Steam Machineを本格水冷化したら20〜30℃下がった|銅ブロックをCNCで自作、それでもfpsが伸びない理由とは
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それでもfpsは伸びない、その理由まで数字で追う
出典:techmagnet氏によるRedditの投稿「Worlds first Watercooled Steam Machine」、TechPowerUp「Steam Machine Water Cooling Project Drops Temps By 30°」、PC Gamer「The ‘world’s first’ water-cooled Steam Machine」、Notebookcheck(2026年8月10日)、GamersNexus「Valve Steam Machine Review」の純正実測(2026年6月24日)、Valve公式「Steam Machine」製品ページにもとづきます。本記事の情報は2026年8月12日時点のものです。
18万9,980円から売られている小型ゲーミングPCの天板を開け、中身の基板に合わせて銅の塊を削り出し、ネオンピンクの冷却液を流す。Steam Machineを本格水冷化した改造が公開され、製作者は世界初だと述べています。
報告されている効果は、フルロード時のCPU・GPU温度が純正比で20〜30℃低下というものです。数字だけ見れば冷却改造として大成功に見えます。ところが製作者自身が、今のところ実利はないと認めています。
その理由を確かめるため、純正状態のSteam Machineがどれだけの温度と騒音で動いているのかを実測した検証データにあたりました。結論から言うと、Steam Machineは熱で性能を落としてはいません。何を冷やし、何が変わらないのかを順番に整理します。
要点この改造でわかること
派手な見た目と大きな数字が並ぶ話ですが、実際に読み取れるのは4点に絞られます。
内容銅を削り出して純正クーラーと入れ替えた
改造を公開したのはtechmagnetという名前で活動している人物で、掲示板サイトRedditのPC自作コミュニティに製作過程を段階的に投稿しています。冒頭からSteam Machineの箱をディスクグラインダーで切り開くという内容で、丁寧に分解する類の動画ではありません。
Worlds first Watercooled Steam Machine
by u/techmagnet in PcBuild
核になっているのは、市販品を流用せずSteam Machine専用のウォーターブロックを設計・製作している点です。Makeraのデスクトップ向けCNC「Carvera Air」を使い、熱を受ける銅製プレートと透明アクリルのトップを削り出しています。ウォーターブロックとは、部品から受け取った熱を金属ベースへ伝え、その上を流れる冷却液へ移すための部品です。
Steam Machineは小型筐体に合わせて冷却機構が専用設計されているため、市販のCPU用ウォーターブロックはそのまま載りません。基板の部品配置と取り付け穴に合わせて自作する必要があり、そこを実際に成立させたことがこのプロジェクトの中身です。
ループの構成はAlphacool製のポンプに外部ラジエーターとファンを組み合わせたもので、ラジエーターは本体背面へ固定されています。筐体自体にも配管を通すための加工が入っています。冷却液はネオンピンクで、外観は純正のSteam Machineとまったく別物になりました。パーツ代は200ドル未満だったと説明されています。ただしCNCを所有していることが前提の金額です。
数字20〜30℃低下という報告の位置づけ
効果として報告されているのは、フルロード時のCPUとGPUの温度が純正比で20〜30℃低いというものです。製作者本人の書き方は「CPUとGPUの温度が20〜30℃下がった。オーバークロックの余地は十分にできたが、今のところOCサポートはない」というものでした。
ここで押さえておきたいのは、この数字が製作者による申告値だという点です。室温、ファン回転数、消費電力、実行したゲーム、負荷をかけた時間をそろえた比較テストの結果が公開されているわけではありません。冷却系の改造では条件をそろえないと差が大きく振れるため、現時点では「製作者の環境で20〜30℃下がった」という報告として扱うのが妥当です。
後述する純正の実測値を踏まえると、20〜30℃という幅は誇張された値には見えません。熱源から離れた場所に大きな放熱面を置ける水冷は、小型筐体では有利になりやすい構成です。問題は数字の大きさではなく、その温度差を使う先があるかどうかにあります。
基準線純正のSteam Machineは何℃で動いていたのか
「20〜30℃下がった」を評価するには、下がる前がどうだったのかを知る必要があります。ここが今回の報告からは抜けている部分なので、純正状態を実測した検証データにあたりました。
半無響室で測定された純正Steam Machineの負荷時の温度は、室温との差で表すと次のようになります。GPUのエッジ温度が室温+42℃、内部で最も高いジャンクション温度が室温+57℃、VRAMが室温+46℃です。CPU側はTctlで室温+50℃でした。室温を20℃前後と置けば、GPUエッジがおよそ62℃、ジャンクションが77℃、CPUが70℃という水準になります。
つまり純正のSteam Machineは、熱に困っていたわけではありませんでした。この前提が、20〜30℃という数字の受け取り方を大きく変えます。
答え冷やしてもfpsが伸びない理由
PCの冷却でよくある期待が「温度が下がれば性能も上がる」というものです。これが成り立つのは、熱が原因でクロックが落ちている場合に限られます。
