AMD EXPO Ultra-Low Latencyとは?BIOS更新だけでは速くならない理由と対応メモリ・有効化手順【2026/09/18更新:Royal NeoX追加】
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「BIOS更新だけで速くなる」は誤解です
目次
仕組みEXPO ULLとは何か|周波数を上げずにレイテンシを削る新規格
EXPO Ultra-Low Latencyは、AMDがComputex 2026で正式発表したEXPOプロファイルの拡張規格です(EXPO 1.2仕様の一部)。これまでのEXPOプロファイルが収録していたのは周波数と主要タイミングまででしたが、ULLではセカンダリ・ターシャリといったサブタイミングの最適化値を初めてメモリのSPDに収録できるようになりました。手動で詰めれば数十項目の調整が必要だった領域を、メーカー検証済みの値で自動適用する仕組みです。
結果として、同じDDR5-6000でもCL26のような極めて詰めたプロファイルが規格として成立し、通常のDDR5-6000 EXPOキット比で実効レイテンシを5〜7ナノ秒削減できるとされています。
AMDは、Ryzen 7 9700X+RTX 5090の環境で30タイトル超を対象に行った社内テストの結果として、次の効果を公表しています。
| 比較対象 | 平均fps | 1% Low |
|---|---|---|
| vs JEDEC定格(DDR5-5600) | 最大+13% | 最大+15% |
| vs 通常のEXPO | 最大+4% | 最大+4% |
数値はAMDの発表値です。
検証【7月19日追記】海外メディアの実機検証結果
キット発売から1ヶ月あまりが経ち、海外メディアによる第三者検証が出そろい始めました。海外の技術系メディアが、G.SkillのULL認証キット「Trident Z5 NeoX RGB DDR5-6000 CL36」をRyzen 7 9700X環境で検証しています。
| タイトル・項目 | 通常のEXPO DDR5-6000比 |
|---|---|
| F1 25 | +4.2% |
| Cyberpunk 2077 | +4.5% |
| Baldur’s Gate 3 / CS2 | 2%未満 |
| AIDA64 書き込み帯域 | +9.4% |
AMD公称の「平均4%」に近い結果が出たのはF1 25のみで、タイトルによっては測定誤差に近い差にとどまりました。AIDA64のメモリ帯域向上がそのままゲームfpsに反映されるわけではない点に注意してください。
結論として、EXPO ULLはまったく効果のない機能ではないものの、一般的なEXPOメモリからの乗り換えであらゆるゲームが大きく高速化するような技術でもないことが、実機検証によって裏付けられた形です。ゲームがCPU/メモリ側にどれだけ依存しているかによって、効果の出方は大きく変わります。
価格【7月19日追記】実売価格はAMDの説明より高額
AMDは発表当初、ULL認証メモリについて「通常のEXPOキットと実質同等の価格になる」との見通しを示していました。しかし、発売が始まったG.Skill製品には、この説明とは異なる価格差が確認されています。
32GBのDDR5-6000 CL26モデルは1,099.99ドルで、同容量・同クロックの通常版Trident Z5 Neo(CL26)より約57%高い価格でした。CL28モデルではその差が約79%に達しています。1ドル=約162円(2026年7月17日時点)で換算すると、CL26モデルはおよそ17万8,000円前後、CL28モデルはおよそ16万2,000円前後という水準です。
これらの価格は発売直後の在庫状況やメモリ市場全体の高騰も影響しているとみられ、流通が安定すれば差が縮む可能性はあります。ただし現時点では、AMDが示した見通しよりも明確に高い価格で販売されている点は踏まえておく必要があります。
国内での取り扱いは2026年7月時点で未確認
2026年7月19日時点で、ark・TSUKUMO・ドスパラといった国内主要販売店、およびG.Skillの日本国内正規代理店であるリンクスインターナショナルの取り扱い製品一覧を確認しましたが、いずれもULL認証の「NeoX」シリーズは掲載されていません。国内で購入できるのは、通常のEXPOに対応した「Trident Z5 Neo」「Trident Z5 Neo RGB」シリーズのみです。
上記のドル建て価格・円換算はあくまで海外(主に米国)での実売価格を参考として示したものです。国内での正式な取り扱い・価格は今後発表される見込みで、現時点で国内価格を断定することはできません。購入を検討する場合は、ark・TSUKUMOなど主要販売店の新着情報を確認してください。
