Steam MachineにRX 9070 XTを外付け|M.2をOCuLinkへ変換、『紅の砂漠』が100fps超で内蔵GPUの約2倍に
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USB-Cではなく、内蔵SSD用のM.2スロットをOCuLinkへ変換するという手口です
出典:Tom’s Hardware(2026年8月11日) / 投稿元コミュニティ r/steammachine / AMD公式 Radeon RX 9070 XT製品ページ / AOOSTAR公式 EG01製品ページ / Valve公式 Steam Machine紹介ページ。状況は本記事公開時点(2026年8月12日)の情報にもとづきます。
Steam Machineは、ValveがSteamOSを載せて2026年6月に発売した据え置き型のPCです。約152×162×156mmの小型筐体にAMDのセミカスタムCPUとGPUを収めた構成で、一般的な自作PCのようにグラフィックボードを挿し替えることはできません。買った時点のGPU性能が、そのまま製品寿命まで続く前提の機械です。
その前提を、正面からではなく横から崩した例が出てきました。内蔵SSD用のM.2スロットにM.2→OCuLink変換アダプターを取り付け、そこからケーブルを外へ伸ばして、デスクトップ向けのRadeon RX 9070 XTを動かすというものです。SteamOSは何の設定もなしにこのGPUを認識しました。
この記事では、どういう経路でGPUがつながっているのか、なぜUSB-Cではなくわざわざ内蔵M.2を使ったのか、そして『紅の砂漠』の100fps超という数字が内蔵GPUと比べてどのくらいの差なのかを、当サイトの40GPU実測データと突き合わせて整理します。
目次
要点まず何が起きたか
Redditのr/steammachineに投稿された事例で、Steam Machine内部にあるM.2 PCIe 4.0 NVMeスロットへM.2→OCuLink変換アダプターを取り付け、OCuLinkケーブル経由でeGPUドック「Aoostar EG01」とRadeon RX 9070 XTを接続しています。SteamOSを起動するとRX 9070 XTがそのままプライマリのGPUとして動き、グラフィックアダプターを選び直す作業も必要なかったと報告されています。ただしM.2スロットは1基しかないため、内蔵SSDはUSB-Cケースへ追い出されています。
構成M.2スロットからPCIeを外へ引き出す
今回の接続経路は、Steam Machine内部のM.2スロットから始まります。そこにM.2→OCuLink変換アダプターを差し、OCuLinkケーブルでeGPUドックのAoostar EG01へつなぎ、EG01のPCIeスロットにRadeon RX 9070 XTを装着するという順序です。
NVMe SSDはPCI Expressを使ってCPUと通信しています。つまりM.2スロットには、そもそもPCIeの信号が来ています。OCuLinkはそのPCIe信号をケーブルで外部へ延長するための規格なので、変換アダプターを挟めばグラフィックボード用の接続として転用できるわけです。「USB-CからGPUへ変換している」のではなく、内部にあるPCIeをそのまま外へ引っ張り出していると理解すると分かりやすいでしょう。
使われたAoostar EG01は、AOOSTARの公式製品ページによるとインターフェイスもグラフィックボードスロットもPCIe 4.0 x4で動作します。スロットの形状はPCIe x16ですが、実際に使えるレーンは4本です。電源ユニットは内蔵しておらず、ATXまたはSFX電源を別途つなぐ方式で、入力は24ピンとCPU 8ピン、それにDC変換用の6ピンという構成になっています。価格は公式ページで159ドル、セール時109ドルの表示ですが、本記事執筆時点では売り切れ表示でした。
投稿者は、電源を入れたらRX 9070 XTがそのままプライマリの表示先になり、グラフィックアダプターを選ぶような面倒はまったくなかった、と述べています。AMD製GPUとSteamOSの組み合わせでは、ドライバーがカーネル側に統合されているぶん、この手の構成でも素直に動きやすい傾向があります。
ただしこれは、ValveがSteam Machine向けに用意した機能ではありません。本体を開けて内部のスロットを別用途へ転用する改造であり、同じ部品を揃えれば誰の環境でも同じように動くと保証されたものではない点は押さえておく必要があります。
前提背面のUSB-Cは10Gbpsで、市販のeGPUをつなげない
ここで当然、「USB-Cに市販のeGPUケースを挿せばいいのでは」という疑問が出てきます。実はそれができません。