純正のSteam Machineは熱でクロックを落としていません。したがって温度を20〜30℃下げても、取り除ける制限がそもそも存在しないという状態になります。CPUを止めているのはTDPの上限であり、これは冷却では動きません。
残る道はクロックや電力制限を手動で引き上げること、つまりオーバークロックですが、Steam Machineは現時点でオーバークロックに対応していません。製作者自身も、余地はできたがサポートがないと明言しています。
温度の低下率と性能の向上率には対応関係がありません。冷却強化が性能に効くのは、熱によるクロック低下が実際に発生している場合か、下がった温度を使ってクロックや電力を引き上げられる場合だけです。今回のSteam Machineはそのどちらにも当てはまりません。
言い換えると、この改造で生まれたのは性能ではなく余力です。将来Valveが性能調整を開放するか、コミュニティが安全な調整手段を確立したときに初めて、その余力を使う道が開きます。2026年8月12日時点でそうした公式機能は確認されていません。
静音純正がすでに20dBA台という事実
性能が伸びないなら静音化はどうか、という見方も出てきます。ここも純正の実測値を見ると評価が変わります。
半無響室で1メートル離して測定した純正Steam Machineの騒音は、アイドル時が実質的に聞き取れないレベル、負荷をかけ続けるトーチャーテストで23〜24dBA、実際のゲームプレイでは20〜21dBAでした。ゲーム中に20dBA台前半というのは、静音を売りにした自作PCと比べても十分に静かな部類です。
一方、今回の水冷版は本体外にポンプとラジエーターファンを追加した構成です。ポンプの作動音とファンの回転音が新たに加わるため、純正より静かになる保証はありません。同じ距離と同じ負荷で測った比較データも公開されていないので、静音目的で見ても現時点では判断材料がない状態です。
副作用VRMの冷却が宙に浮く
CPUとGPUだけをウォーターブロックへ移すと、それ以外の発熱部品の扱いが問題になります。今回まさにそこが次の課題として残りました。
VRMはCPUやGPUへ適切な電圧を供給する電源回路で、高負荷時にはこれを構成するMOSFETも発熱します。純正のSteam Machineでは、このVRMをケース内のファンから流れてくる風で冷やしていました。純正クーラーとファンを取り外せば、その風がなくなります。
製作者は次の作業としてVRMとウォーターブロックをきちんと接触させることを挙げており、その難しさをこう説明しています。MOSFETが非常に小さいうえに、熱設計の限界近くで動作しているため厄介だ、という内容です。
報告されている温度低下はCPUとGPUについてのものであり、本体内のすべての部品が同じだけ冷えたという意味ではありません。VRM周りはむしろ純正より条件が悪くなっている可能性があり、製作者自身がそこを未完成の部分として挙げています。
意味それでもこの改造が面白い理由
実利で測れば、この改造に見返りはほとんどありません。同じ費用と手間をかけるなら通常のゲーミングPCを組んだ方が性能は出ますし、Steam Machine最大の利点である設置のしやすさも失われます。約15cmの立方体で完結していたものが、外部ポンプとラジエーターと配管を抱えた構成に変わるためです。
それでも見どころはあります。市販のウォーターブロックが存在しない機種に対して、基板の実測から専用ブロックを設計し、CNCで削り出し、外部ループとして成立させたところまで到達している点です。しかもパーツ代は200ドル未満に収まっています。
Steam Machineは完成品として売られている小型PCですが、発売後は外装のCADデータをValveが公開したこともあり、ユーザー側の手が入る対象になりつつあります。今回の水冷化も、その流れの延長線上にある試みです。
FAQよくある質問
総括まとめ|冷やして得たのは性能ではなく余力
Steam Machineへ専用ウォーターブロックを作り込み、CPU・GPU温度を純正比で20〜30℃下げたという報告は、数字としては十分に大きなものです。ただし純正のSteam Machineは熱でクロックを落としておらず、騒音もゲーム中で20dBA台前半でした。下げる前から、温度も音も困っていなかったわけです。
そのうえオーバークロックに対応していないため、生まれた温度の余裕を性能へ換える方法が今はありません。VRMの冷却も未完成で、製作者自身が次の課題として挙げています。実利を求める改造ではなく、市販品のない機種に専用ブロックを起こして成立させたこと自体に価値があるプロジェクトです。
techmagnet氏がSteam Machineの純正クーラーを外し、Makera Carvera AirというデスクトップCNCで銅プレートと透明アクリルの専用ウォーターブロックを製作、Alphacool製ポンプと外部ラジエーターによるカスタムループを構築しました。パーツ代は200ドル未満です。フルロード時のCPU・GPU温度は純正比で20〜30℃低下したと報告されていますが、これは製作者の申告値で、条件をそろえた比較テストの結果は公開されていません。純正状態を半無響室で実測したデータでは、GPUエッジが室温+42℃、ジャンクションが室温+57℃、CPU Tctlが室温+50℃で、トーチャーテスト中もサーマルスロットリングは発生していません。CPUが約4分でクロックを落とすのは温度ではなくTDP上限によるものです。騒音も1メートル地点でゲーム中20〜21dBA、負荷継続時で23〜24dBAと元から静かでした。Steam Machineはオーバークロックに非対応で、製作者も余地はできたがサポートがないと述べています。VRM冷却は純正ではケース内ファンの風に依存しており、水冷化後の接触改善が次の課題として残っています。



