Beelink ME ProにArc B390搭載|NASにCore Ultra X7 358Hは必要?AI・動画変換・ゲーム用途を検証
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NASにCore Ultra X7 358Hは必要?AI・動画変換・ゲーム用途を検証
出典:VideoCardz、Intel公式「Core Ultra X7 358H」仕様ページ、Beelink公式「ME Pro」製品ページ、Jellyfin公式ドキュメントにもとづきます(2026年9月24日確認)。
Beelinkが、中国で開催されたIntel Connection 2026において、Panther Lake世代のCore Ultra Series 3を採用する新しいME Proシリーズを展示しました。最上位構成にはCore Ultra X7 358Hが採用され、内蔵GPUとして12基のXeコアを持つ「Intel Arc B390」を搭載します。Arc B390は2026年の内蔵GPUとしてはPCゲームを動かせるほど高い性能を持つことで注目されており、「NASにここまで強力なGPUが必要なのか」と感じる人もいるでしょう。
しかし詳しく調べると、今回のME Proで重要なのは単純なNASの高速化ではありません。動画サーバーとして使うだけなら、Arc B390の12Xeコアをフル活用する場面は意外と限られます。一方、Beelinkが進めているローカルAI、ファイル内容のAI検索、仮想化、NAS兼PCといった用途まで広げると、Core Ultra X7 358Hを搭載する意味が見えてきます。
下位構成のCore Ultra 5 325との差を確認すると、「高性能NASだからX7 358Hを選べばいい」と単純には言えないことも分かります。判明している仕様を整理したうえで、NASにArc B390を搭載するメリット、動画トランスコードやローカルAI・ゲーム用途でどこまで意味があるのかを検証します。

目次
発表Beelink ME ProにPanther Lake版が登場
BeelinkはIntel Connection 2026において、Core Ultra Series 3を採用する新しいME Proシリーズを展示しました。現時点で確認されているCPUはCore Ultra X7 358HとCore Ultra 5 325です。展示では2ベイモデル・4ベイモデルに加えて、さらに小型のモデルも確認されていますが、小型モデルについてはドライブ構成が正式発表されておらず、外観だけを理由に「オールフラッシュNAS」と判断することはできません。発売については2026年10月末までが予定されていますが、日本を含む中国国外での発売時期や価格は明らかになっていません。
仕様Core Ultra X7 358HとCore Ultra 5 325の差
Intel公式仕様では、X7 358Hは16コアのCPUに12XeコアのArc B390 GPUを統合しています。GPUの最大動作クロックは2.5GHz、GPU単体のINT8演算性能は122TOPSで、NPUも50TOPSを備えています。一方、Core Ultra 5 325は8コアで、GPUはArc B390ではなく4Xeコアの「Intel Graphics」です。GPU演算性能は40TOPSですが、NPU性能は47TOPSあります。CPU名だけを見るよりもGPU側の差が非常に大きい構成です。
| 項目 | Core Ultra X7 358H | Core Ultra 5 325 |
|---|---|---|
| CPUコア | 16コア | 8コア |
| 内蔵GPU | Arc B390(12Xeコア) | Intel Graphics(4Xeコア) |
| GPU INT8性能 | 122 TOPS | 40 TOPS |
| NPU性能 | 50 TOPS | 47 TOPS |
| Base Power | 25W | 25W |
| Maximum Turbo Power | 80W | 55W |
| 最大メモリ | 96GB(LPDDR5X-9600) | 128GB(LPDDR5X/DDR5-6400) |
GPU演算性能だけならX7 358HはCore Ultra 5 325の約3倍です。しかしNPUは50TOPSと47TOPSしか違いません。この差が、今回のME Proを考えるうえでかなり重要になります。
動画NASの動画トランスコードだけならArc B390は必要なのか
最初に気になるのがPlexやJellyfinのようなメディアサーバー用途です。4K動画をNASへ保存し、テレビやスマートフォンへ配信するときには、端末が元動画のコーデックやビットレートに対応できない場合にトランスコードが必要になります。そこで「Arc B390なら大量の動画を高速変換できる」と考えたくなりますが、単純にXeコア数だけで考えるべきではありません。
X7 358Hに搭載されるArc B390は、H.264とH.265のハードウェアエンコード/デコード、AV1のエンコード/デコード、VVCのハードウェアデコード、Intel Quick Sync Videoに対応します。しかしCore Ultra 5 325も、Intel公式仕様を見る限り同じくH.264・H.265・AV1のハードウェアエンコード/デコード、VVCデコード、Quick Sync Videoに対応しています。つまり「Arc B390でなければAV1をハードウェア変換できない」というわけではありません。
