メモリ不足は2028年まで続く?Samsung・SK hynixが「2027年は最悪」と説明|DDR5影響を解説【2026年8月】
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DDR5・グラフィックボード・SSDへの影響をゲーマー視点で整理【2026年8月】
出典:Samsung Electronics公式|2026年第2四半期決算・CNET Japan・日本経済新聞・Tom’s Hardware|SK hynix CEO発言・Wccftech|UBSのDRAM予測
「メモリ不足は2028年まで続く」——Samsung Electronicsが2026年7月30日の決算説明会でこう説明したと伝えられ、すでに値上がりが続くDDR5メモリやグラフィックボードの価格がさらに上がるのではと不安に感じた方もいるかもしれません。
Samsungのメモリ事業を担当するキム・ジェジュン氏(Executive Vice President)は、2027年の供給不足が2026年より深刻になり、2028年まで解消しないとの見通しを示しました。背景にあるのは、生成AI・エージェント型AIの普及に伴うデータセンター向け需要の急増です。Samsungは大手データセンター企業との間で、生産量の約3分の2を対象にした5年以上の長期供給契約を進めています。SK hynixのCEOも、2027年を業界史上もっとも供給が厳しい年になると表現しており、大手2社の見通しが重なっています。
本記事はSamsung公式の決算資料、CNET Japan・日本経済新聞が伝えた発言・数値、SK hynix CEOのロイター向け発言、UBSの市場予測を突き合わせて整理したものです。Gartnerが示していた2028年の反転可能性という予測に続き、当事者であるメモリ大手2社が2027〜2030年の見通しを語ったかたちですが、発言の中心はメモリ半導体全般についてのもので、CPU・GPU・グラフィックボードの値上がりを確定的に述べたものではありません。どこまでが発表内容で、どこからが推測なのかを区別しながら読み進めてください。
目次
決算発表Samsungが示した見通し|2027年は2026年より悪化、2028年まで解消せず
Samsung Electronicsのメモリ事業を担当するキム・ジェジュン氏(Executive Vice President)は、2026年7月30日に開かれた2026年第2四半期決算説明会で、メモリ半導体の需給について次のように説明しました。
「2028年まで、供給が大きく上積みされる可能性は低い。顧客からの引き合いを踏まえると、今年満たせなかった需要は来年に持ち越され、需給は一段と逼迫していく。供給不足は2026年より2027年の方が深刻になり、2028年まで解消しない」
Samsungは2026年後半についても、AIインフラへの投資継続とエージェント型AIの普及により、サーバー向けを中心に堅調なメモリ需要が続くと説明しています。スマートフォンやPC向けの需要には一部鈍化が見られるものの、それを上回るAIサーバー向け需要の強さで、市場全体としては供給不足が続くという見立てです。
ここで注意したいのは、報道で使われる「半導体不足」という言葉が、CPUやGPU、マザーボード用チップを含むすべての半導体を指しているわけではない点です。今回の説明の中心はHBMやサーバー向けDRAMを含む「メモリ半導体」であり、「CPU不足が2028年まで続く」「グラフィックボードが2028年まで手に入らない」といった解釈はSamsungの発言の範囲を超えています。
他社の発言SK hynixは2027年を「業界史上最悪の供給年」と表現
Samsungと並ぶ大手メモリメーカーのSK hynixも、Samsungに近い、あるいはより厳しい見通しを示しています。SK hynixのクァク・ノジョンCEOは2026年7月10日、同社がNasdaqへ上場した当日にロイターの取材に応じ、2027年について次のように述べました。
「顧客からの需要は伸び続けているが、当社の生産能力には限界がある。2030年を過ぎても、顧客需要が当社の供給能力を上回る状態が続くと見込んでいる」
