RadeonでNVIDIAのDLSS 4.5が動作|ZLUDA経由の「d4r」はDLL無改造、それでもFSR 4より遅い理由【2026年9月】
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RX 7700 XTの1440p品質モードでDLSS 4.5は51.5fps、FSR 4は76.0fps
出典:GitHub「countervolts/d4r」、同 性能測定資料、同 構成資料、同 動作確認済みゲーム、GitHub「vosen/ZLUDA」、GitHub「RedDukeDev/dlss5-image-enhancer-zluda」、GitHub「DLSS-NR-on-AMD」、GamingOnLinux(FSR Upscaling 4.1のRX 7000提供)
「RadeonでNVIDIA公式のDLSSが動いた」という話題が9月末から海外で広がっています。出どころは開発者のcountervolts氏が日本時間2026年9月28日にGitHubで公開した「d4r(DLSS 4 Radeon)」です。NVIDIAが配布するDLSS超解像のDLL「nvngx_dlss.dll」を書き換えずに、Radeon RX 7000シリーズの上で実行します。
ただし動くのはDLSS 3・DLSS 4・DLSS 4.5の超解像で、DLSS 5には対応していません。LinuxとProton(SteamのWindowsゲーム互換レイヤー)の上でしか動かず、フル速度が出るのはRX 7700 XT・RX 7800 XTなどNavi 32を積んだカードだけです。しかも同じGPUで動かしたFSR 4より、すべてのモードで遅い結果です。Windowsで今RX 7000を使っている人が、何かを入れ替える必要はありません。
それでもd4rが面白いのは方式です。RadeonでDLSS 5を動かすDLSS-NR-on-AMDは、実行環境をAMD向けに書き直した再実装でした。d4rはNVIDIAのDLLと制御部をそのまま走らせ、CUDAへの呼び出しを互換レイヤー「ZLUDA」で受け止めます。そのうえで、翻訳だけでは正しく動かなかった重い層を手書きのRDNA 3用コードに差し替えています。互換レイヤーと再実装を組み合わせた作りと、Navi 32限定になった理由を順に見ていきます。
目次
要点まず何が起きたか
d4rはNVIDIA公式のDLSS超解像DLL(バージョン310.7)を無改造のまま、Linux上のRX 7000で実行します。DLSS 5とRay Reconstructionは非対応です。開発者のRX 7700 XTで14本のゲームの動作が確認されています。
| 項目 | d4rの内容 |
|---|---|
| 公開 | 日本時間2026年9月28日にv0.1.0とv0.1.1を公開。開発者はcountervolts氏 |
| 動くもの | DLSS超解像のみ。DLSS 3のCNNモデル(プリセットE)、DLSS 4のトランスフォーマー(プリセットK、既定)、DLSS 4.5のトランスフォーマー(プリセットM) |
| 動かないもの | DLSS 5、DLSS Ray Reconstruction |
| OS | LinuxのSteamでGE-Proton 11を使う構成のみ。Windowsでは動かない |
| GPU | RDNA 3(RX 7000シリーズ)。フル速度はNavi 32(gfx1101)だけ。RDNA 4とRDNA 2以前は非対応 |
| 同梱物 | OptiScaler 0.9.4、改造版vkd3d-proton、ZLUDA、ROCm 7.2.4のランタイム、NVIDIAのnvngx_dlss.dllと_nvngx.dll |
| 開発段階 | 実験段階。検証はRX 7700 XT 1枚のみで、ZLUDAとvkd3d-protonの未公開パッチに依存 |
整理「RX 7000でDLSS 5が動いた」は誤解
Navi 32とZLUDAの組み合わせは、DLSS 5の話と取り違えられやすい状況です。9月はRadeonでDLSS 5を動かす試みが相次ぎ、ZLUDAを使ったDLSS 5の実験も別に存在するためです。
d4rのREADMEは冒頭で「DLSS 5 is not supported」と明記しています。対象はゲームの画質設定で選ぶ、いわゆる通常のDLSS(Super Resolution)です。DLSS 5の中核であるニューラルレンダリングは、別のDLL「nvngx_dlssnr.dll」が担当する別機能で、d4rはこちらを扱いません。
ZLUDAでDLSS 5を動かそうとしているのは、RedDukeDev氏の「dlss5-image-enhancer-zluda」です。2026年9月5日に最初のリリースを出し、9月19日に1.1.0へ更新されました。ただしこちらは静止画1枚にDLSS 5をかける概念実証のツールで、ゲームでは動きません。作者はReShade用のプラグインも試作したものの、速度が遅すぎて使える状態ではないと説明しています。
仕組みNVIDIAのDLLがRadeonで動く7段階の経路
