SAPPHIREが25周年|ATIリファレンスカードからRadeon・マザーボード・AIへ、25年の変化を振り返る【2026年9月】
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ATIリファレンスカードからRadeon・マザーボード・AIへ、25年の変化を振り返る
出典:SAPPHIRE公式「25th Anniversary」(2026年9月19日) / SAPPHIRE公式「20th Anniversary」 / AMD公式 SEC 8-K「ATI Technologies買収完了」(2006年10月25日) / SAPPHIRE公式「PhantomLink」 / SAPPHIRE公式「EDGE+ Apex」 / SAPPHIRE公式「EDGE AIミニPCシリーズ」 / SAPPHIRE公式「NITRO+ B850A WIFI 7」発表(2025年9月10日)にもとづきます(2026年9月22日時点)。
Radeonのグラフィックボードメーカーとして知られるSAPPHIRE Technologyが、2026年に設立25周年を迎えました。PCゲーマーにとってはNITRO+やPULSEといったRadeon搭載グラフィックボードの印象が強いメーカーですが、現在のSAPPHIREが扱っているのはGPUだけではありません。AM5マザーボード、Ryzen AIを搭載したMini PC、Radeon AI PRO、さらにロボットや車載システム向けのEdge AIハードウェアまで事業領域を広げています。
ただし25年間の製品史を詳しく調べてみると、これは単純な「Radeonメーカーが最近AIへ参入した」という話ではありません。SAPPHIREは2006年にすでに自作PC向けマザーボードを発売し、2011年にはMini PC、2014年には組み込み向けマザーボード、2017年にはGPUコンピュート事業へ進出していました。
2025年から2026年にかけて起きているのは、まったく新しい事業への進出というより、過去25年間に蓄積してきた複数のハードウェア事業をAMDのCPU・GPU・NPUを中心とした一つのエコシステムへまとめ直す動きと見る方が実態に近そうです。
目次
要点まず何が起きたか
2001年に香港で設立されたSAPPHIREは、ATIのリファレンスカード生産拠点として始まりました。25周年発表では、AMD CEOのLisa Su氏とSAPPHIRE創業者・CEOのKD Au氏がコメントを寄せ、今後は次世代グラフィックス、マザーボード、組み込みシステム、Edge AIへ展開していく方針を示しています。
起点2001年設立、ATI時代からRadeonを作ってきた
SAPPHIRE Technologyは香港に本社を置き、2001年に設立されました。今回の25周年発表では、同社について「ATIリファレンスカード生産の拠点として設立された(Originally established as the home of ATI reference card production)」と説明しています。
ここで重要なのは、SAPPHIREとRadeonの関係が「AMD Radeon」になってから始まったものではないことです。SAPPHIREが設立された2001年当時、RadeonはATI TechnologiesのGPUブランドでした。AMDがATIの買収を完了したのは2006年10月25日です。AMDの公式発表によると、買収総額は約54億ドル(現金約43億ドル・AMD株式約5,800万株)で、CPUだけでなくグラフィックスやチップセットまで扱う企業へAMDが大きく変化する転換点でした。つまりSAPPHIREは、AMDによるATI買収より約5年前からRadeonに関わっていたことになります。ATIがNVIDIAとハイエンドGPU性能を争っていた2000年代前半から現在のRDNA世代まで、同じRadeon系ブランドを扱い続けてきたメーカーという点では、かなり特殊な立ち位置です。
今回の25周年発表でAMD CEOのLisa Su氏は、SAPPHIREについて「卓越したエンジニアリングとデザインを通じ、世界中の顧客にAMD RadeonとRyzenの各世代を届けてきた信頼できるパートナー」とコメントし、ローカルAI・Edge AIを含む新分野への協力拡大にも触れています。
歴史最初からNITRO+やPULSEがあったわけではない
