NVIDIA RTXPT 1.9の変更点|約20%高速化の意味とWindows on Arm対応・開発者向け参照実装の対象を解説
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開発者向けパストレーサーを更新
NVIDIAのRTX Path Tracing(RTXPT)は、ゲームエンジンへのパストレーシング実装や学習・実験に使う開発者向けコードサンプルです。RTXPT 1.9の高速化は、この参照実装を使う開発者に関わる更新です。
バージョン1.9.0では、NVIDIAが1.8.1比で約20%の性能向上と同等以上の画質を掲げています。処理量の調整や非同期実行を取り入れ、Windows ARM64向けのビルド手順も追加しました。
組み込み開発者は、画質プリセットと処理量の変更も含めて移行を検討できます。一般プレイヤーは、RTXPTの更新率を遊んでいるゲームのfpsへ当てはめず、各ゲームへの採用や更新内容を基準に判断してください。
目次
性能約20%高速化はNVIDIA公称の参照実装の値
約20%は、RTXPT 1.8.1と比較したNVIDIAの性能向上の公称値です。ゲーム横断の独立ベンチマーク値として使うことはできません。
この公称値だけでは、手持ちのGPUで得られるfpsは決まりません。GPU、解像度、シーン、画質設定を固定した比較が必要です。さらに1.9では、同じ名前のプリセットでも追跡する画素数や光の反射回数が変わっています。
BalancedやPerformanceには処理量の調整も含まれます。移行前後の速度と、動きのある場面・反射・間接光の画質を組み合わせて評価するのが適切です。
変更点追跡する画素と処理の重なり方を調整
サブサンプリングとバウンス上限を変更
サブサンプリングは、主パストレーシング処理で毎フレーム追跡する画素を減らす仕組みです。出力画像の縦横サイズを小さくする設定とは区別する必要があります。
1.9のプリセットでは、Balanced以上で画素の4分の3、PerformanceとUltra Performanceで半分を追跡します。速さを重視する設定では、光の反射を追うバウンス数の上限も引き下げています。
- Balancedのバウンス上限は18から14へ変更。
- Performanceは12から10へ変更。
- Ultra Performanceは10から6へ変更。
DLSS Ray Reconstructionと次フレームの処理を重ねる
非同期実行では、前フレームのDLSS Ray Reconstruction(DLSS-RR、レイ再構成)や後処理と、次フレーム側のパストレーシング処理を重ねます。これはDirectX 12のenhanced barriersとDLSS-RRモードを使う場合の機能です。
重ね合わせによって処理の待ち時間を減らす狙いがあります。DirectX 12とVulkanの両方を備えるRTXPTでも、この非同期実行の適用条件は分けて考える必要があります。
大規模シーンのCPU負荷を軽減
シーン内の物体をレイトレーシング用に管理するTLASについて、インスタンス記述子を毎フレームGPU側で生成する構成へ変わりました。多数の物体を扱う場面では、CPU側の準備処理の削減が重要になります。
常駐できるジオメトリ数の上限も65,536から262,144へ拡大しました。これは扱えるシーン規模の上限であり、fpsの改善率を示す数値ではありません。
照明SHaRCを標準有効化し多数の光源に対応
SHaRCは、空間内の光の情報を蓄えて再利用する放射輝度キャッシュです。1.9ではリアルタイムモードで標準有効となり、同程度のコストでDLSS-RRへ渡す間接光の情報を増やす方針です。
間接光は、壁や床などで反射して周囲を照らす光です。光の再利用は、追跡量を抑えながらその情報を得るための手段になります。速度の数字だけでなく、室内や反射面を含むシーンの見え方が移行時の確認点です。
多数の光源から重要なものを選ぶNEE-ATも更新され、対応するライト数は従来の512Kから最大200万へ拡大しました。発光する三角形をライトのLODへまとめる処理も加わり、発光物体が密集するシーンに対応します。
ARM64Windows on Arm対応はGPU要件と分けて判断
Windows ARM64対応によって、Arm版Windows向けにRTXPTをビルドする経路が用意されました。x64マシンからはCMakeに-A ARM64を指定してクロスビルドできます。
対象読者は、Arm版Windowsでレンダラーを動かしたい開発者です。CPUの命令セットへの対応と、描画に必要なGPU機能の対応は別条件です。Arm版Windowsを搭載しているという理由だけで動作対象とは判断できません。
DirectX 12側の基本要件には、DXR 1.1以上、Shader Model 6.6、Resource Binding Tier 3があります。さらに既定で有効なAgility SDK 1.619系にはDXR 1.2とShader Model 6.9が必要です。対応しないGPUでは、公式のKnown IssuesにあるAgility SDKを無効にするビルド設定も確認してください。
設計上の対象にはAda世代のGeForce RTX 40シリーズ、Blackwell世代のRTX 50シリーズ、または同等のGPUが挙げられています。これは最低動作GPUの一覧とは異なります。Snapdragon搭載ノートPCなどを選ぶ際も、OSの種類とGPU・ドライバーの要件を個別に照合する必要があります。
ARM64向けビルドで準備するもの
開発環境はCMake 4.1以上とVisual Studio 2022以降が基準です。x64側からのクロスビルドでは、Visual StudioのMSVC C++ ARM64/ARM64ECビルドツールを追加します。
cmake -S . -B build-arm64 -A ARM64
cmake --build build-arm64 --config Release
出力先はbin_arm64です。別のPCで実行する場合は、bin_arm64とAssetsを同じ親フォルダに配置し、必要ならSupportも用意します。Streamline DLLの実行には、実行先へARM64版Visual C++ 2015–2022再頒布可能パッケージを導入します。
対象者開発者は比較条件を保存しプレイヤーはゲーム側の更新を確認
RTXPTを組み込んでいる開発者は、1.8.1側のシーンと設定を残して比較すると、更新の効果を切り分けやすくなります。速度だけを比べる前に、次の条件を記録してください。
- GPU・ドライバー、解像度、比較するシーンとカメラ位置を固定する。
- プリセット名に加えて、サブサンプリング率とバウンス上限を記録する。
- SHaRCと非同期実行の状態を保存し、速度と画質を比較する。
パストレーシングの実装を学ぶ場合は、1.9で完成した別実行ファイルのIntroSampleも選択肢です。ハイブリッドな描画構成にレイトレーシングの照明を段階的に加えるため、フル機能の実装へ進む前の教材として使えます。
一般プレイヤーがGPUを買い替える判断には、遊びたいゲームの実測性能と対応機能を使ってください。RTXPTは開発者がコードを参照・組み込みするためのサンプルで、既存ゲームへの反映は各タイトルの実装や更新に左右されます。
FAQRTXPT 1.9のよくある疑問
まとめRTXPT 1.9は実装・検証を進める開発者向けの更新
RTXPT 1.9は、追跡量の調整、非同期処理、光情報の再利用を組み合わせた更新です。約20%の公称性能向上を評価する際は、プリセットの処理量変更も含めて画質と速度を比べる必要があります。
Windows ARM64対応は開発先の選択肢を広げます。開発者はGPU要件を満たす環境で移行を検証し、一般プレイヤーは各ゲームへの採用・更新を確認するのが判断の分かれ目です。
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出典:RTXPT 1.9.0リリース / 公式README・ARM64手順・要件 / RTXPT設計文書 / SHaRC公式 / IntroSample公式文書