Jellyfinの公式ドキュメントでも、動画トランスコードではGPUの通常の3D演算部分だけではなく、GPU内に搭載された固定機能の動画エンジンが利用されます。JellyfinはIntel Quick Sync VideoをWindowsとLinuxの両方で正式なハードウェアアクセラレーション方式として扱っており、ハードウェア選定ガイドではiGPUを使う一般的なサーバーとしてIntel UHD 710クラス以上を候補に挙げています。このことからも、自宅で数本の動画をリアルタイム変換する程度なら「12Xeコアだから有利」という単純な話ではないことが分かります。もちろん同時トランスコード数やHDRトーンマッピング、ドライバーの完成度によって実際の性能は変わり、現時点ではPanther Lake版ME Proを使った実測値が公開されていないため、両モデルで何ストリーム差が出るかまでは判断できません。それでも、動画サーバー目的だけでArc B390モデルへ大きな追加料金を払う価値があるかは、発売後の価格を見て慎重に判断したほうがよさそうです。
AIArc B390が意味を持つのはローカルAI用途
一方で、今回のME ProでArc B390が本領を発揮しそうなのがローカルAIです。Beelinkは現行ME Proシリーズでも、単なるファイルサーバーではなく「ローカルAIを動かすNAS」という方向性を強く打ち出しており、公式ページではAIによる写真検索・顔認識・ファイル内容を理解した検索・ローカルAIモデルの実行などを用途として紹介しています。Llama・Qwen・DeepSeek・GemmaなどのローカルモデルをNAS上で利用する構想も示されています。
Panther Lake版ではこの方針がさらに進みます。中国メディアの報道によると、新型ME ProにはTencentのシステムレベルAIエージェント「Marvis」が組み合わされ、ファイル内容の理解・端末をまたいだリモート操作・ローカルAI処理などが想定されています。NAS OSにはfnOSが組み合わされ、ファイル管理・バックアップ・同期・リモートアクセス・動画素材の管理なども提供されると報じられています。
ここでCore Ultra X7 358HとCore Ultra 5 325の差が効いてきます。NPU性能だけを見ると50対47TOPSなのでX7 358Hが圧倒的に速いわけではありませんが、GPU性能は122対40TOPSで約3倍あります。そのため、AI処理がNPUだけで完結するアプリでは両CPUの差が比較的小さくても、GPUを利用するOpenVINOやDirectML、ONNX Runtimeなどの処理では、X7 358Hの大きなGPUが効いてくる可能性があります。IntelもX7 358HのGPUについてOpenVINO・Windows ML・DirectML・ONNX Runtime・WebGPUなどへの対応を明記しています。今回のArc B390搭載ME Proは、「NASのファイルコピーを速くするためのGPU」というより、NAS内に保存した大量のデータをその場でAI処理するための演算器と考えたほうが理解しやすいでしょう。
注意実はローカルLLMではメモリ容量の方が気になる
Intel公式仕様では、Core Ultra X7 358Hの最大メモリ容量は96GBでLPDDR5X-9600のみの対応です。対してCore Ultra 5 325は最大128GBで、LPDDR5XだけでなくDDR5-6400にも対応します。大規模なローカルLLMでは、GPUの演算性能だけでなくモデルを保持できるメモリ容量が重要になるため、Arc B390が高速でもX7 358Hがこの上限のまま実装されるなら、大容量メモリを必要とする用途では違った制約が出る可能性があります。
既存のRyzen AI 9 HX 370版ME ProではSO-DIMMを2スロット備え、最大256GB DDR5に対応する構成が発表されています。これと比べると、Panther Lake版の96GB上限は見劣りする可能性がある数字です。ただし、Panther Lake版ME Proの実際のメモリ容量や実装方式についてBeelinkはまだ詳細仕様を公開していないため、「96GB固定になる」「メモリ交換不可になる」と現段階で断定することもできません。発売時にはCPU名だけでなく、メモリがオンボードなのか容量はいくつまで選べるのかを確認したいところです。
未確定現行ME Proと同じ10GbE・3基M.2とは限らない
現行のME Pro AI 470では、2ベイと4ベイの両方に3基のM.2スロットを搭載し、10GbEと2.5GbEのデュアルLANを備えています。最大ストレージ容量は2ベイモデルが72TB、4ベイモデルが132TBとBeelink公式ページに掲載されています。この仕様を見ると新しいPanther Lake版も同じ構成だと考えたくなりますが、現時点でBeelinkはPanther Lake版についてストレージ上限・M.2スロット数・LAN構成・メモリ容量を正式な製品仕様として公開していません。展示会場を取材した海外メディアは10GbE+2.5GbEとThunderbolt 4×2という情報を伝えていますが、正式な製品ページが公開されるまでは確定仕様として扱わないほうが安全です。特にNASではCPU性能以上にLAN速度とストレージ構成が体感性能を左右するため、Arc B390だけを見て購入候補にするのではなく、M.2 SSDの本数・それぞれのPCIe帯域・10GbEの有無・HDDベイ数まで確認する必要があります。
PCIeレーンの割り振りも気になる部分です。Intel公式仕様では、X7 358HもCore Ultra 5 325も最大PCI Expressレーン数は12本です。これはNVMe SSDを複数搭載するNASでは重要で、複数のM.2スロットを搭載した場合、それぞれがx4接続なのか一部がx2やx1なのかによってSSD性能は変わります。実際、現行N150版ME Proでは、Beelink中国公式サイトがM.2スロットをPCIe 3.0 x2×1とPCIe 3.0 x1×2として公開しています。「M.2が3本ある=3本ともフル帯域」とは限らないため、Panther Lake版についてもスロット数だけでなくリンク速度まで確認したいところです。
ゲームArc B390搭載ならNASでPCゲームもできる?
