Steam Deckの販売台数が値上げ後に最大82%減か。高すぎる価格で「コスパ最強」の立場を失う
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高すぎる価格で「コスパ最強」の立場を失う
携帯型ゲーミングPC「Steam Deck」といえば、価格を抑えながらSteamのゲームを持ち運べる点が最大の魅力でした。しかし2026年5月の大幅値上げ以降、この前提が崩れつつあるとみられるデータが出てきています。
海外の分析サイトBoiling Steamは、Steamの週間売上ランキングと推計売上高、モデルごとの平均販売価格をもとに、値上げ後のSteam Deckの週間販売台数が、値上げ前と比べて最大82%減少した可能性があると分析しました。Valveがこの数字を公式に発表したわけではありませんが、Steam Deckが長期間維持してきた売上上位の常連という立ち位置から後退していること自体は、複数の公開データから確認できます。
この記事では、Boiling Steamの推計データ、Valve公式のアナウンス、国内正規販売代理店KOMODOの価格改定、そしてSteamDBの週間ランキングという情報を突き合わせ、82%という数字がどこまで確からしいのか、そして値上げによってSteam Deckの立ち位置が実際にどう変わったのかを整理します。
推計販売動向Steam Deckの週間販売台数、値上げ後に1万台超から数千台規模へ
海外の分析サイトBoiling Steamは、Steamの週間売上ランキングを継続的に追跡し、そこから各タイトル・ハードウェアの推計売上高や推計販売台数を算出しています。この分析によると、値上げ前のSteam Deckは2025年を通じて、Steamの週間売上ランキングでおおむね4〜5位前後を維持していました。当時の推計週間売上高は約600万〜1,000万ドル、推計週間販売台数は約1万1,000〜1万8,000台だったとされています。
一方、2026年5月末の値上げと再入荷後は、週間売上ランキングが10〜15位前後まで低下しました。Boiling Steamの推計では、この時期の週間売上高は約120万〜250万ドル、週間販売台数は約1,400〜3,000台まで落ち込んだとされています。
| 項目 | 値上げ前 | 値上げ後 | 変化 |
|---|---|---|---|
| Steam週間売上順位 | 4〜5位前後 | 10〜15位前後 | 低下 |
| 推計週間売上高 | 600万〜1,000万ドル | 120万〜250万ドル | 約72%減 |
| 推計平均販売価格 | 約540ドル | 約835ドル | 約54%増 |
| 推計週間販売台数 | 1万1,000〜1万8,000台 | 1,400〜3,000台 | 約82%減 |
価格が上がったにもかかわらず、売上高も約72%減少したと推計されている点は見過ごせません。単純に安価なモデルから高価なモデルへ需要が移っただけであれば、売上高はここまで落ち込まないはずです。Boiling Steamは、平均販売価格が約54%上昇したことによって、需要そのものが大きく減った可能性を指摘しています。
出典:Boiling Steam「The Great Steam Deck Volume Crash」 / Steamストア週間トップセラー
推計の限界「最大82%減」はValve公式の実績ではなく推計値である点に注意
今回報じられている最大82%減という数字は、Valveが公表した販売実績ではありません。Steamの週間売上ランキングは、販売本数ではなく売上金額を基準に並べられており、無料プレイタイトルについてはゲーム内課金なども含まれるため、順位だけを見てSteam Deckの販売台数を直接計算することはできません。
Boiling Steamは、過去のランキング帯ごとの推計売上高に加え、Steam Deckのモデル構成と平均販売価格を仮定したうえで、販売台数を逆算しています。したがって、実際の減少率が正確に82%だったと断定することはできません。ランキング上位には大型タイトルの発売時期やセール状況も影響するため、一定の誤差が含まれる推計だと理解しておく必要があります。
本記事で紹介する82%・72%・54%といった数値は、いずれもBoiling Steamによる推計です。Valveは販売台数・売上高を公式に開示していません。順位の後退傾向そのものは複数の週で確認できますが、具体的な減少率には幅があると考えてください。
それでも、Steam Deckが2025年に維持していた4〜5位前後から、値上げ後に10位台へ後退したこと、そして再入荷後も以前の水準を安定して回復できていないことは、複数の週にわたって確認できる傾向です。82%という数字そのものより、この順位の後退が続いているという事実の方が、需要減少を裏付ける材料として重要です。
海外価格改定Valveは2026年5月27日にSteam Deck OLEDを44〜46%値上げ
Valveは2026年5月27日、在庫切れが続いていたSteam Deck OLEDの販売再開にあわせて、価格改定を発表しました。米国での新旧価格は次の通りです。
| モデル | 旧価格 | 新価格 | 値上げ幅 |
|---|---|---|---|