【2026年7月24日追記】国内でも取り扱い開始・CL値で値上げ幅に大差
本追記後、秋葉原のOC・自作パーツ専門店「OVERCLOCK WORKS」でULL認証「Trident Z5 NeoX RGB」シリーズの取り扱いが確認されました。CL26モデル(DDR5-6000)が221,800円、CL30モデルが122,300円などで販売されており、上記の米国価格からの円換算よりもさらに割高な水準です。ark・TSUKUMOなど大手量販店ではまだ扱いがなくても、こうした専門店経由であれば国内でも入手自体は可能な状況になっています。
また、値上げ幅はCL値によって大きく異なることも判明しています。米国価格ベースで比較すると、CL26は通常品比+57%、CL28は+79%と大幅な上乗せがある一方、CL30は+14%、CL36は+10%程度にとどまり、レイテンシを詰めた上位ビンほど価格差が拡大する傾向です。「多少の予算超過は許容できる」という人は、CL30・CL36モデルなら通常のEXPOキットに近い価格で導入できます。
この価格差についてG.Skillは公式に、「ULL製品の価格自体は非ULL製品と同水準に据え置いているが、DRAMチップ価格の高騰と、値上げ前の在庫を抱える販売店が旧価格のまま併売していることで、市場に見かけ上の価格差が生じている」と説明しています。ULLモデルはより厳格な選別・検証を経たチップを使うため、製造コスト自体も通常品より高いとしています。
条件最大の注意点|既存のEXPOメモリでは使えません
ULLのプロファイルはメモリ側のSPDチップに書き込まれているため、いま挿しているEXPOメモリをBIOS更新でULL化することはできません。BIOS更新はあくまで「受け皿」の準備で、効果を得るにはULL認証済みの新しいキットが必要です。海外の一部見出しはこの点が紛らわしいので注意してください。
ULLを使うための条件は次の3つです。
もうひとつ押さえておきたいのは、X3D系CPUでは効果が相対的に小さいという点です。メモリメーカー自身が「とくに非X3DのAMDデスクトップCPUで効果が大きい」と説明しており、3D V-Cacheがメモリレイテンシの影響を吸収する9800X3Dなどでは、4%という数字をそのまま期待しないほうが現実的です。
ULLは新しいメモリキットへの買い替えが前提ですが、マザーボードがMSI製なら、手元のDDR5メモリのままBIOS設定だけでレイテンシを詰められる場合があります。MSI High-Efficiency Modeは、ULL認証キットへの買い替えが難しい場合の選択肢になります。
新製品対応キットが増えた|Flare X5XとTrident Z5 Royal NeoX【2026年9月9日 追記】
2026年6月の発売時点でULL認証キットとして流通していたのは、RGB付きの上位シリーズが中心でした。その後2026年8月31日、G.SKILLがULL対応の新シリーズ「Flare X5X」を発表しています。
初弾の仕様はDDR5-6000 CL36-36-36-76、32GB(16GB×2)です。G.SKILL公式によると、既存のEXPO対応キットと比べて、オーバークロックプロファイルに追加でチューニングされたサブタイミングが複数含まれ、同じメモリ速度のままレイテンシ性能を改善するという位置づけになります。

ここまでULL対応キットはRGB搭載モデルが主体だったため、光らせない構成でもULLを選べるようになったのが実質的な変化です。CL36というビンも、前の項目で触れたとおり通常のEXPOキットに近い価格帯に収まりやすい水準にあたります。
展開は世界各国で段階的に行われ、入手できるかどうかは各国の代理店・販売店次第とされています。国内での取り扱い開始時期は現時点では公表されていません。
あわせて、G.SKILL公式は仕様ページの注記でこう明示しています。「BIOSでEXPOを有効にする前は、対応ハードウェアであってもSPD速度(初期値)で起動する」。ULL対応キットを挿しただけでは何も変わらないという点は、次の節で扱う注意点と同じ話です。有効化の操作は必須だと考えてください。
