GTX 1080 TiにCPU用デュアルタワークーラーを直結してGPU温度32℃|約300W負荷で標準比24℃低下の中身
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約300W負荷で標準比24℃低下、その先にある設計の限界
出典:TrashBenchによるYouTube動画「I Bolted a CPU Cooler Onto a GPU Cooler」(2026年8月21日公開)、VideoCardz「Modder bolts CPU dual tower onto GTX 1080 Ti cooler, temperature falls to 32°C」(2026年8月22日)にもとづきます。過去の本格水冷化との比較には、Tom’s Hardware「Overclocking GeForce GTX 1080 Ti To 2.1 GHz Using Water」(2017年3月13日)、GamersNexus「GTX 1080 Ti ‘Hybrid’ Benchmarks: Removing the Thermal Limit」の実測データも参照しています。本記事の情報は2026年8月23日時点のものです。
GTX 1080 Tiは発売から9年以上が経過した今も、中古市場やお下がりのPCで現役のグラフィックボードです。標準クーラーの温度に不満があっても、GTX 1080 Ti向けの水冷ブロックはすでに製品数が少なく、対応の有無を調べるだけでも一苦労という人は少なくありません。
そんな中、GPU冷却の改造実験で知られるYouTubeチャンネルTrashBenchが、CPU用のデュアルタワークーラーをGTX 1080 Tiへ直結する検証を公開しました。標準クーラーで56℃だったGPU温度は、GTX 1060・1070向けの小型クーラーだけに交換すると64℃まで悪化し、そこへCPU用クーラーを足すと32℃まで下がっています。同じ手法をGTX 1070・GTX 1060にも試したところ、標準クーラーでの発熱が大きいGPUほど下がり幅も大きくなりました。
この記事では、この数字をそのまま鵜呑みにするのではなく、過去にGTX 1080 Tiを本格的な水冷ブロックで冷やした際の実測データと突き合わせ、GPUダイが冷えてもVRMやVRAMまで同じように冷えるとは限らない理由、そもそもGPUクーラーがCPUクーラーほど大きくできない設計上の事情、そして手元のGTX 1080 Tiで実際に何をすべきかまで整理します。
目次
手法GPUクーラーのフィンを切り落としCPUクーラーを足す
今回の検証を行ったのは、GPU冷却の改造実験を専門に発信しているYouTubeチャンネルTrashBenchです。2026年8月21日に公開された動画「I Bolted a CPU Cooler Onto a GPU Cooler」で、GTX 1080 Tiに対する改造の様子を紹介しています。
手順はGPUのダイへCPUクーラーを直接載せるものではありません。まずGTX 1060・1070向けの小型GPUクーラーを用意し、放熱フィンの部分をグラインダーで切断して、GPUと接触するベースプレートだけを残します。そのベースプレートへ、CPU用のデュアルタワークーラーを新たに固定するという構成です。GPUダイの熱は、いったんGPU用クーラーのベースプレートを経由してからCPUクーラーへ伝わる仕組みで、放熱フィンの面積だけをCPUクーラー分に拡大したというのが実態に近い説明になります。
見出しだけを見ると「GPUの半導体そのものにCPUクーラーを密着させた」ように読めますが、実際は元からあるGPU用クーラーのベースプレートを介して熱を受け渡す構成です。サーマルグリスやベースプレートを挟まず、CPUクーラーのヒートパイプを直接ダイへ当てているわけではありません。
比較のため、同じ手法をGTX 1070・GTX 1060にも適用しています。GTX 1060では、フィン除去と120mmファンだけの状態と、そこへCPUクーラーを追加した状態の両方を測定しました。
数字56℃→64℃→32℃、GTX 1070・1060との比較
約300Wの負荷をかけた状態で、GTX 1080 TiのGPU温度は標準クーラーで56℃でした。ここでGTX 1060・1070向けの小型クーラーへ交換すると、放熱面積が縮小するため64℃まで悪化しています。その状態からCPU用デュアルタワークーラーを追加すると、32℃まで下がりました。標準クーラー比で24℃、小型クーラー単体比では32℃の低下です。
