Steam Deckの1% Lowが31.8%改善?AMD P-State新機能「epp_boost」の仕組みと対応時期

Steam Deckの1% Lowが31.8%改善?AMD P-State新機能「epp_boost」の仕組みと対応時期

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AMD P-State / Linux Kernel RFC / 2026.08
Steam Deckの1% Lowが31.8%改善?AMD P-State新機能「epp_boost」の仕組みと対応時期

Linuxカーネル開発者のDavid Vernet氏が、AMD P-Stateドライバーへ「epp_boost」という新機能を追加するRFCパッチをLinuxカーネルメーリングリスト(LKML)へ提出しました。Steam Deck LCDと『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』を使った検証では、1% Lowが31.8%、p99フレームタイムが4.1%改善したと報告されています。ただし平均FPSは変化しておらず、2026年8月2日時点ではSteamOSへの反映時期も未定です。

1% Low +31.8%(p=0.014)現在はRFC段階・2026年7月28日提出平均FPSは変化なし

携帯ゲーミングPCで上限フレームレートを設定して遊んでいても、場面転換や戦闘中に一瞬カクつくと感じたことがある人は少なくないはずです。平均FPSの数値では見えてこない、こうした瞬間的な処理落ちの原因の一つに、AMD製CPU・APUのクロック制御があります。

2026年7月28日、Linuxカーネル開発者のDavid Vernet氏がAMD P-Stateドライバーへ「epp_boost」という機能を追加するRFCパッチをLinuxカーネルメーリングリストへ提出しました。Steam Deck LCDでの検証では1% Lowが31.8%、p99フレームタイムが4.1%改善したと報告されている一方、平均FPSに変化はありません。

本記事では、epp_boostがCPUクロックをどう制御するのかという仕組みの部分から、Welchのt検定を使った統計的な検証内容、Steam Deck OLEDやROG Ally・Legion Go・デスクトップRyzenへの適用条件、Linuxカーネルへの採用時期とSteamOSへの反映見通しまで、一次情報を基に整理します。

目次

要点AMD P-Stateに新機能「epp_boost」を追加する提案が浮上

今回のRFCパッチで分かること

Linuxカーネル開発者のDavid Vernet氏が、AMD製CPU・APU向けのAMD P-Stateドライバーへ「epp_boost」という機能を追加するRFCパッチを2026年7月28日にLKMLへ提出しました。Steam Deck LCDと『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』を使った検証で、1% Lowが31.8%、p99フレームタイムが4.1%改善したと報告されています。ただし平均FPSは変化しておらず、まだ正式採用前の提案段階です。

AMD P-Stateは、AMD製CPUやAPUの動作クロックと消費電力をLinux上で制御するドライバーです。従来のACPI P-Stateが限られた数の性能状態を切り替える方式だったのに対し、AMD P-StateはCPPCと呼ばれる仕組みを使い、より細かく性能と電力効率のバランスを調整します。今回提案されたepp_boostは、AMD P-Stateそのものを置き換える機能ではなく、既存のアクティブモードにゲーム向けの補助的な制御を追加するものです。パッチシリーズの名称は「Per-core EPP boost for recently-busy CPUs」で、全4本のパッチで構成されています。

出典:Linux Kernel Mailing List「cpufreq/amd-pstate: Per-core EPP boost for recently-busy CPUs」

解説1% Lowが31.8%改善するとはどういうことか

1% Lowは、ゲーム中に記録した全フレームのうち、処理が遅かった側の約1%から算出するフレームレート指標です。平均FPSが高くても、場面の切り替わりや戦闘中に短いフレーム落ちが繰り返されると、プレイヤーの体感としてはカクついて見えます。1% Lowは、こうした一時的な処理落ちやフレームレートの安定性を判断するための数値です。

今回のベンチマークでは、epp_boostを有効にすると1% Lowが31.8%向上しました(Welchのt検定でp値0.014)。同時にp99フレームタイム(全フレームのうち遅い側1%のフレーム処理時間)も4.1%改善しています(p値0.015)。一方、平均FPSと、0.1% Lowに近い指標であるp999フレームタイムには、統計的に有意な変化が確認されていません。つまりゲーム全体の描画速度が31.8%速くなったわけではなく、特定のタイミングで発生していた比較的大きなフレームレートの落ち込みを減らした結果です。平均60fpsのゲームが約79fpsになるという意味ではなく、瞬間的に落ち込んでいたフレームレートが底上げされたと理解する必要があります。パッチの説明では改善率のみが示されており、変更前後の具体的な1% Lowの数値そのものは公開されていません。

