FFmpegがRTX GPU向け動画フレーム補間フィルターに対応|「fruc_vulkan」の対応GPUとDLSSとの違い【2026年9月】
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「fruc_vulkan」はRTX 30シリーズ以降が対象、DLSSフレーム生成とは別の機能です
出典:GitHub FFmpeg/FFmpegのfruc_vulkanコミット・Phoronix報道・NVIDIA公式Optical Flow SDK 5.0ドキュメントにもとづきます。
録画済みの動画やゲームプレイ映像を、もっと滑らかな見た目にしたいと考えたことはないでしょうか。24fpsや30fpsの映像を60fpsへ変換するフレーム補間処理は、動画編集ソフトの中では以前から存在していましたが、CPUだけで処理すると時間がかかるのが悩みどころでした。そんな中、オープンソースの動画処理ツール「FFmpeg」に、NVIDIA GPUの専用ハードウェアを使った新しいフレーム補間フィルターが追加されたと海外で報じられ、動画編集者やエンコード愛好家の間で話題になっています。
2026年8月29日前後、FFmpegの開発版(Gitのmasterブランチ)に、「fruc_vulkan」という一連のコミットがマージされました。NVIDIAがVulkan経由で公開している「Optical Flow」機能を使い、GPU内蔵の専用ハードウェアで2枚のフレームの間の動きを解析し、その結果をもとに中間フレームを合成してフレームレートを引き上げる仕組みです。ただし現時点では、FFmpegの安定版には含まれておらずmasterブランチ限定で、ソースからビルドしないと使えません。対応する動画編集・エンコードアプリケーションも、本稿執筆時点ではまだ確認されていません。
この記事では、「今すぐ使えるか」ではなく、fruc_vulkanが何をする機能なのか、自分のGPUが対応世代に含まれるのか、そしてゲームのフレームレートをその場で増やすDLSSフレーム生成と何が違うのかを、GitHubのコミット・Phoronixの報道・NVIDIA公式のOptical Flow SDK 5.0ドキュメントにもとづいて整理します。読み終えたときに、自分がこの機能を待つべきか、気にしなくていいかを判断できる内容を目指しています。
目次
追加FFmpegの開発版にNVIDIA GPU向け動画フレーム補間フィルターが追加された
FFmpegはオープンソースの動画処理エンジンで、多くの動画編集ソフトやエンコードツールの内部で使われています。そのGitHub上の開発版リポジトリに、2026年8月29日前後、「fruc_vulkan」と名付けられた一連のコミット(46件のパッチからなるシリーズ)がマージされました。Phoronixの報道によれば、コードは土曜日(8月29日)にFFmpegのGitリポジトリへアップストリームされたとされています。
追加されたのは、FRUC(Frame Rate Up-Conversion、フレームレート・アップコンバージョン)と呼ばれる処理を行うフィルターです。前後2枚のフレームから中間フレームを生成し、動画全体のフレームレートを引き上げます。たとえば24fpsで撮影した映像を48fpsへ、30fpsの映像を60fpsへなめらかにする、といった用途です。マージ後もコードの改良は続いており、GitHub上の直近のコミットでは、単純なフレームのブレンド処理から、算出したOptical Flow情報でフレームを歪ませてから合成する、より精度の高い方式へ更新されています。
概要fruc_vulkanとは何か、DLSSフレーム生成との違い
fruc_vulkanは、FFmpegの映像フィルターの一つとして実装されています。処理の流れは次のとおりです。まず、連続する2枚のフレームについて、NVIDIA GPUに搭載されたOptical Flow Accelerator(NVOFA)というハードウェアが、Vulkan経由(VK_NV_optical_flow拡張)で前方向・後方向それぞれのOptical Flow(動きベクトル)を計算します。次に、FFmpeg側のVulkanシェーダーが、その動きベクトルをもとに2枚のフレームを歪ませてからブレンドし、中間フレームを合成します。
FFmpeg公式のフィルタードキュメントによると、fruc_vulkanには主に3つのオプションがあります。出力フレームレートを指定するfps(既定値は60。source_fpsという定数を使ってsource_fps*2のように入力フレームレートに対する倍率でも指定可能)、速度と精度のバランスを調整するperf(slow・medium・fastの3段階、既定はslow)、そしてOptical Flowを計算する際のグリッドの粗さを指定するgrid(既定はauto、GPUが対応する最も細かい設定が自動選択される)です。
