ASUSのROG・TUFルーターが米FCC規制から条件付き免除に|未承認のTP-LinkはArcher 8 Ultraを米国外で予約開始
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未承認のTP-LinkはArcher 8 Ultraを米国外で予約開始
出典:FCC「Covered List」公式ページ・FCC Public Notice(Conditional Approval制度の詳細)・FCC「Guidance for Conditional Approval submissions」・TP-Link「Opens Pre-Orders for Archer 8 Ultra」・TP-Link英国公式ストア・TP-Linkドイツ公式ストア・欧州中央銀行「Euro foreign exchange reference rates」にもとづきます(2026年10月1日時点)。
ASUSのゲーミングルーター「ROG」「TUF Gaming」シリーズなどが、米国で新型ルーターを販売するうえで大きな障害となっていた規制から条件付きで免除されました。FCCは2026年9月9日付のPublic Notice「DA 26-957」で、ASUS Computer InternationalのRT Router、ROG GT、ROG Strix GS、TUF Gaming、ExpertWiFi、ZenWiFi Mesh、5G MiFiなどについて、米国防総省によるConditional Approvalが与えられたと発表しました。
ただし、「ASUS製ルーターが米政府から安全認定された」という理解では実態を見落とします。FCC資料を確認すると、単なるセキュリティ審査ではなく、米国内での製造計画まで含んだサプライチェーン政策であることが分かります。
ちょうどASUSがWi-Fi 8ゲーミングルーター「ROG Rapture GT-BN98」シリーズの展開を始めたタイミングでの承認です。9月30日にはTP-Linkも初のWi-Fi 8ルーター「Archer 8 Ultra」の予約を始めましたが、予約開始国に米国は入っていません。今回の規制対応がWi-Fi 8ルーターの展開にどう影響するのか、TP-Linkとの差、日本で買えるのかまで整理します。
目次
何が起きたかASUSのROG・TUF等が「Covered List」から条件付き除外
FCCが2026年9月9日に公開したPublic Notice「DA 26-957」では、米国防総省がASUS Computer Internationalの対象製品についてConditional Approvalを与えたことが明記されています。対象には一般向けのRT Routerシリーズだけでなく、ROG GT、ROG Strix GS、TUF Gaming、ExpertWiFi、ZenWiFi Mesh、5G MiFi、無線LAN中継器、アクセスポイントまで含まれています。承認期間は2028年3月6日までです。
FCCは、Conditional Approvalについて「これらの機器が米国の国家安全保障上のリスクをもたらさないとの特定の判断に相当する」と説明しており、この判断にもとづいて対象機器をCovered Listから除外しています。一般的な製品安全規格の「安全認証」とは異なり、米国が2026年に導入した海外製ルーター規制に対して、一定期間だけFCCの機器認証を取得できる条件付きの措置と理解した方が実態に近いでしょう。
背景2026年3月、海外製ルーターが原則Covered List入りに
今回のニュースの前提として、2026年3月に米国で大きなルール変更がありました。FCCは2026年3月23日、外国で生産されたルーターを原則としてCovered Listへ追加しています。例外となるのは、米国防総省または国土安全保障省(DHS)からConditional Approvalを受けた製品です。
かなり広い規制で、特定の国のメーカーだけを名指しした制度ではありません。FCCの国家安全保障判断では、生産者の国籍にかかわらず外国で生産されたルーターを対象としており、「生産」の範囲も最終組み立てだけでなく、製造・組み立て・設計・開発といった主要工程まで含むとされています。台湾企業であるASUSも例外ではなく、米国で新型ルーターを継続的に展開するにはConditional Approvalの取得が必要でした。規制理由としてFCCは、Volt Typhoon・Flax Typhoon・Salt Typhoonなどのサイバー攻撃活動で海外生産のルーターが悪用された事例を挙げていますが、資料を読み進めると、セキュリティ基準だけでなく海外生産への依存そのものを経済安全保障上のリスクとして扱っていることも分かります。
