DuckStationがマルチスレッドシェーダーコンパイル対応|Android版はVulkan対応もGoogle Play反映はまだ先
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Android版はVulkan対応もGoogle Play反映はまだ先
出典:DuckStation公式GitHubリポジトリ(コミット履歴・README)・VideoCardz・Time Extension(開発者コメント)にもとづきます(2026年9月18日時点)。
DuckStationの2026年9月15日版Preview Buildに、GPU周辺の処理をまとめて見直す変更が入りました。シェーダー生成をUIDベースへ変更する変更、UIDをキャッシュキーとして利用する変更、マルチスレッドシェーダーコンパイル、マルチスレッドパイプラインコンパイルが同日に連続してマージされています。
一見「DuckStationのFPSが上がるアップデート」に見えますが、対象になっているのは平均FPSではなく、シェーダーやパイプラインをまだキャッシュしていないときに発生する一時的な停止時間です。さらにAndroidではレンダラーによって恩恵が異なり、Vulkanは対象、OpenGLは対象外です。
DuckStation公式のGitHubコミット履歴と開発者自身のコメントを確認すると、今回の変更がどの環境にいつ届くのかは、単純な「更新すれば速くなる」という話では済まないことが見えてきます。
目次
変更内容シェーダーとパイプラインのコンパイルをマルチスレッド化
DuckStation公式GitHubのコミット履歴では、2026年9月15日に「GPU/HW: Use UIDs for shader generation」「GPU/HW: Use UIDs as shader cache keys」「GPU/HW: Use multi-threaded shader compilation」「GPU/HW: Use multi-threaded pipeline compilation」が連続してマージされています。従来のように一つの処理が終わるまで次の処理を待つのではなく、コンパイル可能な処理を非同期タスクへ渡し、複数のCPUスレッドで並行処理できるようにした変更です。
シェーダーは、GPUに「頂点をどう処理するか」「各ピクセルをどう描画するか」を実行させるプログラムです。グラフィックスパイプラインは、シェーダーに加えてブレンディングや深度処理など描画時に必要な複数の状態をまとめたものです。シェーダーだけを高速化してもパイプライン生成で待たされれば起動時間や設定変更時の待ち時間は残るため、今回は両方を並列化している点がポイントです。一般的なシェーダーコンパイル起因のカクつき自体の仕組みは、シェーダーコンパイル・スタッタリング対処のガイド記事で詳しく解説しています。
効果の実態「FPSが大幅アップする更新」ではない
今回のアップデートで誤解しやすいのが、「マルチスレッド化したからFPSが大幅に上がる」という理解です。並列化されたのはPS1本体のCPU処理や毎フレームの描画処理そのものではなく、DuckStationがまだキャッシュしていないシェーダーやパイプラインを準備する処理です。すでにシェーダーキャッシュが完成していて安定動作しているゲームでは、更新前後で平均FPSがほとんど変わらない可能性があります。注目すべきは「60fpsが80fpsになるか」ではなく、フレームタイムが一時的に大きく跳ねる場面が短くなるかどうかです。
体感しやすいのは、DuckStationを起動して常に同じ設定で遊び続ける場合よりも、内部解像度や描画設定を頻繁に変更するユーザー、シェーダーキャッシュを削除した直後、新しいグラフィック設定を試している途中などです。また、キャッシュ形式自体も変更されているため、新しいPreview Buildへ移行した直後は既存キャッシュがそのまま使えず、一度シェーダーが再構築される場合があります。アップデート直後の1回目の起動だけを見て「速くなっていない」と感じても不思議ではありません。
Android版の注意点対象はVulkanのみ、OpenGLは対象外