d4rの考え方は「NVIDIAのDLSSが期待する環境を、NVIDIAのGPUなしで揃える」ことです。ゲームがDLSSを呼んでから結果が画面に戻るまで、処理は次の順に流れます。
- ゲーム(DirectX 12)がいつもどおりDLSSを要求する
- OptiScaler(アップスケーラーの呼び出しを横取りして差し替える非公式ツール)が、DLSSの入力を受け取る
- d4r独自のDLL「d4r_nvngx.dll」が、ゲームの色・深度・モーションベクターをVRAM上のまま受け渡す
- NVIDIA公式のNGX(DLSSを管理する土台)とnvngx_dlss.dllが、CUDA向けの処理経路で動く
- Wine上に置いた「nvcuda.dll」が、CUDAへの呼び出しをLinux側のZLUDAへ転送する
- ZLUDAが、NVIDIA向けの中間コード(PTX)をAMD GPUの命令に変換して実行する
- 重い層だけは、変換後のコードの代わりに手書きのRDNA 3用コードが動く
要になるのは4段目です。NGXにはDirectX 12から直接使う経路もありますが、こちらはNVIDIAのドライバーがないと動きません。一方、CUDA向けの経路が要求するのは「CUDAのドライバーAPI」だけで、これはZLUDAが用意できます。d4rはこの違いを突いて、CUDA側の経路を選んでいます。
もう一つの工夫が、GPUの身元です。NGXはGPUの世代を見て、使うネットワークの重みを選びます。d4rはGPUをAda世代(RTX 40シリーズの世代)として申告し、ZLUDAが変換するPTXと重みの組み合わせを一致させています。起動オプションに指定するPROTON_FORCE_NVAPI=1 DXVK_NVAPI_GPU_ARCH=AD100も、ゲームにNVIDIA製GPUだと認識させるためのものです。
ZLUDAは「CUDA on non-NVIDIA GPUs」を掲げるオープンソースの互換レイヤーで、AMDのHIP/ROCm(GPU計算の開発環境)の上でCUDA向けのアプリを動かします。ZLUDAの資金事情やAMDのCUDA観はAMDの「CUDAはもう重要ではない」発言を扱った記事で触れています。
核心翻訳だけでは動かず、重い層は手書きに置き換えた
d4rを「互換レイヤーで丸ごと動かした」と見るのは正確ではありません。ZLUDAの翻訳だけでは、DLSS 4がまともに動かなかったからです。
構成資料によると、ZLUDAはNVIDIAの行列演算コードを忠実に訳せるものの、遅くなります。さらにDLSS 4のトランスフォーマーでは翻訳結果が無効な数値を出し、DLSSの最終段がそれを捨てていました。フレームは出ていても、ネットワークの効果が画面に反映されていなかったということです。
そこでcountervolts氏は、DLSS 4のネットワーク11層とDLSS 4.5の中核ブロックを、RDNA 3の行列演算命令(WMMA)向けに書き直しました。置き換えたコードは元と同じ名前と引数で呼ばれ、NVIDIAのDLLに入っている重みをそのまま読みます。リポジトリには重みもNVIDIAのコードも入っていません。翻訳版より2〜3倍速く、層ごとにPythonの参照モデルと出力を照合しています。
| 段階(DLSS 4・品質モード) | fps |
|---|---|
| ZLUDAの翻訳のみ | 58.5(ネットワークの効果なし) |
| 11層すべてを手書きに置換 | 65.0 |
| 深い層の並列化、演算精度の調整 | 66.0 |
| NGXのCPU待ちを削除 | 66.7 |
| 入力待ちをGPU側へ移動 | 68.0 |
| 出力をゲーム側へ直接書き込み | 68.4 |
| 入力バッファのコピーを廃止 | 69.4 |
最初の58.5fpsと2段目の65.0fpsは、後の段階と測り方が異なります。DLSS 4.5はもっと差が大きく、翻訳だけの28fpsから、手書きの層を足していって51.5fpsまで伸びました。DLSS 4.5の重みはFP8(8ビット浮動小数点)で、FP8の演算器を持たないRDNA 3向けにFP16へ展開してから計算しています。
DLSS-NR-on-AMD、DLSS 5の静止画ツールとの違い
RadeonでNVIDIAのDLSSを動かす試みは、9月の時点で方式の異なる3系統が並んでいます。
| 項目 | d4r | DLSS-NR-on-AMD | DLSS 5 Image Enhancer |
|---|---|---|---|
| 対象 | DLSS 3〜4.5の超解像 | DLSS 5のニューラルレンダリング | DLSS 5のニューラルレンダリング |
| 方式 | NVIDIAのDLLとNGXをZLUDA経由で実行し、重い層だけ手書きに置換 | 実行環境をAMD向けに書き直した再実装。NVIDIAのコードを実行時に変換しない | NVIDIAのDLLを独自改造のZLUDA経由で実行 |
| OS | Linux(Proton) | Windows 11 | Windows |
| ゲームで動くか | 動く(14本で確認) | 動く(FSR対応のDirectX 12ゲーム) | 動かない(静止画1枚のみ) |
