VZMOREがミニPC向け「V-Cooling」を公開|大型ベイパーチャンバーで最大120W、38dB公称値はどう見る?
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大型ベイパーチャンバーで最大120W、38dB公称値はどう見るか
出典:VZMORE公式サイト「V-Cooling」技術ページ、VZMORE公式「AX9 Max」「iX9 Max」製品ページ、AMD公式「Ryzen AI Max+ 388」製品ページ、VZMORE公式ニュースリリース(2026年8月25日・9月4日)、GEEKOM公式「A9 Mega」製品ページ、ASUS公式「ROG NUC 16」発表資料、MINISFORUM公式「MS-S1 MAX」製品情報、Eaton公式による二相式冷却技術解説、VideoCardzの報道を2026年9月22日に直接確認したものです。
ミニPCの筐体はノートPCより余裕があるとはいえ、フルサイズのデスクトップと比べれば放熱の余地は限られます。処理性能を上げようとするほど、ファンの音がうるさくなるか、クロックが落ちて性能が頭打ちになるかのどちらかに近づきやすいのが実情です。
2026年9月21日、ドイツのミニPCブランドVZMOREが、この課題に向けた独自の冷却機構「V-Cooling」を公開しました。大型のベイパーチャンバー・筐体底面からの360度吸気・縦方向のエアフロー・高密度フィン・専用設計のファンを組み合わせた構成で、従来のデュアルヒートパイプ方式と比べて熱拡散面積が40%、熱伝達効率が50%それぞれ向上すると説明しています。すでに販売中の製品では、フル負荷時でも最大38dBという静音性能を公称しています。
気になるのは、この40%・50%という数字がどういう性質の数字なのか、そして「最大120W」と「38dB」という2つの数字が同じ製品・同じ設定で両立しているのかという点です。VZMORE公式の製品ページ・技術ページ・ニュースリリースを直接確認し、現行販売中モデルと今後展開予定の上位モデルとで、実際にはどこまでの数字が裏付けられているのかを整理します。

目次
構造V-Coolingとは何か
V-Coolingの中心にあるのは、従来のデュアルヒートパイプ方式に代わる大型のベイパーチャンバー(VC)です。液体が受熱部で蒸発し、蒸気となって拡散したのち放熱部で凝縮し、毛細管構造を通って再び受熱部へ戻るという循環を繰り返すことで熱を運びます。この循環経路を、細い金属パイプ2本に頼るのではなく、面で広がる1枚のチャンバーに置き換えたのがV-Coolingの基本構成です。
冷却は処理チップの直上だけで完結しません。V-Coolingは筐体底面の360度から空気を取り込み、CPU・マザーボード・メモリ・SSDへと縦方向に空気を通したあと、VCと高密度化したフィンスタックを抜けて排出する設計です。ファンにはポリマー素材を使って振動を抑えつつ、羽根形状とフィン形状、自動ファン制御を組み合わせています。VZMOREによれば、この構成でフル負荷時でも動作音を最大38dBまで抑えられるとしており、比較対象とする一般的なミニPC冷却機構の目安である約50dBから12dBほど低い水準としています。なお、VCモジュール自体のコストは、従来のデュアルヒートパイプ設計と比べて約3倍かかるとVZMOREは説明しています。
読み方「40%・50%」はVZMOREの社内比較値であり、体感温度の改善率ではない
「熱拡散面積40%増・熱伝達効率50%向上」は、VZMOREが自社内で実施した比較試験にもとづく数値で、比較対象は従来のデュアルヒートパイプ方式です。第三者機関による独立検証は本稿時点で確認できていません。あくまでベイパーチャンバーという部品単体の特性を示したものであり、CPU温度が何度下がるか、フレームレートや処理速度が何%向上するかを示す数字ではない点は区別して読む必要があります。
