Linuxでアンチチートゲームは遊べる?EAC・BattlEye・Vanguardの対応状況とSteamOS選びの分かれ目【2026年8月】
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分かれ目は技術ではなく運営方針です
出典:Valve Steamworks公式ドキュメント、Epic Online Services公式ニュース、League of Legends公式ブログ、GamingOnLinux、Are We Anti-Cheat Yet?にもとづきます。内容は2026年8月23日時点のものです。
「Linuxではアンチチートゲームが遊べない」は数年前まで動かしがたい前提でした。しかし2026年現在、SteamOSやBazziteでゲーミングPC・ハンドヘルドを検討する際、この前提を一括りに当てはめることはできなくなっています。同じ「アンチチート採用」でも、遊べるゲームと遊べないゲームがはっきり分かれているためです。
分かれ目を作っているのは技術ではなく運営方針です。Easy Anti-Cheat(EAC)は開発元のEpic Games自身がLinux・Wine・Proton対応を無償で提供しており、Rocket LeagueやStrikers Clubのように必須化後もSteam Deck・Linuxで遊べるゲームが少なくありません。一方でBattlEyeも技術的にはProton対応がありながらGTA OnlineやApex Legendsのように発行元が拒む例があり、Riot VanguardはLinux非対応を公式に明言しています。
当サイトには個別ゲームのSteamOS対応記事や、Easy Anti-Cheatの個別エラーを解決する記事がすでに複数あります。本記事はそれらとは別に、EAC・BattlEye・Vanguardという3つのアンチチートを横断してLinux対応の現在地を整理し、SteamOS・Bazzite導入を検討する際にゲーム単位で何を確認すべきかまで踏み込みます。
目次
結論Linuxでアンチチートは遊べるか、答えはゲーム次第です
EAC・BattlEye・Vanguardのいずれも「採用している」という情報だけでは、Linux・SteamOSで遊べるかどうかは判断できません。最終的な答えを決めているのは、発行元がLinux向けの対応を実際に有効化しているかどうかです。
- Rocket League: 2026年4月28日のEAC必須化後もSteam Deck・Linuxを継続サポート
- Strikers Club: 2026年8月のEAC追加後もLinuxでの動作を確認
- Epic自身がLinux・Wine・Proton向けのEACモジュールを無償公開
- 有効化は発行元側の設定作業のみで、ゲーム本体の作り直しは不要
- Apex Legends: 2024年10月31日にRespawnがLinuxアクセスを遮断
- Fortnite: EAC開発元のEpic自身が自社ゲームでは有効化せず
- GTA Online: BattlEyeのProton対応があってもRockstarが未対応
- VALORANT・League of Legends・2XKO: RiotがVanguardの非対応を明言
- Destiny 2: BungieがSteamOS・Proton経由の起動を認めずBAN対象
個別タイトルの現在地をまとめると、次のとおりです。
2026年4月28日にEACを必須化した後も、公式にSteam Deck・Linuxのサポート継続を明言。この環境ではEACはユーザー空間のみで動作しています。
2026年7月17日リリースの無料サッカーゲーム。2026年8月にEACを追加した後も、Fedora KDEデスクトップでの動作継続が確認されています。
2024年10月31日、RespawnがLinuxからのアクセスを遮断。「Linuxのオープン性はチーターに悪用されやすい」ことを理由に挙げています。
EACの開発元であるEpic Games自身が、自社の看板タイトルではLinux向けの対応を有効化していません。
BattlEyeのProton対応自体は存在するにもかかわらず、Rockstarが有効化の連絡をしていないため利用できません。
BungieがSteamOS・Proton経由の起動を公式に非サポートと明言。回避を試みるとゲームBANの対象になります。
Riotはブート状態やカーネルモジュールを十分に検証できないとして、Vanguard採用タイトル全てを非対応としています。
土台ValveはProtonでEasy Anti-Cheat・BattlEyeの対応を明言しています
ValveはSteamworks向けの公式ドキュメントで、互換レイヤーのProtonがEasy Anti-CheatとBattlEyeの双方を公式にサポートしていると説明しています。EACについては「再コンパイルなしで対応できるが、ビルドごとに手動で有効化する必要がある」と明記されており、開発者はEACパートナーサイトのSDK設定でUnixプラットフォームを有効化し、Client Module ReleasesメニューでUnix向けモジュールを配布するだけで対応できます。
