24金ミニPC「Kubb Fanless」は本当に冷える?13kg・約2.7億円を密度と金相場で検算、銅なら6.2kgで上回る
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13kg・約2.7億円を密度と金相場で検算、銅なら6.2kgで上回る
出典:FanlessTech「Gold Kubb Fanless」、Kubb公式 Kubb Fanless製品ページ、Tom’s Hardware、英国王立化学会 周期表(金・アルミニウム・銅の密度と比熱)、Engineering ToolBox 金属の熱伝導率、Engineering ToolBox 放射率一覧、Fortune 2026年9月28日の金価格、日本銀行 外国為替市況(2026年9月28日)、Corti「Metallurgy of Microalloyed 24 Carat Golds」(Gold Bulletin)、ASUS ExpertCenter PN42 仕様、MeLE公式ストア Quieter 4C N150
ファンのない小型PCは、筐体そのものをヒートシンク(放熱器)にして熱を逃がします。フランスのKubbが販売する「Kubb Fanless」は、120mm角のアルミ削り出し筐体に縦フィンを刻んだ完全ファンレスのミニPCで、その筐体を24金の無垢材に置き換えた特注機の写真が、富裕層の顧客からの依頼として公開されました。
重さ約13kg・約170万ドル(約2億6700万円)という数字は、金の密度と金相場から計算した値とほぼぴったり重なります。一方で冷却面は「金は熱伝導率が高いから冷える」だけでは片づきません。蓄えられる熱の量はアルミとほぼ同じで、鏡面の金は熱放射が極端に苦手です。
重量・価格の検算、熱伝導・熱容量・放射・硬さの4つの物性、さらに同じ形を銅で作った場合との比較まで数字で並べ、ファンレスPCを選ぶときに素材より先に見るべき点をまとめます。
目次
要点24金Kubb Fanlessで分かったこと
通常モデル2.1kgのうち筐体を約1.77kgと置くと、同じ形の金は約12.7kgになり、2026年9月下旬の金相場で約169万〜175万ドルです。冷却面では熱伝導率が約35%上がる一方、同体積の熱容量はアルミとほぼ同じで、鏡面仕上げなら熱放射はむしろ大きく減ります。
概要24金Kubb Fanlessとはどんな特注機か
第一報は、ファンレスPCを専門に扱う海外ブログが2026年9月25日付で公開しました。Kubbの顧客が純金のKubb Fanlessを求め、24金版の重さを約13kg、価値を約170万ドルと見積もっています。金色の鏡面に仕上げられた筐体の写真も公開されています。

注意したいのは、13kgと170万ドルがどちらも「would be around(〜程度になる)」という試算の表現で書かれている点です。実際に量った重量や、顧客に請求した金額は公表されていません。Kubbの公式サイトにも24金モデルの告知は無く、通常のKubb Fanlessの紹介があるだけです。
通常モデルの仕様は、Kubbの製品ページで次のとおり確認できます。
| 項目 | 通常のKubb Fanless | 24金の特注機 |
|---|---|---|
| 筐体 | アルミニウム削り出し(縦フィン) | 24金の無垢材 |
| サイズ | 120×120×120mm | 通常モデルと同形状とされる |
| 重量 | 2.1kg | 約13kg(試算値) |
| CPU | Core Ultra 5 225H/Core Ultra X7 358H/Ryzen AI 5 340 | 非公表 |
| 内蔵GPU | Arc 130T/Arc B390/Radeon 840M | 非公表 |
| メモリ・SSD | DDR5 16GB(最大128GB)、1TB NVMe Gen4+M.2増設1基 | 非公表 |
| 電源 | 120W ACアダプター(19V/6.32A) | 非公表 |
| 価格 | 1,595ユーロから(約28万5000円) | 約170万ドル相当(試算値) |
中身は、ノートPC向けのCore UltraやRyzen AIを使う静音ミニPCです。Core Ultra 5 225Hの基本電力は28Wで、ゲーミングデスクトップのような大電力CPUや単体GPUは載っていません。約2.7億円という値段は、処理性能とはほぼ無関係です。円換算は日本銀行の2026年9月28日17時時点のレート(1ドル=157.22円、1ユーロ=178.95円)で計算しています。