指標epp_boost有効時の変化統計的評価
1% Low fps+31.8%有意差あり(p=0.014)
p99フレームタイム4.1%改善有意差あり(p=0.015)
平均fps変化なし有意差なし
p999フレームタイム変化なし有意差なし

原因ゲーム中にCPUクロックが下がる理由

AMD P-Stateをアクティブモードで使う場合、CPUはOSから渡された最低性能・最高性能・EPPといった情報を参考にしながら、実際の動作クロックを自律的に決定します。EPPはEnergy Performance Preferenceの略で、性能と消費電力のどちらを優先するかをCPUへ伝える値です。0に近いほど性能重視、255に近いほど省電力重視になります。OSが動作クロックを直接指定するのではなく、こうしたヒントをCPU側へ渡す設計は一般的な処理には効率的ですが、ゲーム特有の負荷パターンでは弱点になる場合があります。

ゲームのメインスレッドや描画スレッドは、1フレーム分の処理を休みなく実行しているわけではありません。GPUの処理完了を待つGPUフェンスや、ほかのスレッドを待つfutexなどにより、フレームごとに短時間だけ休止することがあります。CPU側から見るとスレッドが一瞬休止したことで負荷が下がったように見え、クロックを引き下げた直後に次のフレーム処理が始まり、必要なクロックへ戻るのが遅れてしまいます。このクロック低下が毎フレーム繰り返されると、CPU使用率自体は高いのに、フレーム処理の開始部分だけ性能が不足する状態になります。

パッチ開発者がSteam Deck LCDで確認した例では、『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』のメインスレッドを処理するCPUコアの使用率が98%に達していたにもかかわらず、中央値の動作クロックは2.43GHzにとどまっていました。Steam Deck LCDのCPUは最大3.5GHzまで動作します。98%という高い使用率に対して2.43GHzというクロックは低く、短い休止によってCPUの性能要求がその都度目減りしていたことになります。Steam Deck LCDはZen 2世代の4コア8スレッドCPUとRDNA 2 GPUを組み合わせたVan Gogh APUを搭載し、APUの電力枠は4〜15Wです。

仕組みepp_boostは高負荷なコアだけを一時的にブーストする

epp_boostを有効にすると、AMD P-Stateドライバーは各CPUコアの稼働状況を定期的に確認します。監視に使われるのはC0 residencyと呼ばれる値です。C0はCPUコアが命令を実行できる稼働状態を指し、MPERFとTSCという2つのカウンタの差分から、一定期間内にコアがどの程度動作していたかを判断します。

初期仕様のパラメータは、最大10ミリ秒に1回の頻度でコアの稼働率を確認し、稼働率が50%以上だった場合、そのコアのEPPを性能重視となる0へ一時的に切り替えるというものです。その後もコアが高負荷と判定され続ける限りブースト状態を維持し、最後に高負荷と判定されてから300ミリ秒が経過すると、元のEPP設定へ戻します。ゲームのメインスレッドがGPUの処理完了を短時間だけ待っても、300ミリ秒以内に次の処理が始まればパフォーマンス重視の状態が維持される計算です。ゲームを終了するなどしてコアが本当にアイドル状態になれば、300ミリ秒後には通常の設定へ戻ります。

重要なのは、epp_boostがすべてのCPUコアを常時パフォーマンスモードにするわけではない点です。直前まで高い負荷が続いていたコアだけを一時的にブーストし、最低性能(min_perf)・最高性能(max_perf)・希望性能(desired_perf)といった他のCPPCパラメータには一切手を加えません。変更するのはEPPだけという設計です。

比較常時パフォーマンス設定・最低クロック固定という別解と何が違うのか

ゲーム中のクロック低下を防ぐだけなら、ほかにも方法は考えられます。パッチ開発者はepp_boostを検証する過程で、「システム全体のEPPを常にパフォーマンス重視へ固定する方法」と「高負荷コアの最低性能(min_perf)を定格まで引き上げる方法」の2つも試しています。

