RyzenのLinux向けAODドライバーとは?PPT・TDC・EDCを変える条件と、採用前に分かっていること【2026年10月】
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対応はCPU名でなくファームウェアで決まる
Windowsなら Ryzen Master で電力制限を変えられますが、Linux向けのRyzen Master相当のAMD公式ツールはありません。そこに、AMDのエンジニアがRyzenのオーバークロック機能をLinuxから操作するドライバー「AOD(AMD Overclocking)WMIドライバー」を提出しました。
変更できるのは PPT・TDC・EDC の電力・電流上限と SMT のオン・オフで、現在のメモリクロックも読めます。電力・電流の上限は保存され、次回起動で反映されます。電圧やCurve Optimizerの操作は、今回のドライバーに入っていません。
ただし2026年10月22日時点では、メーリングリストでレビューを受けている段階で、カーネルへの採用は発表されていません。使えるかどうかはCPU名ではなくマザーボードのファームウェアが決めるため、対応CPUの一覧もありません。今のRyzen環境は、BIOSのPBO設定を使い続けるのが現実的です。

目次
現状提出されたのは3本のパッチ、採用は未発表
AMDのShyam Sundar S K氏が、日本時間2026年10月11日にLinuxカーネルの platform-driver-x86 メーリングリストへ3本組のパッチを投稿しました。ドライバー本体、デバッグ用のdebugfs、WMIインターフェースの仕様書の3つです。10月21日にはレビュー担当者から、型や入力形式、メモリ解放の書き方について修正の指摘が出ています。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 名称 | AMD Overclocking(AOD)WMIドライバー(モジュール名 amd-wmi-aod) |
| 提出 | 2026年10月11日、全3パッチ |
| 状況 | 10月21日時点でレビュー中。採用の通知は確認できない |
| 公式GUI | なし。GUIは将来、デスクトップ環境や有志が作る見通し |
採用される版数は決まっていないため、必要なカーネルの版数も示せません。Linuxカーネルの最新安定版は2026年10月18日リリースの7.3です。
できること操作できるのは電力上限・SMT・メモリクロックの参照
ドライバーが用意する操作は、sysfsの属性として公開されます。パスは /sys/bus/wmi/devices/95F20B61-3D44-41F8-87E1-03CBF94C4E8F/ の下で、同じGUIDのデバイスが複数ある場合は末尾に番号が付きます。属性へのアクセスは root のみです。
| 属性 | 操作と単位 |
|---|---|
| ppt_limit | 書き込みのみ。単位はµW(142Wなら142000000) |
| tdc_limit | 書き込みのみ。単位はmA |
| edc_limit | 書き込みのみ。単位はmA |
| 各 _min/_max/_step | 読み取りのみ。設定できる下限・上限・刻み幅 |
| smt_enable | 読み書き。1が有効、0が無効 |
| mem_clock | 読み取りのみ。単位はMHz(DDR5-5600なら2800) |
範囲外の値や刻み幅に合わない値は、エラーで拒否される設計です。PPT・TDC・EDCは書き込み専用で、ファームウェアが現在値を返さないため、設定した値を読み戻して確かめることはできません。
PPTはCPUソケットに流せる電力の上限、TDCは電圧レギュレーターが持続して出せる電流、EDCは短時間のピーク電流の上限です。上げると高負荷時のクロックが伸びる余地が出ますが、発熱と電源回路の負担も増えます。
対応条件使えるかどうかは3つの条件で決まる
対応CPUの一覧や、動作確認済みのマザーボード表は示されていません。提出文書も、現時点で試したシステムでは機種ごとに挙動が違う可能性があると書いています。「Ryzen 9000なら使える」といった形では判断できないため、ドライバーが入ったカーネルで実機に属性が現れるかを見るのが確実な確認方法です。
確認手順ドライバーが入ったあとの確認の順番
以下はパッチの仕様書にあるパスと属性名に基づく手順で、採用後に変わる可能性があります。
- ドライバーを含むカーネルを使う。amd-wmi-aod モジュールが読み込まれているか、lsmod で確かめます。
- /sys/bus/wmi/devices/ の下に、GUID 95F20B61-3D44-41F8-87E1-03CBF94C4E8F のデバイスがあるかを見ます。無ければ、ファームウェアがAODを公開していません。
- デバイスの下にある ppt_limit_min・ppt_limit_max・ppt_limit_step など、実際に出ている属性を確認します。出ていない項目は、その機種では変更できません。
- 刻み幅に合う値を、root権限で ppt_limit などへ書き込みます。
- 再起動します。反映は次回起動後で、PPT・TDC・EDCは読み戻せないため、CPUの消費電力の挙動で効いたかを見ます。
比較BIOSのPBO設定・HSMPとの違い
AODが変えるのは、ファームウェアのセットアップにあるPBOのPPT上限と同じ項目です。値はファームウェアに保存され、BIOSで設定した場合と同じく次回起動時に有効になります。一方、Linuxには別系統のHSMPというインターフェースもあり、こちらはSMU内部の実行時の制限を即座に変えますが、再起動すると消えます。コミュニティ製のコマンドラインツールRyzenAdjも、Linuxでは root で動かして電力・温度の上限を設定する手段です。対象は主にRyzen Mobile(APU)で、ryzen_smuモジュールか /dev/mem 経由でSMUに値を渡し、機種の電源管理に上書きされることがあるため値を定期的に設定し直す必要があります。AODはファームウェアの正規インターフェースを使い、設定を保存する点が異なります。
| 手段 | 反映と再起動後 |
|---|---|
| AOD(このドライバー) | 次回起動時に反映され、その後も保存されたまま残る |
| HSMP | 即時に反映されるが、再起動すると失われる |
| RyzenAdj | 実行時に反映され、上書きされることがあり再設定が要る |
| BIOSのPBO設定 | 次回起動時に反映され、その後も保存されたまま残る |
Curve Optimizerや倍率、電圧、メモリタイミングは、今回のドライバーが扱う項目にありません。これらを変えたいなら、いまはBIOSでのPBO・Curve Optimizer設定を使います。Linux向けのコミュニティ製ツールもありますが、変えられる項目はツールと機種で異なります。
判断待つ人とBIOSで済ませる人の分かれ目
FAQよくある質問
まとめまとめ|今はBIOS、採用の続報を待つ
AODドライバーは、LinuxからRyzenのPPT・TDC・EDCとSMTを変えられるようにする提出済みパッチです。電力上限の反映は次回起動後で、対応はファームウェア次第です。採用とカーネルの版数が決まった時点で、手順と対応環境をあらためて確認してください。
10月22日時点でAODドライバーはレビュー中です。今すぐ電力上限を変えたいならBIOSのPBO設定を使い、AODはカーネルへの採用後に自分の機種で属性が現れるかを見て判断します。
出典:AOD WMIドライバー提出(カバーレター) / ドライバー本体パッチ / WMIインターフェース仕様書 / 10月21日のレビュー / Phoronix / Ryzen Masterユーザーガイド / Kernel Archives。内容は2026年10月22日時点です。