放熱の経路には、処理チップとVCの接触部分、VC自体の熱拡散性能、VCからフィンへの伝導、フィンから空気への対流、ファンや筐体全体の風量という具合に、複数の関門があります。VC単体の性能が向上しても、その他の関門がボトルネックになっていれば、体感できる温度差やクロックの維持時間にそのまま反映されるとは限りません。実機でのCPU温度・持続クロック・実消費電力を計測した第三者レビューが出てくるまでは、この数字は「部品の設計目標値」として受け止めておくのが妥当です。
実装「最大120W」と「38dB」は同じ製品の数字ではない
VZMOREはV-Coolingと組み合わせる電力制御を「V-Boost」と呼び、3段階のティアを用意しています。日常用途を想定した無印のV-Boost(最大45W)、業務・編集用途向けのV-Boost Pro(最大80W)、そしてフラッグシップ用途向けのV-Boost Max(最大120W)です。ここで注意したいのは、各ティアの上限値と、実際の製品に設定されている動作値が必ずしも一致しない点です。
AX9 Max / iX9 Max
- 搭載チップRyzen AI 9 HX 470+Radeon 890M/Core Ultra 9 185H+Intel Arc
- 持続電力65W(V-Boost Proの上限80Wより低い設定)
- 騒音(公称)最大38dB(65W動作時)
- 販売状況VZMORE公式サイトで販売中(1,499ドル/1,099ドル)
AX9 Ultra
- 搭載チップRyzen AI Max+ 388+Radeon 8060S(40CU)
- 持続電力V-Boost Maxの上限120Wに設定
- 騒音(公称)本稿時点で120W動作時の数値は非公表
- 販売状況2026年10月中旬グローバル展開予定、価格・地域別の取り扱いは未定
つまり現在すでに買えるAX9 Max・iX9 Maxは、V-Boost Proというティアに属しながらも上限の80Wではなく65Wに抑えた設定で、そのうえで38dBという数字を公称しています。一方、報道で目立つ「最大120W」はV-Boost Maxというさらに上のティアの上限値で、これを採用するのはまだ市場に出ていないAX9 Ultraです。VZMOREのニュースリリースでも、38dBを達成できるとしているのは「特定のモデル」という限定付きの表現になっており、120W設定のAX9 Ultraで同じ38dBが再現されるとは述べられていません。「最大120W・38dB」という組み合わせを、あたかも1つの製品が同時に達成した数字であるかのように読むのは早計です。
技術ヒートパイプとベイパーチャンバーは原理が違うわけではない
ヒートパイプとベイパーチャンバーは、しばしば別の冷却方式のように語られますが、熱を運ぶ仕組みそのものは同じです。どちらも密閉容器内の液体が受熱部で蒸発し、蒸気が放熱部まで移動して凝縮し、毛細管構造を伝って液体が受熱部に戻るという二相式の熱輸送を利用しています。銅の熱伝導と比べて100倍前後の実効熱伝導率を得られる点も共通です。
両者の違いは、熱をどの方向に広げるかにあります。ヒートパイプは主に管の軸方向、つまり1本の線に沿って熱を運ぶのに向いた形状です。対してベイパーチャンバーは面方向、つまりX軸・Y軸の2次元に熱を広げるのに向いています。VZMOREが「熱拡散面積が広がる」と説明しているのは、この平面方向への広がりやすさを指しています。狭い接触面から出た熱を、より広い面積のフィンスタックへ素早く分散できるという理屈自体は、技術的に妥当な説明です。
比較ベイパーチャンバー搭載だから必ず冷えるわけではない
ベイパーチャンバーを採用してさえいれば高い持続電力を実現できる、というわけでもありません。競合のミニPCを見ると、ベイパーチャンバー採用機とヒートパイプ採用機の両方に、120W級以上の持続電力を公称するモデルが存在します。冷却方式のラベルだけで性能を判断せず、ファンの数・フィンの面積・筐体設計まで含めた総合力で見る必要があります。
GEEKOM A9 Mega
- 搭載チップRyzen AI Max+ 395(cTDP 45〜120W)
- 冷却方式IceBlast 5.0(デュアルファン+フルカバー型VC)