2026年9月9日には、同じくG.SKILLが「Trident Z5 Royal NeoX」を発表しました。ミラー仕上げのシルバーまたはゴールドのヒートスプレッダに、クリスタル調のRGBライトバーを組み合わせたRoyal系の意匠に、ULLプロファイルを載せたシリーズです。G.SKILL公式によると、発表された4バリアントはいずれも32GB(16GB×2)・DDR5-6000で共通し、タイミングはCL36-36-36-76、CL30-38-38-32、CL28-36-36-32、CL26-36-36-32の4段階が用意されます。価格は発表時点で未公表で、2026年9月18日時点でも据え置かれたままです。展開は世界各国で段階的に行われ、入手可否は各国の代理店・販売店に問い合わせるよう案内されています。有効化には対応するAMDのCPU・マザーボード・BIOSが必要という条件も、これまでのULL対応キットと同じです。
ここで誤解しやすいのがCL26という数字自体は新しくないという点です。標準EXPOのTrident Z5 Royal Neoは以前からDDR5-6000 CL26を用意しており、ULL側でもNeoX RGBがCL36・CL30・CL28・CL26の4仕様を揃えています。Royal NeoXとNeoX RGBの違いは、タイミングやチップの選別基準ではなく、鏡面仕上げのヒートスプレッダとクリスタル調RGBライトバーという意匠だけです。性能を求めているだけなら、Royal NeoXの流通開始を待つ必要はなく、すでに国内で買えるNeoX RGBの該当CLモデルで足ります。そのうえで、NeoX RGBのCL26は国内で221,800円という水準で流通しています。Royal NeoXの国内価格は未定ですが、意匠としては上位にあたる系統なので、ここから大きく下がる方向は考えにくいところです。
【2026年9月18日追記】CL26とCL36、レイテンシの差を計算すると
DDR5-6000は転送速度(MT/s)の表記で、メモリコントローラーの実クロックはその半分の3000MHzです。CASレイテンシを時間に換算する式「CL ÷(メモリ速度MHz ÷ 2)× 1000」に当てはめると、CL26は26 ÷ 3000 × 1000で約8.67ナノ秒、CL30は30 ÷ 3000 × 1000で約10ナノ秒、CL36は36 ÷ 3000 × 1000で約12ナノ秒です。CL26とCL36の差は約3.33ナノ秒にとどまります。
3.33ナノ秒という差分は、CPUのキャッシュ構成やメモリコントローラーの実装、ULLで最適化されるサブタイミング、GPU側の負荷、ゲームエンジンの作りといったほかの要因に比べると相対的に小さい部類です。冒頭で紹介した実機検証で、CL36の認証キットでも通常EXPO比2〜4%台の差にとどまったのは、こうした背景も影響していると考えられます。
この差がさらに縮みやすいのが、Ryzen 7 9800X3DなどX3Dシリーズを使う場合です。海外メディアのClub386は、Royal NeoXのようなULL認証キットについて、3D V-Cacheを搭載したX3Dチップと組み合わせても恩恵を感じられないことがあると指摘しています。X3Dチップは非X3Dチップに比べてメモリ構成への感度が低い傾向にあるためだとしています。大容量の3D V-Cacheがメインメモリへのアクセス頻度自体を減らすため、メモリ側のレイテンシを削っても効果が出にくくなるという理屈です。CL26モデルとCL36モデルの価格差が大きいなら、X3D搭載機で組む場合はその差額をGPUのグレードアップに回したほうが、フレームレート向上には効きやすいと考えられます。
ULLを目的に組むのであれば、まずCL36からCL30あたりの現実的なビンで検討したほうが、費用対効果は合わせやすくなります。Royal NeoXのCL26のような最上位ビンは、非X3D環境かつ予算に余裕がある場合の選択肢として位置づけておくのが実用的です。
実測48GBのBIWIN DW100にもEXPO ULL対応モデルが登場|ゲームでの実測値も公表【2026年9月16日追記】
2026年9月、メモリメーカーのBIWINが「Black Opal DW100」シリーズにEXPO ULL対応モデルを追加しました。BIWINにとって初めてのEXPO ULL対応キットです。
仕様は24GB×2枚の48GB、DDR5-6000・CL28です。BIWINにはこれまでも同じDDR5-6000・CL28の通常EXPO版DW100が存在しており、周波数やメインタイミングの数字自体は変わりません。変わるのは、EXPO ULL認証によってtREFI・tRRDS・tWRWRSCLといったセカンダリタイミングまで最適化された値がメモリ側に収録される点です。BIOS画面の表示だけでは通常版と見分けがつかない場合がある一方、実際のレイテンシやゲーム性能には差が生まれます。
BIWINは、Ryzen 5 9600X+RTX 5070・1080p低画質設定の環境で、通常EXPO版DW100との比較による実測値を公表しています。
