シェーダーコンパイルのカクつきがついに消える——Advanced Shader DeliveryがRTXにも10月中に。DirectXのML・DXR 2.0の現在地
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Advanced Shader DeliveryがRTXにも10月中に届く
ASDは、ゲームのダウンロード時に、自分のGPU向けにコンパイル済みのシェーダーを一緒に届ける仕組みです。初回起動の「シェーダーをコンパイルしています」という待ち時間と、プレイ中にコンパイルが走って起きるカクつきの両方に効きます。
3月のGDC 2026ではNVIDIAの対応時期が「今年中」でしたが、10月1日の公式ブログで「全RTX GPUが10月中」に具体化しました。最初の対応タイトルはGears of War: E-Dayで、RTXユーザーはドライバーの更新を待って、対応タイトルを入れたときに効果が出ます。対応はタイトルごとの設定が必要で、すべてのゲームが一斉に速くなるわけではありません。
同じ発表の目玉だったDXR 2.0は、公式にはまだプレビューが始まっていません。ML統合の柱だったCooperative Vectorsも、Shader Model 6.10のLinear Algebra APIに統合される形へ変わりました。3月の説明と食い違う点もあります。
目次
要点ASDの提供状況|AMDとQualcommは提供中、RTXとArcは10月中
Microsoftの案内は「ダウンロードの前にXbox PCアプリをインストールする」が前提です。起動時の画面に「Precompiled shaders installed」と表示されれば、ASDが働いています。OSはWindows 11 24H2以上が必要です。
| GPU | 状況(10月1日) | 条件 |
|---|---|---|
| AMD Radeon RDNA 1〜4 | 提供中 | Adrenalin 26.6.1以上 |
| Qualcomm Snapdragon X2 | 提供中 | ドライバー2026.08.3以上 |
| Intel Arc B570・B580、Core Ultra シリーズ2・3 | 10月中に対応予定 | ドライバーの版数は公式記事に記載なし |
| NVIDIA 全RTX GPUとRTX Spark | 10月中に対応予定 | ドライバーの版数は公式記事に記載なし |
最初の対応タイトルは、10月1日に早期アクセスが始まったGears of War: E-Dayです。続いてCall of Duty: Modern Warfare 4への対応が予告されており、そのほかのタイトルは未定です。Intel Arcのドライバーとの関係は、Intel Arc 32.0.101.9034とE-Dayの記事でも触れています。
原因「開幕カクつき」はPCのGPUの組み合わせが多すぎて起きます
PCゲームで新しいエリアに入った瞬間や、新しい敵が初めて出た瞬間に、0.1秒ほど画面が止まることがあります。これがシェーダーコンパイルスタッターです。
Microsoftは、コンソールと違ってPCにはドライバーとGPUの組み合わせが無数にあり、コンパイル済みのシェーダーを配る手段がなかったことが問題の根にあると説明しています。ASDは、その配る手段を用意する取り組みです。
仕組みAdvanced Shader Deliveryは、コンパイル済みシェーダーをダウンロードに同梱します
ユーザーのPCでコンパイルする代わりに、ゲームの開発側がコンパイル済みのシェーダー一式を用意し、ダウンロードと一緒に届けます。
短縮の幅は、Microsoftが公式に挙げた数字で次のとおりです。
| タイトル・環境 | 公式の数字 | 発表 |
|---|---|---|
| ROG Xbox Ally 2025年10月に提供開始 | 読み込み時間を最大90%短縮 | 5月15日 |
| Forza Horizon 6 Radeon RX 7600 + Ryzen 7 5800 | 約1.5分が4秒に(95%短縮) | 5月15日 |
| Gears of War: E-Day 初回起動のシェーダーコンパイル | 数分が数秒に(約95%短縮) | 10月1日 |
ASDが減らすのは、初回起動の待ち時間と、シェーダーのコンパイルが原因のカクつきです。描画そのものが速くなるわけではないので、平均fpsは変わりません。また、シェーダーの組み合わせが多すぎて一覧にできないゲーム向けには、パイプラインを2段階に分けるpartial graphics programsが別に用意されています。3月の時点では「近日提供」とされ、Agility SDK 1.721-previewに入っています。
DXRDXR 2.0のプレビューはまだ始まっていません
3月のGDC 2026では、DirectX Raytracingの次世代版として「DXR 2.0」が語られました。その中身は、Opacity Micromapsではなく、動的なジオメトリを多く含むシーンでレイトレーシングの加速構造を作る負荷を減らす機能群です。
| 機能 | 内容 | 状況 |
|---|---|---|
| Opacity Micromaps DXR 1.2 | 葉や柵のような半透明のジオメトリで、アルファテストのシェーダー呼び出しを減らす | 2025年6月にAgility SDK 1.616で提供済み |
| Clustered Geometry DXR 2.0 | 小さな三角形の塊(クラスター)を部品にして、加速構造を組み立てる | 仕様書v0.38(9月8日)の段階 |
| Partitioned TLAS DXR 2.0 | 最上位の加速構造を分割し、変わった部分だけ更新する | 仕様書v0.38(9月8日)の段階 |
| Indirect Acceleration Structure Operations DXR 2.0 | 加速構造の構築と更新を、GPU側の指示で実行する | 仕様書v0.38(9月8日)の段階 |
仕様書には「リリースは2026年夏の終わり頃のプレビューから始まる見込み」とあり、9月8日の版でもこの書き方のままです。DirectX公式ブログの10月1日までの投稿にも、DXR 2.0のプレビューを告げるものはありません。クラスターの識別子をシェーダーから取れるClusterID()は、Shader Model 6.10のプレビューに入っています。