承認の条件米国内での製造計画の提出が必要
Conditional Approvalの申請条件には「U.S. Manufacturing and Onshoring Plan」が含まれています。FCCのガイダンス文書によると、申請企業は対象ルーターについて米国で製造能力を新設・拡大する具体的な計画を提出する必要があり、計画には既存の米国内生産状況(組み立て済み部品の割合や現在の従業員数・拠点)、今後1〜5年間の設備投資・資金計画とその時期、進捗の四半期報告などが含まれます。
つまり今回ASUSが得たのは「審査を1回通過したので自由に販売できる」という単純な許可ではありません。サプライチェーンの透明性や米国内生産への移行計画を示した審査を経て、一定期間だけ新製品の認証を継続できる仕組みです。Conditional Approvalは最長18カ月とされており、ASUSの承認期間が2026年9月9日から2028年3月6日までとなっているのは、この制度設計とおおむね一致します。
TP-Linkとの違いTP-Linkは未承認のまま、Archer 8 Ultraを米国外で予約開始
対照的なのがTP-Linkです。FCCのConditional Approval一覧には、2026年10月1日時点でもTP-Linkの名称がありません。ルーターの承認は4月のNetgear・Adtranを皮切りに、eero・Calix・Nokia、台湾のArcadyan・Askey・Zyxelなど20社を超え、直近の追加は9月9日のASUSとComtrendです。TP-Linkは承認を得られていない状態が続いています。
その中でTP-Linkは9月30日、初のWi-Fi 8ルーター「Archer 8 Ultra」(型番Archer BN800)の予約受付を始めました。発表したのは米カリフォルニア州アーバインに本社を置くTP-Link Systemsですが、予約開始国として挙げたのは英国・ドイツ・オーストラリア・カナダなどで、米国は入っていません。そのほかの地域への展開は、メッシュシステム「Deco 8 Ultra」とあわせて今後数カ月で順次発表するとしています。

本体はBroadcomのWi-Fi 8チップを使うトライバンド機で、無線は合計最大19Gbps、有線は10Gbpsポート2基と2.5Gbpsポート4基を備えます。仕様の詳細とWi-Fi 7からの違いはWi-Fi 8ゲーミングルーターの製品比較にまとめています。英国とドイツはTP-Linkの公式ストアで予約でき、価格は次のとおりです。
- 英国は通常価格899.99ポンド(約18万8,000円)。商品ページには早期予約コードの案内があり、出荷は11月15日からの予定です
- ドイツは799.90ユーロ(約14万3,000円)。出荷は11月中旬からの予定です
円換算は欧州中央銀行の9月30日の参照レート(1ユーロ=178.27円、ユーロ経由で1ポンド=約208.6円)によるもので、どちらも現地の付加価値税を含む価格です。
FCCの規制では、外国で生産されたルーターの新型はConditional Approvalがないと機器認証を受けられず、米国で輸入・販売できません。TP-Linkは発表で米国拠点の設計・開発チームを強調していますが、FCCの「生産」には製造・組み立ても含まれるため、設計が米国でも外国で製造していれば対象です。米国を予約開始国から外した理由をTP-Linkは説明していませんが、承認を得たASUSと得ていないTP-Linkとで、米国でのWi-Fi 8ルーターの展開に差が出ている状態です。なお、カナダはFCCではなく同国の規制当局ISEDの認証で販売できる市場で、ASUSのGT-BN98シリーズもカナダから販売を始めていました。
TP-Link自身は、自社がすでに中国資本の企業ではないと説明していますが、組み立て・サプライチェーンが中国やベトナムを拠点としている点が、米国内製造計画の審査で課題になっている可能性があります。ただし、FCCの認証を受けた既存モデルは米国で引き続き販売できるため、TP-Link製ルーターが米国で全面販売禁止になったわけではありません。
誤解しやすい点すでに販売済みのルーターが使えなくなるわけではない
今回の制度でもっとも誤解されやすいのがこの部分です。Covered Listへの追加は、すでにFCC認証を取得して販売されているルーターを突然使用禁止にする制度ではありません。問題になるのは主に、新しい対象製品がFCCのEquipment Authorizationを取得できなくなることです。