重量13kgを密度で検算すると金は約12.7kg
同じ形のまま素材だけを入れ替えるなら、重さは密度の比で増えます。英国王立化学会の周期表では、アルミニウムの密度が2.70g/cm³、金が19.3g/cm³です。金はアルミの約7.15倍の重さになります。
ただし2.1kgの全部がアルミではありません。基板やメモリ、SSD、端子類の重さは素材を替えても変わらないので、「筐体の重さ×7.15+内部部品の重さ=13kg」になる筐体重量を逆算します。
- 筐体のアルミをx kgとすると、7.15x+(2.1−x)=13
- 6.15x=10.9なので、x≒1.77kg(内部部品は約0.33kg)
- 同じ体積の金は1.77kg×7.15≒12.67kg
- 12.67kg+内部部品0.33kg≒13.0kg
筐体1.77kgという置き方は、内部部品が約0.33kgという意味です。NUCクラスの小さなマザーボードとメモリ、SSDの重さとして無理のない数字で、13kgという試算は「筐体だけをそのまま金に置き換えた」と考えると筋が通ります。
体積に直すと、アルミ筐体は約657cm³です。120mm角の立方体の外形体積1,728cm³に対して約38%が金属で、残りはフィンの隙間と内部空間になります。フィンで表面積を稼ぐ設計が、数字の上からも見えてきます。
価格約170万ドルは金の地金価値とほぼ一致
逆算した12.67kgの金は、1トロイオンス=31.1035gで換算すると約407トロイオンスです。これに2026年9月下旬の金価格を掛けると、次のようになります。
| 時点 | 金価格(1トロイオンス) | 約12.67kgの地金価値 |
|---|---|---|
| 第一報の2026年9月25日 | 約4,298ドル | 約175万ドル |
| 2026年9月28日朝(米東部時間) | 約4,150ドル | 約169万ドル |
| その約1か月前 | 約4,609ドル | 約188万ドル |
第一報の時点の相場で約175万ドル、直近で約169万ドルと、どちらも「約170万ドル」の範囲に収まります。170万ドルは加工費や本体代を積み上げた販売価格ではなく、筐体に使う金の地金価値と見るのが自然です。
裏を返せば、この値段は金相場に連動して動きます。1か月前の相場なら約188万ドルで、わずか1か月で約19万ドル、日本円で約3,000万円も価値が変わった計算です。通常モデルの本体代(1,595ユーロから)は、地金価値の0.1%ほどにすぎません。
熱伝導金はアルミより約35%熱を伝えやすい
冷却面の利点ははっきりあります。Engineering ToolBoxの0℃の値で、純アルミの熱伝導率は236W/m·K、金は318W/m·Kです。金のほうが約35%高く、CPUの近くにたまった熱をフィン全体へ広げる速さでは金が有利です。
第一報は「金はアルミより30〜50%速く熱を伝える」としていますが、この幅は比べるアルミの種類で説明できます。アルミ合金は純アルミより熱伝導率が低く、同じ表でもジュラルミン系は164W/m·K、3003合金は190W/m·Kです。相手が合金なら差は35%より大きくなります。Kubbは筐体の材質を「アルミニウム」とだけ記載しており、合金の種類は公表していません。
ただし、熱伝導率が35%高くてもPC全体が35%冷えるわけではありません。ファンレスPCの熱は、CPUから筐体へ移り、筐体の中をフィンへ広がり、最後にフィン表面から空気への対流と熱放射で部屋へ逃げます。金が改善するのは真ん中の「筐体の中を広がる」段階だけで、最後に空気へ渡す段階はフィンの形・面積・表面の状態で決まります。
熱容量13kgでも蓄えられる熱はアルミとほぼ同じ
13kgの金塊のような筐体なら、温まるまでに相当時間がかかりそうに見えます。ところが、同じ形で比べると熱をため込む力はアルミとほとんど変わりません。金は重い代わりに、1kgあたりの比熱が小さいからです。
| 項目 | アルミ | 金(24金) | 銅 |
|---|---|---|---|
| 密度 | 2.70g/cm³ | 19.3g/cm³ | 8.96g/cm³ |
| 比熱 | 897J/kg·K | 129J/kg·K | 385J/kg·K |