Androidユーザーにとって重要なのがレンダラーです。DuckStationはハードウェアレンダラーとしてDirect3D 11・Direct3D 12・OpenGL・Vulkan・Metalに対応していますが、今回のマルチスレッドシェーダーコンパイルが使えるのはDirect3D 11・Direct3D 12・Vulkan・Metalで、OpenGLは対象外です。DuckStationはOpenGL経由のシェーダーコンパイルを現時点でスレッドセーフとして扱っていないことが理由です。Androidでは主にOpenGLまたはVulkanが使われるため、今回の恩恵を期待するならVulkanを選んでいるかどうかが分かれ目になります。OpenGLのままで「アップデートしたのに速くならない」という場合も、不具合とは限りません。
ただし、OpenGLで問題なく動作している環境を、この変更だけを理由にVulkanへ切り替える必要はありません。GPUドライバーとの相性は端末によって異なり、特定のゲームやGPUではOpenGLの方が安定して描画できることもあります。Vulkanを使用していて、設定変更後やキャッシュ生成時に長い待ち時間を感じていた場合には、試す価値がある変更です。
配信状況Google Play版への反映はまだ先の可能性が高い
ここが今回のニュースで最も注意したい点です。DuckStation公式GitHubでは、2026年9月18日時点でLatest Preview Buildが9月17日版、Latest Rolling Releaseが9月12日版です。今回のマルチスレッドシェーダーコンパイルは9月15日に追加されたため、9月12日のRolling Releaseにはまだ含まれていません。さらにPreview Buildとして自動生成されるのはWindows・Linux・macOS版で、Android版のAPKは公式のビルド成果物に含まれていません。
Google Playで配信されているDuckStationは、2026年9月18日時点で最終更新日が2025年5月1日と表示されています。開発者のStenzek氏は2026年3月10日のコミュニティでのやり取りで、Android版の更新予定を問われた際に「時間がなく、Androidユーザーからも更新を望まれていない」「否定的な反応しか返ってこないことに時間と労力を割く余裕はない」と説明しており、Android版はほぼ開発が止まった状態にあります。つまり今回のコード変更がAndroidで動く実装になっていることと、Google PlayからインストールできるAndroid版に反映されていることは別の話です。「Android版DuckStationが速くなった」とだけ伝えると、この部分が抜け落ちます。
対応今どうすればいいか
- PC版(Windows・Linux・macOS)でVulkanまたはDirect3D 12を使っている人
- 内部解像度やグラフィック設定を頻繁に変更する人
- 設定変更後やキャッシュ生成時の待ち時間が気になっていた人
- 安定性を重視し、Rolling Releaseのままで運用したい人
- Android版でこの変更を期待している人(Google Play版への反映時期は未定)
- OpenGLで現状問題なく動作している人
PC版で試す場合も、今回の変更はまだ正式なRolling Releaseではなくpreview側に先行投入されている段階です。安定性を優先するなら急いでPreviewへ移行する必要はありません。Android版でDuckStationの更新を待ち続けている場合は、開発者自身がサポート終了に近い姿勢を示していることを踏まえ、SwanStationやBeetle PSXなど他のPS1エミュレーターの動作状況もあわせて確認しておくと安心です。
Q&Aよくある質問
まとめまとめ|FPSより「待たされる時間」を減らす改良
DuckStationのマルチスレッドシェーダー・パイプラインコンパイルは、エミュレーターを常時高速化して平均FPSを引き上げるアップデートではありません。まだキャッシュされていないシェーダーやパイプラインを準備する際に、複数のCPUスレッドを利用できるようになった変更です。
AndroidではVulkanが対象になる一方、OpenGLは対象外です。さらにGoogle Play版は2025年5月から更新がなく、開発者自身がAndroid版のサポートに後ろ向きな姿勢を示しているため、Android版で今回の恩恵をすぐに受けられると考えるのは早計です。
PC版でVulkanやDirect3D 12を使っていて、設定変更時の待ち時間が気になっていた人には試す価値がある変更です。一方、安定性重視ならRolling Releaseへの統合を待ってよく、Android版の更新をあてにしている場合は他のPS1エミュレーターの動向もあわせて確認しておくのが安全です。



