ライブサービスゲームはなぜ失敗しやすい?|『スーサイド・スクワッド』開発者証言から読み解く

ライブサービスゲームはなぜ失敗しやすい?|『スーサイド・スクワッド』開発者証言から読み解く

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ゲーム業界ニュース / 2026年7月9日
ライブサービスゲームはなぜ失敗しやすい?
『スーサイド・スクワッド』開発者証言から読み解く
『バットマン アーカム』シリーズで名を馳せたRocksteady Studiosが、なぜライブサービス型ゲームで躓いたのか。開発に携わった本人たちの証言から、その構造的な難しさを整理します。
2024年2月発売・1年で新展開終了開発者「もう作りたくない」名門スタジオでも躓く構造

出典:BloombergAUTOMATON

基本プレイ無料、シーズン制、バトルパス、継続アップデート——近年のPCゲームはライブサービス型の運用が当たり前になっています。プレイヤーにとっては長く遊べて便利な仕組みですが、それを作る開発側の負担は売り切り型のゲームとはまったく別物です。

『バットマン アーカム』シリーズで高い評価を積み重ねてきたRocksteady Studiosが手がけた『スーサイド・スクワッド キル・ザ・ジャスティス・リーグ』は、発売からわずか1年で新展開を終了しました。開発に携わった元スタッフは「もうゲームを作りたくなくなるほどつらかった」と告白しています。

単なる失敗作の後日談として片づけるのではなく、実力のあるスタジオでもなぜライブサービス型の開発で躓くのか、その構造を掘り下げます。

目次

経緯何が起きたのか

『スーサイド・スクワッド キル・ザ・ジャスティス・リーグ』は2024年2月2日、PS5・Xbox Series X|S・PC(Steam)向けに発売されたオープンワールド型のサードパーソンシューターです(Epic Games Store版は約2カ月後の3月26日に追って発売)。開発はRocksteady Studios、発売元はワーナー・ブラザース・ゲームズが担当しました。

Rocksteadyは決して無名のスタジオではありません。『バットマン:アーカムアサイラム』(2009年)はMetacritic 91〜92点、『アーカムシティ』(2011年)はPS3版96点という高評価を獲得し、シリーズを通じてアクションアドベンチャーの金字塔と評されてきました(『アーカムナイト』のPC版だけは、発売時の深刻な最適化不備で70点にとどまり、一時販売停止という異例の対応も取られています)。

そうした過去の実績と対照的に、本作自体の批評家評価はRocksteady史上最低の水準でした。Metacriticのスコアは PS5版60点・Xbox Series X版61点・PC版63点といずれも「賛否両論」にとどまり、ユーザースコアも10点満点中3.5点という厳しい結果に終わっています。

本作の企画自体は2016年頃から存在し、2020年8月のDC FanDomeで正式発表。当初は2022年発売予定でしたが、2023年前半→2023年5月26日→2024年2月2日と、少なくとも2回の延期を経て発売にこぎつけました。発表から発売まで3年半、開発全体では7年以上を要した計算になります。

デッドショット、ハーレイ・クイン、キャプテン・ブーメラン、キング・シャークという発売時4キャラクターに加え、シーズンごとにジョーカー、ミセス・フリーズ、ローレス、デスストロークが追加され、最終的に8キャラクターが実装されました。最大4人までの協力プレイに対応し、発売後1年間の継続的な無料アップデートが予告されていました。

項目内容
発売日2024年2月2日
開発Rocksteady Studios
発売元ワーナー・ブラザース・ゲームズ
対応機種PS5 / Xbox Series X\|S / PC(Steam・Epic Games Store)
新展開終了2025年1月14日(シーズン4 最終エピソード配信をもって)

発売直後、Steam同時接続プレイヤー数は初日ピークで13,459人に達しましたが、その後急落。発売から2週間ほどで1,000人を割り込み、その後のシーズン間の閑散期には一時118人まで落ち込んだ月もあったと報じられています。2024年5月のワーナー・ブラザース・ディスカバリー決算発表では、CEOのデビッド・ザスラフ氏が本作の売上を「期待外れ」と表現し、CFOのグンナー・ヴィーデンフェルス氏はEBITDAへの影響が2億ドルに上ると説明しました。

シーズンごとの反応も厳しいものでした。Season 1(ジョーカー追加)時点の同時接続ピークは3,012人でしたが、Season 2(ミセス・フリーズ追加)ではさらに8割以上減の572人まで落ち込んだと報じられています。Season 3で追加されたローレスについては「本来の主要メンバーを先に出すべきだった」という声がファンから多く上がりました。最終のSeason 4(デスストローク追加)では、サーバー状況に左右されずキャンペーンを恒久的にプレイできるようにするためのオフラインモードが追加されましたが、これが事実上のサービスの終着点となりました。

Rocksteady内部でも、2024年9月にQA(品質保証)チームが33名から15名へと半減以上の規模で削減され、2024年末にはプログラマーやアーティストを含むさらなる人員削減が行われたと報じられています。なお、サービス終了発表に先立つ2024年12月には、QA支援を担っていた別法人のWB Games Montrealでも99名が削減されており、対象の大半はKeywords Studios経由の外部委託QAスタッフだったと報じられています。Rocksteady本体とは別のスタジオでの出来事ですが、一つのタイトルの失敗が複数のスタジオに波及したことがうかがえます。