ここまで読むと「DLSSフレーム生成と同じでは」と感じるかもしれませんが、両者は仕組みも用途もまったく異なります。DLSSフレーム生成は、ゲームをプレイしている最中に、リアルタイムで表示フレームレートを引き上げるための技術です。一方のfruc_vulkanは、FFmpegという動画処理ツールの機能であり、すでに録画・エンコード済みの動画ファイルを、後から処理してフレームレートを変換するためのものです。ゲームプレイ中にfps表示がその場で増える、という類の機能ではありません。
技術方式にも違いがあります。DLSSフレーム生成はニューラルネットワークを使ったAI技術ですが、fruc_vulkanが使うOptical Flowは、2枚の画像から物体の動きベクトルを推定する、古くからある画像処理の手法です。fruc_vulkanは、このOptical Flowの計算をNVIDIAの専用ハードウェアで高速に行っている、という位置づけになります。DLSSフレーム生成の対応状況についてはDLSSフレーム生成がグレーアウトして使えない原因を解説した記事で詳しく整理していますが、2026年時点ではRTX 40・50シリーズに限られています。fruc_vulkanがRTX 30シリーズにも対応している点は、この2つの機能を分ける明確な違いの一つです。
対応GPU対応GPUはRTX 30シリーズ以降、RTX 20シリーズは非対応
NVIDIAは、Vulkan経由でOptical Flow機能を公開するAPIとして「Optical Flow SDK」を提供しています。fruc_vulkanが依存するVulkanインターフェースは、このSDKのバージョン5.0で追加されました。NVIDIA公式のOptical Flow SDK 5.0ドキュメントに掲載されている対応表によると、GPU世代ごとの対応状況は次のようになっています。
- RTX 30・RTX 40・RTX 50シリーズ(Ampere世代以降) — Vulkan経由のOptical Flowモードに対応し、fruc_vulkanが動作します。
- RTX 20シリーズ(Turing世代) — GPU自体にOptical Flow Acceleratorのハードウェアは搭載していますが、Vulkanインターフェースを介したOptical Flowモードには非対応です。fruc_vulkanは使えません。
やや紛らわしいのは、Turing世代がOptical Flow機能そのものを一切持たないわけではない点です。NVIDIA公式ドキュメントのハードウェア対応表では、Optical Flowモード自体はTuring・Ampere・Adaのいずれでも「対応」と記載されています。ただし、Vulkanインターフェース経由でこの機能を使う場合に限り、Turing世代は対象外になるという注記があります。CUDAやDirectX経由ならTuring世代でもOptical Flow機能を使える場面がありますが、FFmpegのfruc_vulkanフィルターはVulkanインターフェースを前提に実装されているため、この制約をそのまま受け継いでいます。
同じ対応表では、より細かい違いも示されています。Optical Flowの計算範囲を指定する「グリッドサイズ」について、Ampere・Ada世代は最も細かい2×2・1×1まで指定できるのに対し、Turing世代は最も粗い4×4までしか対応していません。処理できる最大解像度も、Turing世代の4096×4096に対し、Ampere・Ada世代は8192×8192まで対応します。GPU世代の線引きは、Vulkan対応の有無だけでなく、ハードウェア自体の細かい機能差にも裏付けられているといえます。世代ごとの実力差はRTX 3080・RTX 3080 Tiは2026年でも現役かを検証した記事やRTX 2070(無印)は2026年でも現役かを検証した記事でも確認できます。
世代差RTX 40シリーズはさらに高速・高品質
対応GPUの中でも、世代によって性能差があります。NVIDIAの開発者ブログによると、Ada世代(RTX 40シリーズ)のOptical Flow Accelerator(NVOFA)は、前世代のAmpere(RTX 30シリーズ)と比べて処理速度が約2倍に向上しています。また、KITTI2015という公開データセットを使った同一プリセットでの比較では、品質面でも10〜15%の向上が確認されているとされています。
NVIDIAはAda世代のOptical Flow Acceleratorで、動き推定の前処理・後処理アルゴリズムの一部を専用ハードウェアへ移すことで高速化したと説明しています。fruc_vulkanはこのハードウェアを直接利用するため、RTX 40シリーズを使うと、同じ設定でもRTX 30シリーズより高速に、かつ高品質にフレーム補間を処理できることになります。