| Steam Deck OLED 512GB | 549ドル | 789ドル | 240ドル・約44%増 |
| Steam Deck OLED 1TB | 649ドル | 949ドル | 300ドル・約46%増 |
Valveは値上げの理由として、メモリとストレージのコスト上昇、そして業界全体が直面している物流上の問題を挙げています。Steam Deck本体の性能や仕様が強化されたわけではなく、同じ製品を継続して製造・販売するための価格改定という位置付けです。
あわせて、従来399ドルで販売されていた256GB LCDモデルの新品販売が事実上終了したことも、平均購入価格を押し上げる一因になっています。これまでSteam Deckは、400〜600ドル程度で購入できる携帯型ゲーミングPCとして人気を集めてきましたが、現在は最も安いOLEDモデルでも789ドルからとなり、購入時の心理的なハードルが大きく上がっています。
出典:Valve公式アナウンス(Steam Community・2026年5月27日付)
国内動向国内価格は3か月で6割以上上昇|KOMODOが2段階で価格を改定
日本では、米国以上に大きな価格上昇が発生しています。国内正規販売代理店のKOMODOは、物流コストの上昇と為替環境の変化を理由に、2026年3月6日からSteam Deck OLEDの価格を改定しました。この時点で512GBモデルと1TBモデルは、それぞれ1万5,000円値上げされています。その後、Valveが実施した世界的な価格改定を受けて、2026年6月1日から国内価格が再度引き上げられました。
| モデル | 2026年3月以前 | 3月6日改定後 | 6月1日改定後 | 合計上昇率 |
|---|---|---|---|---|
| Steam Deck OLED 512GB | 84,800円 | 99,800円 | 137,980円 | 約63% |
| Steam Deck OLED 1TB | 99,800円 | 114,800円 | 167,980円 | 約68% |
512GBモデルは約5万3,000円、1TBモデルは約6万8,000円の上昇です。わずか3か月ほどで6〜7割高くなった計算で、現在の1TBモデルは17万円に迫る価格になっています。
上記の63%・68%という上昇率は、2026年3月以前の価格を基準にした2回分の改定を合計した数字です。Notebookcheckは、直近の2026年6月1日の改定1回分だけを比較対象に、日本向けの上昇率を512GBが約38%、1TBが約46%と紹介しています。どちらも同じ2026年6月1日時点の新価格(512GB 137,980円・1TB 167,980円)を扱っており、矛盾しているわけではなく、比較の基準時点が異なるだけです。3月以前から通しで見るか、直近の1回の改定だけで見るかによって数字が変わる点に注意してください。
発売当初のSteam Deckは、一般的なゲーミングPCより安価にSteamのゲームを遊べることが大きな魅力でした。しかし、現在の国内価格ではエントリークラスのゲーミングノートPCや、より高性能なWindows搭載携帯機も比較対象に入ります。
出典:Notebookcheck「Steam Deck price rises by as much as 51% in Asia…」/国内2段階の価格改定は国内正規販売代理店KOMODOの発表にもとづきます。
立ち位置の変化Steam Deckは「圧倒的に安い携帯型PC」ではなくなった
Steam Deck OLEDは、現在でも完成度の高い携帯型ゲーミングPCです。SteamOSに最適化された操作性、ゲームをスリープ状態からすぐ再開できる手軽さ、コミュニティが蓄積してきた対応ゲーム情報などは、Windows搭載機にはない強みです。
一方、Steam Deckに搭載されているAMD製APUの基本性能は、2023年にOLEDモデルが登場した際にも大きく変更されていません。OLED版ではディスプレイ、バッテリー駆動時間、冷却性能、通信機能などが改善されましたが、ゲーム性能はLCD版とほぼ同等のままです。
そのため、現在の13万〜17万円という価格帯では、次のような競合製品と比較されやすくなっています。
- ASUS ROG Allyシリーズ
- Lenovo Legion Goシリーズ
- MSI Clawシリーズ
- その他のRyzen Z1/Z2系APU搭載Windows携帯機
- エントリークラスのゲーミングノートPC
Steam Deckが400〜600ドル程度だった時代には、多少性能が低くても価格と使いやすさで選ぶ理由がありました。しかし、OLED 512GBモデルが789ドル、日本では137,980円まで上昇すると、同じ予算を出すならより高性能なWindows機を選ぶという判断も増えます。
今回の販売減少が事実であれば、単純にSteam Deckへの関心が失われたのではなく、製品の性能と価格のバランスに対して、購入者が割高感を抱き始めた結果と考えるのが自然です。
他の要因在庫切れや比較時期も販売減少に影響した可能性
値上げだけを販売減少の唯一の原因と決めつけることもできません。Steam Deckは2026年初頭から、複数地域で長期間にわたって在庫不足が続いていました。購入できない期間が長引いたことで、購入予定者が競合機へ流れたり、携帯機そのものの購入を見送ったりした可能性があります。再入荷を待っていたユーザーにとっても、販売再開と同時に4割以上値上げされたことは大きなマイナス材料です。