証言開発者が語った本音

海外メディアのインタビューに応じたのは、いずれもRocksteadyを退社した元開発者です。ディレクターの一人だったアクセル・リュドビー氏は、開発の後半について次のように振り返っています。

「あの頃から、自分はもうゲームを作っているという感覚がなくなっていった。誰も明確に説明できないような、マーケティング分析のスプレッドシートを追いかけているだけだった」。さらに「業界全体が道を見失いつつあると思う。かつては、自分たちが愛していて、他の人にも愛してもらえたらいいなと願うような情熱的なプロジェクトだった。それが次第に薄れていって、『売れるといいな』『お金が入ってくるといいな』という話になってしまった」と語っています。

アソシエイトデザインディレクターのジョニー・アームストロング氏も、発売後の反応を受けて「体からすべてが抜け落ちていくような感覚だった。『もう二度とこれはできない』と思った。業界を辞めるかどうかはわからないが、これはもう無理だと感じた」と述べています。開発序盤については「『バットマン アーカム』シリーズのヒットが続いていたので、傲慢というと言い過ぎだが、ある種の自信があった。今回もきっとできるはずだと」と振り返り、「膨大な時間を注ぎ込んでも、目に見えて良くなっている実感がなかった。誰もが、その場に留まるために走り続けているような感覚だった」とも証言しています。

両氏は現在Rocksteadyを離れ、自ら立ち上げた小さなスタジオでデッキビルド型RPG「Secret of Circadia」を開発しています。『Slay the Spire』『Balatro』『Hades』『Stardew Valley』へのオマージュを掲げるインディー作品で、開発資金はKickstarterで募っており、目標額はわずか1万ユーロ(約1万1000ドル相当)。生成AIを一切使わない方針も明言されています。数百人規模のチームで7年がかりの大作を手がけた反動のように、対照的な規模とジャンルへ舵を切った格好です。

構造なぜ名門スタジオでも躓いたのか

Rocksteadyは『バットマン アーカム』シリーズで、じっくり作り込んだ一本道のシングルプレイ体験を得意としてきたスタジオです。しかしライブサービス型では、同じコンテンツを何度も遊んでもらう前提で設計し直す必要があり、これまでの得意分野とは根本的に異なる作り方が求められます。

シーズンごとの新コンテンツ追加、常時オンラインでの運営、大規模なQAテストなど、売り切り型では発生しなかった継続的な負担が積み重なります。証言にあるように、開発が長引くほど「何が面白いか」よりも「どう収益化するか」に意識が向きやすくなるのも、ライブサービス特有の圧力です。過去のヒット作の実績があったからこそ生まれた自信が、未経験のジャンルへの備えを不十分にしてしまった側面もありそうです。

共通点他のスタジオにも見られる構造

実力のあるスタジオがライブサービス開発で躓くという構図は、Rocksteadyだけの話ではありません。2024年前後だけでも、同じパターンの事例が相次いでいます。

Bluepoint Games(Demon’s Soulsリメイク)ソニーによる買収後、ライブサービスタイトルの開発を指示されるも進捗不足でキャンセル。新プロジェクトが承認されないまま2026年にスタジオごと閉鎖されました。
Concord(Firewalk Studios / ソニー)2024年8月発売も、わずか2週間でサーバー停止・返金対応に追い込まれました。同年10月末にはFirewalk Studios自体が閉鎖され、174名が解雇されています。
Marvel’s Avengers(Crystal Dynamics / スクウェア・エニックス)2020年発売。2023年3月に新コンテンツを終了し、同年9月末には全プラットフォームで販売終了。Marvel関連契約全体で約2億ドルの損失が生じたと報じられています。
Anthem(BioWare / EA)2019年発売。2021年に大規模リビルド計画「Anthem NEXT」を中止し、サーバーは稼働を続けていたものの、2026年1月についに完全停止しました。

得意分野が異なるジャンルへの挑戦を強いられ、結果が出なければ厳しい評価が下る——ライブサービス型ゲームが増え続ける現在の業界では、こうした構図が繰り返し起きています。

視点プレイヤー目線で見るライブサービス

メリット

  • 発売後も無料アップデートで新キャラクターや新展開が追加される可能性がある
  • 友人と誘い合って、長期間同じタイトルで遊び続けられる設計になっていることが多い
  • コミュニティが活発なうちは、新しい遊び方や協力プレイの盛り上がりが続く

注意したい点

  • サービス終了・新展開打ち切りで、当初予告されていた継続コンテンツを受け取れなくなるリスクがある
  • 開発側の人員削減など運営体制の変化が、アップデートの質や頻度に直結することがある
  • 発売時点の完成度だけでなく、その後何年サービスが続くかも見極めてから購入を判断したい
まとめ

『スーサイド・スクワッド キル・ザ・ジャスティス・リーグ』の事例が示すのは、単に「面白いゲームを作る力」と「長期運営型のゲームを作る力」は別物だということです。売り切り型の名作を作ってきたスタジオであっても、ライブサービスという畑違いの土俵に立たされれば、同じように苦戦する可能性があります。

プレイヤーとしては、基本プレイ無料やシーズン制の手軽さを享受しつつも、その裏側でどのような開発体制が組まれているかにも目を向けておくと、ゲームとの付き合い方が変わってくるかもしれません。

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ゲーミングスタイル管理人

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