| 必要なNVIDIAのDLL | nvngx_dlss.dll 310.7と_nvngx.dll(リリースに同梱) | nvngx_dlssnr.dll 310.8.0.0(利用者が用意) | 無改造のnvngx_dlssnr.dll(利用者が用意) |
DLSS 5 Image Enhancerの作者は、RTX 40・30・20シリーズで動かすために改造されたDLLはZLUDAでは使えず、NVIDIAの元のDLLが必要だと注意しています。また、LinuxではProtonやWineで「nvcuda.dllをLinuxのCUDAライブラリへつなぐ」ことが理屈の上では可能だが、まだ試していないとも書いています。d4rが5段目で実際にやっているのが、まさにこの橋渡しです。
DLSS-NR-on-AMDの導入方法と最新の性能はDLSS-NR-on-AMDの解説記事にまとめています。
GPUNavi 32だけがフル速度で動く理由
d4rのフル速度がNavi 32に限られるのは、Navi 32が技術的に特別だからではありません。手書きのRDNA 3用コードを、開発者が持っているRX 7700 XTのチップ(gfx1101)向けにしかビルドして配布していないためです。
ほかのRDNA 3チップでは手書きコードが使われず、ZLUDAの翻訳だけで動きます。するとDLSS 4は先ほどの無効値の問題でトランスフォーマーの効果が消え、画質が落ちたうえに遅くなります。DLSS 3のCNNモデルは翻訳だけでも問題が出ないため、RDNA 3ならどのチップでもフル速度です。
| GPU(チップ) | DLSS 3 | DLSS 4 | DLSS 4.5 |
|---|---|---|---|
| RX 7700 XT・RX 7800 XT・RX 7700・Radeon PRO W7700 Navi 32、gfx1101 | フル速度 | フル速度 | フル速度 |
| RX 7900 GRE・7900 XT・7900 XTX、Radeon PRO W7800・W7900 gfx1100 | フル速度 | トランスフォーマーなしで動作(画質低下・低速) | 約半分の速度 |
| RX 7600・7600 XT・7650 GRE gfx1102 | フル速度 | トランスフォーマーなしで動作(画質低下・低速) | 約半分の速度 |
| RDNA 4(RX 9000)、RDNA 2以前 | 非対応 | 非対応 | 非対応 |
実際に試したのはRX 7700 XTだけで、RX 7800 XTなどほかのgfx1101のカードは同じチップだから動くはず、という扱いです。手書きコードはビルド設定を変えればgfx1100・gfx1102向けにも作れますが、そのビルドは検証されていません。RX 9000(RDNA 4)は非対応と明記されています。手書きコードはRDNA 3世代(gfx11)の行列演算命令に合わせて書かれたものです。
性能DLSS 4.5はネイティブ比わずか2.4fps増、FSR 4には全モードで負け
開発者の測定条件は、RX 7700 XT、Ryzen 9 5900XT、Linux 6.18、『SILENT HILL Townfall』の2560×1440出力です。同じ62秒の歩行ルートを通しで計測し、MangoHudのフレームログから平均fpsを出しています。品質モード以外は、OptiScalerで描画倍率を上書きして再現しています。
| モード(内部解像度) | DLSS 3 | DLSS 4 | DLSS 4.5 | FSR 4 |
|---|---|---|---|---|
| 品質(1705×960) | 72.4fps | 69.4fps | 51.5fps | 76.0fps |
| バランス(1488×837) | 80.5fps | 76.6fps | 59.6fps | 84.5fps |
| パフォーマンス(1280×720) | 87.8fps | 84.0fps | 69.9fps | 94.0fps |
| ウルトラパフォーマンス 853×480 | 88.9fps | 94.5fps | 90.3fps | 107.3fps |
アップスケーラーを使わないネイティブ2560×1440(ゲーム内のTSRを100%)では49.1fpsでした。DLSS 4.5の品質モードは51.5fpsなので、内部解像度を縦横とも約3分の2に落としても、2.4fpsしか増えていません。DLSS 4.5の処理そのものが、RX 7700 XTにとってかなり重いということです。
DLSS 4は、どのモードでも1フレームあたり約2.8ミリ秒とほぼ一定のコストがかかります。ネットワークが内部解像度ではなく出力解像度に合わせて動くためで、内部解像度を下げるほどFSR 4との差が開きます。開発者自身も、NVIDIAのTensorコア向けに設計されたネットワークで、しかも一部はまだ翻訳されたNVIDIAのコードで動いているため、DLSSは最初から不利だと認めています。