Steam MachineにはUSB-Cが1基ありますが、その仕様はUSB 3.2 Gen 2で、速度は10Gbpsです。DisplayPort Alt ModeとPower Deliveryには対応しているものの、USB4やThunderboltには対応していません。市販のThunderbolt対応eGPUケースは、この時点で選択肢から外れます。本体が備える映像出力もHDMI 2.0とDisplayPort 1.4で、USB4系の高速ポートは搭載されていません。
eGPUでは、GPU自体の速さと同じくらい、本体とGPUのあいだをつなぐ帯域が効いてきます。USB4やThunderboltは、PCIeの通信をUSBやThunderboltのトンネリングに載せ替えて運ぶ方式です。対してOCuLinkはPCIeをそのままケーブルで延ばすので、変換の層が一枚少なくなります。AOOSTAR自身も、EG01のOCuLinkについてUSB4より高速な信号伝送が可能だと説明しています。
USB4がないSteam Machineで外付けGPUを実現するには、内部のPCIeを直接引き出すしかありません。今回の改造がM.2スロットを狙ったのは、消去法の結果でもあります。
性能『紅の砂漠』100fps超は内蔵GPUのおよそ2倍
報告されている実測結果は、『紅の砂漠』をHigh設定で動かして100fpsを超えた、というものです。ここで注意したいのは、解像度が明示されていないことと、これが短時間の簡易テストである点です。「100fps」という数字だけが独り歩きしやすいので、まず何と比べた数字なのかを押さえます。
GPUの規模から見ていきます。Steam Machineの内蔵GPUはRDNA 3世代のセミカスタム品で、28 Compute Units、専用のGDDR6を8GB搭載しています。一方のRadeon RX 9070 XTはRDNA 4世代のデスクトップ向けGPUで、AMD公式仕様では64 Compute Units、4096 Stream Processors、16GB GDDR6、メモリ帯域は最大640GB/sです。Typical Board Powerは304Wで、AMDはシステム全体で最低750Wの電源を推奨しています。世代もCompute Unitsの数も倍以上違い、消費電力にいたっては桁が変わります。
では実際のフレームレートはどうか。当サイトが『紅の砂漠』で行った40GPUの実測比較では、RX 9070 XTは1440p Cinematic設定で約127fps、1080p Cinematicで約105fpsでした。対して、28 Compute Units前後の内蔵GPUと同じ階層に位置するRTX 4060・RX 7600・Arc B580クラスは、1080p Highで約60fps、1440p Cinematicで45〜55fpsという水準です。設定をCinematicからHighへ落とすと15〜20%ほど伸びる関係にあります。
この関係をHigh設定でそろえて見ると、内蔵GPUと同クラスが50〜60fps台に収まるのに対し、RX 9070 XTは100fpsを超える領域にいます。今回の報告値はこの想定線とよく一致しており、おおまかに2倍前後の伸びと考えるのが妥当です。
ただし、この比較をそのまま実測差として扱うことはできません。当サイトのベンチマークはRyzen 7 9800X3DとWindows 11を使ったデスクトップ環境での数値です。Steam MachineのCPUはZen 4の6コア12スレッドで、OSもSteamOSですから、CPU性能もドライバー環境も違います。あくまで「GPUを載せ替えるとどのくらいの倍率で変わるか」の目安として読むべき数字です。
早見表この改造で得られるもの・失うもの
- デスクトップ向けGPUの性能をSteamOS上で利用できる
- SteamOSが手動設定なしでGPUを認識した
- 本体のGPUを交換せずに性能を引き上げられる
- 内蔵GPUがいずれ力不足になっても逃げ道が残る
- 内蔵SSDを挿す唯一のM.2スロットを明け渡す
- OSの起動が10Gbps接続の外付けSSD頼みになる
- GPU用の電源ユニットとドックが机上に増える
- ケーブルを通すための筐体加工が別途必要になる
代償内蔵SSDの置き場所がなくなる
この改造でいちばん重い代償は、ストレージです。Steam MachineのM.2 PCIe 4.0 NVMeスロットは1基しかなく、標準ではValveが供給するSSDがそこに入っています。そのスロットをOCuLinkに使ってしまうと、SSDの行き場がなくなります。
投稿者はこのSSDをUSB-C接続のNVMeケースへ移し、背面のUSB-CポートからSteamOSを起動しました。前述のとおり、このポートはUSB 3.2 Gen 2の10Gbpsです。PCIe 4.0対応のNVMe SSDを入れても、本来の数GB/sという速度は出せません。GPU側の帯域を確保する代わりに、ストレージ側の帯域を大きく削る構成になっています。