アプローチコアのクロックフレームタイムへの影響懸念点
デフォルト(変更なし)中央値2.43GHz1% Low・p99が悪化しやすい
EPP=performance固定(全コア常時)中央値3.5GHz1% Low約16%改善・p999約40%改善使っていないコアも含め常時電力を消費
高負荷コアのmin_perf引き上げ中央値3.5GHzp999フレームタイムが13〜21%悪化SMUのCPU・GPU間ブースト管理と衝突
epp_boost(提案機能)高負荷時のみ3.5GHzへ1% Low31.8%改善・p99は4.1%改善コア単位でEPPのみ変更・電力を抑えやすい設計

システム全体でEPPをパフォーマンス重視に固定すると、CPUコアの中央値クロックは2.43GHzから3.5GHzへ上がり、1% Lowは約16%、p999フレームタイムは約40%改善しています。epp_boostの31.8%という改善率はこれを上回りますが、システム全体の固定はゲームに使っていないコアや、ゲーム外の処理でもパフォーマンス重視の状態が続く点が異なります。Steam DeckはCPUとGPUが4〜15Wの電力枠を共有しているため、全コアを常時高性能側へ寄せることが必ずしもバッテリー駆動時間やゲーム性能に有利とは限りません。

もう一方の、高負荷コアのmin_perfを定格性能まで引き上げる方法も、コアのクロック自体は3.5GHzまで上がります。しかしこの場合、最も遅い側のフレームを示すp999フレームタイムが、標準状態より13〜21%悪化する結果になりました。CPUの最低性能を固定したことで、Steam DeckのSMU(System Management Unit)が行うCPUとGPU間のブースト管理に悪影響を与えたと説明されています。epp_boostはmin_perf・max_perf・desired_perfを変更せず、EPPのみを一時的に切り替えるため、CPUへ高いクロックを促しながらも、実際にアイドル状態になった場面ではクロックや消費電力を素直に下げられます。

検証ベンチマークの条件と限界

今回の31.8%という数値は、Steam Deck LCD1台と『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』1本を使った検証結果です。テストにはVan Gogh APUを搭載するSteam Deck LCDが使われ、AMD P-Stateはアクティブモード、EPPはbalance_performanceに設定されています。『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』の内蔵グラフィックスベンチマークは、単一スレッドのCPU負荷が高く同じ条件を再現しやすいことから選ばれています。

標準設定とepp_boost有効時を交互に切り替えながら、それぞれ6回ずつ計測しています。フレームごとの処理時間とCPUコアのクロックを記録し、平均FPS、1% Low、p99、p999のフレームタイムを算出したうえで、測定結果の差についてWelchのt検定を実施しています。複数回の測定と統計的な検定を経ている点は評価できますが、テストされたゲームは1本、使われたハードウェアも1機種にとどまります。

『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』のベンチマークは単一スレッドのCPU性能に依存しやすく、今回の問題が表れやすい条件です。GPU負荷が支配的なゲームや、複数のCPUコアを均等に使うゲームでは、改善幅が今回より小さくなる可能性があります。またストレージの読み込み遅延やシェーダーコンパイル、VRAM不足、ゲーム側の不具合が原因のカクつきには、epp_boostは効果を発揮しません。あくまでCPUクロックの立ち上がりの遅れが原因になっているケースに絞った改善策です。

電力平均FPSが変わらない理由とバッテリーへの負担

平均FPSが変わっていないと聞くと、epp_boostに意味がないと感じるかもしれません。しかし携帯ゲーミングPCでは、平均FPSを引き上げることより、設定した上限フレームレートを安定して維持できるかどうかのほうが体感に直結します。Steam Deckでは消費電力とバッテリー駆動時間を抑えるため、30fps・40fps・45fpsといった上限を設定して遊ぶ場面が多くあります。平均値が上限に届いていても、短いフレーム落ちが繰り返されるとカメラ移動や操作がなめらかに感じられません。epp_boostが狙っているのは、平均FPSでは見えにくいこの種の一時的なクロック低下です。

