日本ホラーゲーム大賞2026「ホラーアート・映像表現賞」候補7作品|粘土・手描きアニメ・ピクセル絵で恐怖を描く7つの表現手法
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粘土・手描きアニメ・ピクセル絵など、映像表現で恐怖を生み出す7つの手法
「日本ホラーゲーム大賞2026 produced by 百室」のユーザー投票が、2026年8月4日正午まで実施されています。同アワードでは大賞に加え、サバイバルホラー賞、サイコロジカルホラー賞、ホラーナラティブ・演出賞、ベストホラークリーチャー賞など全9部門の賞が用意され、そのなかの「ホラーアート・映像表現賞」には、独自のビジュアルや空間設計によって恐怖を表現した7作品がノミネートされました。
選ばれた作品を見ていくと、最新技術で写実的な恐怖を描く作品だけではありません。粘土をスキャンして作られた世界、古典アニメーション風の手描き映像、低解像度のピクセルアート、子ども向けテレビ番組を模した映像など、表現方法は実に多彩です。
本記事では、ノミネートされた7作品について、それぞれがどのように「目に見える恐怖」を作り出しているのかを紹介します。
目次
アワード概要日本ホラーゲーム大賞2026とは
「日本ホラーゲーム大賞2026 produced by 百室」は、ホラーゲームの魅力をファンと共有し、過去の名作と新作をつなぐ場を作ることを目的としたアワードです。
対象となるのは、2025年3月1日から2026年3月31日までにリリースされた、ホラー表現を含むゲーム作品。ユーザー、クリエイター、メディアによるネット投票と、主催者による審査を組み合わせて受賞作品を決定します。
投票期間は2026年7月14日正午から8月4日正午まで。受賞結果は、9月11日に東京ドームシティのプリズムホールで開催される「東京ホラー特区!!2026」のイベントステージで発表される予定です。
ノミネート作品ホラーアート・映像表現賞の候補7作品
今回ノミネートされたのは、以下の7作品です。
- Amanda the Adventurer 3
- The Midnight Walk
- 零~紅い蝶~ REMAKE
- Necrophosis
- Bye Sweet Carole
- FAITH: The Unholy Trinity
- REANIMAL
一口にホラーゲームといっても、7作品が採用している表現方法は大きく異なります。
写実的なグラフィックを追求する作品がある一方、あえて古く、不鮮明で、ぎこちない映像を使う作品もあります。今回のラインアップは、映像の精細さだけでなく、作品固有の美術様式が恐怖体験と結びついている点が特徴です。
Amanda the Adventurer 3子ども向け番組が現実を侵食するアナログホラー
『Amanda the Adventurer 3』は、子ども向け教育番組風のビデオテープを題材としたパズルアドベンチャーシリーズの完結編です。
プレイヤーは、叔母から託された謎のビデオテープをきっかけに、「冒険ガール・アマンダ」という番組と、制作元であるハーメルンをめぐる事件へ巻き込まれていきます。第3作では廃墟となったハーメルンの施設を探索し、アマンダと番組に隠された真相を追うことになります。
本作の恐怖を支えているのは、子ども向け番組らしい明るい映像と、その裏側で進行する不穏な出来事の落差です。
丸みを帯びたCGキャラクター、視聴者へ語りかけるアマンダ、簡単な質問に答える教育番組的な構成。本来なら安心感を与えるはずの要素が、映像の乱れや不自然な反応によって徐々に意味を変えていきます。
画面の中にいるはずの存在が、こちらを認識しているように振る舞う。そんな「映像との距離が崩れていく感覚」こそ、本シリーズ特有の恐怖といえます。