現在のSAPPHIREというとNITRO+やPULSEを思い浮かべる人が多いかもしれませんが、このブランド構成になったのは比較的新しい時代です。SAPPHIRE公式の20周年資料によると、2005年にはヒートパイプ冷却を採用した「ULTIMATE X800 XL」を展開し、同時期には現在まで続くGPUユーティリティ「TriXX」も登場しています。2006年にはエンスージアスト向けブランド「TOXIC」を投入し、TOXIC Radeon X1900 XTXを発売しました。さらに2007年には、ベイパーチャンバー冷却を採用した「ATOMIC」が登場しています。その後2008年にはVapor-Xクーラー搭載のTOXICや、デュアルGPUと簡易水冷を組み合わせたATOMICモデルまで登場しました。現在ではベイパーチャンバーや大型ヒートシンクはハイエンドGPUで珍しくありませんが、SAPPHIREはかなり早い段階からGPUの冷却設計を製品差別化の中心に置いていたメーカーだったことが分かります。
SAPPHIREの歴史で特に面白いのが2009年のATOMIC HD 4890です。SAPPHIRE公式の資料によると、ATOMIC HD 4890はコアクロック1GHzで市販された世界初のグラフィックボードだったとされています。1GB GDDR5を搭載し、当時のATI系シングルGPUカードとして非常に高いクロックを実現していました。現在ではGPUクロックが2GHzや3GHzに達することも珍しくありませんが、2009年当時の「1GHz」は大きな節目でした。この時代のATOMICやTOXICを見ると、現在のNITRO+につながる「AMD GPUをリファレンス仕様のまま販売するだけでなく、冷却・電源・クロック設計で付加価値を加える」というSAPPHIREの方向性が、すでに形成されていたことが分かります。
意外な事実実は2006年にもマザーボードを作っていた
現在のSAPPHIREを追っていると、AM5マザーボードへの参入を新事業のように感じるかもしれません。しかしSAPPHIREにとってマザーボードは新しい製品ではありません。2006年には「PURE CrossFire PC-A9RD580」というマザーボードを発売しています。CrossFire Xpress 3200チップセットとSB450サウスブリッジを採用し、AMD Athlon 64に対応した製品で、白を基調としたデザインも特徴でした。
そのため、2025年9月10日にSAPPHIREがNITRO+ B850A WIFI 7を発表した際、公式リリースでも「長らく待ち望まれていたSAPPHIREマザーボードがついに復活」と表現しています。現在のAM5マザーボード展開は、新規参入というより約20年前に展開していた自作PC向けマザーボード事業の本格復活と考えた方が正確です。
ブランドNITRO+は2015年、PULSEは2017年に登場
現在のSAPPHIREを象徴するNITRO+シリーズが登場したのは2015年です。SAPPHIREはNITRO+について、高品質なコンポーネントや冷却設計を重視したシリーズとして展開してきました。現在でもRX 9070 XTやRX 9070などの上位モデルにNITRO+が設定されています。一方、PULSEが登場したのは2017年で、最初期のPULSEはRadeon RX 500シリーズで展開され、価格と性能のバランスを重視するシリーズとして投入されました。現在のRadeonで大まかに見ると、冷却や性能を重視するNITRO+、白を基調としたデザインが特徴のPURE、価格と性能のバランスを狙うPULSEという分け方になっており、RX 9070シリーズでもこの構成は継続されています。
ここ数年で興味深い変化が、NITRO+・PURE・PULSEというブランド名がGPUだけに使われなくなっていることです。現在のSAPPHIREのマザーボードには、NITRO+ B850A WIFI 7やNITRO+ X870EA、PURE X870A WIFI 7、PURE B850A WIFI 7、PULSE B850M WIFIなどが存在します。SAPPHIREはGPUで築いたブランド構成を、そのままマザーボードへ持ち込んでいるわけです。GPUとマザーボードを同じNITRO+やPUREで統一することで、利用者がPC全体を一つのブランドで構成できるようになります。その方向性が特に分かりやすく現れているのが、2026年4月28日に発表された「PhantomLink」です。
SAPPHIREはPhantomLinkの組み合わせを「NITRO+エコシステム」と呼んでいます。対応マザーボードにはGC-HPWR(BTF互換)と呼ばれるGPU電源スロットが用意され、対応するNITRO+ RX 9070 XT PhantomLink EditionはこのスロットからGPUへケーブルレスで電力を供給できます。GC-HPWR/BTFの接続方式やMeltgate構造との関係といった技術的な詳細はここでは深追いせず要点だけに留めますが、従来のSAPPHIREなら利用者のマザーボードがASUSでもMSIでもGIGABYTEでも、Radeon GPU単体を販売できればビジネスとして成立していました。PhantomLinkでは、GPUとマザーボードをセットで設計し、外観や接続方法まで含めた「SAPPHIRE製PCプラットフォーム」を作ろうとしている点が変化です。