BattlEyeについても「対応タイトルは各社が個別に設定作業を行う必要があり、担当者への連絡が必要」と案内されています。共通するのは、Valveがユーザー空間で動作するアンチチートの利用を推奨し、「カーネル空間で動作する仕組みは現時点でサポートされておらず推奨もしない」としている点です。この「ユーザー空間か、カーネル空間か」という違いが、後述する「カーネルレベル表示だけでは判断できない」理由につながります。
提供元Easy Anti-Cheatは開発元のEpicがLinux対応を無償で用意しています
EACを開発するEpic Games自身が、2021年9月にLinux・macOS・Steam Deck向けの対応をEpic Online Services経由で正式に発表しました。開発者はEpic Online Services Developer Portal上でWine・Proton向けのクライアントモジュールを有効化するだけで済み、ゲーム本体を作り直す必要はありません。
Linux環境でのEACはカーネルドライバーを使わず、ユーザー空間のみで動作する仕組みになっています。Windows版のカーネルモードほどの検出力は持たない代わりに、Wine・Proton環境へ組み込みやすくなっているという設計です。この仕組みがあるからこそ、後述するRocket LeagueやStrikers Clubのような「EAC必須化後もLinuxで動く」という事例が成立しています。
実例Rocket LeagueとStrikers ClubはEAC導入後もLinuxで動作しています
Psyonixは2026年4月28日、Rocket LeagueのPC版オンラインプレイに向けてEACを必須化しました。公式発表では「Rocket Leagueが最も輝くのは、すべてのゴールに価値があり、対戦が公正だと感じられるときです。競技の公正さを保つため、Epic Online ServicesのEasy Anti-Cheat(EAC)は本日よりPCのオンラインプレイで必須になります。Steam DeckとLinuxも引き続きサポートされるため、お好みのハードウェアでプレイを続けられます」と説明されています。Linux専門メディアのGamingOnLinuxも、最新のFedora KDE環境でマッチングに問題がなかったことを確認しています。
Strikers Clubは2026年7月17日にリリースされた無料のサッカーゲームです。開発元のOddshot Gamesは2026年8月、サーバー側のチェックだけでは不十分だとしてEACを追加しましたが、GamingOnLinuxの検証ではEAC追加後もFedora KDEデスクトップでの動作が継続していることが確認されています。
直近ではEAC採用タイトルの開発元が、公開前からLinux対応への意欲を示すケースも出てきています。最大100人対戦の大規模戦闘FPS『WARDOGS』の開発元は2026年8月、Steamコミュニティへの投稿でSteamOS・Linux向けのProton対応に取り組んでいることを明らかにしました。まだ公式サポートの段階ではないものの、EAC採用タイトルでもLinux対応を前提に開発を進める姿勢が広がりつつあることがうかがえます。
誤解「カーネルレベル」の表示だけでLinux不可と判断しない
Steamのストアページでは、カーネルレベルで動作するアンチチートを採用しているゲームに開示バッジが表示されるようになりました。この表示を見て「カーネルレベル=Linuxで動かない」と早合点しがちですが、正確ではありません。
EACはWindows環境ではカーネルモードで動作しますが、Linux環境ではユーザー空間のみで動作するよう別実装されています。実際にカーネルレベルの開示対象になっているRocket Leagueも、Linux上では問題なく動作を継続しています。判断材料になるのは「カーネルレベルかどうか」ではなく、「発行元がLinux向けのモジュールを実際に有効化しているかどうか」です。
個別設定BattlEyeは対応技術があってもタイトルごとの采配で分かれます
BattlEyeもEACと同様にProton環境での動作をサポートしています。Valveは2021年、「BattlEyeのProton対応は、開発者がBattlEyeへ連絡するだけで有効化できる段階まで進んでいる。開発者側の追加作業は不要」と説明しました。BattlEye自身も同年、対応をオプトイン方式で提供すると発表しています。つまり技術的なハードルはすでに取り除かれており、あとは発行元が「有効化する」と判断するかどうかだけの問題です。
この采配で明暗を分けたのがGTA Onlineです。Rockstarの公式FAQは「Steam DeckはGTA OnlineのBattlEyeに対応していません。GTA5のストーリーモードは遊べますが、GTA Onlineはプレイできません」と案内しています(2024年9月19日時点)。BattlEye自体にProton対応があるにもかかわらず、Rockstarが有効化の連絡をしていないというのが実情です。GTA5はかつてSteam Deckの人気タイトルの一つだったこともあり、この変更は既存ユーザーの間でも話題になりました。