一方で、消費電力とバッテリー駆動時間への影響は、今回公開されたパッチの説明には含まれていません。APUの消費電力、駆動時間、温度、ファン回転数といった比較データは示されておらず、1% Lowが改善したとしても、高負荷コアが3.5GHzで動作する時間が増えれば、標準設定より消費電力が増える可能性は残ります。ブーストしたコアの処理が早く終わり、その分アイドル状態へ戻る時間が増えるなら、消費エネルギー全体では大きく変わらない可能性もありますが、現段階では実測データが不足しています。Steam Deckへの正式導入を判断するには、ゲーム性能だけでなく、バッテリー駆動時間やAPU温度への影響を複数タイトルで検証する必要があります。

対応Steam Deck OLEDやROG Ally、Legion Goでも効果はあるか

今回のベンチマークに使われたのはSteam Deck LCDのみで、ほかの携帯ゲーミングPCでの実測結果は公開されていません。ただし、epp_boostが対象にしている「ゲームのメインスレッドが短い休止を繰り返し、その都度CPUクロックの立ち上がりが遅れる」という現象自体は、Steam Deck LCD固有の問題ではないと考えられます。

Steam Deck OLEDCPU構成はLCDモデルと同じZen 2世代4コア8スレッド、動作クロックも2.4〜3.5GHz、APUの電力枠も4〜15Wと共通しています。一方でAPUの製造プロセスはLCDモデルの7nmから6nmへ、メモリ速度も5500MT/sから6400MT/sへ変わっています。短い休止を繰り返すという負荷パターン自体は共通して起きうるものの、クロック制御や電力効率が完全に同一とは限らないため、31.8%という改善率をそのまま当てはめることはできません。
ROG Ally・Legion Go等のRyzen搭載ハンドヘルドepp_boostはSteam Deck専用の機能ではなく、LinuxのAMD P-Stateドライバーへ追加される機能として提案されています。条件を満たすAMD Ryzen搭載ハンドヘルドでも、同様の負荷パターンが起きていれば効果を得られる可能性があります。ただし初期パッチが対応するのは、AMD P-Stateのアクティブモードと、MSR方式のCPPC(X86_FEATURE_CPPC)に対応したシステムに限られます。ACPIの共有メモリ方式を使うシステムでは、CPUスケジューラーの処理中にコア単位のMSRへ直接書き込めないため、この仕組みを利用できません。Windowsで動作しているROG AllyやLegion GoへLinuxカーネルのパッチが自動的に適用されることもなく、対象になるのはSteamOSや、Bazzite・CachyOSなど対応するLinuxディストリビューションを使用している環境です。
デスクトップRyzen対応条件を満たしたLinux PCであれば、デスクトップ向けRyzenでもepp_boostが動作する可能性はあります。ゲームのメインスレッドが短い待機と処理を繰り返す負荷パターンは、携帯ゲーム機だけに起きるものではありません。ただしデスクトップPCはSteam Deckより電力と冷却の余裕が大きく、あらかじめEPPをパフォーマンス重視へ固定している環境も珍しくありません。EPPをすでにperformanceへ固定している場合、epp_boostが一時的にEPPを0へ切り替えても設定値自体は変わらないため、追加の効果はほとんど期待できません。

現状今のSteam Deckですぐには使えない

2026年8月2日時点の一般向けSteamOSでは、epp_boostを使うことはできません。今回公開されたのは、正式採用前のRFCパッチです。RFCはRequest for Commentsの略で、実装方法について開発者やメンテナーから意見を募る初期段階を意味します。

現在配信されているSteamOSに起動オプションとしてamd_pstate.epp_boost=1を追加しても、カーネル自体にepp_boostのコードが組み込まれていなければ機能しません。パッチが適用されたカーネルでは、/sys/module/amd_pstate/parameters/epp_boostからepp_boostの状態を確認・変更できる設計です。Steam Deckへ非公式カーネルを導入すれば試すこと自体は可能ですが、SteamOSのアップデートで設定が元に戻ったり、起動できなくなったりする可能性があります。31.8%という数値だけを理由に、一般ユーザーがカーネルを自己流で入れ替えるのはおすすめできません。

起動オプションを追加するだけでは有効化できない

amd_pstate.epp_boost=1という起動オプションは、パッチが取り込まれたカーネルを使っていることが前提です。標準のSteamOSカーネルに追加しても、そのオプション自体が存在しないため何も変わりません。