ValveはSteam Machineのストレージ拡張について、Steam Deckと同じようにmicroSDスロットを使う方法を案内しています。ただしmicroSDはNVMe SSDの代わりになる速度ではないため、OSとゲームをどこへ置くかという問題は残ったままです。
さらに、OCuLinkケーブルを外へ出すには筐体に穴を開ける必要があります。投稿者はまだこの加工をしておらず、本体を開けた状態のまま運用しているとのことです。EG01も筐体を持たないむき出しの基板で、ATXまたはSFX電源が別に机の上へ並びます。約15cm四方という本体の小ささは、この時点でほぼ意味を失います。
限界PCIe 4.0 x4という帯域の天井
EG01の接続はPCIe 4.0 x4です。デスクトップPCでグラフィックボードを挿すPCIe x16スロットと比べると、使えるレーンは4分の1になります。RX 9070 XTほどの規模のGPUであれば、この帯域が性能に影響する場面は当然あり得ます。
ただし、今回公開されている情報だけで「x4がボトルネックだ」と結論づけることはできません。フレームレートを決める要因には、Steam Machine側のCPU性能、ゲーム側のCPU負荷、外付けになったストレージのアクセス速度、SteamOS上のドライバーの成熟度など、複数が絡みます。とくにオープンワールドの街中のような場面では、GPUを速くしてもCPU側で頭打ちになることが珍しくありません。
本来必要なのは、同じ本体・同じゲーム・同じ設定で「内蔵GPU」「PCIe 4.0 x4接続のRX 9070 XT」「デスクトップPCでx16接続のRX 9070 XT」の3条件をそろえた比較です。現時点でそこまで踏み込んだ検証は公開されていません。今回の事例は、RX 9070 XTの性能をどこまで引き出せるかを測ったものではなく、Steam MachineのM.2スロットから高性能GPUを実際に動かせたという動作実証として見るのが適切です。
費用対効果これから一式そろえる価値はあるか
すでにSteam MachineとRX 9070 XTを持っていて、機材をいじること自体を楽しみたいのであれば、面白い実験です。SteamOS上でデスクトップGPUが素直に動いたという事実には意味がありますし、Steam MachineのGPU性能が将来足りなくなったとき、本体を買い替える以外の道が残っていることも分かりました。
一方、これから一式を新しく買いそろえるとなると話が変わります。Steam Machineは日本では512GBモデルが税込189,980円からで、そこにRX 9070 XT、OCuLinkドック、M.2→OCuLink変換アダプター、GPU用の電源ユニット、USB-C NVMeケースが積み上がります。RX 9070 XTはTypical Board Power 304Wで、AMDは最低750Wの電源を推奨しています。Steam Machineの電源からこのGPUへ給電することはできないため、外部電源は必須です。
そこまで機材を積み増すのであれば、最初からRX 9070 XTをPCIe x16スロットへ直接挿せるゲーミングPCを用意したほうが、性能でもストレージ速度でも将来の拡張性でも有利です。今回の改造は「Steam Machineを安くRX 9070 XT級のPCへ化けさせる方法」ではなく、Steam Machineの拡張性がどこまで伸ばせるかを確かめた実験と受け止めるのが正確でしょう。
Q&Aよくある質問
総括まとめ|数字より「動いた」という事実が大きい
この事例で本当に注目すべきなのは、100fps超という数値そのものではありません。本来SSD用だったPCIe接続を外へ引き出しただけで、SteamOSが特別な設定もなくRX 9070 XTを認識し、実際のゲームまで動かせたという点です。
Steam Machineの内蔵M.2スロットにM.2→OCuLink変換アダプターを取り付け、Aoostar EG01経由でRadeon RX 9070 XTを外付けした改造例が公開されました。SteamOSは手動でグラフィックアダプターを選ぶことなくRX 9070 XTを認識し、『紅の砂漠』をHigh設定で100fps超で動かしています。
当サイトの40GPU実測と突き合わせると、この数字は内蔵GPUと同クラスの水準に対しておおむね2倍前後にあたります。ただし当サイトのベンチマークはRyzen 7 9800X3DとWindows 11の環境で、CPUもOSも異なるため、倍率の目安として読むべき数字です。
代償は小さくありません。M.2スロットは1基しかないため内蔵SSDは10Gbps接続の外付けへ追い出され、OCuLinkケーブルを通す筐体加工も必要で、GPU用の電源ユニットも机の上に増えます。約15cm四方という本体の利点はほぼ失われます。これから一式をそろえるなら、RX 9070 XTをx16スロットへ直接挿せるゲーミングPCのほうが確実です。それでも、Steam MachineのGPU性能が将来足りなくなったときの逃げ道が実在すると示された意味は残ります。



