。パーツ単体の値動きより、CPU、GPU、SSD、メモリを含めた総額でいくらになるかを先に出したほうが、判断を誤りません。
3つ目は、完成品PCとの比較を省略しないことです。BTOメーカーはパーツをまとめて調達しているため、市販のDDR5キットの店頭価格とBTOの増設料金が同じペースで動くとは限りません。「後から自分で32GB増設したほうが必ず安い」と決めつけず、購入時点の32GB構成と64GB構成の差額を確認してから決めるのがおすすめです。メモリが高い時期ほど、この比較の意味は大きくなります。
FAQよくある質問
総括まとめ|値上げで増えるのは単価、減るのは組む人の数
2026年のDDR5高騰で、メモリ関連企業がまったく儲かっていないわけではありません。DRAMチップを製造するSamsung・SK hynix・Micronは、契約価格の急騰によって1四半期で売上を6割から9割伸ばしました。Corsairでも、第2四半期のメモリ製品の売上は前年同期比17.2%増と伸びています。
しかしCorsairの帳簿を開けると、メモリ製品の粗利益率は2026年第1四半期の31.4%をピークに第2四半期には23.4%へ下がり、会社自身が第4四半期には10%台後半まで落ちる見通しを示しています。そして電源ユニットやPCケースなどその他コンポーネントの売上は32.9%減と、1年で3分の1近くが消えました。値上げによって1枚あたりの売上は増える一方、PCを1台組む人そのものが減り始めている状態です。
その原因もメモリ価格だけではなく、Corsairは大きなGPU主導のアップグレードサイクルが存在しないことを併記しています。新しいGPUが出ない年に、メモリが高くなった。この2つが重なったことが、2026年の自作PC市場を冷やしている実態に近いといえます。
ゲーミングPCの購入を検討している場合は、DDR5単体の価格推移を追うより、CPU・GPU・SSDを含めた総額と、BTOの標準構成との差額で比較するのがおすすめです。第3四半期も契約価格は13%から18%の上昇見通しで待てば安くなる材料は乏しく、一方で上げ幅は縮小しているため、慌てて高値で買う必要もありません。



