DirectStorage 1.4発表|Zstandard圧縮・GACLで圧縮率50%改善・「テクスチャポップイン」が消える日へ

(更新: 2026.10.7)
DirectStorage 1.4発表|Zstandard圧縮・GACLで圧縮率50%改善・「テクスチャポップイン」が消える日へ

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PC TECH
出典:DirectX Blog(2026.03.11)/ Tom’s Hardware / PC Gamer
DirectStorage 1.4——テクスチャポップインが消える日

Metaが開発したZstandard圧縮と、新ツール「GACL」で圧縮率を最大50%改善。SSD→GPUの転送が速くなれば、テクスチャが「後から読み込まれる」問題が解消に向かいます

要点
  • GDC 2026でDirectStorage 1.4パブリックプレビューを公開。Zstandard(Zstd)圧縮に対応
  • 新ツールGACL(Game Asset Conditioning Library)で圧縮率を最大50%改善
  • AMD / NVIDIA / Intel / Qualcommが2026年後半にドライバー最適化を予定
  • 6月16日にPreview 2が公開。GACLの性能低下を修正したが、正式版ではなく、DLLの入れ替えでは既存ゲームに効かない
目次

DirectStorageとは何か——30秒で理解する

DirectStorageは、ゲームデータをNVMe SSDからGPUのVRAMに直接転送する仕組みです。従来はSSD→CPU→GPU という経路を通っていたデータを、CPUを介さずにGPUのcompute shaderで直接展開することで、ロード時間を大幅に短縮します。

2022年にバージョン1.0がリリースされて以来、GPU展開(1.1)、HDD対応(1.2)、バッチリクエスト(1.3)と進化してきました。1.4の最大の変更点はZstandard圧縮への対応です。

Zstandard——なぜ「圧縮方式」が重要なのか

ゲームデータはSSDに圧縮された状態で保存されています。ゲーム中にテクスチャや3Dモデルが必要になると、圧縮データをSSDから読み出し、展開してからGPUに送ります。

この「圧縮→展開」の効率が悪いと、SSDの読み出し速度がいくら速くても転送が追いつかず、テクスチャが「後から読み込まれる」——いわゆるテクスチャポップインが発生します。

1
圧縮率が上がる同じデータがより小さくなる
→
2
転送量が減る同じ帯域でより多くのデータを送れる
→
3
ポップインが減るテクスチャが間に合うようになる

Zstandard(Zstd)はMetaが開発したオープンソースの圧縮アルゴリズムで、Linux やクラウドインフラで広く使われています。従来のGDeflate(NVIDIA提案)と比較して、圧縮率と展開速度のバランスに優れるとされています。

GACLで圧縮率を最大50%改善

DirectStorage 1.4と同時に公開されたGACL(Game Asset Conditioning Library)は、ゲームアセットをZstd圧縮する前に「下処理」することで、圧縮効率を劇的に向上させるツールです。MIT ライセンスでオープンソース公開されています。

Shuffling-10%
BCnビットストリームを並べ替え、Zstdのパターンマッチング効率を向上
BLER-50%
視覚的に類似したテクスチャブロックを統合してエントロピーを低減
CLER実験
機械学習ベースのカラー最適化(実験段階)

「最大50%改善」はBLER適用時のBCnテクスチャが対象です。すべてのアセットに一律50%ではない点に注意が必要です。それでも、テクスチャデータはゲームの総容量の大部分を占めるため、全体へのインパクトは大きいと言えます。

4社がドライバー最適化を予告

AMD
Microsoftと共同開発。Zstdデコンプレッションの最適化
2026年下半期
NVIDIA
GeForce RTX向けZstd展開最適化
2026年下半期
Intel
Arc GPU向けパフォーマンス改善
今後数ヶ月
Qualcomm
Snapdragon X向けチューニング
2026年末まで

AMD・NVIDIA・Intel・Qualcommの4社すべてが2026年後半にドライバーレベルでの最適化を予告しています。GPU側のサポートが揃えば、開発者がDirectStorage 1.4を採用するハードルは大幅に下がります。

対応ゲームの「少なさ」という課題

技術としては正しい方向に進化しています。しかし、DirectStorageには発表から4年を経ても解消されていない問題があります。対応ゲームが少ないことです。

2026年3月時点で確認されている主な対応タイトルは、Forspoken、FF7 Rebirth、モンスターハンターワイルズ、Marvel’s Spider-Man 2、Ratchet and Clank: Rift Apart、Forza Motorsport、Star Wars Outlawsなど。数としてはまだ十数本レベルです。

海外PCメディアでは「DirectStorageに何が起きたのか?なぜもっと多くのゲームが使わないのか?」という疑問が指摘されています。開発者にとって、既存のアセットパイプラインをDirectStorage対応に作り替えるコストが高く、リターンが見えにくいことが採用の壁になっています。

