HWiNFOのDrive Temperature 2・3は何の温度?Composite・Controller・NANDの読み方【2026年版】
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Composite・Controller・NANDの読み方をNVMe規格から整理
出典:NVM Express公式 Base Specification Revision 2.3(Composite Temperature・Temperature Sensor Data Structureの定義)・Kingston公式 SMART Attribute Details・Samsung公式 990 PROデータシート・Crucial公式サポート記事 SSDs and SMART data・HWiNFOフォーラム SSD now showing “drive temperature 3”・HWiNFOフォーラム ADATA/XPG Gammix S70 Blade series SSD Controller/NAND temps swapped/bogus?・HWiNFOフォーラム Fix NVMe Drive Temperature 2 Incorrect Information in HWiNFO 64・HWiNFOフォーラム SSD Temp. VERY HOT – Kingston KC3000 2TBにもとづきます。フォーラムの投稿内容は断定的な直訳ではなく、趣旨をまとめた表現にしています。
HWiNFOでNVMe SSDのセンサーを開くと、「Drive Temperature」だけでなく「Drive Temperature 2」「Drive Temperature 3」まで表示されるドライブがあります。Drive Temperatureが48℃なのに、Drive Temperature 2は70℃前後まで上がっている——こういう場面を見て、どちらを基準に温度を判断すればいいのか、70℃の方はNANDなのかコントローラーなのか分からず戸惑った人は少なくないはずです。
NVMe規格には、SSD全体を代表する「Composite Temperature」と、最大8個までの「Temperature Sensor」という2種類の温度項目が定義されています。ただしNVM Express Base Specification 2.3を確認すると、追加センサーがNVMサブシステムのどの物理的な地点を測っているかは、規格ではなく実装(メーカー・製品)依存だと明記されています。つまり「Drive Temperature 2=コントローラー」と機械的に決め打ちできる規格上の根拠は存在しません。
大容量データ移動時の速度低下とサーマルスロットリングの見分け方はSSDのSLCキャッシュ切れとは?大容量ゲームを移動すると速度が急落する理由とサーマルスロットリングの見分け方で、M.2ヒートシンクの接触不良の確認手順はM.2ヒートシンクを付けているのにSSDが高温になる・遅くなるのはなぜ?でそれぞれ詳しく扱っています。本記事ではその2点の深掘りはせず、Composite Temperature・Controller・NAND温度の意味の違いと、HWiNFOでの実際の読み方に絞って整理します。
目次
規格の定義Composite Temperatureとは何か|コントローラーの代表温度
NVM Express Base Specification 2.3のSMART / Health Information Log Pageでは、Composite Temperatureを「コントローラーと、そのコントローラーに紐づくNamespaceを代表する複合温度」と定義しています。重要なのは、その値の算出方法がメーカーの実装依存であり、NVMサブシステム内のどこか一点の物理的な温度をそのまま示しているとは限らない、と規格自体が明記している点です。つまりComposite Temperatureは「ドライブの体温」を示す代表値であって、特定の1チップの温度計ではありません。
CrystalDiskInfoが表示する温度の多くは、このComposite Temperatureに相当する値です。HWiNFOでは複数あるセンサーのうち、最初に並ぶ「Drive Temperature」がComposite Temperatureとして扱われるのが基本パターンだと、HWiNFOフォーラムの投稿で説明されています。ドライブによってはDrive TemperatureとDrive Temperature 2が同じ値を示すことがありますが、それはComposite Temperatureと1番目のTemperature Sensorがたまたま同じ値になっているだけで、規格上そう決まっているわけではありません。
Composite Temperatureには、警告・危険域を示すWarning Composite Temperature Threshold(WCTEMP)・Critical Composite Temperature Threshold(CCTEMP)という閾値が、Identify Controllerというデータ構造の中で個別に定義されています。この閾値をComposite Temperatureが超えた時間は、後述するSMART情報の中に分単位で記録される仕組みになっています。
測定点追加のTemperature Sensor(最大8個)の位置は規格で決まっていない
NVMe規格では、Composite Temperatureとは別に、Temperature Sensor 1からTemperature Sensor 8まで、最大8個のセンサー値をSMART / Health Information Log Pageで報告できます。しかしBase Specification 2.3のTemperature Sensor Data Structureの定義を見ると、そのセンサーがNVMサブシステムのどの物理的な地点を測定しているか、そして温度の精度がどの程度かは、いずれも実装依存(implementation specific)だと書かれています。規格はセンサーの「値の器」を用意しているだけで、「2番目のセンサー=コントローラー」のような対応関係までは決めていません。