同じ手法をGTX 1070・GTX 1060にも試した結果は次の通りです。
| GPU | 標準クーラー | CPUクーラー追加後 |
|---|---|---|
| GTX 1080 Ti | 56℃ | 32℃ |
| GTX 1070 | 56℃ | 35℃ |
| GTX 1060 | 47℃ | 37℃ |
※すべてUnigine Heavenベンチマーク実行時、室温15℃・ファン回転数100%での測定値です。GTX 1060はフィン除去と120mmファンのみの状態が45℃で、そこからさらにCPUクーラーを追加して37℃まで下がっています。
差を並べると、GTX 1060は10℃、GTX 1070は21℃、GTX 1080 Tiは24℃です。標準クーラーでの温度が高いGPUほど、CPUクーラーに交換した後の下がり幅も大きくなっています。GPU用の小型クーラーがもともと持っていた放熱の余裕が少ないほど、デュアルタワークーラーへ置き換えた効果が数字に出やすいという傾向が読み取れます。
オーバークロックの試みもありました。GTX 1070のテストで2200MHzへ引き上げる調整を行ったものの、安定動作までは確認できていません。GPU温度が下がっても、コア電圧やシリコン自体の限界までクロックを動かせるわけではないということです。
今回の温度はすべて室温15℃、ファン回転数100%という条件で測定されています。GPU温度と室温の差は17℃です。室温25℃前後の部屋で同じ17℃差を保てたとすれば、40℃台前半になる計算です。ファン回転数100%も普段使いを想定した静音設定ではなく、冷却の限界を確認するための条件である点も踏まえておく必要があります。
照合本格的な水冷化でもVRMは65〜70℃のままだった
GTX 1080 Tiを大きく冷やす試み自体は、今回が初めてではありません。発売直後の2017年には、Founders Editionの標準クーラーを外し、専用のウォーターブロックへ置き換えた本格的な水冷化の検証が行われています。このときはGPU温度が44℃前後まで下がり、コアクロックは2.1GHz付近まで安定して動作しました。ただし同じ検証では、VRMのホットスポット温度が55.6℃、メモリ周辺の温度も52.3℃という数値が記録されています。室温は22℃程度でした。
別の検証では、GTX 1080 Tiの標準クーラーとハイブリッド型の簡易水冷を比較したデータもあります。標準クーラーがファンの自動制御で84℃前後まで上がっていたのに対し、水冷化後は45℃前後まで下がり、クロックの変動幅も小さくなりました。ところが同じ検証でVRMのFET部分を実測すると、標準クーラーでも水冷化後でも65〜70℃の範囲でほとんど差がなかったと報告されています。GPUダイの温度を40℃近く下げても、VRMの温度はほぼ動かなかったということです。
これらの結果が示しているのは、GPUダイを冷やす手段を変えても、VRMやVRAMの冷却経路まで一緒に改善されるとは限らないという点です。GTX 1080 Ti Founders Editionの純正クーラーは、GPUダイ用のベイパーチャンバーと、VRM・メモリ用のサーマルパッドを同じ大きな金属ベースへまとめて接触させる設計になっています。今回のCPUクーラー改造は、GPUと接触する部分だけを残してフィンを切除しているため、この共有ベースがどこまで元の状態を保てているかは動画からは判断できません。GPUダイの32℃という数字だけで、カード全体が均等に冷えていると考えるのは早計です。
理由なぜGPUクーラーはCPUクーラーほど大きくできないのか
CPUクーラーは、マザーボード上の決まった位置に垂直に立てて固定するため、ケースの高さが許す範囲でヒートシンクを大きくしやすい部品です。一方GPUクーラーは、PCIeスロットの規格に沿ってカード全体を薄く収める必要があり、拡張スロットの占有数、ケースの奥行き、隣接するスロットとの干渉まで考慮しなければなりません。
重量の制約もあります。GPUはPCIeスロットと背面のブラケットだけで基板を支えている構造で、大型のCPUクーラーをそのまま横向きに追加すると、基板やスロットへ想定以上の荷重がかかります。GTX 1080 Ti程度の基板サイズであれば個人の改造で成立していますが、これは常用を前提にした設計ではありません。