また、Boiling Steamが比較対象とした2025年には、大型セールやホリデーシーズンなど、Steam Deckが上位に入りやすい期間も含まれています。週間売上ランキングは、その週に発売された人気ゲームやセール対象作品によって大きく変動するため、数週間の順位だけで長期的な需要を判断するのは早いでしょう。
実際、SteamDBのデータでは、Steam Deckは2026年6月2日から9日までの週間ランキングで6位に入っており、再入荷直後には一定の需要が残っていたことが分かります。今後も10位台が定位置になるのか、再び上位に戻るのかを判断するには、数か月単位でランキングを追う必要があります。
部品コスト部品価格が下がらなければ旧価格への回帰は難しい
Valveは今回の値上げについて、メモリとストレージのコスト上昇を理由に挙げています。そのため、Steam Deckの価格が以前の水準へ戻るには、NANDフラッシュやメモリを含む部品価格と供給状況が改善する必要があります。
Valveの担当者は2026年7月、メモリを取り巻く状況について、依然として悪化が続いているとの認識を示しています。小売価格には部品の調達コストが数か月遅れて反映されるため、今後もPCやゲーム機の価格上昇が続く可能性があります。
Steam Deckだけを短期間で値下げするのは難しく、少なくとも部品価格が落ち着くまでは、現在の価格が維持される可能性が高いとみられます。
出典:PC Gamer「Valve says there’s no end in sight to the memory crisis…」(Valve担当者コメント・2026年7月18日付)
購入判断現行Steam Deckを今から買うべきか
現行のSteam Deck OLEDを買う価値が完全になくなったわけではありません。SteamOSの使いやすさやOLEDディスプレイ、静音性、バッテリー駆動時間を重視する場合、Steam Deckは現在も魅力的な選択肢です。特に、重量級タイトルよりも、インディーゲーム、2Dゲーム、過去のPCゲームを携帯して遊びたい人とは相性が良いでしょう。
ただし、日本で137,980円以上を支払うとなると、以前のように価格だけで即決できる製品ではありません。購入前には、同価格帯のWindows携帯機やゲーミングノートPCと比較したほうがよいでしょう。
- SteamOSの操作性やスリープ復帰の手軽さを最優先したい人
- インディーゲーム・2Dゲーム・過去作中心に遊ぶ人
- アンチチート採用ゲームをあまりプレイしない人
- Windowsアプリをほとんど使わない人
- 重量級タイトルを高画質・高フレームレートで遊びたい人
- アンチチート採用ゲームを頻繁にプレイする人
- Windowsアプリを日常的に使う人
- 携帯性より純粋な性能・互換性を優先したい人
次世代機への期待Steam Deck 2の登場まで買い控えが続く可能性も
現行Steam Deckは、発売から時間が経過していることも需要減少の一因と考えられます。Valveは以前から、性能をわずかに引き上げただけの短期間のモデルチェンジには慎重な姿勢を示してきました。次世代モデルでは、バッテリー駆動時間を大きく損なわず、明確な性能向上を実現できることを重視しているとされており、Steam Deck 2がすぐに発売されるとは限りません。
しかし、現行モデルが17万円近い価格になると、購入者から見れば数年前と同等のゲーム性能を持つ製品を、値上げ後の価格で買う状態になります。急いで携帯型PCを必要としていないユーザーほど、現行モデルを購入せず、次世代Steam Deckや新しいAPUを搭載した競合機を待つ可能性があります。
おすすめ価格が上がった今、代わりに検討したい携帯型ゲーミングPC
Steam Deckの値上げによって、価格差だけを理由にWindows搭載ハンドヘルドを避ける理由は薄れつつあります。ここでは、比較検討されやすいWindows搭載ハンドヘルドを紹介します。価格は変動するため、購入前に最新価格をご確認ください。
総括まとめ|大幅値上げでSteam Deckの立ち位置が変化
Steam Deckの販売台数が最大82%減少したという数字は、Valveの公式発表ではなく、Steamの週間売上ランキングを基にしたBoiling Steamの推計です。実際の販売台数や減少率は不明であり、82%という数字だけを確定情報として扱うべきではありません。
それでも、米国で44〜46%、日本で約63〜68%という大幅な値上げが、需要に影響している可能性は高いといえます。Steam Deckは、携帯型ゲーミングPCという市場を広げた代表的な製品です。しかし、現在の価格では「比較的安価にPCゲームを持ち運べる端末」ではなく、「SteamOSの使いやすさに価値を感じる人向けの、価格が上がった携帯機」へと立ち位置が変わりつつあります。
今後も売上ランキングの低迷が続くかどうかは、数か月単位で確認する必要があります。ただし、部品価格が短期間で下がる見込みは薄く、値上げ以前の価格帯にSteam Deckが戻る可能性は当面低いとみておいたほうがよさそうです。