つまり、RTX 30シリーズでもfruc_vulkanは動作しますが、快適に使えるかどうかは世代差の影響を受けやすいということです。これから動画編集・エンコード用途も見据えてGPUを選ぶなら、RTX 40シリーズ以降のほうが有利な立ち位置にあります。ただし、後述するとおりこの機能自体がまだ一般提供されていないため、fruc_vulkanの存在だけを理由にGPUを買い替える必要はありません。
比較既存のminterpolateとの違い
FFmpegには、fruc_vulkanが登場する以前から、動画のフレームレートを引き上げるフィルター「minterpolate」が存在します。FFmpeg公式ドキュメントによると、minterpolateは前後のフレームをブロック単位で比較する動き補償(mci、Motion Compensated Interpolation)モードを持ち、フレームの重複(dup)やブレンド(blend)といった簡易的なモードも選べます。これらの処理はすべてCPU上のソフトウェアとして実行され、GPUの専用ハードウェアは使いません。
fruc_vulkanは、この計算をNVIDIA GPUのOptical Flow Acceleratorという専用ハードウェアへ肩代わりさせる設計です。海外メディアの報道によれば、Vulkanを使うことで、デコードからフレーム補間、エンコードまでの処理をGPUのメモリ上だけで完結させ、CPUとGPUの間でフレームをやり取りするコストを避けられるという利点もあるとされています。原理から考えれば、GPUの専用回路を使うfruc_vulkanのほうが高速化の余地は大きいと考えられます。
本稿の時点で、minterpolateとfruc_vulkanを同一条件で比較した速度・画質の実測データは見当たりません。上記はあくまで両者の仕組み上の違いであり、fruc_vulkanのほうが速い、画質が良いと断定できる段階ではない点に注意してください。
現状今すぐ使えるわけではない、安定版・対応アプリはまだ先
画面解像度が上がるほど、Optical Flowの計算コストが処理全体の中で大きな割合を占めるようになります。4Kのような高解像度の映像を、リアルタイムで最高品質の設定のまま処理するのは負荷が大きく、実用時にはperfやgridといったオプションを速度寄りに調整する運用が必要になるとみられます。
判断自分は今どうすればいいか
ここまで整理してきたとおり、fruc_vulkanは発表されたばかりの機能で、安定版にも対応アプリにもまだ入っていません。だからといって、まったく無視していい話でもありません。自分がどちらに当てはまるか、次の整理で確認してください。
- ふだんゲームをプレイするだけで、動画編集やエンコードはしない
- DLSSフレーム生成を探していて、fruc_vulkanのニュースにたどり着いた(この2つは別の機能です)
- 対応アプリが登場してから使い方を調べたい
- 動画編集・エンコード環境のGPUがRTX 30シリーズ以降か確認したい(RTX 20シリーズ以前は対象外)
- FFmpegを普段からソースビルドして使っている、または試してみたい
- 24fps・30fpsで撮った手持ちの動画をなめらかにしたい用途がある
- これからGPUを新調する予定があり、動画エンコード用途も見据えるならRTX 40シリーズ以降が有利(ただしこの機能単体が購入理由にはなりません)
Q&Aよくある質問
2026年8月29日前後、FFmpegの開発版(Gitのmasterブランチ)に、NVIDIA GPUのOptical Flow Accelerator(NVOFA)を使う動画フレーム補間フィルター「fruc_vulkan」がマージされました。前後のフレームから中間フレームを合成し、24fps・30fpsの映像を60fpsなどへなめらかにする機能で、対応GPUはVulkan経由のOptical Flowモードに対応するRTX 30シリーズ以降です。RTX 20シリーズ(Turing世代)はハードウェア自体は搭載していてもVulkanインターフェースには対応しておらず、fruc_vulkanは使えません。RTX 40シリーズはAmpere世代と比べて処理速度が約2倍、品質も10〜15%向上しているとNVIDIAは説明しています。
ゲームのリアルタイムFPSを増やすDLSSフレーム生成とは仕組みも用途も別物で、fruc_vulkanはあくまで録画・エンコード済みの動画ファイルを後処理するFFmpegの機能です。現時点ではFFmpegの安定版には未収録で、ソースからのビルドが必要なうえ、対応する動画編集・エンコードアプリケーションもまだありません。
今すぐ何かを操作する必要がある機能ではありませんが、動画編集・エンコードでGPUのフレーム補間を使いたい人は、自分の環境がRTX 30シリーズ以降かどうかを確認しておくと、対応アプリが登場したときにすぐ活用できます。それ以外の人は、安定版への収録や対応アプリの登場といった続報を待つのがおすすめです。