非対応BungieはSteam DeckでのDestiny 2起動自体を認めていません
Destiny 2の採用アンチチートもBattlEyeですが、GTA Onlineとは異なる次元の対応です。Bungieの公式ヘルプ情報は「Destiny 2は、Windowsが導入され起動している場合を除き、Steam DeckやSteam PlayのProtonを利用するいかなるシステムでもサポート対象外です。SteamOSやProton経由でDestiny 2の起動を試みても、ゲームに入れずライブラリへ戻されます」と説明しています。
さらに「この非対応を回避しようとしたプレイヤーはゲームBANの対象になります」とも明記されており、Destiny 2に関しては技術的な回避策を試みること自体がリスクになります。SteamOSのままDestiny 2を遊びたい場合、選べる方法はSteam DeckなどのハードウェアにWindowsを導入することだけです。
BattlEye自体にProton対応があっても、発行元のBungieがSteamOS・Proton経由の起動そのものを認めていません。GTA Onlineの「未対応」より一段厳しい「回避を試みるとBAN」という扱いなので、SteamOSのまま起動を試すのは避けてください。
皮肉EACを持つEpic自身がFortniteでLinuxを使っていません
EACの開発元であるEpic Games自身が、自社の看板タイトルであるFortniteではLinux対応を有効化していないという皮肉な状況もあります。Epic Games CEOのTim Sweeney氏はSNS上で「Fortniteは対象外だが、Easy Anti-CheatとSteam Deckの互換性を高める取り組みは進めている」と説明したうえで、有効化しない理由を「Linuxのカスタムカーネルを含む幅広い構成の下で、大規模にチート対策できる自信がない」と述べました。同氏はさらに、脅威の大きさはゲームごとのプレイヤー数に比例するとし、Fortniteの規模がWindows以外の環境への対応をより難しくしていると説明しています。
Are We Anti-Cheat Yetのデータベースでも、FortniteはEAC採用タイトルでありながら「Denied(拒否)」に分類されています。同じEACを採用していても、Rocket LeagueとFortniteで結果が正反対になるのは、技術の限界ではなく発行元の判断が理由になっているためです。
明言Riot VanguardはLinuxのブート状態を検証できないと説明しています
Riot Gamesのカーネルレベル・アンチチート「Vanguard」は、VALORANT・League of Legends・Teamfight Tactics・2XKO(Riotの新作格闘ゲーム)の4タイトルで採用されており、いずれもLinux非対応です。Riotは2024年4月11日、公式ブログでこう説明しています。「私たちは公式にLinuxをサポートしたことがありません。WineでLeague of Legendsを動かす現行のLutris実装は、Vanguardのドライバー要件を満たせません。Linuxは現状、ブート状態やカーネルモジュールを十分な確実性で検証する手段を私たちに提供しておらず、ディストリビューション間の差異の大きさも、この確保をさらに難しくしています」。
さらに「エミュレーションを許可することも極めて危険な賭けです。多くのチートがホスト側で動作し、Vanguardから見えない形でVM内を操作・解析できてしまいます。アンチチートの半分は環境が改ざんされていないことの確認であり、これはLinuxの設計上非常に困難です」とも述べています。当時のLeague of LegendsのLinux利用者は800人程度にとどまっていたとしたうえで、「このリスクは割に合わないと判断した」と結論づけています。
力学争点は「動くか」ではなく「運営が許可するか」に移っています
EAC・BattlEyeともに技術的にはProton・Wine環境で動作可能です。にもかかわらずGTA Online・Apex Legends・Fortniteのような明暗が生まれるのは、技術の限界ではなく発行元の意思決定が理由になっています。この転換を象徴するのがApex Legendsです。
RespawnのアンチチートチームはLinuxアクセスを遮断した際、「Linuxのオープン性は、チーターやチート開発者にとって魅力的な環境になっている」「Linuxのチートは検出が難しく、規模の小さいプラットフォームに対してチームの労力を過度に割く事態になっていた」と説明しました。Linux利用者数自体は「小さい」と認めつつ、「その影響は一定数のプレイヤーの対戦を汚染していた」として、影響とコストを天秤にかけたうえで遮断を選んだとしています。つまり、Linuxで「動くかどうか」を技術だけで判断できる段階はすでに終わっており、遊びたいゲームごとに発行元の方針を確認する必要がある段階に入っています。
