Linux 7.3で旧Radeonが延命|GFX6~GFX8の表示対応をValveのエンジニアが改善【2026年最新】
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GFX6~GFX8の表示対応をValve契約開発者が改善
出典:Phoronix「DRM Format Modifiers For Old AMD GPUs Coming With Linux 7.3」 / freedesktop.org amd-gfxメーリングリストのパッチ投稿。日程・状況は本記事公開時点(2026年8月2日)の情報にもとづきます。
押し入れに眠っている、あるいは今も現役で使っているRadeon HD 7000番台やR9・RX 400番台のグラフィックボード。最新ゲームは厳しくても、Linuxでの表示用途や軽いゲームには使えるのに、新しいLinuxデスクトップ環境との相性で損をしていた場面がありました。
Linux 7.3では、こうした旧世代Radeon(GFX6~GFX8世代)に「DRM Format Modifier」という仕組みの対応が追加される見通しです。開発したのはValveの契約開発者Timur Kristóf氏で、GPUが作成した画像バッファーを、ディスプレイエンジン・Waylandコンポジター・Vulkan・OpenGL・動画再生機能などの間で受け渡す仕組みが改善されます。これまで代替経路や制限付きの処理が必要だった場面で、より新しいLinuxグラフィックス環境を利用しやすくなります。
この記事では、今回の変更が具体的に何を改善するのか、ゲームのFPSは上がるのか、いつ・どう対応すればよいのかを整理します。
目次
要点結論|旧RadeonでWayland環境を使いやすくする更新
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象カーネル | Linux 7.3に向けて準備中 |
| 新規対応GPU | GFX6~GFX8 |
| おおよその世代 | Radeon HD 7000~Radeon RX 400・500 |
| GFX9 | 以前からFormat Modifierに対応 |
| 開発者 | Timur Kristóf氏(Valve契約開発者) |
| 主な改善 | 画像バッファーのレイアウト情報を標準的に共有 |
| 影響する用途 | Wayland・Vulkanコンポジター・Zink・動画API連携など |
| ゲームのFPS | 一律に向上する更新ではない |
特に恩恵を受ける可能性があるのは、Vulkanで描画するWaylandコンポジターや、OpenGLをVulkan上で動かすZink、VA-API・OpenGL・Vulkan間で画像を共有する処理です。パッチの説明でも、これまで旧GPUでは動作しなかった機能や、フォールバック処理を必要としていた機能を利用しやすくすることが目的として挙げられています。ただし、Linux 7.3を導入するだけですべての環境が即座に改善するわけではありません。カーネル側のAMDGPUだけでなく、Mesaやlibdrmなど、ユーザー空間側の対応も必要です。
対象GPU新規対応はGFX6~GFX8、GFX9はすでに対応済み
今回のパッチが新たにDRM Format Modifierへ対応させるのは、AMDのGFX6・GFX7・GFX8世代です。パッチでは、これらをAMDGPUカーネルドライバーが対応する最古のGPU世代であり、Format Modifierに対応していなかった最後の世代と説明しています。
| GFX世代 | 主なアーキテクチャ | 代表的な製品例 |
|---|---|---|
| GFX6 | Southern Islands | Radeon HD 7000、R9 280系 |
| GFX7 | Sea Islands・CIK | Radeon R7 260X、R9 290・390系 |
| GFX8 | Volcanic Islands・Fiji・Polaris | Radeon R9 Fury、RX 400・500系 |
| GFX9 | Vega | RX Vega、Vega内蔵GPUなど |
製品名とGFX世代は完全に一対一ではなく、リブランド製品やAPUも存在します。自分のGPUがどのGFX世代に属するかは、製品名だけでなく、Linux上で表示されるGPUコードネームやMesaの認識結果から確認した方が確実です。