Arc B390自体にはPCゲームを動かせる性能があります。Core Ultra X7 358H+Arc B390は、設定やXeSSを調整すれば1080pで多くのPCゲームを動かせる内蔵GPUとして、すでに複数の搭載ノート・ミニPCで確認されています。しかし、今回のME Proをそのまま「NAS兼ゲーミングPC」と判断するのは早すぎます。新型ME Proがどの程度のCPU電力設定になるのか、メモリ帯域はどうなるのか、Windows用ドライバーやOSインストールがどこまで想定されているのか、映像出力端子が最終製品でどうなるのかは、まだ十分に公開されていません。特にArc B390は共有メモリを使うiGPUなので、メモリ構成や電力制限によって性能が変わり、同じCore Ultra X7 358Hだからといって、ゲーミングノートやミニPCで測定されたfpsをME Proでもそのまま出せるとは限りません。逆にいえば、Windowsを問題なく導入でき、Arc B390へ十分な電力が供給される仕様なら、NASとして使いながら軽量ゲームやゲームストリーミング用PCとして利用できる珍しい製品になる可能性があります。この部分は発売後に実機で確認したいポイントです。
Minecraftなどの専用ゲームサーバーや自宅サーバーとして使いたい場合は考え方が変わります。一般的なDedicated Serverではゲーム画面を描画しないため、Arc B390の3D性能を利用する場面は多くありません。その用途ではCPU性能・メモリ容量・ネットワーク・24時間稼働時の消費電力や冷却性能のほうが重要になります。Core Ultra X7 358Hは16コアなので、NASと複数のコンテナ・仮想マシン・ゲームサーバーなどを同時に動かす構成には余裕を持たせやすいでしょう。一方で、単純なファイルサーバーやメディアサーバーとして使うだけなら、8コアのCore Ultra 5 325でもかなり高性能です。「NASだから最上位CPU」という選び方ではなく、何をNAS上で同時実行するかでCPUを選んだほうが合理的です。
選び方Core Ultra 5 325版がむしろ本命になる人も多そう
- 写真・動画の保存、バックアップが主な用途
- Jellyfin等でのメディア配信が中心(コーデック対応は同等)
- 軽いDocker・ファイル検索程度のAI機能を使う
- 24時間稼働の消費電力・静音性を重視する
- ローカルAI・ファイル内容のAI検索を本格的に使う
- 複数の仮想マシン・GPU処理を同時に動かす
- NAS兼デスクトップPC・軽量ゲーム機として使いたい
- ただしローカルLLMではメモリ96GB上限に注意
今回の発表ではArc B390搭載モデルが目立ちますが、一般的なNAS用途ではCore Ultra 5 325版のほうがバランスが良い可能性があります。Processor Base PowerもX7 358Hと同じ25Wですが、Maximum Turbo PowerはX7 358Hの80Wに対し55Wです。Maximum Turbo PowerがそのままNAS全体の消費電力になるわけではなく、Beelinkがどのような電力設定を採用するかも分かりませんが、24時間稼働させるNASではピーク性能だけでなくアイドル時消費電力も重要です。反対にローカルAI・複数VM・GPU演算・NAS兼デスクトップPCといった使い方まで狙うなら、Arc B390を持つX7 358Hの価値が大きくなります。
比較今すぐ買える高性能NASとの違い
Panther Lake版ME Proは2026年10月末までの中国発売予定で、日本での発売時期・価格は未定です。今すぐ購入できる選択肢として、同じくIntel CPUを積んだ高性能デスクトップNAS「UGREEN NASync」シリーズと仕様を比較します。
| 項目 | Beelink ME Pro(Panther Lake) | UGREEN NASync DXP6800 Pro | UGREEN NASync DXP8800 Plus |
|---|---|---|---|
| CPU | Core Ultra X7 358H/Ultra 5 325 | Core i5-1235U(10コア12スレッド) | Core i5-1235U(10コア12スレッド) |
| 内蔵GPU | Arc B390(12Xe)/Intel Graphics(4Xe) | Iris Xe Graphics(80EU) | Iris Xe Graphics(80EU) |
| ベイ数 | 未確定(現行は2/4ベイ) | 6ベイ | 8ベイ |
| ネットワーク | 10GbE+2.5GbEとの情報(未確定) | 10GbE×2 | 10GbE×2 |
| 拡張性 | Thunderbolt 4×2との情報(未確定) | Thunderbolt 4×2・M.2×2 | Thunderbolt 4×2・M.2×2 |
| 購入可否 | 未発売(2026年10月末〜中国) | 購入可能 | 購入可能 |
UGREEN NASyncはArc B390のような強力な内蔵GPUこそ持たないものの、6〜8ベイという大容量ストレージと10GbEデュアル構成をすでに購入できる点が強みです。ローカルAIよりもまず大容量ストレージ・安定したファイルサーバーを優先したい場合は、発売時期が未定のME Proを待つよりこちらが選択肢になります。反対に、Arc B390によるGPU性能を活かしたローカルAI・NAS兼PC用途を重視するなら、ME Proの正式発表を待つ価値があります。
既存機種Ryzen AI版ME Proから乗り換える必要はある?