意外な事実Mini PCも実は2011年から作っていた
もう一つ意外なのがMini PCです。2025年以降、SAPPHIREはRyzen AIを搭載したEDGE AI Mini PCを展開しているため、AIブームに合わせて突然Mini PC市場へ進出したようにも見えます。しかしSAPPHIREのMini PCの歴史はかなり古く、2011年にはIntel Atomを搭載した「SAPPHIRE EDGE-HD Mini PC」を発売していました。つまり「EDGE」という名前も新しくありません。現在のEDGE AIは、十数年前から存在していた小型PC事業をAMD Ryzen AI時代に合わせて再構成した製品と見ることもできます。
現在販売されているSAPPHIRE EDGE AIシリーズには、Ryzen AI 9 HX 370を搭載するEDGE AI 370、Ryzen AI 7 350のEDGE AI 350、Ryzen AI 5 340のEDGE AI 340があります。Ryzen AI 300シリーズのXDNA 2 NPUにより最大50 TOPSのAI処理性能を備え、CPU・Radeon 800MシリーズGPU・NPUを一つの小型筐体(117×111×30mm)へまとめています。DDR5 SO-DIMMは最大96GBに対応し、M.2 NVMe SSD・USB4・2.5GbEなども搭載します。ゲーミングPC向けGPUとはかなり違う製品ですが、ここでも使用されているのはAMDのCPU・GPU・NPUで、SAPPHIREがAMD製半導体を使ったシステム全体の設計へ事業を広げていることが分かります。
背景AI・ロボット・車載まで広がったのは突然ではない
25周年発表の中で最もRadeonメーカーらしくないのが、ロボティクスや自動車向け事業です。SAPPHIREはコンシューマー向けRadeonだけでなく、プロフェッショナル向けの「Radeon AI PRO R9700」も扱っています。RDNA 4アーキテクチャを採用し、32GB GDDR6・128基のAIアクセラレータを搭載したGPUで、SAPPHIRE版はPCIe 5.0 x16・256bitメモリバスを採用し、AIや機械学習向けのローカル処理を想定しています。一般的なゲーマーが購入するNITRO+やPULSEとは目的が異なりますが、Radeon GPUのボード設計や冷却を長年手掛けてきたSAPPHIREにとって、ゲーミングGPUからプロ向けGPUへ広げることには技術的な連続性があります。
2026年7月23日には、ロボティクス向けプラットフォーム「EDGE+ Apex」も発表しています。AMD Ryzen AI Embedded X100シリーズプロセッサと、SAPPHIREが設計したCOM-HPC SOMベースのキャリアボードを組み合わせたプラットフォームで、自律ロボットに必要な画像認識・判断・制御などをエッジ側で処理することを想定し、最大128GBのLPDDR5Xにも対応します。キャリアボードにはGMSLカメラインターフェース・CAN-FD・EtherCAT/TSNネットワークなども備え、ADASや自動運転車、ロボタクシーなどをターゲットにした「EDGE+ RAVE2-MAX」という製品も展開しています。
一見するとグラフィックボードとは完全に別事業に見えますが、歴史を遡ると2014年にはすでにSAPPHIRE初の組み込み向けマザーボードを製造していました。2016年にはデジタルサイネージやマルチディスプレイ向けのGPROシリーズを追加し、2017年には3Dレンダリングや可視化、GPUコンピュートなどを扱うCompute Solutions Divisionを立ち上げています。2026年のPhysical AI事業は、AIブームを見て突然始めた新規事業というより、10年以上続けてきた組み込み・GPUコンピュート事業の延長線上にあると見た方が実態に近いでしょう。
現在地25年の歴史を見ると「AMD専門のシステムインテグレーター」に近づいている
ここまで25年間を並べると、SAPPHIREの現在地が見えやすくなります。2001年にはATI Radeonのグラフィックボードを作る会社でした。その後、独自GPUクーラー、オーバークロック、マザーボード、Mini PC、組み込み基板、プロフェッショナルGPU、GPUコンピュートへと少しずつ技術領域を増やしています。そして現在はAMDがRyzen・Radeon・Ryzen AI・Versalなどを持つ企業になったことで、それらを組み合わせて完成したハードウェアを設計するSAPPHIREの事業も広がっています。
