DLSS Multi Frame GenerationがRTX 30でも動作|DLSSG SM86の中身と最大4X実測、導入を勧めない理由
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RTX 40の次はAmpere、ただし公開されているのは実行ファイルだけ
出典:GitHub「sdli1995/dlssg_for_sm86」のREADMEおよびTHIRD_PARTY_NOTICES.txt(2026年9月9日確認)、NVIDIA公式「DLSS」ページ、NVIDIA「CUDA GPUs – Compute Capability」、VideoCardz「NVIDIA keeps DLSS Multi Frame Gen locked to RTX 50, modders just got it working on RTX 30」、Tom’s Hardware「All-in-one ‘DLSS Unlocked’ mod brings DLSS 5 and multi-frame gen to RTX 20, 30, and 40 series」、GitHub「Coldwood1026/dlssg_for_sm75」のREADMEおよびリポジトリ情報(2026年9月10日確認・9/10追記分)
GeForce RTX 30シリーズを使っていると、DLSSのフレーム生成まわりで「自分のグラフィックボードは対象外です」という表示に何度も行き当たります。フレームを複数枚まとめて生成するDLSS Multi Frame Generation(マルチフレーム生成、以下MFG)は、NVIDIAが公式ページで「GeForce RTX 50シリーズと第5世代Tensorコアによって実現する」と説明している機能で、RTX 30はもちろんRTX 40も対象に入っていません。
そのMFGを、2026年9月7日に公開された非公式のMOD「DLSSG SM86」がRTX 30シリーズで動かしました。開発者が公表しているユーザー実測では、『黒神話:悟空』でフレーム生成なし50fpsが4Xで150fps、『サイバーパンク2077』のパストレーシングで35fpsが100fpsまで伸びています。一方で同じ文書には、レイテンシもフレームタイムも長時間の安定性も計測していないと明記されています。
この記事では、どういう仕組みでRTX 30に載ったのか、対応範囲と上限がどこまでなのか、そして配布物の中身を確認したうえで導入を勧めない理由を整理します。RTX 40向けに先行した別MODとは経路がまったく違う点も、実際に両方の公開資料を突き合わせて説明します。
経緯RTX 40の3日後にAmpereへ、公開はGitHubのみ
MFGを公式対応外のグラフィックボードで動かす試みは、2026年9月上旬から立て続けに出ています。まずRTX 40シリーズ(Ada Lovelace)向けのMODが登場し、NVIDIAがドライバー内部のプロバイダーを更新して封じた直後にモッダー側が数時間で回避版を出す、という応酬がありました。その経緯はRTX 40での非公式解除をまとめた記事で整理しています。
今回のDLSSG SM86は、その3日後にあたる2026年9月7日にGitHubへ公開されました。リポジトリの説明文はそのまま「Here is a dlssg for RTX30 Series GPU」で、READMEも「現在のリリース(2026年9月7日)が最初のマイルストーン」と書いています。配布はGitHubのリポジトリ上のファイルのみで、リリースページは作られていません。
プロジェクト名にある「SM86」は、NVIDIAのGPUアーキテクチャを示すCUDAのコンピュートケーパビリティの番号です。RTX 30シリーズのGA102やGA104がこの8.6にあたり、RTX 20シリーズのTuringは7.5、RTX 40シリーズのAda Lovelaceは8.9になります。名前の時点で、狙いがAmpere世代に限定されていることが分かります。
仕組みNVIDIA純正ランタイムを同梱し、演算部分だけ差し替える
導入手順はREADMEに1行で書かれています。version.dllとdlssg_sm86.iniをゲームの実行ファイルと同じ場所に置き、そのままゲームを起動するだけです。実行時にPythonやPowerShellのランチャーは要りません。ゲームがVERSION.dllを読み込まない場合に備えて、winmm.dllを使う代替の入口も用意されているとしています。