GFX9世代では、すでにDRM Format Modifierの処理が実装されていました。Linux 7.3向けの変更によって旧世代側の空白が埋まり、GFX6からGFX9までのGCN系GPUで連続して対応できる状態になります。したがって、「GFX6~GFX9へすべて新規対応する」という意味ではなく、正確にはGFX6・GFX7・GFX8が新規対応、GFX9は既存対応の継続です。旧Radeon向けの実質的な改善対象は、GFX6~GFX8と考えてください。
技術解説DRM Format Modifierとは何か
LinuxのDRMでは、画面へ表示する画像をフレームバッファーとして管理します。画像の基本的なピクセル形式は「fourcc」と呼ばれるコードで表現されますが、それだけではGPUメモリ内でデータがどのように並んでいるかまでは分かりません。DRM Format Modifierは、fourccと組み合わせて、画像が直線的に配置されているか・タイル状に並べられているか・どのタイル形式を使用しているか・圧縮されているか・必要なメモリサイズや配置条件・ほかのドライバーやAPIと共有できる形式かといった情報を表現します。LinuxカーネルのDRM文書でも、Format Modifierは画像バッファーのタイリングや圧縮など、fourccだけでは表現できないレイアウトを説明するための仕組みとされています。簡単に表現すると、画像データに対して付ける「並べ方の説明書」です。この説明書が共通化されていれば、画像を作ったVulkanアプリケーションと、それを表示するWaylandコンポジターが、データの並び方を正しく共有できます。
GPUは画像を単純に左上から右下へ一直線に並べるより、小さなブロックやタイル単位に分割して保存した方が効率よく処理できる場合があります。近い位置にあるピクセルをまとめて配置することで、GPUのキャッシュやメモリ帯域を効率的に利用できるためです。一方、GPU世代によって利用できるタイル方式は異なります。GFX6~GFX8では、カーネルが設定したタイリングモード表にもとづき、あらかじめ決められた配置方式を使用します。今回追加されたModifierには、Array Mode・Micro Tile Mode・Pipe Configuration・Tile Split・Bank Width・Bank Height・Macro Tile Aspect・Number of Banksといった情報が格納されており、アプリケーションやドライバーは単に「タイル配置されている」という情報だけでなく、旧Radeon固有の詳細なメモリレイアウトを識別できます。
公開範囲表示できる3種類の配置方式を公開
ディスプレイ側では、GFX6~GFX8が対応するすべての組み合わせを公開するわけではありません。今回のパッチでは、実際のGPUが対応する範囲に合わせて、主に2D_TILED_THIN1+DISPLAY・1D_TILED_THIN1+DISPLAY・LINEARという形式をディスプレイ可能なModifierとして通知します。2Dタイルでは、画像のビット数やGPUの構成に応じたMacro Tileのパラメーターも使用されます。旧GPUが利用できない配置方式まで無制限に公開するのではなく、現在のチップで表示可能な形式だけを提示する設計です。アプリケーション側は、GPUとディスプレイの両方が対応する形式を選び、画像バッファーを受け渡せるようになります。
効果範囲Wayland・Zink・VA-API連携が改善する
体感差ゲームのFPSは上がるのか
今回の対応だけで、既存ゲームの平均FPSが大幅に向上する可能性は高くありません。DRM Format Modifierは、ゲーム内のシェーダー処理や描画能力そのものを強化する機能ではないためです。Compute Unitの数・GPUクロック・VRAM容量・メモリ帯域・シェーダー性能・レイトレーシング性能・対応するDirectX機能・ハードウェア動画コーデックといった要素は直接変わりません。