統計Are We Anti-Cheat Yet?の集計とSteamOSの普及率
Linux・SteamOSのアンチチート対応状況を継続的に記録しているコミュニティプロジェクト「Are We Anti-Cheat Yet?」の集計(2026年8月23日時点、1,166タイトル)によると、全体の内訳はSupported(公式サポート)が195本、Running(動作報告あり)が276本、Broken(動作しない)が640本、Denied(発行元が明確に拒否)が53本、Planned(対応予定)が2本です。
アンチチートの種類別に見ると差がはっきりします。EAC採用タイトルは372本中、Supported 66本・Running 108本・Broken 188本・Denied 9本と、半数近くが何らかの形で動作しています。一方BattlEye採用81本ではSupported 22本・Running 10本・Broken 39本・Denied 9本と混在しており、Vanguard採用4本はすべてDeniedです。この数字を見る限り、EACは発行元の姿勢次第でLinux対応が現実的な選択肢になっている一方、BattlEyeは対応・非対応が混在し、Vanguardは事実上の全滅という構図が、統計の面からも裏付けられます。なお、2026年4月にEACを必須化したばかりのRocket League本体は、このデータベースにまだ個別項目として登録されていません(FACEIT版・大会運営版のみ確認できます)。直近で対応方針が変わったタイトルほど、統計より一次情報を優先して確認してください。
この土台の上で、SteamOSを使うLinuxユーザー自体も増えています。Valveの Steamハードウェア&ソフトウェア調査によると、2026年7月時点でLinuxの利用率は4.01%まで回復し、Windows(93.67%)・macOS(2.32%)に次ぐ規模になりました。Linux利用者のうちSteamOS Holoが22.24%、Bazziteが7.73%を占めています。SteamOSを積んだSteam Deck・Steam Machineやハンドヘルドが増えるほど、対応・非対応の差はより多くのプレイヤーに直接影響する話になります。
判断デュアルブートが現実的な落とし所です
ここまで見てきたとおり、Linuxでアンチチートゲームが遊べるかどうかは、採用しているアンチチートの名前だけでは決まりません。EACか、BattlEyeか、Vanguardかという分類は目安にはなりますが、最終的な答えは「そのゲームの発行元がLinux向けの対応を実際に有効化しているか」で決まります。同じEACを採用していても、Rocket LeagueとFortniteで結果が正反対になるのはこのためです。
購入前に確認すべきなのは次の3点です。遊びたいゲームが採用しているアンチチートの種類、そのゲームの発行元がSteam Deck・SteamOSでの動作を公式に案内しているか、そして非公式な起動報告と公式サポートは別物だという前提です。VALORANT・GTA Online・Destiny 2のように、アンチチートの種類にかかわらず遊べないタイトルが決まっている場合、SteamOS専用機だけで環境を完結させるのは現実的ではありません。
現状でもっとも現実的な落とし所は、SteamOSやBazziteをメインにしつつ、遊べないタイトルのためにWindows環境をデュアルブートまたは別ドライブで用意しておくことです。NVIDIA搭載PCでSteamOSを検討している場合はGPU側の対応状況も別問題になるためSteamOSのNVIDIA対応状況もあわせて確認してください。ハンドヘルドをSteamOS風の環境に変えたい場合はBazziteの導入ガイドで具体的な手順を確認できます。
FAQよくある質問
総括アンチチートの名前ではなくゲームごとに確認してください
Linuxでアンチチートゲームが遊べるかどうかは、EAC・BattlEye・Vanguardという名前だけでは決まりません。EACは開発元のEpic自身がLinux・Wine・Proton対応を無償で提供しており、Rocket LeagueやStrikers Clubのように必須化・追加後もSteam Deck・Linuxで動作するタイトルが少なくありません。一方でBattlEyeは技術的な対応があってもGTA OnlineのようにRockstarが有効化していない例があり、Riot VanguardはVALORANT・League of Legends・Teamfight Tactics・2XKOの4タイトル全てで非対応を明言しています。Apex LegendsやDestiny 2のように、一度は動いていた、あるいは技術的には可能なはずのタイトルが運営方針で遮断される例もあるため、購入前には遊びたいゲームごとに発行元の公式サポート状況を確認し、対応していないタイトルがあるならSteamOS・BazziteとWindowsのデュアルブートを前提に構成を組むのが現実的です。