すでにME Pro AI 350やAI 470を検討している場合、Panther Lake版が出るからといって必ず待つ必要があるとは限りません。現行ME Pro AI 470は10GbE+2.5GbE・3基のM.2・2または4基のSATAベイという構成がすでに明らかになっており、ローカルAI・AI検索・リアルタイム動画トランスコードなども主な用途として掲げられています。一方、Panther Lake版はArc B390という非常に強力なiGPUを利用できることが最大の特徴ですが、メモリ・ストレージ・ネットワーク・価格がまだ確定していません。特に大容量メモリを必要とするローカルLLMでは、「GPUが速いからX7 358Hのほうが必ず有利」とは限らないため、NASではCPU単体のベンチマークよりもメモリ容量・ディスク構成・ネットワーク・OS・ハードウェアアクセラレーションの対応状況まで含めて判断する必要があります。
価格価格と発売日は
Panther Lake版ME Proは2026年10月末までの発売が予定されていますが、現時点では価格は発表されておらず、日本での発売についても確認できません。Beelink公式のMEシリーズ製品一覧にも、2026年9月24日時点ではPanther Lake版ME Proはまだ掲載されておらず、国内向けページで購入できるのはN95/N150やCore 3 304などの既存モデルが中心です。発売前に判断するなら、価格だけでなくメモリ容量と交換可否・M.2スロット数とPCIe接続速度・10GbEの有無・CPUの電力設定・WindowsなどfnOS以外のOSへの対応が明らかになってから評価したほうがよいでしょう。
FAQよくある質問
まとめまとめ|Arc B390搭載の本当の意味は「AIサーバー化」
Beelinkの新型ME Proには、Panther Lake世代のCore Ultra X7 358HとCore Ultra 5 325が用意され、上位モデルでは12XeコアのArc B390を利用できます。一見「ゲームもできるほど高性能なGPUをNASへ搭載した製品」ですが、NASとして考えると少し違った姿が見えてきます。動画トランスコードだけならCore Ultra 5 325もAV1エンコード/デコードやQuick Sync Videoに対応しており、Arc B390の12Xeコアが必須とは言えません。
一方、ローカルAIでは事情が変わります。両CPUのNPU性能は50対47TOPSで近いものの、GPU演算性能は122対40TOPSと約3倍の差があります。BeelinkがローカルAIエージェントやAI検索までNASへ取り込もうとしていることを考えると、Arc B390は動画再生のためだけでなく「NASにGPUコンピューティング能力を持たせる」ための選択と見るのが自然です。だからこそ、単純なファイル保存や動画サーバーとして使うならCore Ultra 5 325版が本命になる可能性があります。Arc B390版を選ぶ意味が大きくなるのは、NASに加えてローカルAI・仮想マシン・GPU処理・場合によってはPCゲームまで1台へまとめたいユーザーです。
ただし現時点では価格・メモリ・ネットワーク・ストレージ構成など重要な仕様が未発表です。特にX7 358HはIntel公式上の最大メモリが96GBとなっているため、ローカルLLM用途では既存ME Pro AIシリーズとのメモリ容量差も確認する必要があります。発売時にはゲーム性能だけでなく、AI処理速度・Jellyfinの同時トランスコード数・10GbE転送速度・M.2の実効帯域・アイドル消費電力まで確認できれば、Panther Lake版ME Proの本当の価値が見えてきそうです。