ロイターの報道によると、クァク氏は2027年を「供給という観点で、メモリ業界の歴史上もっとも厳しい年になる」と表現しています。SK hynixはこの発言と同じ日、外国企業として過去最大級となる265億ドルの調達を伴うNasdaq上場を果たしており、AI向けメモリ需要への強気な見通しが評価された形です。
金融機関のUBSも、同様に厳しい予測を示しています。UBSは世界のDRAM市場について、少なくとも2028年第2四半期までは供給不足の状態が続くと予測しており、2027年には需要が供給を17ポイント上回る「記録的なギャップ」が生じるとの見方を示しています。UBSはこの予測にあわせてDRAM価格見通しも引き上げており、2026年第3四半期のDDR契約価格は前四半期比32%上昇するとの試算も示しています(従来予測は17%上昇)。
SamsungとSK hynixという2大メモリメーカーの経営トップが、時期は多少異なるもののそろって2027年前後をピークとする長期の供給不足を語り、UBSのような第三者機関の分析もこれを裏付けている状況です。「一部メーカーだけの弱気な見通し」ではなく、業界全体で似た方向の予測が重なっている点は、今回のメモリ不足を評価するうえで重要な材料といえます。
長期契約生産量の約3分の2を長期契約で固定する方針
今回の発表でもう一つ重要なのが、Samsungと大手データセンター企業との長期供給契約です。Samsungは世界最大級のデータセンター企業5社とすでに供給契約を結び、さらに別の大手5社とも合意に近づいていると説明しました。契約先の企業名は公表されていません。
契約期間は少なくとも5年間で、前払い金や最低価格も設定されるとされています。Samsungは長期的に、メモリ生産量の約3分の2をこうした契約の対象にする方針を示しました。
従来のメモリ市場は、需要が増えるとメーカーが増産し、その後に供給過剰と価格下落が発生するというサイクルを繰り返してきました。生産能力の多くが5年以上の契約で固定されれば、需要が一時的に落ち着いても、一般向けメモリに供給を振り向けて値下げする動きは起こりにくくなります。
これは一時的な品薄というより、メモリ市場の売り方そのものが変わり始めている可能性を示すものです。
波及構造なぜAI向けHBMの増産がDDR5に影響するのか
AIサーバーで使われるHBMと、ゲーミングPCで使われるDDR5メモリは別の製品です。それでも、HBMの需要拡大は一般向けDRAMの供給に影響します。
決算数値半導体部門の営業利益は前年同期比200倍台後半〜250倍超に
Samsungが高収益なメモリ製品を優先する理由は、2026年第2四半期の決算数値を見るとわかりやすくなります。
| 項目 | 数値 | 補足 |
|---|---|---|
| 半導体部門 営業利益 | 89兆2,000億ウォン | 前年同期比 約200倍台後半〜250倍超(日本経済新聞の試算では223倍) |
| 全社 営業利益 | 89兆4,000億〜5,000億ウォン程度 | 集計方法により幅がある |
| 売上高 | 171兆5,000億ウォン | 前年同期比 約130%増 |
| モバイル(MX)事業部 | 営業損失7,000億ウォン | 四半期ベースで初めての赤字 |
| DX部門全体(参考) | 営業損失8,000億ウォン程度 | 日本経済新聞の試算・スマホ/家電等を含む |
半導体部門の営業利益は89兆2,000億ウォンとなり、前年同期比で200倍台後半〜250倍超という水準まで急拡大しました(算出方法により幅があり、日本経済新聞の試算では223倍としています)。全社の営業利益も89兆4,000億〜5,000億ウォン程度に達したとみられ、売上高は前年同期比約130%増の171兆5,000億ウォンを記録しています。
半導体部門の営業利益率はおよそ70%に達したとされ、AI向けメモリの価格と収益性が極めて高い状態にあることがわかります。
興味深いのは、メモリ価格の高騰がSamsung自身の別事業を圧迫していることです。スマートフォン事業を担うモバイル(MX)事業部は7,000億ウォンの営業損失を計上し、四半期ベースで初めての赤字となりました。スマートフォンや家電などを含むDX部門全体で見ると、日本経済新聞の試算では営業損失は8,000億ウォン程度とされています。メモリを販売する半導体部門が巨額の利益を上げる一方、Galaxyなどの端末を製造する部門は部品価格の上昇で利益を圧迫されている構図です。