The Midnight Walk実物の粘土から作られた悪夢の世界
『The Midnight Walk』は、墓から目覚めた「The Burnt One」となり、小さなランタンのような生物Potboyとともに暗い世界を進む一人称視点のアドベンチャーゲームです。
最大の特徴は、粘土で作られた模型を3Dスキャンし、ゲーム内のキャラクターや背景へ落とし込んでいることにあります。
開発チームは数百点規模の実物オブジェクトを制作し、それらをデジタル化して独特の世界を構築しました。表面に残る指の跡や微妙な歪み、均一ではない輪郭が、人形アニメのような温かさと不気味さを同時に生み出しています。
ゲームではPotboyの光を守りながら怪物を避け、ときには目を閉じて音だけを頼りに進まなければなりません。
かわいらしい造形と、暗闇に潜む巨大な存在。手作り感のある世界だからこそ、そこに紛れ込んだ異形の姿が強烈な違和感を放ちます。VRにも対応しており、視覚を自ら遮断する仕掛けは、ゲームの映像表現を身体的な恐怖へと広げています。


零~紅い蝶~ REMAKE湿度まで感じさせる和の恐怖
『零~紅い蝶~ REMAKE』は、2003年に発売された和風ホラーゲーム『零~紅い蝶~』を全面的に再構築した作品です。
双子の姉妹・天倉澪と天倉繭が、地図から消えた廃村・皆神村へ迷い込み、霊を撮影できるカメラ「射影機」を使って村の秘密へ迫っていきます。
リメイク版ではグラフィックと音響だけでなく、操作や戦闘、探索システムも刷新されました。澪が繭の手を握る新システムも加わり、ふたりの関係性を操作によって感じられるようになっています。
本作が描くのは、派手な流血表現に頼らない日本的な恐怖です。
暗い木造家屋、濡れた地面、赤い蝶、村に残された祭具、障子の向こうに浮かぶ人影。皆神村には、何かが突然現れる怖さだけでなく、「かつてここで何が起きたのか」を想像させる静かな不穏さが満ちています。
さらに『零』シリーズでは、敵である霊を倒すために、射影機のファインダーへ収め続けなければなりません。恐怖の対象から目をそらすのではなく、正面から見つめることを求めるゲームシステムも、映像と恐怖を結びつける重要な要素になっています。


Necrophosis死後の宇宙を描く退廃的なビジュアル
『Necrophosis』は、死と腐敗に覆われた超現実的な世界を探索する一人称視点のホラーアドベンチャーです。
骨や皮膚を思わせる建築物、巨大な肋骨のような柱、肉体と遺跡が融合した構造物など、画面に映るものの多くが巨大な生物の死骸のように見えます。
作品のビジュアルには、画家ズジスワフ・ベクシンスキーやH.R.ギーガー、宇宙的恐怖の影響が見られます。開発元Dragonis Gamesの設立者であるAres Dragonis氏は、特定の作家の作品をそのまま模倣するのではなく、自身の内面的な世界として再構成することを目指したと説明しています。
明確な怪物が追いかけてくる場面だけが、本作の恐怖ではありません。
何のために作られたのかわからない巨大建造物や、すでに滅びた神々の痕跡を眺めながら進むことで、プレイヤーは自分よりはるかに大きな存在の死を意識させられます。
ゲームというよりも、終末後の美術館を歩いているような作品であり、環境そのものが恐怖の対象になっています。


Bye Sweet Carole古典アニメーションの美しさを恐怖へ変える
『Bye Sweet Carole』は、20世紀初頭の孤児院を舞台に、行方不明になった少女Carole Simmonsの痕跡を追うナラティブホラーアドベンチャーです。
公式サイトでは、古典的なアニメーション映画を思わせるスタイルで、全編が手描きによって制作された作品と紹介されています。
柔らかな線、美しい背景、表情豊かなキャラクターなど、第一印象は昔の長編アニメーション映画に近いものです。しかし、その映像の中へ巨大なウサギや不気味な人間、逃げ場のない孤児院といった恐怖が入り込みます。
幼いころに親しんだ物語やアニメーションを思わせる画面だからこそ、そこに存在する暴力や悪意が強調される仕組みです。
なお、本作の発売日については情報源によって記載が食い違っている場合がありますが、パブリッシャーのMaximum EntertainmentおよびSteamでは、2025年10月9日発売と案内されています。