技術的に目を引くのは、このMODがNVIDIA純正のDLSSGランタイムをそのまま抱えている点です。READMEは「プロキシが対応する純正のDLSSG 310.1ランタイムを、そのモデルとパイプラインごと、そしてSM86バックエンドを埋め込んでいる」と説明しています。既定のMode=Bundledでは、ゲーム側が持っているDLSSGのバージョンに関係なく、この埋め込み実装へ処理が回されます。初回起動時に%LOCALAPPDATA%\DlssgSm86\bundlesへ展開してハッシュを検証し、以降はキャッシュを再利用する作りです。
RTX 40向けに先行したMODは、実行中のメモリ上でNVIDIA純正のコードを書き換えて制限を外す方式でした。対してDLSSG SM86は、純正ランタイムを同梱したうえでAmpereで動く演算カーネルを供給する方式です。RTX 40向けMODのGitHub側の説明では、DLSS 4のコードにAmpere向けの処理が含まれていないことがRTX 30を対象外にした理由として挙げられていました。今回のMODはその足りない部分を自前で用意した、という位置づけになります。
演算カーネルの形式はKernelImageで選べます。既定のAutoは、物理的にSM86のGPUならあらかじめコンパイルされたcubinを使い、それ以外ではPTXをドライバーにJITコンパイルさせます。READMEはRTX 3080 Tiが自動でSM86として認識されると明記しています。
実測開発者が公開しているのは手動計測の2タイトルのみ
READMEには、テスターが手で読み取ったというfpsの表が載っています。転載ではなく数値そのものを引くと、次のとおりです。
| タイトル | 生成なし | 2X | 4X |
|---|---|---|---|
| 黒神話:悟空 | 50 | 80 | 150 |
| サイバーパンク2077 パストレ | 35 | 60 | 100 |
※単位はfpsです。READMEに「ユーザーが手動で計測したおおよその観測値」と明記されている数値で、解像度と画質設定は示されていません。
テストに使われた環境も具体的に書かれています。Windows x64のDirect3D 12環境で、GPUはRTX 3080 Ti、ドライバーは591.86です。この構成でAuto・PTX・Cubinの3形式が同じ出力になることを確認し、上の2タイトルでは実際に2Xと4Xを動かしたとしています。『黒神話:悟空』についてはフレーム生成をいったん切ってから再度有効にする操作も確認済みとのことです。
ただし、この表の数字だけで判断するのは危険です。READMEは同じ節で「標準化されたフレームタイム、レイテンシ、長時間の安定性の計測は実施していない」とはっきり書いています。フレーム生成は表示上のfpsが伸びても操作の応答が同じだけ良くなるわけではないため、レイテンシの数字が無いということは、快適さの評価材料がまだ揃っていないということです。この関係についてはフレーム生成のfps表示と操作遅延の実態で詳しく扱っています。
対象範囲上限は4X、SM86の本体はRTX 20をはじく
生成するフレームの枚数はMaxGeneratedFramesで決まります。既定値は3で、1なら2Xまで、2なら3Xまで、3なら4Xまでをゲーム側へ申告する仕組みです。READMEは「バックエンドの上限は追加フレーム3枚」と明記しており、INIに4から16の値を書いても3に丸められます。つまりこのMODで到達できるのは4Xまでで、RTX 50シリーズ向けに用意されている6Xの倍率は出せません。
実際にどの倍率で動くかを決めるのはゲーム側です。READMEも「生成フレーム数を実際に選ぶのはゲーム」と断っており、この設定がゲームのメニューに新しい選択肢を追加したり4X表示を強制したりするわけではないとしています。
対象GPUの線引きも明確です。互換性の項目にあるForceSM86Routeの説明で、検証目的で他のGPUへSM86の経路を強制できるとしたうえで、「SM86より下のアーキテクチャは引き続き拒否される」と書かれています。コンピュートケーパビリティ7.5のRTX 20シリーズはこれに該当するため、このMOD本体をTuringで使うことはできません。ただしこの制限を回避するために作られたフォークが別に公開されています。詳細は9/10追記のセクションで扱います。