| 項目 | 通常EXPO版DW100比 |
|---|---|
| CS2 平均fps | +8% |
| CS2 1% Low | +11.91% |
| Black Myth: Wukong 最低fps | +18.18% |
数値はBIWINの発表値です。価格・発売時期は2026年9月16日時点で未発表です。
このテストはGPU負荷を意図的に下げた1080p・低画質設定で行われており、CPUとメモリの差が出やすい条件です。冒頭で触れたとおりAMD公称の平均値は通常EXPO比+4%で、1440pや4K・高画質設定のようにGPUがボトルネックになる場面では、ここまでの差は出にくいと考えられます。
むしろ注目したいのは、平均fpsより1% Lowや最低fpsの改善幅が大きい点です。メモリレイテンシの改善は、平均fpsを底上げするというより、CPU・メモリへのアクセスが集中する場面でのフレームレート低下を抑える方向に効きやすいと考えられます。CS2のように高fpsで動作しCPUボトルネックになりやすいタイトルほど、相性は良さそうです。
もう一つの特徴は48GB(24GB×2)という容量です。32GBでは余裕が少なく、64GBほどは不要という人にとって、ゲームを起動しながらブラウザやDiscord、配信・録画ソフトを併用しやすい容量になります。
価格と発売時期は本追記時点で未発表です。すでにDDR5-6000 CL30前後の通常EXPOメモリを使っているなら急いで乗り換える理由はありませんが、【7月24日追記】で触れたとおりULL認証キットはCL値によって値上げ幅が大きく異なります。BIWIN DW100の価格が判明したら、通常品との価格差を確認してから判断してください。
対応状況対応マザーボードの現在地(2026年6月13日時点)
6月1日のプレスでAM5マザーボード全製品への展開を発表。B650・X670系の最新BIOS(AGESA 1.3.0.1)で対応済みで、現時点で最も対応が広いベンダーです
X670E系(ROG Crosshair・Strix・ProArt・TUF)にベータBIOS 3803を配布。B650などミドル帯は「数週間以内」に展開予定とされています
X670E GODLIKEの先行対応に続き、6月上旬からB650系列(A620の廉価モデル含む)のBIOSリリースノートにULL対応が記載されています
確認できているのは800シリーズの一部のみ。600シリーズへの展開は2026年6月13日時点で未確認です
ASUS・MSIの600シリーズ向け対応BIOSは現時点でベータ版が中心です。いま安定して動いているシステムなら、正式版の配布を待ってから更新するのも堅実な選択です。
手順有効化の手順|対応キットなら「EXPOをオンにするだけ」
ULLを含むEXPOの適用は定格外動作にあたり、AMD自身も仕様外のパラメータ変更にはリスクと保証への影響の可能性があると注記しています。実際のトラブルはまれですが、性質は理解した上で使ってください。
結論結局、今やるべきか|タイプ別の判断
- 買い替える必要はありません。実機検証でも得られるのはタイトルによって2〜4%程度で、ゲームによっては測定誤差に近い差にとどまります。X3Dの大容量L3キャッシュを使っている人はさらに効果が薄く、【7月19日追記】の実売価格(通常品比57〜80%高)を踏まえると費用対効果はよくありません
- 通常のEXPOキットと価格差が小さければ検討する価値はあります。ただし当初AMDが説明していた「実質同価格」は現時点では実現しておらず、【7月19日追記】の通り57〜80%高い製品も出ています。【7月24日追記】の通りCL値によって値上げ幅は10〜80%と幅があり、CL30・CL36モデルなら通常品に近い価格で導入できるため、まずはCL値ごとの実売価格を比較してから判断してください
参考参考|いま32GBを揃えるなら現行の定番EXPOメモリ
ULL認証キットの国内流通は始まったばかりで、選択肢が出揃うまでもう少し掛かります。いますぐ32GBが必要な人向けに、現行のEXPO対応定番を挙げておきます(差は最大4%なので、価格と入手性で選んで問題ありません)。
EXPO Ultra-Low Latencyの規格概要とBIOS対応状況は、AMD公式のメモリ互換性リストを2026年6月13日に確認しました。Trident Z5 Royal NeoXの仕様は、G.SKILL公式のプレスリリースと、海外メディアClub386の記事で2026年9月18日に確認しました。CL26とCL36のレイテンシ差の計算値、およびX3D CPUでの効果減衰に関する指摘は、いずれも同日時点の情報にもとづきます。