| 体積あたりの熱容量 | 2.42J/cm³·K | 2.49J/cm³·K | 3.45J/cm³·K |
| 同形状の筐体全体の熱容量 | 約1,590J/K(1.77kg) | 約1,630J/K(12.67kg) | 約2,260J/K(5.88kg) |
密度と比熱を掛けた「体積あたりの熱容量」は、アルミ2.42に対して金2.49で、差は約3%しかありません。7倍重くなっても、筐体全体が1℃上がるまでに吸える熱はほぼ同じです。
具体的な時間にすると差の小ささが分かります。30Wの熱が筐体に入り続け、しかも外へ一切逃げないと仮定した場合、30℃上がるまでの時間はアルミが約26分、金が約27分です。同じ条件で銅なら約38分かかり、熱をため込む力では銅が金より約4割上です。
金を使う熱的な意味は「重いから熱をため込める」ことではなく、熱を筐体全体へ速く広げられることにあります。13kgという重さは、冷却にはほとんど効いていません。
放射鏡面の金は熱放射がほぼゼロになる
ファンのないPCでは、表面から赤外線として出ていく熱放射も無視できない割合を占めます。放射で逃げる熱は表面の放射率(0〜1)に比例し、金属の種類よりも表面の仕上げで大きく変わります。
Engineering ToolBoxの放射率一覧では、よく磨いた金は0.02〜0.04、磨いていない金でも0.47です。アルミは研磨面が0.039〜0.057と低い一方、アルマイト処理(陽極酸化)した面は0.77まで上がります。公開された24金版の写真は、フィンまで鏡のように磨き上げた外観です。
筐体の外形のうち底面を除く5面(約0.072m²)で、表面60℃・室温25℃として放射で逃げる熱を概算すると、放射率0.8なら約14W、0.03なら約0.5Wです。フィンの奥どうしは互いに放射をさえぎり合うため、外形の面積で見積もるのが目安になります。
通常モデルのグラファイト色の仕上げがアルマイトかどうか、放射率がいくつかは公表されていないため、この差がそのまま金モデルの損になるとは断定できません。それでも、基本電力28W級のCPUを冷やす筐体で、仕上げ次第で10W以上の放熱が左右されうることは、熱伝導率の35%差と同じくらい大きな要素です。
比較同じ形を銅で作れば約6.2kgで熱伝導率も上
冷却だけを求めるなら、答えは銅です。同じ表で銅の熱伝導率は401W/m·Kと金の318W/m·Kより約26%高く、密度は金の半分以下です。
| 同形状で作った場合 | アルミ(通常モデル) | 24金 | 銅 |
|---|---|---|---|
| 筐体の重さ | 約1.77kg | 約12.67kg | 約5.88kg |
| PC全体の重さ | 2.1kg | 約13kg | 約6.2kg |
| 熱伝導率(0℃) | 236W/m·K(純アルミ) | 318W/m·K | 401W/m·K |
| 体積あたりの熱容量 | 2.42J/cm³·K | 2.49J/cm³·K | 3.45J/cm³·K |
| 磨いた面の放射率 | 0.039〜0.057 | 0.02〜0.04 | 0.023〜0.052 |
銅は重さが金の半分以下で、熱を広げる力も蓄える力も金を上回ります。海外の大手ハードウェアメディアも、銅のほうがはるかに安く熱伝導率も高いと指摘しています。24金が選ばれた理由は冷却ではなく、顧客が金を望んだからで、その金がたまたまヒートシンク材としても悪くなかった、というのが実態に近いはずです。
それでも市販のファンレスPCの多くがアルミを使うのは、軽くて削りやすく、アルマイトで放射率も上げられるからです。熱伝導率が200W/m·K前後あれば、素材をさらに良くするより、フィンの面積や間隔を詰めるほうが効きやすくなります。
硬さ純金はフィンが曲がりやすい柔らかさ
24金は、PCの外装としてはかなり柔らかい金属です。金の専門学術誌Gold Bulletinに掲載された論文では、純度99.0〜99.5%の24金のビッカース硬さは焼きなました状態でHV20〜30、加工硬化させてもHV50〜80にとどまります。一般的な18金は焼きなました状態でHV150前後です。

薄い縦フィンが並ぶ形状で、13kgの本体を持ち上げたり置いたりすれば、フィンの変形や擦り傷は避けにくいはずです。純度を保ったまま硬くする微量添加の24金もありますが、今回の筐体がどの素材や加工で作られたかは公表されていません。
他機種他のファンレスミニPCと比べると24金の重さは冷却に効いていない