さらにGTX 1080 Ti Founders Editionの純正クーラーは、GPUダイに接するベイパーチャンバーと、VRMやメモリに接するサーマルパッドを同じベースプレートでまとめて冷やす設計です。CPUクーラーはCPUダイだけを相手にすればよいのに対し、GPUクーラーは基板上に散らばる複数の発熱部品を一つの機構でまとめて処理する必要があり、単純にヒートシンクを巨大化するだけでは解決しない設計上の制約を抱えています。
注意現行GPUで同じ改造を試すのはさらに危険
RTX 50シリーズのような現行の大型GPUで同じ改造を試すのは、GTX 1080 Ti以上にリスクが高い行為です。現行のハイエンドGPUはもともとのクーラー自体が大きく重く、そこへさらに重量のあるCPUクーラーを横向きに追加すれば、PCIeスロットや基板にかかる負荷はGTX 1080 Tiの比ではありません。長期間その状態で使用すれば、スロットの緩みや基板のたわみにつながる可能性があります。
今回の検証でもGTX 1070のオーバークロックが安定しなかった通り、温度に余裕ができたからといって、そのままクロックを引き上げられるとは限りません。冷却は性能を引き出すための一つの条件であって、それだけで結果を保証するものではないという点は、世代が新しくなっても変わりません。
結論GTX 1080 Tiを使い続けるなら何をすればいいか
今回の実験が示しているのは、GPUクーラーのサイズ制限を取り払えば空冷でもここまで温度を下げられるという可能性であって、GTX 1080 Tiに実用目的でCPUクーラーを取り付けるべきだという話ではありません。グラインダーでの加工、重量物を横向きに固定する強度の確保、VRMやVRAMの冷却経路の作り直しまで含めると、再現の難度もリスクも一般的な自作PCの範囲を超えています。
手元のGTX 1080 Tiの温度に不満があり、実用的に下げたいのであれば、対応するウォーターブロック製品を探すほうが安全です。純正クーラーと同じように、GPUダイ・VRM・メモリをまとめて設計された製品であれば、今回のようにGPUダイだけが冷えて他の部品が置き去りになる心配もありません。まずは現在の温度がケースの排気や経年劣化したグリスによるものではないかを確認し、それでも足りない場合に水冷化を検討するという順番が現実的です。
そもそもGTX 1080 Tiを買い替えのタイミングまで含めて見直したい場合は、GTX 1080 Tiは2026年でも現役かを検証した記事で、現行GPUとの性能差や動作しないタイトルの実例を整理しています。冷却を工夫するより先に、そもそも今のGPUを使い続ける価値があるかどうかを確認しておくと、判断がぶれません。
Q&Aよくある質問
総括まとめ|32℃は空冷の限界を確かめた数字
TrashBenchが公開した検証では、GTX 1080 Tiの標準クーラーで56℃だったGPU温度が、GTX 1060・1070向け小型クーラーのみで64℃まで悪化した後、CPU用デュアルタワークーラーを追加すると32℃まで下がりました。約300W負荷、室温15℃、ファン回転数100%という条件下での数字です。同じ手法をGTX 1070・GTX 1060にも適用したところ、標準クーラーでの発熱が大きいGPUほど下がり幅も大きく、1060で10℃、1070で21℃、1080 Tiで24℃という差になりました。GTX 1070でのオーバークロックは2200MHzで安定しませんでした。2017年に行われたGTX 1080 Tiの本格水冷化検証ではGPU温度は44℃前後、VRMホットスポットは55.6℃、別の水冷検証でもVRMのFET温度は65〜70℃でほとんど変化しなかったと報告されており、GPUダイを冷やしてもVRMやVRAMが同じように冷えるとは限りません。GPUクーラーがCPUクーラーほど大きくできないのは、PCIeスロットの規格・重量・複数の発熱部品を一つの機構でまとめて冷やす設計上の制約によるものです。この改造はGTX 1080 Tiに実用目的でCPUクーラーを取り付けるべきだという話ではなく、GPUクーラーのサイズ制限を取り払うと空冷でどこまで温度を下げられるかを確かめた実験と捉えるのが妥当です。実用的に温度を下げたい場合は、対応するウォーターブロック製品を検討するほうが安全です。