SAPPHIREはCPUやGPUそのものを設計する半導体メーカーではありません。強みとしているのは、AMD製プロセッサを使い、基板・電源・冷却・筐体・I/Oまで含めて実際の製品へ仕上げる部分です。その意味で、現在のSAPPHIREを単なる「Radeonのグラボメーカー」と表現するだけでは実態を捉えにくく、「AMDプラットフォームを使ったハードウェアメーカー」に近づいていると言えそうです。
実利ゲーマーにとって重要なのはマザーボードとの統合、鵜呑みは禁物
一般的なPCゲーマーがEDGE+のロボット用基板を購入することはまずありません。25周年の事業拡大でゲーマーに直接関係するのは、やはりGPUとマザーボードです。SAPPHIREは現在もRadeon RX 9070 XT・RX 9070・RX 9060 XTなどでNITRO+・PURE・PULSEを展開しており、そこへ同じブランドのAM5マザーボードが加わりました。さらにPhantomLinkのようにGPUとマザーボードを組み合わせる独自機能まで登場しています。今後この方向が続けば、SAPPHIRE製GPUを選ぶ際に「マザーボードはどのメーカーでも同じ」ではなく、SAPPHIRE同士を組み合わせるメリットが増えていく可能性があります。これはASUSのROGやMSIのGamingシリーズなど、GPUだけでなくマザーボードや周辺機器まで同一ブランドで揃えられるメーカーに近い展開です。
ただし、ここで気をつけたいのは「SAPPHIREのGPUが良いから、マザーボードも同じくらい良いはずだ」と決めつけないことです。マザーボード市場ではBIOSの完成度、アップデート期間、メモリ互換性、国内流通やサポート体制なども製品選びを左右します。SAPPHIREには長年のGPUメーカーとしての実績がありますが、現在のAM5マザーボードシリーズについては、ASUS・MSI・GIGABYTE・ASRockなどと同じ規模の長期実績がすでにあると考えるべきではありません。マザーボードを検討する際は、SAPPHIREの実績への信頼だけで判断せず、個々の製品仕様やBIOSサポート体制まで確認することをおすすめします。PhantomLinkのようなGPUとマザーボードの連携機能を使いたい場合は、対応するGC-HPWR/BTFスロットの有無も忘れずにチェックしてください。
影響今回の25周年発表で分かること
- SAPPHIREは2001年設立、AMDのATI買収(2006年)より前からRadeonに関わってきた
- マザーボード(2006年)・Mini PC(2011年)・組み込み(2014年)・GPUコンピュート(2017年)は以前からの事業
- NITRO+・PURE・PULSEはGPU専用ブランドでなくなり、マザーボードにも展開中
- AM5マザーボードにGPUと同等の長期実績があるとは限らない
- PhantomLink活用にはGC-HPWR/BTF対応マザーボードが別途必要
- EDGE+等のロボティクス・車載事業は一般ゲーマー向けではない
おすすめSAPPHIREのRadeonを選ぶなら
25年かけて磨き上げてきた冷却設計の到達点を体験したいならNITRO+、コストを抑えつつRadeon専業の作り込みを求めるならPULSEが選びやすい入り口です。今回整理した歴史を踏まえると、同ブランドのマザーボードと組み合わせる選択肢も検討価値があります。
Q&Aよくある質問
まとめまとめ|GPU専業から25年、AMDプラットフォームの担い手へ
SAPPHIRE Technologyは2026年9月19日、設立25周年を迎えたと公式発表しました。2001年にATI Radeonのグラフィックボードを扱う企業としてスタートし、AMDによるATI買収をまたいで現在までRadeonの主要ボードパートナーであり続けています。
25年の歴史を詳しく見ると、SAPPHIREは以前からGPUだけを作っていた企業ではありません。2006年にはマザーボード、2011年にはMini PC、2014年には組み込み向けマザーボード、2017年にはGPUコンピュート事業へ進出していました。2025年から2026年にかけて起きているのは、単純な「RadeonメーカーのAI参入」ではなく、過去25年間に試してきた複数の事業がAMDのRyzen・Radeon・Ryzen AIを中心に一つへつながり始めている変化です。
ゲーマーにとって特に注目したいのは、NITRO+・PURE・PULSEがGPUだけのブランドではなくなったことです。PhantomLinkのようなGPUとマザーボードの統合も始まっていますが、AM5マザーボードの実績はGPUほど積み上がっていないため、SAPPHIREの実績への信頼だけで判断せず、個々の製品仕様まで確認して選ぶことをおすすめします。





