mVolt+ v0.36でRTX 5080が680W超・RTX 5090は約700Wへ|200W増でも性能は最大10FPSという効率
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RTX 5090は約700Wへ、200W増でも最大10FPSの効率
出典:GitHub「b00nz/mVolt」公式リポジトリ、VideoCardz(2026年8月23日)、Wccftech(2026年8月23日)、NVIDIA公式・ASUS公式・Intel公式の各製品ページにもとづきます。本記事の情報は2026年8月23日時点のものです。
「RTX 5080が680W」「RTX 5090が700W」という数字だけ見ると、手持ちの電源で足りるのか不安になった方もいるはずです。Blackwell向けのオーバークロックツールが次々と登場する中、今回もまた新しいツールがGPUの限界を押し広げたというニュースが流れてきました。
今回話題になっているのは「mVolt+」というWindows向けの無料チューニングツールです。2026年8月21日に公開されたv0.36で、Core・Crossbar(XBAR)・SYS・Videoという4つの電圧ドメインへのVoltage Demand Offsetと、Core・Memoryそれぞれのチャンネル単位のPower Limitという、これまで一般的なOCツールでは触れなかった制御が追加されました。これを使い、水冷化されたASUS ROG Astral GeForce RTX 5080 OCがFurMarkで680Wを超え、RTX 5090も約700Wに達したという報告が海外のコミュニティから相次いでいます。
ここで終わらせず、この記事では200W以上も電力を積み増して得られる性能がどの程度なのか、12V-2×6コネクタの安全性はどう考えればよいのか、そして手元のRTX 5080/5090ユーザーが今の電源のままで問題ないのかまで、NVIDIA公式・ASUS公式・mVolt+の開発元リポジトリにもとづいて踏み込みます。
目次
要点まず何が起きているか
ツールmVolt+とは何か、v0.36で何が変わったか
mVolt+は、Blackwellアーキテクチャを採用するGeForce RTX 50シリーズ向けに開発された、Windows向けの無料チューニングツールです。開発者のb00nz氏がGitHub上で公開しており、実行ファイルをダウンロードして使う形式です。管理者権限での実行が必須で、公式に動作確認が取れているのはRTX 5090・RTX 5080・RTX 5070 Tiの3モデルとされています。
2026年8月21日に公開されたv0.36では、Core・Crossbar(XBAR)・SYS・Videoという4つの電圧ドメインごとのVoltage Demand Offset、そしてCoreとMemoryそれぞれのチャンネル単位のPower Limitが新たに追加されました。特に電圧オフセットは、オプション画面の「Extend voltage offsets」を有効にすると、より広い±500mVの範囲まで調整できます。開発元のドキュメントによると、Core/MemoryのPower Limitは初期状態ではファームウェアが定める既定値に固定されており、オプションで明示的にロックを解除しない限り、VBIOS側が報告する上限を超えられない仕組みになっています。逆に言えば、このロックを外すことで、通常のPower Limitスライダーとは別の制約からGPUを解放できるということです。
開発元のドキュメントには、対応状況がGPU・ドライバー・VBIOSによって異なること、GPUのチューニングによってクラッシュやハードウェアの故障が起こり得ること、そしてmVolt+がGPUメーカーの承認や協力を受けたツールではないことが明記されています。
出典:GitHub「b00nz/mVolt」v0.36リリースノート
RTX 5080水冷ASUS ROG Astral OCが680Wを突破
読者から寄せられた報告によると、水冷化されたASUS ROG Astral GeForce RTX 5080 OC EditionにmVolt+ v0.36を適用し、負荷テストツールFurMarkを実行したところ、消費電力が680Wを超えたということです。報告した本人によれば、電流検出用の抵抗を交換して電力制限機能そのものを無効化する「シャントMOD」は行っておらず、mVolt+のソフトウェア側の設定変更だけでこの数値に達したとしています。
NVIDIA公式のRTX 5080のスペックでは、TGP(公称の最大消費電力)は360W、推奨システム電力は850Wです。もっとも、水冷化されたROG Astral RTX 5080 O16Gエディションは出荷時点ですでにこの基準値を上回る400W設定で販売されており、ASUSは同モデル向けに最大TGPを450Wまでさらに引き上げるBIOSアップデートを公式サポートページで配布しています。今回報告された680Wは、この公式BIOSツールがカバーする450Wをさらに230W、率にして約51%上回る数値です。