さらにFCCは2026年5月8日、Covered Listへ追加される前に認証されていた海外製ルーターについて、セキュリティパッチなど消費者保護のためのソフトウェア・ファームウェア更新を、当初予定していた2027年3月1日から2029年1月1日まで継続できるよう免除措置を延長しています。現在ASUSやTP-Linkのルーターを使っている人が、突然通信できなくなったり、直ちに買い替えを迫られたりする制度ではありません。
Wi-Fi 8との関係GT-BN98シリーズの米国展開に必要な前提が整った
ASUSはすでにWi-Fi 8ゲーミングルーター「ROG Rapture GT-BN98」シリーズをカナダで発売し、10月からのグローバル展開を予定しています。今回のConditional Approvalは、この新型ルーターを含む対象製品群が米国でも新規の認証を継続できることを意味し、Wi-Fi 8世代の米国投入に必要な規制上の前提が整った形です。GT-BN98シリーズの仕様やWi-Fi 8規格の現状、買い替えるべきかどうかの判断は、Wi-Fi 8ゲーミングルーターは買いかを整理した記事で詳しく解説しています。
ただし、今回の承認そのものが「ASUSの米国ルーター事業は今後も安泰」を意味するわけではありません。ASUSの承認期限である2028年3月6日は、IEEEが2026年9月時点で予定しているWi-Fi 8(802.11bn)の最終規格承認時期(2028年5月前後)とほぼ重なっています。今後ASUSが米国内製造計画をどこまで進め、承認の延長を得られるかも合わせて注目したい点です。
日本への影響直接の影響はなく、GT-BN98・Archer 8 Ultraとも国内未発表
今回のCovered Listは米FCCの制度であり、日本国内で販売されるルーターの販売可否を直接左右するものではありません。現在ASUSやTP-Linkのルーターを日本で使用しているからといって、今回のニュースを理由に買い替える必要はありません。いまルーターを買い替えたい場合も、Wi-Fi 8の新機能の多くはPCやスマホ側の対応が必要で、対応する端末はまだ出ていないため、国内で買えるWi-Fi 7ルーターから選ぶのが現実的です。選び方はゲーム用Wi-Fiルーターの選び方で解説しています。
一方で、米国という大きな市場でGT-BN98シリーズなどの新製品を継続的に展開できる環境が整ったことで、ASUSはWi-Fi 8製品の量産やラインアップ拡大を進めやすくなります。ROG Rapture GT-BN98は東京ゲームショウ2026のROGブースで特別参考展示の扱いで、日本での発売時期・価格は2026年10月1日時点でも正式発表されていませんが、米国展開が滞りなく進むかどうかは、日本を含む他地域への展開ペースにも間接的に影響する要素です。
TP-LinkのArcher 8 Ultraも、日本での発売は10月1日時点で発表されていません。9月30日の予約開始国に日本は含まれておらず、TP-Linkの日本向けサイトにはWi-Fi 8の解説ページがあるものの、Archer 8 Ultraの製品ページはまだありません。英国・ドイツの公式ストアは配送先がそれぞれ英国内、ドイツとオーストリアに限られ、日本からは注文できません。また、日本で無線機器を使うには技術基準適合証明(技適)などが必要で、技適マークのない海外版を国内で使うと原則として電波法違反になります。日本で買うなら、ティーピーリンクジャパンからの発表を待つことになります。
Q&Aよくある質問
まとめ「安全認定」以上にWi-Fi 8市場への入場券
米国では2026年3月から、外国で生産された家庭向けルーターを原則Covered Listへ含める規制が始まりました。Conditional Approvalがなければ、新型ルーターのFCC認証取得が難しくなります。
ASUSはROG・TUF Gaming・ZenWiFiなど広範な製品群について、米国内製造計画の提出などを条件に2028年3月までの承認を確保しました。ちょうどWi-Fi 8ゲーミングルーターの世界展開を始めようとしているタイミングだけに、実質的には米国市場へ新製品を投入し続けるための入場券を得たニュースといえます。
一方、TP-Linkはまだ同様の承認を得ておらず、9月30日に予約を始めたWi-Fi 8ルーターArcher 8 Ultraも米国は予約開始国に入っていません。日本ではASUS・TP-LinkともWi-Fi 8ルーターの発売を発表しておらず、日本のユーザーが今すぐ何か対応する必要はありませんが、ASUSの米国内製造計画の進捗と、Wi-Fi 8ルーターの国内展開時期は、今後もあわせて注目しておきたいところです。