これは、メモリ価格の上昇が最終製品を作るメーカー自身にも無視できない負担になっていることを示す事例です。同様のコスト上昇は、PCメーカーやBTOメーカーにも波及する可能性があります。
価格見通しDDR5メモリは今後さらに値上がりするのか
Samsungの見通しだけで、日本国内のDDR5メモリが直ちに値上がりすると断定することはできません。メモリの店頭価格は、DRAMの契約価格だけでなく、為替、流通在庫、メーカー間の競争、PC需要、メモリモジュール各社の販売戦略などにも左右されるためです。
Samsung自身も、PC向け需要には一部鈍化が見られると説明しています。PCの販売が弱ければ、AI向け需要が強くても、一般向けDDR5が店頭から一斉に消えるような状況にはなりにくいとみられます。
一方で、これまでのように「待っていればメモリは大幅に安くなる」とは考えにくくなっています。SamsungだけでなくSK hynixやMicronもAI向けHBMやサーバー向け製品への投資を優先しており、Samsungが生産量の約3分の2を長期契約の対象にする方針を示したことで、一般向けメモリへ柔軟に供給を回す余地は小さくなる可能性があります。HBM4の出荷開始とDDR5価格の関係を整理した記事でも触れているとおり、AI向けメモリの出荷拡大は必ずしも一般向けDDR5の値下がりに直結しません。
2026年5月には、元Samsung半導体トップの発言をもとに「DDR5は2027年後半に大幅値下がりする」という予測も伝えられていました。ただしこの予測は、AI投資が鈍化し推論需要が頭打ちになることを前提条件とした一つのシナリオでした。今回のSamsungの決算では、HBM4の売上高が前四半期比3倍を超える見通しが示されるなど、AI向け需要が鈍化する兆しはむしろ見られていません。前提条件が崩れていない以上、現時点では値下がりシナリオより、Samsung自身が示した「2028年まで解消しない」という見通しの方が実態に近いと考えられます。
今後は深刻な品切れよりも、高値が長期化し大幅な値下がりが起こりにくい状況を警戒しておくほうが現実的です。
本記事の公開から約3週間が経った8月19日時点で、店頭価格を実際に確認しました。DDR5-6000の32GBキット(16GB×2)は価格.com掲載の最安が7万4,990円、Amazonでも定番のCrucial PRO DDR5-6000 32GBが7万2,800円で、いずれも在庫僅少の表示です。32GBのメモリキットに7万円台を払う水準がすでに常態になっており、「待てば戻る」という前提が働いていないことが数字にも表れています。Gen4 NVMe SSDも1TBで4万円台、2TBで6万〜7万円台と高止まりが続いています。Samsungが示した見通しは、2027年を待たずに国内の店頭価格へ反映され始めている状況です。
構成への影響ゲーミングPCでは32GB構成の価格に影響しやすい
現在のゲーミングPCでは、16GBよりも32GBのメモリを標準搭載するモデルが増えています。ゲームを起動しながらDiscordやWebブラウザ、録画ソフトなどを併用する場合、16GBでは余裕が少なくなりやすいためです。重量級のゲームやMODを使う環境では、32GB以上が推奨されるケースも珍しくありません。
DDR5の価格が上昇すれば、16GB構成よりも32GBや64GB構成の方が値上がり幅は大きくなります。BTOメーカーが本体価格を維持するために、メモリ容量を32GBから16GBへ減らしたり、同じ32GBでも動作クロックの低い製品へ変更したりする可能性もあります。
見かけ上の販売価格が変わっていなくても、構成内容が変更されて実質的に値上がりしているケースには注意が必要です。ゲーミングPCを比較するときは、本体価格だけでなく、メモリ容量・動作クロック・空きスロット数・増設時の費用まで確認しておくと安心です。
GPUへの影響グラフィックボードのGDDR7にも影響する可能性はある
Samsungは、グラフィックボードに搭載されるGDDR6やGDDR7も製造しています。ただし、今回の決算説明で「GDDR7が2028年まで不足する」と明言したわけではありません。Samsungの発表を根拠に、グラフィックボードの値上がりが確定したと伝えるのは不正確です。