この報告は、水冷化されたハイエンドモデル1枚での結果です。空冷モデルや、他社のRTX 5080で同じ数値がそのまま再現される保証はありません。基板設計や電源回路、冷却性能はメーカー・モデルによって異なります。
RTX 5090約700Wまで到達、公称TGPの約22%増
RTX 5090でも同様の報告が相次いでいます。RedditのコミュニティOverclockingに投稿された「mVolt is Black Magic to Blackwell」というスレッドで、投稿者のu/SyncFail_氏は、mVolt+ v0.36を使ってRTX 5090の消費電力を約700Wまで引き上げたと報告しました。ゲーム中の消費電力は約675W、GPUコアクロックは3.15〜3.20GHz、XBAR(Crossbar)クロックは2.8GHzに達したとしています。同氏は以前、MSI Afterburnerだけで到達できたGPUコアクロックは約3.03GHzが精一杯だったとも述べており、mVolt+によって従来のOCツールでは届かなかった領域まで踏み込めるようになったことが分かります。
NVIDIA公式のRTX 5090のTGPは575Wなので、700Wはこれを約125W、率にして約22%上回る計算です。同じコミュニティでは600〜650W程度まで到達したという報告も複数上がっており、680W/700Wという数字がどのRTX 5090でも一律に再現できるわけではない点には注意が必要です。
ハードウェアレビュー系のXアカウント「UNIKO’s Hardware」も2026年8月22日、海外のオーバークロッカーコミュニティ「Overclock.net」の間で、新しいCore Power Limitの設定によって実際の消費電力がBIOS設定の上限を超えて伸びることが確認されており、RTX 5090では約50W程度の上乗せが報告されていると投稿しました。同じ投稿では、投稿者自身が所有するRTX 5060 Tiの上限消費電力が206Wだったとも述べられています。伸び幅はGPUのモデルや個体によって大きく異なることがうかがえます。
出典:Wccftech、VideoCardz、UNIKO’s Hardware(@unikoshardware)X投稿(2026年8月22日)
NVIDIA公式スペックとの比較
ここまでの数字を、NVIDIA公式が公開しているRTX 5080・RTX 5090の電力仕様と並べると次のとおりです。
| 項目 | RTX 5080 | RTX 5090 |
|---|---|---|
| TGP(公称) | 360W | 575W |
| 推奨システム電力 | 850W | 1000W |
| 補助電源コネクタ | 8pin×3(変換)または450W以上の12V-2×6ケーブル1本 | 8pin×4(変換)または600Wの12V-2×6ケーブル1本 |
| 今回の報告値 | 680W超 | 約700W |
出典:NVIDIA公式「GeForce RTX 5080」製品ページ、NVIDIA公式「GeForce RTX 5090」製品ページ、ASUS公式サポートページ(ROG Astral RTX5080 O16G BIOS)
安全性12V-2×6コネクタは大丈夫なのか
680W/700Wという数字を見ると、コネクタが持つのかどうかが気になります。まず整理しておきたいのは、GPUカード全体の消費電力(TGP)と、12V-2×6コネクタ1本を流れる電流は同じものではないという点です。PCI Express(PCIe)の規格では、GPUを差し込むスロット自体にも電力を供給する役割があり、Intel公式のATX電源設計ガイドでは、PCIeスロット経由でも一定の電力を供給できる設計になっていると説明されています。これに対し、12V-2×6(旧12VHPWR)コネクタ単体の規格上の上限は600Wです。つまりカード全体の消費電力には、コネクタを流れる分だけでなく、スロットから供給される分も含まれています。
NVIDIA公式のRTX 5090のスペックでも、補助電源コネクタは「8ピンPCIeケーブル4本(変換アダプター付属)」または「600W対応の12V-2×6ケーブル1本」のどちらかを使う設計になっており、いずれの場合もスロット給電分と合わせてカード全体の高い消費電力を支える構成です。
とはいえ700Wという数値は、この構成が本来想定している範囲の上限に近いか、条件によってはそれを超える可能性がある水準です。mVolt+はソフトウェア側の制限を解除するツールであり、コネクタやPCB(基板)、電源回路そのものの物理的な限界を引き上げるわけではありません。シャントMODなしで到達したという報告であっても、通常より高い電流が同じ配線を流れ続けることに変わりはなく、長時間運用した場合の発熱・劣化への影響はまだ十分に検証されていません。