一方、これまで非効率なフォールバックや画像コピーが発生していた環境では、処理負荷やメモリ帯域の使用量が減る可能性があります。改善が表れやすいのは、ゲーム本体の平均FPSよりも、Wayland上での画面表示・ウィンドウ合成・フルスクリーンとウィンドウ表示の切り替え・ゲーム画面のキャプチャー・動画再生との同時利用・Vulkanベースのコンポジター・異なるGPUやAPI間の画像共有・不要なコピー処理によるカクつきといった部分です。実際の効果は、使用するデスクトップ環境、Mesa、コンポジター、アプリケーションによって異なります。「映像出力機能が増える」というより、「新しいLinuxの描画・合成経路へ旧GPUを接続しやすくなる」更新と考えると分かりやすいでしょう。HDMI 2.1やDisplayPort 2.1、8K・高リフレッシュレート対応、新しいHDR規格、AV1ハードウェアデコードといった機能が新たに追加されるわけではない点にも注意してください。
SteamOS環境Gamescopeへの効果とGFX8のDCC制限
Gamescopeは、ValveがSteamOSやLinuxゲーミング環境で利用しているマイクロコンポジターです。Vulkanを利用してゲーム画面の合成・解像度変換・アップスケーリング・フレームレート制御などを行います。Format Modifierは、Vulkanアプリケーションやコンポジターが画像バッファーを効率的に共有するうえで重要な仕組みのため、GFX6~GFX8での対応は、Gamescopeを含むVulkan系コンポジターの互換性を広げる基盤になります。ただし、今回のパッチによって、すべての旧RadeonでGamescopeの不具合が解消されると保証されたわけではありません。Gamescopeの動作には、RADVの対応状況・Vulkanの対応バージョン・Mesaのバージョン・VRAM容量・使用するディスプレイ機能・GPU固有の不具合・デスクトップ環境・ディストリビューション側の設定も関係します。Format Modifierは重要な不足機能の一つですが、旧GPUのすべての制限を解消するものではありません。
GFX8では、DCCと呼ばれる画像圧縮機能も利用できます。DCCはメモリ帯域や容量の削減に役立つ仕組みですが、GFX8ではDCCを使った形式を、そのままディスプレイへ表示できない制限が残るとされています。表示用途では、DCEが扱えるDISPLAY向けのタイル形式またはLINEAR形式を使用するかたちになり、今回の対応でGFX8のすべての圧縮バッファーを直接スキャンアウトできるようになるわけではありません。
前提条件Linux 7.3だけでは不十分
今回の機能は、カーネル側だけで完結しません。パッチ投稿時には、LinuxカーネルのAMDGPU・Mesa・libdrmという3つの領域で対応が用意されていることが説明されています。カーネルはGPUが対応するModifierを公開し、MesaのRADVやRadeonSIはその情報を理解して画像を作成します。libdrmはカーネルとユーザー空間の連携に必要な定義などを提供します。したがって、Linux 7.3へ更新しても、古いMesaやlibdrmを使い続けている場合は新機能が利用されない可能性があります。実際の利用には、各Linuxディストリビューションが対応版をまとめて提供するのを待つのが安全です。
導入判断すぐにLinux 7.3へ更新すべきか
2026年8月2日時点では、Linux 7.3は正式リリースされていません。LinuxのメインラインはLinux 7.2のリリース候補段階にあり、今回の変更は次の開発サイクルへ向けてdrm-nextへ準備されている状態です。drm-nextへ入った変更はLinux 7.3へ取り込まれる可能性が高いものの、正式版が公開されるまでは修正・延期・取り下げが行われる可能性があります。
一般ユーザーがパッチだけを先行導入する必要はありません。特に旧GPUでは、新しいコードによって黒画面・スリープ復帰失敗・GPUハング・一部映像出力の不具合・Waylandコンポジターのクラッシュ・動画再生の乱れ・消費電力の増加といった回帰が発生する可能性もあります。日常的に使用しているPCでは、Linux 7.3の正式版と、対応するMesa・libdrmがディストリビューションから提供されてから導入する方がよいでしょう。
チェック手順使用中のRadeonが対象か確認する方法
Linux上では、次のコマンドでGPU名や使用中のカーネルドライバーを確認できます。
lspci -k | grep -A 3 -E "VGA|Display"