展望Linuxカーネルへの採用時期とSteamOSへの反映見通し

2026年8月2日時点で、Linuxの最新安定版は7.1.5(2026年7月24日リリース)、開発中のメインラインは7.2-rc5(2026年7月26日公開)です。epp_boostのRFCパッチが提出されたのは2026年7月28日で、Linux 7.2はすでにリリース候補版の段階に入っているため、新機能として7.2へ追加される可能性はありません。最短で考えられるのはLinux 7.3ですが、現時点では正式なPATCHではなくRFCという位置づけです。AMDのLinux担当者やcpufreqメンテナーによるレビューを受け、指摘内容を反映した第2版以降が提出される可能性があります。稼働率の判定値、10ミリ秒の監視頻度、300ミリ秒の維持時間についても初期パッチでは固定値となっており、開発者自身が調整可能な設定として公開すべきかどうか意見を求めています。レビューが順調に進みcpufreqメンテナーの管理ツリーへ早期に取り込まれればLinux 7.3へ入る可能性は残りますが、RFC提出からマージ準備までの期間の短さを考えると、Linux 7.4以降へ持ち越される可能性も十分にあります。

Linux本流へepp_boostが採用されても、Steam Deckですぐ使えるようになるとは限りません。ValveはLinuxカーネル、AMDのグラフィックスドライバー、Steamクライアント、ゲームモードなどを組み合わせ、Steam Deck向けにテストしたうえでSteamOSを配信しています。現行の安定版SteamOS 3.8は、2026年3月のプレビュー版でLinuxカーネル6.16への更新が案内され、同年6月に安定版へ昇格した経緯があります。Linux本流の最新バージョンをそのまま即日採用するのではなく、SteamOS向けに選定したカーネルへ必要な機能を統合するスタイルであることが分かります。epp_boostが正式採用された場合、Valveには新しいカーネル全体を導入する方法と、epp_boost関連のパッチだけを現行カーネルへバックポートする方法の両方があります。Steam Deckを直接使った改善結果が報告されているため、Valveが早期に評価する可能性はありますが、2026年8月2日時点では導入予定や配信時期について公式な発表はありません。

項目状態備考
Linux安定版7.1.52026年7月24日リリース
Linux開発版7.2-rc52026年7月26日公開・新機能の受け入れは終了済み
epp_boost最短候補Linux 7.3以降正式なPATCH化とレビュー完了が前提
SteamOS安定版のカーネルLinux 6.162026年6月に安定版へ昇格・本流より約1年遅れ

判断31.8%という数字をどう受け止めるべきか

epp_boostは、Steam Deckの性能を単純に31.8%引き上げる機能ではありません。改善したのは『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』ベンチマークの1% Lowであり、平均FPSは変わっていません。テストされた端末もSteam Deck LCDの1台、ゲームも1タイトルにとどまります。一方で、CPU使用率が98%でもクロックが2.43GHzまで落ちていたコアを、必要な時間だけ3.5GHzへ引き上げるという仕組みには合理性があります。ゲームのメインスレッドが短い待機を頻繁に挟むこと自体は珍しい現象ではないため、複数のゲームでも同じクロック低下が確認されれば、平均FPSを維持したままフレームタイムを安定させる実用的な改善策になる可能性があります。

評価できるポイント
  • 複数回の測定とWelchのt検定によるp値の提示で、改善が偶然でないことを示している
  • コア単位でEPPだけを変更し、min_perf・max_perfには手を加えない設計で電力を抑えやすい
  • CPU・GPUが電力枠を共有する携帯ゲーミングPCの構造的な弱点に的を絞った改善
!
注意したい点
  • 検証はSteam Deck LCD1台・1ゲームのみで他タイトル・他機種は未検証
  • 消費電力・バッテリー駆動時間のデータが未公開
  • 2026年8月2日時点ではRFC段階でSteamOSへの導入時期は未定