NVMe規格には、Composite Temperatureとセンサー1〜8のそれぞれに対して、個別に警告・危険温度のしきい値を設定できるThreshold Temperature Select(TMPSEL)という項目もあります。0hがComposite Temperature、1h〜8hがTemperature Sensor 1〜8に対応しており、SSDコントローラー側では各センサーを独立した監視対象として扱える設計になっています。この独立性の高さが、後述するようにメーカーごとにセンサーの意味が違って見える一因でもあります。
内部構造NVMe SSDを構成する部品と発熱特性
NVMe SSDの基板には、データを記憶するNANDフラッシュ、読み書きの制御・ウェアレベリング・ECC訂正などを担うコントローラー、アドレス変換テーブルを保持するDRAM(搭載モデルのみ)、そして各チップへ電源を供給する電源管理回路(PMIC)が載っています。これらは同じ基板上にあっても発熱の性質が異なり、負荷の種類によってどのチップが先に温度を上げるかも変わります。コントローラーは高速な読み書き処理を一手に引き受けるため負荷時の発熱が大きくなりやすく、PMICも電流を扱う性質上アイドル時から高めの温度で安定する製品があります。NANDやDRAMは相対的に低めで推移することが多いものの、これも製品によって差があります。
Crucial公式のSMART関連サポート記事では、Crucial製SSDの多くで動作温度範囲を0℃〜70℃と案内しており、70℃を超える温度が記録されると保証の対象外になり得ること、65℃を超える状態が常態化しているならケース内のエアフロー改善などの対策を検討すべきとしています。ここで示されている温度は、Crucial Storage Executiveというソフトが表示する単一の温度センサーの値であり、コントローラーやNANDを個別に切り分けた基準ではありません。この「1つの代表値で管理する」考え方自体は、NVMe規格のComposite Temperatureの位置づけとも整合しています。
対応関係HWiNFOでの表示ルールとメーカーごとの実例
HWiNFOフォーラムの投稿によると、HWiNFOはDrive TemperatureをComposite Temperatureとして扱い、Drive Temperature 2以降は規格上の「その他」のTemperature Sensorを順番に並べているだけだと説明されています。多くのドライブではDrive Temperature 2がDrive Temperatureと同じ値になりますが、一部のドライブでは別のセンサーの値になります。複数のセンサーの中で突出して高い値が出た場合、それがコントローラーである可能性は高いという見方がフォーラムでは示されていますが、これはあくまで経験則であり、規格や公式ドキュメントで保証された対応関係ではありません。
複数のユーザーが、Drive Temperature 2をアイドル時でも50℃台後半、負荷時には80〜90℃台まで観測したと報告しています。突出して高いセンサーという特徴からコントローラーだと推測されていますが、Kingston公式が個別に「これがコントローラー温度」と明言しているわけではありません。
SN850XはPMICやASICコントローラーの個別温度を報告しない設計になっているという報告があり、HWiNFOでもDrive Temperature 2・3自体が表示されません。センサーの数が少ないことは、そのドライブが追加センサーを実装していないだけで、故障や不具合を意味しません。
本来コントローラーの方が高温になりやすいところ、HWiNFOがController寄りに表示する数値がNAND寄りの数値より約10℃低く出るという報告があります。投稿者はセンサーの割り当てがドライブ側で入れ替わっている可能性を指摘していますが、原因ははっきり確定していません。
同じ「Drive Temperature 2」という表示名でも、ドライブによって指しているセンサーが違います。他人のPCやレビュー記事で「2番目がコントローラーだった」という情報を見ても、自分のドライブに同じ対応関係が当てはまるとは限りません。
判断基準Composite 50℃・センサー2が70℃ならどちらを見るべきか
結論から言うと、まず基準にすべきはComposite Temperature(HWiNFOのDrive Temperature)です。NVMe規格でWarning・Criticalのしきい値が公式に定義され、超過時間まで記録される対象はComposite Temperatureであり、個別のTemperature Sensorには規格側が用意した共通の安全基準がありません。Composite側が50℃で余裕がある一方、個別センサーの1つだけが70℃まで上がっている状況は、多くの場合そのセンサーが指す部品(コントローラーやPMICであることが多い)の発熱特性としてある程度想定内です。
Samsung公式の990 PROデータシートでも、動作温度は0℃〜70℃という1つの数値だけが示されており、コントローラーやNANDを個別に区切った基準は公開されていません。フラッグシップ製品でもこの粒度である以上、「個別センサーが何度を超えたら危険」という一律の基準を他製品も含めて当てはめるのは無理があります。ただし、70℃を超えた状態が継続する、あるいはComposite側も一緒に上がってくるようなら話は別です。この場合は次に説明するWarning/Critical Composite Temperature Timeの記録もあわせて確認してください。
- WCTEMP・CCTEMPという規格上のしきい値を超えているかどうか
- Warning/Critical Composite Temperature Timeの累積時間が伸び続けていないか
- 異なるモデル・異なるタイミングの温度を比較するときの共通の基準値
- Drive Temperature 2・3が高いというだけで、特定の部品が壊れかけていると断定すること
- 型番の違うドライブ同士で、同じ番号のセンサーが同じ部品を指していると仮定すること
- メーカー公式ツールの数値と照合せず、HWiNFOの数値だけで結論を出すこと
作動履歴Thermal Management Temperature 1/2カウンターで性能抑制の頻度を確認する