- 持続電力120W持続(公式公称)
ASUS ROG NUC 16
- 冷却方式QuietFlow Cooling(デュアルVC+3ファン)
- 騒音(公称)フル負荷時でも38dBA未満
- 特徴CPU受熱面積を12%拡大、SSD専用ヒートシンクも搭載
MINISFORUM MS-S1 MAX
- 搭載チップRyzen AI Max+ 395
- 冷却方式純銅ベース+ヒートパイプ6本+デュアルファン
- 持続電力130W持続・160Wピーク(公式公称)
GMKtec EVO-X3
- 搭載チップRyzen AI Max+ 395
- 冷却方式トリプルヒートパイプ+3ファン
- 持続電力標準はバランスモードの85W
ベイパーチャンバーを採用するGEEKOM「A9 Mega」は120W持続、ASUS「ROG NUC 16」は38dBA未満という静音性を公称しています。一方、ヒートパイプ方式のMINISFORUM「MS-S1 MAX」は6本のヒートパイプと純銅ベースの組み合わせで130W持続・160Wピークを実現し、VC採用機を上回る数字を公称しています。VZMOREのAX9 Ultraが掲げる「V-Boost Maxで最大120W」は、この競合水準と並ぶ数字ではあるものの、まだ市場に出ていない設定である以上、現時点では公称値どうしの比較にとどまります。
AX9 Ultraが搭載予定のRyzen AI Max+ 388・Radeon 8060Sという構成は、GEEKOM「A9 Mega」のMax+ 388構成と型番まで一致しており、VZMore製品がGEEKOM製品のリブランド版ではないかという指摘が別途出ています(両社から公式な確認・否定はありません)。そのためこの比較は、必ずしも設計の異なる独立した競合同士の対決ではなく、同系統の土台を持つ製品同士の公称値比較である可能性がある点を踏まえて読んでください。
判断今どう向き合うべきか
- 静音志向のミニPC選びで冷却設計の考え方を知っておきたい人
- V-Boost の3段階区分(45W/80W/120W)と実際の製品設定の違いを理解しておきたい人
- AX9 Ultraの2026年10月中旬のグローバル展開を待てる人
- 「最大120W・38dB」を1つの実証済みの数字だと思って購入判断をしたい人(現時点では別設定の数字)
- AX9 Ultraを今すぐ日本で購入したい人(価格・国内取り扱いとも本稿時点で未定)
- 今すぐ130W級の持続性能が欲しい人(すでに実測レビューがあるモデルを選ぶ方が確実)
おすすめ今すぐ130W級の持続性能を確保したいなら
AX9 Ultraの実機レビューを待たずに、すでに130W級の持続電力が確認できているモデルを選びたい場合は、次の2機種が候補になります。いずれもRyzen AI Max+ 395を搭載し、冷却方式は異なりますが公称値・実測レビューの両方が出そろっています。
Q&Aよくある質問
総括まとめ|数字の出どころを分けて読む
V-Coolingは、大型ベイパーチャンバー・360度底面吸気・縦方向エアフローを組み合わせた冷却設計で、方向性としては理にかなっています。ただし「熱拡散面積40%増・熱伝達効率50%向上」はVZMORE自身の社内比較値であり、CPU温度や体感性能の改善率をそのまま示す数字ではありません。
現行販売中のAX9 Max・iX9 Maxが公称するのは65W持続・38dBという実在の数字ですが、上位モデルAX9 Ultraが掲げる「最大120W」はまだ市場に出ていない設定で、その状態での騒音値は示されていません。「最大120W・38dB」を1つの製品が同時に達成した数字として扱わないことが重要です。
購入を判断する材料としては、VZMOREの公称値をそのまま鵜呑みにせず、第三者による実機レビューで持続クロック・実消費電力・実測の動作音が確認できてから検討するのが安全です。今すぐ130W級の性能が確実に欲しい場合は、すでに公称値・実測レビューが出そろっているMINISFORUM「MS-S1 MAX」やGMKtec「EVO-X3」のようなモデルも選択肢になります。