比較対象のFSR 4について補足すると、AMDは米国時間2026年6月22日にFSR Upscaling 4.1(FSR 4の現在の名称)をRX 7000シリーズへ正式に提供しました。Windowsで動くRX 7000なら、ドライバーを更新すれば公式に使えます。アップスケーラーごとの画質と設定の考え方はDLSS・FSR・XeSSの違いと最適設定で比べています。
対応動作確認済みの14本と注意点
開発者のRX 7700 XT・GE-Proton 11-3の環境で、DLSS 3・4・4.5の3モデルとも動いたのは次の14本です。
- SILENT HILL Townfall、SILENT HILL 2(2024年版)
- Ghost of Tsushima DIRECTOR’S CUT、Horizon Zero Dawn Remastered
- Marvel’s Spider-Man: Miles Morales、Ratchet & Clank: Rift Apart、The Last of Us Part I
- Cyberpunk 2077、Alan Wake 2、Control Ultimate Edition
- Clair Obscur: Expedition 33、Ready or Not、Subnautica 2、Dying Light: The Beast
「動く」といっても無条件ではありません。HDRを有効にするとDLSS 4で表示の乱れが出るゲーム(Ready or Not、The Last of Us Part Iなど)があり、ゲームごとに起動オプションやDLL名の変更が必要な例もあります。なかでも次の2点は、多くのゲームに共通する注意点です。
- Ray Reconstructionは必ずオフにする。d4rは超解像しか扱えません。Controlはレイトレーシングを有効にするとRay Reconstructionを要求し、ゲーム開始時に落ちます
- OptiScalerの画面で設定を保存するとd4rの設定が消える。「Save INI」で設定ファイルが上書きされ、d4r用の値が初期値に戻ります
OptiScalerを使う以上、アンチチートを積んだオンラインゲームで使うのは避けてください。DLLを差し込む仕組みがアンチチートに検知される恐れがあります。OptiScaler自体の注意点はOptiScalerの導入方法と偽の配布元の見分け方で解説しています。
判断Radeonユーザーは試すべきか
判断の分かれ目は2つだけです。Linuxで遊んでいるか、そしてカードがNavi 32か。どちらかが「いいえ」なら、d4rは今のところ関係のないプロジェクトです。
- LinuxのSteamでRX 7700 XT・RX 7800 XTを使っている
- DLSS 4・4.5の画質を、同じ場面でFSR 4と見比べてみたい
- 表示の乱れや起動時の不具合を自分で切り分けられる
- WindowsでRX 7000を使っている(d4rは動かず、公式のFSR 4.1のほうが速い)
- RX 7900 XTXなどNavi 32以外のRX 7000を使っている
- RX 9000シリーズを使っている(非対応)
- アンチチート付きのオンラインゲームで使いたい
GPU選びの材料にもなりません。「将来DLSSが使えるかもしれない」という理由でRX 7700 XTやRX 7800 XTを選ぶのはおすすめしません。DLSSを確実に使いたいならGeForce RTXを選び、RadeonはFSR 4.1が公式に使える前提で、価格とVRAM容量から選ぶのが現実的です。
権利NVIDIAのファイルはd4rのライセンスの対象外
d4rのコードはApache License 2.0で公開されています。ただしリリース用のzipにはNVIDIAのnvngx_dlss.dllと_nvngx.dll、それにNVIDIAの中間コードから作ったカーネルが入っており、NOTICEファイルはこれらを「NVIDIAの所有物で、このリポジトリのライセンスの対象外」と明記しています。
ソースからビルドする場合は、利用者が自分で入手したDLLを使い、その利用はNVIDIAのライセンス条件に従う、という整理です。NVIDIAもAMDもd4rとは無関係で、どちらのサポートも受けられません。
Q&Aよくある質問
まとめまとめ|面白いのは速度ではなく「本物のDLLを通した」こと
d4rは、NVIDIA公式のDLSS超解像DLLを無改造のまま、Linux上のRadeon RX 7000で動かしました。対応はDLSS 3〜4.5で、DLSS 5は非対応です。フル速度はNavi 32だけで、FSR 4より全モードで遅いため、実用面でFSR 4.1から乗り換える理由はありません。
注目したいのは作り方です。NVIDIAのDLLとNGXは本物のまま動かし、CUDAはZLUDAで受け、翻訳では正しく動かなかった層だけを手書きのコードに差し替えています。「互換レイヤーか再実装か」の二択ではなく、両方を組み合わせた作りだといえます。
WindowsのRX 7000ユーザーは公式のFSR 4.1を使えば十分です。LinuxでRX 7700 XT・RX 7800 XTを使っていて、DLSS 4・4.5の画質を自分の目で比べたい人だけが試す価値のある実験です。