おすすめRyzen搭載ハンドヘルドでBazziteやCachyOSを試すなら

epp_boostのようなカーネルレベルの新機能を早く試したい場合、SteamOS以外にもBazziteやCachyOSといったLinuxディストリビューションをAMD Ryzen搭載ハンドヘルドへ導入する選択肢があります。いずれもArch Linuxベースで比較的頻繁にカーネルが更新されるため、正式採用後にepp_boostへ早めにアクセスできる可能性があります。MSR方式のCPPCに対応したAMD Ryzen AIチップ搭載機を2台紹介します。

ASUS ROG Xbox Ally X RC73XA
Ryzen AI Z2 Extreme/MSR CPPC対応ASUS ROG Xbox Ally X(RC73XA・7型120Hz・Ryzen AI Z2 Extreme・24GB/1TB)epp_boostが要求するMSR方式のCPPCに対応するRyzen AIチップ搭載機です。標準はWindows 11ですが、BazziteやCachyOSへ入れ替えれば、epp_boost正式採用後にいち早く試せる検証機としても使えます。24GBメモリ・1TB SSDと携帯機としては余裕のある構成です(※価格は変動するため、最新はリンク先で確認してください)。価格目安:約169,800円~Amazonで価格を見る
MSI Claw A8 BZ2EM
Ryzen Z2 Extreme/8型120HzMSI Claw A8(BZ2EM・8型120Hz・Ryzen Z2 Extreme・24GB/1TB)同じくMSR方式のCPPCに対応するRyzen Z2 Extreme搭載の8型ハンドヘルドです。120Hz表示に対応した大画面で、標準OSをLinuxディストリビューションへ入れ替える前提で選ぶ人にも扱いやすい選択肢です(※価格は変動するため、最新はリンク先で確認してください)。価格目安:約184,000円~Amazonで価格を見る

※価格は変動します。最新の価格はAmazonでご確認ください。

FAQepp_boostに関するよくある質問

epp_boostを使うと平均FPSも31.8%上がりますか?
上がりません。Steam Deck LCDでの検証で改善したのは1% Lowとp99フレームタイムのみで、平均FPSとp999フレームタイムには統計的に有意な変化が確認されていません。
Steam Deckのすべてのゲームで効果がありますか?
限りません。CPUのメインスレッドが短い休止を繰り返すことでクロックの立ち上がりが遅れているゲームで効果が期待できる仕組みです。GPU負荷が支配的なゲームや、ストレージ読み込み・シェーダーコンパイルが原因のカクつきには効果がありません。
Steam Deck OLEDでも同じように31.8%改善しますか?
未検証のため分かりません。CPU構成やAPUの電力枠はLCDモデルと共通していますが、APUの製造プロセスやメモリ速度が異なるため、同じ改善率になるとは限りません。
今すぐ起動オプションを追加すれば使えますか?
使えません。amd_pstate.epp_boost=1という起動オプションは、パッチが組み込まれたカーネルが前提です。標準のSteamOSカーネルにはそのオプション自体が存在しません。
Windows上で動いているROG AllyやLegion Goにも効果がありますか?
今回のepp_boostはLinuxのAMD P-Stateドライバーの機能です。Windows単体では効果を得られませんが、対応するAMD Ryzenチップを搭載した機種であれば、BazziteやCachyOSなどのLinuxディストリビューションを導入したうえで正式採用を待つことで、恩恵を受けられる可能性があります。

総括平均を上げずにカクつきを減らす、地に足のついた改善提案

総括

epp_boostは、ゲーム中に高負荷となっているCPUコアだけを一時的にパフォーマンス重視へ切り替える仕組みです。Steam Deck LCDと『シドマイヤーズ シヴィライゼーション VI』を使った検証で、1% Lowが31.8%、p99フレームタイムが4.1%改善しましたが、平均FPSは変わっていません。

2026年8月2日時点ではLKMLへ提出されたRFCパッチの段階で、Linux 7.2への採用はなく最短でもLinux 7.3以降、SteamOSへの反映時期はさらに未定です。すべてのゲームを高速化する機能ではなく、テストされたのもSteam Deck LCD1台・1タイトルにとどまります。

それでも、CPU使用率98%のコアが2.43GHzまで落ち込んでいた原因を、統計的な検証を添えて示した点には意味があります。平均FPSを変えずにカクつきだけを減らせる可能性がある改善案として、正式なパッチ化とSteamOSへの導入時期を追っていく価値があるテーマです。

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