1.4のZstd + GACLが、この壁を下げるきっかけになるかどうか。オープンソースで提供され、4社のドライバーサポートも揃う点は明るい材料です。

DirectStorage恩恵を最大化する|NVMe Gen5 / Gen4の本命2機種

DirectStorage 1.4の恩恵を受けるには、NVMe SSD(最低Gen3、できればGen4以上)が前提条件です。Zstd圧縮の展開速度がGPU側で改善される2026年後半に向けて、転送ボトルネックを根本から無くせるGen5 / Gen4 SSDを今のうちに揃えておくのが最も合理的です。価格と性能のバランスで選ぶ本命2機種を紹介します。

WD Black SN8100 2TB NVMe Gen5
Gen5本命・DirectStorage 1.4最強
WD Black SN8100 2TB NVMe Gen5

SM2508採用・Kioxia(WD合弁)BiCS8 218層 NAND・Read/Write 14GB/s超のGen5第2世代コントローラ搭載で、現行最速クラスのNVMe Gen5本命機。DirectStorage 1.4のZstd展開を最大限活かせる帯域を確保でき、Gen5マザー対応PCで「ロード時間ゼロ」を本気で狙う人向けの一台です。標準ヒートシンクで運用可。

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Samsung 990 EVO Plus 2TB NVMe Gen4
Gen4安心枠・既存環境対応
Samsung 990 EVO Plus 2TB NVMe Gen4

Read 7,250MB/s・TBW 1,200TB・5年保証のGen4本命。マザーボードがGen5未対応でも、Gen4 SSDがあればDirectStorage 1.4の恩恵は十分受けられます。既存環境のままアップグレードしたい人向け、もしくはGen5のセカンドドライブ用としても堅実な2TBクラスです。

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Preview 2(6月16日)で変わったことと、10月時点の現在地

3月のパブリックプレビューに続き、2026年6月16日にPreview 2(1.4.0-preview2-2606.904)が公開されました。変更履歴に載っている修正は、GACLで前処理したBC1〜BC5のテクスチャをリクエストとして投入する経路で、スループットが落ちていた性能退行です。機能が増えたというより、プレビュー版の速度の取りこぼしを直した更新です。

一方で、Preview 1から続く既知の問題も残っています。256MBを超えるステージングバッファで一部のGPUが失敗することがあり、ZstdのGPU展開用フォールバックシェーダーは開発中で、特定の圧縮データではTDR(ドライバーの強制リセット)が起きる可能性があると書かれています。配布上もNuGetの通常ページは1.3.0のままで、1.4はプレリリース扱いです。正式版と呼べる段階には、2026年10月7日時点でも達していません。

Preview 2の修正
GACLのBC1〜BC5リクエスト投入経路で、スループットが低下していた問題を修正
残っている問題
256MB超のステージングバッファでの失敗、ZstdのGPU展開フォールバックシェーダーでのTDR

「最大50%」が意味するもの

GACLの公式READMEによると、Shuffleは元のデータに戻せる可逆の処理で、BLERとCLERは見た目が近いブロックをまとめる非可逆の処理です。最大50%はBLERが対象で、圧縮済みストリームの縮小を指し、画質はPSNR 40dB以上を保つ設計とされています。ロード時間が半分になる、ゲーム全体の容量が半分になる、VRAM使用量が半分になるといった意味ではありません。Microsoft自身の資料に基づく数字で、第三者が実ゲームで測った比較は、確認できた範囲では見つかっていません。

対応フォーマットにも差があります。BLERはBC1〜BC5とBC7に対応しますが、実行時にShuffleを元に戻すDirectStorage側の処理は、発表時点でBC1・BC3・BC4・BC5です。BC7については、Microsoftが今後のアップデートで対応すると書いています。CLERは実験段階で、READMEが挙げる対応はBC1です。

自分のゲームで効くようになるのか

DirectStorageのDLLを1.4に差し替えても、既存ゲームでは新機能は有効になりません。Microsoftの担当者は公式ブログのコメントで、Zstdで作ったアセットと開発者による明示的なAPI利用が必要だと答えています。効果を受けるには、ゲーム側がZstdとGACLを使って作り直したデータで出荷される必要があります。

AMDは公式の解説で、最適化を入れたドライバーを2026年後半に公開すると説明しています。ただし、これは予定の説明です。NVIDIA・Intelも含め、各社が提供済みかどうかは確認できていないため、ドライバーの提供状況は各社のリリースノートで見てください。

今すぐ何かが変わるわけではない

DirectStorage 1.4は現時点でもプレビュー(開発者向け早期公開)です。ドライバー最適化は2026年後半の予定です。対応ゲームが出揃うのはさらにその先になります。

ただし、テクスチャポップインやロード時間の問題は、UE5採用タイトルを中心に年々深刻化しています。SSDの読み出し速度はすでにGen5で14GB/sに達していますが、圧縮展開のボトルネックが解消されなければ、その速度を活かしきれません。DirectStorage 1.4のZstd + GACLは、このボトルネックを正面から解消しようとする技術です。

ゲーマーとしてやるべきことは、現時点では特にありません。強いて言えば、NVMe SSDを使っていない人はGen3以上のNVMe SSDに移行すること。DirectStorageの恩恵を受けるための最低条件です。ロード時間短縮ガイドも参考になります。

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