9/10追記・RTX 20対応フォーク「dlssg_for_sm75」がTuringで動作、ただし検証は1構成のみ
この記事を公開した2026年9月9日、DLSSG SM86をフォークしたプロジェクト「dlssg_for_sm75」がGitHubに登場しました。リポジトリ情報でも親プロジェクトがsdli1995/dlssg_for_sm86であることが確認でき、説明文には「Here is a dlssg for RTX20 Series GPU」と書かれています。上の「対象範囲」で説明したSM86本体の線引きは変わっていませんが、Turing向けに作り直した別ルートが用意されたことになります。
作りは名前のとおりです。310.1のランタイムに埋め込まれている72個のカーネルすべてを、ptxasで生成したsm_75向けのcubinとPTXに差し替え、アーキテクチャの判定と自己申告の値をTuringが通る形へ書き換えています。READMEによれば、proxyとなるversion.dllは親プロジェクトのものとわずか10バイトしか違いません。内訳はSMゲートの比較値が5か所、アーキテクチャ報告をAdaに見せる箇所が3か所、要件ブリッジをTuringの実値へ戻す箇所が2か所です。nvngx_dlssg.dllそのものは無改変のNVIDIA純正310.1が同梱されます。
RTX 20は単一フレーム生成に限られる、という説明も出回っています。しかしREADMEの設定はMaxGeneratedFrames=3で、動作確認のログ例にも「multi-frame capability accepted」「reported_max: 3」と書かれています。仕様上の申告は親プロジェクトと同じ4Xまでです。一方で利用者からは「2Xは問題ないが3Xではゴーストが出て、4Xはうまく動かない」という報告が出ています。実際に使える範囲が2Xどまりという話と、仕様上の上限は分けて読む必要があります。
検証状況は限定的です。READMEが実機で確認したと明記しているのはRTX 2060 Max-Qとウィッチャー3 next-gen(DX12)の1構成だけで、「他のDLSSフレーム生成対応ゲームも原理上は動くはずだが未検証」とはっきり書かれています。動作要件はWindows x64、DLSS 3対応ドライバー、RTX 20シリーズのGPUです。
透明性の面では、親プロジェクトより改善した点もあります。配布ファイル5点それぞれのSHA256が表で公開され、バイト単位の改変内容をまとめた文書も同梱されています。ただしソースコードが公開されていないこと、リポジトリにライセンスが設定されていないこと、NVIDIA純正ランタイムを同梱していることは変わりません。README自身も「nvngx_dlssg.dllはNVIDIAの著作物であり、このパッケージはローカルでのテスト専用」と書いています。次の「リスク」で挙げる引っかかりは、フォーク側にもそのまま当てはまります。
まとめると、RTX 20シリーズで動いた実例が出たのは事実です。ただし1構成・1タイトルの報告であり、導入を勧められる段階ではありません。この記事の結論はRTX 30の場合と同じで、様子を見るのが妥当です。
リスク配布物を確認して分かった4つの引っかかり
配布されているファイルとライセンス表記を実際に開いて確認したところ、導入を勧められない理由が具体的に出てきました。
passed=falseのままだと記載されています。画質が完全に一致していない状態を、開発者が把握したうえで最初のリリースとして出したということです。「他のハードウェアはこの結果の対象外」とも明記されています。加えて、フレーム生成に関わるDLLをゲームの実行ファイルの隣に置く行為は、対戦要素のあるタイトルではアンチチートに検知される可能性があります。オンライン対戦やアンチチートが動作するゲームで試すことは避けてください。
補足「DLSS 5も一緒に動く」という話との関係
この件は「DLSS 5込みでRTX 30に来た」という形で紹介されることがありますが、少なくともDLSSG SM86はDLSS 5とは無関係です。READMEにはDLSS 5にもニューラルレンダリングにも一切言及がなく、先ほど挙げたリポジトリの5ファイルにも該当するものは含まれていません。このMODが扱っているのはフレーム生成の部分だけです。