Opacity Micromapsの「パストレーシングのゲームで最大2.3倍」は、2025年3月のGDC 2025でDXR 1.2として発表された数字です。ゲームやGPUの条件は示されていません。DXR 2.0の性能向上を示す数字は、公式資料にまだありません。
仕様上、最上位のTier 2.0にはOpacity MicromapsとShader Model 6.10が必要ですが、クラスター関連の機能だけを別の項目で報告する形も用意されています。仕様書は、既存のレイトレーシング対応ハードでもドライバーの更新で動くとする一方、古いGPUが対応するかはハードウェアベンダーの判断としています。ジオメトリのクラスター化では、NVIDIAのRTX Mega Geometryも同じ領域の技術です。ウィッチャー4とRTX Mega Geometryの記事で詳しく扱っています。
MLDirectXのML統合は、Cooperative VectorsからLinear Algebraへ
3月の発表では、ゲームのシェーダーからGPUのAI演算器を使うCooperative Vectorsが、ML統合の入り口として語られました。その後、方針が少し変わっています。
| 機能 | 3月の説明 | 10月の状況 |
|---|---|---|
| Cooperative Vectors | Shader Model 6.9で、ベクトルと行列の演算をHLSLから呼べる | 2月26日のSM 6.9正式版の記事で非推奨に。Shader Model 6.10の行列演算に統合され、Agility SDK 1.619の正式版には含まれない |
| DirectX Linear Algebra | 4月にパブリックプレビュー | 4月27日にAgility SDK 1.720-previewで開始。最新は7月30日の1.721.3-preview。Shader Model 6.10はプレビュー段階 |
| Compute Graph Compiler | 夏にプライベートプレビュー。希望者はWindows担当者へ連絡 | DirectX公式ブログに、開始を告げる記事は出ていない |
Linear Algebraは、Cooperative Vectorsが担っていた「シェーダーのスレッドごとに小さな推論をする」用途(Thread scope)と、より大きな行列演算(Wave scope)を、1つのAPIにまとめたものです。ニューラルテクスチャ圧縮やニューラルラディアンスキャッシュのような、ピクセルごとの推論に向いた手法が、この土台で動かす例として挙げられています。
DLSS 4・4.5はNVIDIA独自の仕組みで、DirectXのMLはゲーム開発者が自分のモデルをシェーダーとして書き、各社のGPUで動かすための共通のAPIです。遊ぶ側が設定を切り替えるものではなく、これを使ったゲームが出てから効果が見えます。
一覧何が、いつから、どのGPUで変わるのか
| 技術 | 遊ぶ側への影響 | 状況 |
|---|---|---|
| Advanced Shader Delivery | 初回起動の待ちとコンパイル由来のカクつきが減る | AMD・Qualcommは提供中。Intel・NVIDIAは10月中。対応タイトルはGears of War: E-Day |
| DXR 2.0 | 動的なジオメトリが多いレイトレ・パストレのゲームで、加速構造の更新が軽くなる見込み | プレビュー待ち。対応ゲームも未発表 |
| Linear Algebra(SM 6.10) | ニューラルレンダリングを使うゲームが各社GPUで動かしやすくなる | プレビュー中。対応ゲームは未発表 |
判断いま確認しておくこと
- Radeon(RDNA 1〜4)かSnapdragon X2を使っている
- Windows 11 24H2以上で、ドライバーが条件を満たしている
- Xbox PCアプリでGears of War: E-Dayを入れる
- GeForce RTXやIntel Arcを使っている
- ドライバーの更新通知を待ち、リリースノートにASDの記載があるか見る
- Steamなど、Xbox PCアプリ以外で買ったゲームは別途確認する
ASDはCPUが受け持っていたコンパイル作業をなくす方向の機能なので、これを理由にCPUを買い替える必要はありません。DXR 2.0やLinear Algebraを使うゲームが出てくるのは、プレビューが済んでからです。
構成この時代に備えるPCパーツ
ASDはCPUとGPUのメーカーを問わない技術です。DXR 2.0やLinear Algebraは、対応ドライバーが出たGPUでなければ使えません。どちらも買い替えを急ぐ理由にはならないので、いま選ぶなら16GB以上のメモリを積んだ現行世代のGPUが無難です。


※価格・在庫・構成は変動します。最新情報は各商品ページでご確認ください。
FAQよくある質問
まとめまとめ|カクつき対策のASDは動き出し、DXR 2.0とMLは待ちの段階
RadeonとSnapdragon X2のユーザーは、Gears of War: E-Dayですぐ試せます。GeForce RTXとIntel Arcは10月中の対応を待ち、ドライバーのリリースノートでASDの記載を確かめてください。DXR 2.0のプレビューとLinear Algebraの正式版は、これからの発表を待つ段階です。
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出典:DirectX Developer Blog:ASDのGears of War: E-Day提供(2026年10月1日)・同:ASDのAMD向けパブリックプレビュー拡大(2026年5月15日)・同:ASD GDC 2026の新情報(2026年3月12日)・同:DirectXのML対応の進化(2026年3月)・同:Shader Model 6.9正式版(2026年2月26日)・同:D3D12 LinAlgプレビュー(2026年4月)・同:Agility SDKのリリース一覧・DirectX-Specs:DXR Functional Spec Part 2(v0.38)・DirectX Developer Blog:DXR 1.2の発表(2025年3月)