FAITH: The Unholy Trinity限られたピクセルが想像力を刺激する
『FAITH: The Unholy Trinity』は、若き司祭ジョン・ウォードを主人公に、悪魔憑きやカルト集団をめぐる事件を描くホラーアドベンチャーです。
低解像度のピクセルアート、単調な合成音声、ロトスコープ風のアニメーションを組み合わせ、1980年代の家庭用コンピューターやビデオ映像を思わせる画面を作り上げています。
プレイヤーが持つ主な対抗手段は十字架です。暗い森や廃屋、教会を探索し、悪魔に取り憑かれた存在へ十字架を掲げながら物語を進めていきます。
公式サイトでは、全3チャプターと12種類のマルチエンディングが収録されていると紹介されています。
本作では、画面に描かれる情報が少ないこと自体が恐怖につながっています。
粗いピクセルで表現された赤い物体が、血なのか、服なのか、人間の一部なのかは判然としません。細部が見えないため、プレイヤーの想像力が空白を補完してしまいます。
高精細化とは逆の方向から、「見えないからこそ怖い」というホラーの基本を突き詰めた作品です。


REANIMAL協力プレイでも逃げられない閉塞感
『REANIMAL』は、『Little Nightmares』シリーズ初期作品を手掛けたTarsier Studiosによるホラーアドベンチャーです。
孤児の兄妹が、行方不明になった仲間を救い出すため、荒廃した島を探索します。徒歩だけでなくボートで各地を移動し、巨大な怪物から逃れながら環境パズルを解いていきます。
シングルプレイに加え、ローカルおよびオンラインでの協力プレイに対応していますが、単純にふたりで遊べるホラーゲームではありません。
本作では、プレイヤー同士が同じ画面を共有する「ディレクテッドカメラ」を採用しています。カメラの構図や距離が開発側によって制御されるため、協力プレイ中でも視界を自由に広げられず、閉所感や緊張感が保たれるよう設計されています。
牧歌的な田園風景、錆びた工業施設、戦争によって破壊された街、異常に肥大化した動物のような怪物。見慣れた風景の要素が歪んだ比率で組み合わされ、不気味な世界が形成されています。
仲間が隣にいても安心できない状況を、画面構成そのものによって作り出している点が、本作の大きな特徴です。


総括「美しい映像」だけを評価する部門ではない
ホラーアート・映像表現賞という名称からは、グラフィックの美しさや技術力を競う賞を想像するかもしれません。
しかし、今回選ばれた7作品に共通しているのは、単に映像が美しいことではなく、採用した表現方法がゲームの恐怖と直接結びついていることです。
『零~紅い蝶~ REMAKE』は、現代的な映像技術によって皆神村の湿度や暗闇を再構築しました。一方、『FAITH: The Unholy Trinity』は、限られたピクセル表現によって、画面に描かれないものを想像させます。
『The Midnight Walk』の粘土には人の手で作られた不均一さがあり、『Bye Sweet Carole』の手描きアニメには幼少期の記憶を揺さぶる美しさがあります。『Necrophosis』では世界そのものが巨大な遺骸となり、『Amanda the Adventurer 3』ではテレビ画面という境界が破壊されます。『REANIMAL』はカメラの構図によって、協力プレイ中にも閉塞感を生み出しています。
映像の精細さではなく、「どのように見せることで怖がらせるのか」。その違いを比較しながら候補作を見ると、今回のノミネートが、現代ホラーゲームにおける表現手法の見本市ともいえるラインアップになっていることがわかります。
日本ホラーゲーム大賞2026「ホラーアート・映像表現賞」には、粘土アニメ、手描き2Dアニメ、ピクセルアート、写実的な和風ホラーまで、表現手法が大きく異なる7作品がノミネートされています。共通するのは、映像の美しさそのものではなく、選んだ表現方法が恐怖と直結している点です。
投票は2026年8月4日正午まで受け付けられており、結果は9月11日に東京ドームシティで発表される予定です。