24金のKubb Fanlessを、同じくファンを持たない市販のミニPCと並べると、重さとCPUの電力がまったく比例していないことが分かります。通常のKubb Fanlessは2.1kgのアルミ筐体で基本電力28WのCPUを冷やし、ASUS ExpertCenter PN42は約1kg、MeLE Quieter4Cは約200gの筐体でTDP 6〜8W級のCPUを冷やしています。
| 項目 | 24金Kubb | 通常Kubb | ASUS PN42 | MeLE Quieter4C |
|---|---|---|---|---|
| CPU | 非公表 | Core Ultra 5 225Hほか | Intel N100 | Intel N150 |
| CPUの電力 | 非公表 | 基本電力28W(225H) | TDP 6W | TDP 7〜8W(メーカー設定値) |
| サイズ | 通常モデルと同形状 | 120×120×120mm | 127.5×132×57.6mm | 131×81×18.3mm |
| 重量 | 約13kg(試算値) | 2.1kg | 1.04kg | 203g |
ファンレスPCの筐体の大きさは、載せるCPUの電力に合わせて決まっています。6〜8W級なら手のひらサイズでも冷やせ、28W級になるとKubbのような2kg超の大型ヒートシンクが要ります。24金版は重さが約6倍になっても、CPUの電力上限を引き上げたという発表はありません。
事務作業や動画視聴、常時稼働のサーバー用途で無音を求めるなら、N100やN150を積んだ数万円台のファンレス機で足ります。内蔵GPUで軽いゲームや動画編集まで考えるなら、通常のKubb Fanlessや後述のAkasa Newton N16のような28W級を選ぶのが順当です。
選び方ファンレスPCは素材より電力上限と仕上げを見る
24金Kubbの数字からは、ファンレスPCの冷却を決めるのは素材の名前ではないことが分かります。静かなミニPCを選ぶときは、次の順に確認すると失敗しにくくなります。
- CPUの電力上限(基本電力・設定されたTDP)が何Wか
- フィンの面積と向き(縦フィンは設置向きで効きが変わる)
- 表面がアルマイトや塗装か、金属むき出しの研磨面か
- 高負荷を続けたときのクロック低下の実測があるか
- 筐体の素材名(アルミか銅か金か)だけ
- 本体の重さ(熱容量は体積でほぼ決まる)
- ACアダプターの定格W数(CPUが常時使える電力ではない)
- 「熱伝導率◯%アップ」という素材単体の数字
電力上限の現実は、ASUS NUC 16 Proを丸ごとファンレス化するケースAkasa Newton N16が分かりやすい例です。筐体全体をアルミのヒートシンクにしても対応TDPは最大28Wで、Arc B390のゲーム性能はその分だけ下がります。ファンを残して冷やす方向なら、VZMOREのベイパーチャンバー冷却「V-Cooling」のように最大120Wを狙う設計もあります。
ファンを使わずにゲーム機並みの熱を捨てるのがどれだけ難しいかは、LenovoのAirJet搭載ファンレスPCの除熱量の検証でも数字で見られます。金属に触れさせると温度が下がる現象そのものは、ゲーミングノートを金属面に置いてCPUが最大15℃下がった報告の検証で、熱伝導と結露のリスクまで含めて扱っています。
まとめ2.7億円の価値は冷却性能ではなく地金にある
24金のKubb Fanlessは、13kgという重さも約170万ドルという値段も、「アルミ筐体と同じ形の金が約12.7kg」と置けばほぼ再現できます。値段のほとんどは金の地金価値で、中身は基本電力28W級のCPUを積んだ静音ミニPCです。
冷却面では、金の熱伝導率がアルミより約35%高く、熱を筐体全体へ広げる力は確かに上がります。ただし同じ体積で蓄えられる熱はアルミとほぼ同じで、鏡面の金は熱放射を大きく減らす可能性があり、冷やすだけなら約6.2kgで済む銅のほうが上です。金モデルのCPU温度やクロックの実測は公表されておらず、アルミ版よりどれだけ冷えるかは現時点では分かりません。
24金Kubb Fanlessの約170万ドルは、逆算した約12.7kgの金の地金価値とほぼ一致します。金は熱をよく広げますが、熱容量はアルミ並みで、磨いた面は放射が苦手です。冷却目的なら銅が上で、ファンレスPC選びでは素材より電力上限・フィン・表面仕上げを見るのが近道です。