AMDGPUが使用されている場合は、次のような表示が含まれます。
Kernel driver in use: amdgpu
OpenGLとMesaの情報は次のコマンドで確認できます。
glxinfo -B
VulkanのGPU情報は次のコマンドで確認できます。
vulkaninfo --summary
MesaのRADV文書では、RADVはLinuxカーネルが対応するすべてのGCN・RDNA系GPUを対象としており、GFX6~GFX7ではVulkan 1.3、GFX8以降ではVulkan 1.4をサポートすると説明されています。ただし、表示されるVulkanバージョンは、GPU・Mesa・ディストリビューション・ドライバー設定によって異なる場合があります。
活用余地旧Radeonの寿命はどこまで延びるのか
今回の対応は、Radeon HD 7000やR9 200・300、R9 Fury、RX 400・500シリーズの性能を、現行GPUと同等にするものではありません。旧GPUには、VRAM容量が少ない・最新ゲームの最低要件を満たせない・AV1デコードに非対応・レイトレーシングに非対応・消費電力が高い・新しい映像出力規格に対応しない・最新の高負荷ゲームでは性能不足・一部のGPUは経年劣化が進んでいるといった限界が今も残っています。Timur Kristóf氏も、旧GPUは現在では2~3GB程度の少ないVRAMが制約になりやすく、主な用途として同時代のゲーム・レトロゲーム・ディスプレイ出力・古いPCでのLinux利用などを挙げています。それでも、表示用GPU・軽量ゲーム用PC・ホームシアターPC・検証用Linuxマシンとして使う場合、ドライバー側の互換性が維持される意味は大きいでしょう。
開発の背景なぜValveが旧Radeonを改善するのか
Timur Kristóf氏は、Valveの契約開発者としてRADV・ACO・NIRなど、Linuxのオープンソースグラフィックススタックを開発しています。Valveにとって、Linux上で幅広いAMD GPUが安定して動作することには、SteamOSを利用できるPCを増やせる・Linux版Steamの対応範囲を広げられる・ProtonやDXVKの検証環境を増やせる・Gamescopeを幅広いGPUで利用できる・古いPCでもLinuxゲーミングを試しやすくなる・AMDGPUやRADVの共通コードを改善できる・新しいGPUにも潜んでいる不具合を発見できるといった複数の利点があります。旧GPUのデバッグによって、新しいGPUと共有されているコードの問題が見つかる場合もあります。Kristóf氏の発表資料でも、古いGPUの問題を調査することが、新しいGPUの問題発見につながる場合があると説明されています。単に古い製品を保存するだけでなく、AMDGPUとMesa全体の品質向上にもつながる取り組みです。
FAQよくある質問
総括まとめ|旧Radeonを新しいLinuxデスクトップへ接続する基盤整備
Linux 7.3では、旧RadeonのGFX6~GFX8世代へDRM Format Modifierの対応が追加される見通しです。主な対象は、Radeon HD 7000シリーズからRadeon RX 400・500シリーズまでのGCN系GPUで、GFX9はすでに対応済みのため今回の新規対象ではありません。GFX6~GFX8の空白が埋まることで、GFX6からGFX9までを連続して扱えるようになります。
DRM Format Modifierは、GPUメモリ内の画像がどのようにタイル配置・圧縮されているかを表す仕組みです。対応によって、VulkanベースのWaylandコンポジター・Zink上で動くコンポジター・GamescopeなどのVulkan環境・VA-API/OpenGL/Vulkan間の画像共有・画像コピーやフォールバック処理の削減といった用途が改善する可能性があります。
一方、GPUの演算能力やVRAM容量が増えるわけではなく、既存ゲームのFPSが一律に上がる更新でもありません。実際に利用するにはLinux 7.3だけでなく、対応するMesaとlibdrmも必要です。旧Radeonを最新GPUへ変える機能ではありませんが、古いハードウェアを現在のWayland・Vulkan中心のLinux環境へ接続し続けるための、重要な基盤整備といえるでしょう。