それでも、AI向けHBMとグラフィックス向けGDDRは、メモリメーカーの設備投資や生産配分という面では無関係と言い切れません。HBMやサーバー向けDRAMへ経営資源が集中すれば、GDDRの供給拡大が後回しになる可能性はあります。また、モバイル(MX)事業部が赤字になったように、メモリ価格の上昇は完成品メーカーの原価を直接押し上げます。
今後のグラフィックボード価格は、GPU本体の価格だけでなく、GDDR7の供給状況や搭載容量にも左右される可能性があります。VRAM容量の多い上位モデルほど、メモリ価格上昇の影響が本体価格に反映されやすいと考えられます。
SSD/NANDSSD・NANDも今回の説明の対象に含まれる
今回のSamsungの決算では、SSDに使われるNANDフラッシュの平均販売価格(ASP)も前期比60%超上昇したと説明されています。つまり、今回の供給不足の議論はDRAMだけでなく、NANDを含む「メモリ半導体」全般を対象にしたものです。
「SSDだけは無関係」と言い切ることはできませんが、NANDとDRAMでは生産設備や需給の構造が異なる点には注意が必要です。特に、AIデータセンター向けの大容量エンタープライズSSDと、個人のゲーミングPC向けの一般的なSSDでは、需要の主体も価格の決まり方も同じではありません。
Samsungが今回の説明でDRAMほど詳細にNANDへ言及したわけではないため、個人向けSSDの価格がDDR5と同じペースで上昇するかどうかは、現時点では断定できません。NANDメーカーの設備投資動向や在庫水準は、DRAMとは別に確認しておく必要があります。
購入判断今すぐゲーミングPCやメモリを買うべきか
今回のニュースだけを理由に、急いでゲーミングPCやメモリを買う必要はありません。Samsungは中長期的な供給不足を説明していますが、日本国内の小売価格がいつ、どの程度動くかまでは明らかにしていません。
一方で、半年以内にPCを購入する予定があり、現在の構成と価格に納得できている場合、将来の大幅な値下がりを期待して長く待つメリットは小さくなっています。本記事の公開から3週間が経った8月19日時点でも値下がりの兆しは出ておらず、むしろDDR5 32GBキットが7万円台という水準で在庫僅少の表示が並んでいる状況です。
- PCの故障・買い替えを急いでいる人
- 32GBや64GBへの増設をすでに計画している人
- 現在の価格・構成に納得できている人
- 数か月以内に購入予定がない人
- 必要性のないメモリを値上がり予想だけで買いだめしようとしている人
- 現在使っているメモリ容量にまだ余裕がある人
関連製品供給不足が続く前に検討したいDDR5・SSD
今回の見通しを踏まえて、必要な構成を早めに固めておきたい人向けに、DDR5メモリとNVMe SSDを1点ずつ紹介します。無理に買い急ぐ必要はありませんが、購入時期が近い場合の参考にしてください。
FAQよくある質問
まとめまとめ|メモリ不足は2028年まで続く見通し、価格は安値に戻りにくい
Samsungだけでなく、SK hynixのCEOも2027年を「業界史上もっとも厳しい供給年」と表現し、需要超過は2030年以降まで続く可能性があると述べています。UBSのような金融機関の分析も同じ方向を示しており、2大メモリメーカーと第三者機関の見通しが重なっている点は無視できません。Samsungの発表で最も重要なのは、メモリが2028年まで店頭から一斉に消えることではありません。AIデータセンター企業が5年以上の長期契約で生産枠を確保し、Samsungが生産量の約3分の2をこうした契約の対象にする方針を示したことで、一般向けメモリの価格が以前の安値へ戻りにくくなる可能性があることです。
2027年の供給不足が2026年より深刻になるというSamsungの見通しが現実になれば、DDR5メモリやBTOゲーミングPCの価格には中長期的な上昇圧力がかかります。半導体部門の営業利益が前年同期比200倍台後半〜250倍超に達した一方、モバイル(MX)事業部が四半期ベースで初の赤字となったことは、メモリ価格の上昇がSamsung自身の事業にも負担をかけている実例です。
ただし、PC向け需要は一部鈍化しており、DDR5・GDDR7・NANDフラッシュがすべて同じペースで値上がりするとは限りません。現時点では「すぐに買わなければ手に入らなくなる」と考えるより、「大幅な値下がりを前提に購入を先送りしない」「同じ価格でもメモリ容量やクロックが削られていないか確認する」という判断が現実的です。