NVMe規格には、Host Controlled Thermal Managementという、コントローラーが自らComposite Temperatureを下げようとする機能が定義されています。Composite TemperatureがThermal Management Temperature 1を超えると、コントローラーは性能への影響を抑えながら低電力な動作状態へ移行しようとします。それでもComposite TemperatureがThermal Management Temperature 2まで上がると、性能への影響を気にせず、より踏み込んだ形での電力・動作制御に切り替わります。
この2段階の移行がそれぞれ何回発生したか(Thermal Management Temperature 1/2 Transition Count)、合計で何秒間その状態が続いたか(Total Time For Thermal Management Temperature 1/2)は、SMART情報の中にカウンターとして記録されています。対応しているドライブであれば、HWiNFOのSMART/Health情報でこれらの値を確認できます。この値が0のままなら性能抑制の作動履歴がない、あるいはドライブがこの項目に対応していないことを意味します。値が増え続けている場合は、個別センサーの数値を気にする前に、まずケース内の冷却やM.2スロットの取り付け状況を見直す方が実用的です。
ツール差CrystalDiskInfoとHWiNFOで温度表示が違って見える理由
CrystalDiskInfoの温度表示は、基本的にComposite Temperatureに相当する1つの数値を主な表示対象としています。一方のHWiNFOは、Composite TemperatureとTemperature Sensor 1〜8のうち、ドライブが報告している値をすべて個別の項目として並べます。同じドライブなのに「CrystalDiskInfoでは48℃、HWiNFOでは70℃という数字も見える」という状況は、両者が違う温度を測っているのではなく、CrystalDiskInfoが表示していない追加センサーの値をHWiNFOだけが表示しているために起きます。まず確認すべきは、CrystalDiskInfoの数値とHWiNFOのDrive Temperature(Composite Temperature)が近い値になっているかどうかです。
例外ではない温度センサーが1つしか出ない場合も異常ではない
NVMe規格のTemperature Sensor Data Structureの定義では、そのセンサーを実装していないコントローラーは、値として0hを報告すると定められています。つまりドライブによっては、物理的に追加のセンサーを積んでいない、あるいは搭載していても報告する設計になっていないことがあり、その場合はDrive Temperatureしか表示されません。前述のWestern Digital SN850Xのように、ASICコントローラーやPMICの個別温度を意図的に報告しない製品も報告されています。表示される温度の数がドライブによって1個・2個・3個とバラバラなのは、HWiNFOの不具合でも、そのドライブが劣っているということでもありません。
読み方の流れHWiNFOで温度を読むときの実用的な確認手順
ここまでの内容を、実際にHWiNFOの画面を見ながら確認する手順としてまとめます。
- まずDrive Temperature(Composite Temperature)を確認する。他のセンサーより先に、この数値がNVMe規格上の代表温度であることを頭に入れておきます。
- ゲームのインストールや大容量ファイルのコピー、CrystalDiskMark等のベンチマークで意図的に負荷をかけ、各センサーの動き方を観察する。大容量コピー中に速度が急落する場合、SSD自体の温度上昇だけでなく、SLCキャッシュ切れによる速度低下が同時に起きていることもあります。両者の見分け方はSSDのSLCキャッシュ切れとは?で解説しているので、混同しないよう確認してください。
- Drive Temperature 2・3など追加センサーの挙動を見る。負荷をかけた直後から急に上がるセンサーはコントローラー系である可能性が高く、ゆっくりとしか動かないセンサーはNANDやPCB周りの温度に近い動きをする傾向があります。
- 自分のSSDのメーカー・型番でHWiNFOフォーラムやメーカー公式ツール(Samsung Magician、Kingston SSD Manager、WD Dashboardなど)の情報を照合する。同じ型番の実例が見つかれば、番号と部品の対応関係がある程度絞り込めます。
- Warning/Critical Composite Temperature Timeが0から増えていないかを確認する。増え続けている場合は、個別センサーの解釈より先に冷却面の見直しを優先してください。全センサーがそろって高いなら、コントローラー個別の問題より先に取り付け環境を疑うのが近道です。M.2スロットの位置やヒートシンクの保護フィルムの確認手順はM.2ヒートシンクを付けているのにSSDが高温になる・遅くなるのはなぜ?にまとめています。
Q&Aよくある質問
総括まとめ|番号だけでNAND・Controllerと断定しない
HWiNFOに複数の温度が表示されても、Drive Temperature 2やDrive Temperature 3という番号だけを見てNANDやコントローラーだと断定するのは避けてください。NVMe規格が定めているのは「Composite Temperatureという代表値」と「最大8個のTemperature Sensorという枠」までで、個別センサーがどの物理的な部品を指すかはメーカーの実装依存です。Kingston・Western Digital・ADATA/XPGの例が示すように、同じ「2番目のセンサー」でも製品によって挙動はまったく違います。
まず基準にすべきはComposite Temperature(HWiNFOのDrive Temperature)です。個別センサーは、負荷をかけたときの動き方の変化と、自分のドライブと同じ型番の実例・メーカー公式ツールの数値を照合して判断してください。
Warning/Critical Composite Temperature Timeが増え続けている、あるいは全センサーがそろって高いという場合は、個別センサーの解釈より先に、M.2スロットの位置やヒートシンクの接触状態など冷却面を見直す方が近道です。