混同のもとになっているのは、同じ時期に公開された別の非公式ツールです。そちらはRTX 20・30・40シリーズへDLSS 5とマルチフレーム生成をまとめて導入するとうたっていますが、名称のとおりAMDのFSR 3.1を併用する構造だと説明されています。NVIDIAのMFGがそのまま旧世代で動くという話ではないため、同じものとして読まないよう注意が必要です。
なお、DLSS 5そのものを旧世代で動かす非公式MODについては、RTX 40で動作したときの検証記事で性能低下の実測まで扱っています。
判断RTX 30を使っている人は、いま何をすればいいか
- Ampere向けの演算カーネルが存在しないという、これまでRTX 30が対象外だった技術的な理由が実際に埋められました
- 純正ランタイムを使うため、フレーム生成の絵づくり自体はNVIDIAのモデルのままです
- 開発者が未計測の項目を隠さず書いており、どこまで確かめられたかを読者が判断できます
- ソースコードが無い実行ファイルを、ゲームのプロセスに読み込ませることになります
- レイテンシの数字が無いため、体感が良くなるかどうかを判断できません
- 検証済みなのはRTX 3080 Tiの1構成、2タイトルのみです
- NVIDIAの公式対応ではないため、ドライバー更新で動かなくなる可能性があります
結論として、RTX 30シリーズを使っている方がいま急いで導入する理由はありません。フレーム生成を試したいのであれば、まずNVIDIAが公式に提供しているドライバーレベルのSmooth Motionや、ゲーム側が対応している従来のフレーム生成から確かめるほうが安全です。手順はDLSS 4.5設定完全ガイドにまとめています。
買い替えの判断材料としても、この件で結論は動きません。MFGが非公式に動いたからといって、RTX 30シリーズのVRAM容量やラスタライズ性能が増えるわけではないからです。買い替えるかどうかの基準は、これまでどおり手持ちのモデルごとの限界で考えるのが妥当です。
選択肢公式にマルチフレーム生成を使いたい場合の現実解
ここまで見てきたとおり、RTX 30シリーズでMFGを動かす手段はいまのところ非公式のMODだけで、レイテンシも長時間の安定性も計測されていません。NVIDIAが検証したうえで提供しているMFGを使いたいのであれば、対応しているRTX 50シリーズへ移るのが現状で唯一の正規ルートになります。RTX 30からの乗り換えで効きやすい、VRAM 16GBの2モデルを挙げます。
FAQよくある質問
総括まとめ|技術的には前進、それでも様子見が妥当
NVIDIAがGeForce RTX 50シリーズ向けとしているDLSS Multi Frame Generationが、2026年9月7日に公開された非公式MOD「DLSSG SM86」によってGeForce RTX 30シリーズでも動くようになりました。純正のDLSSGランタイム310.1を同梱し、Ampereで動く演算カーネルを供給する方式です。RTX 40向けに先行したMODがメモリ上でコードを書き換える方式だったのに対し、こちらは足りていなかったAmpere向けの処理そのものを用意した点が違います。
開発者が公開しているユーザー実測では『黒神話:悟空』が50fpsから4Xで150fps、『サイバーパンク2077』のパストレーシングが35fpsから100fpsまで伸びています。ただし同じ文書に、フレームタイムもレイテンシも長時間の安定性も計測していないこと、画質の厳密な検証が不合格のままであることが書かれています。生成フレームの上限は3枚、つまり4Xまでです。RTX 20シリーズはこのMOD本体では対象外ですが、9月9日にTuring向けのフォークが公開され、1構成での動作報告が出ています。
配布物を確認すると、公開されているのは約10MBの実行ファイルとREADMEなど5ファイルだけでソースコードがなく、READMEが参照するライセンス文書と検証記録はいずれもリポジトリに存在しません。NVIDIA純正ランタイムをそのまま抱えている点も、配布側の表記で確認できます。技術的には確かな前進ですが、RTX 30シリーズを使っている方がいま導入する理由は見当たりません。公式に用意されているフレーム生成の設定を先に詰めるほうが、得られる結果に対して負うリスクが小さく済みます。