核心200W以上増やしても性能は最大10FPS、効率で見ると割に合わない
ここまでの数字だけを見ると、700Wまで回せるなら回した方が速いと感じるかもしれません。ですが、RTX 5090ユーザーの検証結果として伝えられている内容を見ると、実際の効果はそれほど大きくありません。mVolt+で700W付近まで引き上げた高電力設定は、低電圧化した普段使いの設定と比べて消費電力が200W以上多いにもかかわらず、フレームレートの伸びは最大でも約10FPS程度にとどまったと報告されています。同じユーザーの普段使いの設定は、GPUクロック約2.7GHz・消費電力350〜450W程度で運用されているとのことです。
つまり、350〜450Wの設定から700W付近まで消費電力を200W以上増やしても、得られる性能の伸びは10FPS前後が限界ということになります。3DMarkなどのベンチマークスコアを1点でも伸ばしたい場合は意味のある差ですが、実際にゲームをプレイする体感としては、ほとんど気付かないレベルの違いです。
200W以上の電力を積み増して得られる性能が10FPS程度なら、日常のゲーム用途では電力を上げるより下げる(低電圧化する)方が、消費電力・発熱・コネクタへの負荷のすべての面で合理的です。
用語XBAR(Crossbar)クロックとは何か
SyncFail_氏が報告した「XBAR 2.8GHz」のXBAR(Crossbar)は、演算を担当するGPUコアクロックとは別に存在する、GPU内部のデータ伝送経路のクロックです。XBARクロックの詳しい定義やGPUコアクロックとの違いは、同じくRTX 50シリーズのXBARクロックを扱ったmelonVoltの解説記事で整理しているので、そちらもあわせて確認してください。
mVolt+がXBARクロックを調整する仕組みは、MSVDDへ直接mV単位のオフセットを与えるmelonVoltとは異なります。mVolt+の開発元ドキュメントによれば、XBARクロックの上限は「MSVDD Clock Ratio」というGPUコアクロックに対する比率設定でおおむね決まり、例えばGPUコアが3000MHzのとき比率を0.90に設定するとXBAR・SYS・Videoの上限は2700MHz付近になるという目安が示されています。比率で管理するためコアクロックの変動に上限側も追従する点が、固定mVオフセットで調整するmelonVoltとの実装上の違いです。
従来手法との違いXOC BIOSやシャントMODとの違い
以前からRTX 50シリーズを電力制限の外側まで回すこと自体は可能でした。ただし、そのためには極限までのオーバークロックを想定した特殊な「XOC BIOS」を書き込むか、電流検出用の抵抗を物理的に交換して電力制限機能そのものを騙す「シャントMOD」といった、ハードウェアへの直接的な介入が必要でした。今回のmVolt+ v0.36が注目されているのは、こうした改造をせず、通常のWindows上で動くソフトウェアの設定を切り替えるだけで、VBIOSが定める電力の壁を超えられるようになったからです。
ただし、これはハードウェア側の限界そのものが変わったという意味ではありません。GPUの電源回路、基板のパターン、コネクタやケーブルが物理的に耐えられる電流には、変わらず上限があります。標準的なOC機能の範囲であれば、MSI Afterburnerのような定番ツールで十分なケースがほとんどです。電圧・クロックカーブの基本を押さえたい場合はMSI Afterburner 4.6.7 Beta 4のV/Fヒットマップ解説も参考になります。RTX 5090で通常のOCの先にある電圧領域を扱う別のツールとしてはmelonVoltの解説記事もあわせて確認してください。
電源の目安一般ユーザーが1200W・1600W級の電源を買う必要はない
680W/700Wという数字だけを見て、手持ちのRTX 5080/5090用に1200Wや1600Wの電源への買い替えを考えた方もいるかもしれませんが、その必要はありません。理由は単純で、これらの数字はmVolt+でCore/Memory Power Limitを解放し、ベンチマークスコアを狙って追い込んだ特殊な設定での数値だからです。通常のゲームプレイでGPUがここまでの電力を消費することはまずありません。
NVIDIA公式のシステム電力の目安は、RTX 5080が850W、RTX 5090が1000W(いずれもハイエンドCPUとの組み合わせを前提とした最低ラインです)。当サイトのGPU別推奨電源容量ガイドでも、瞬間的な電力スパイクまで見込んだ現実的な目安としてRTX 5080は1000W、RTX 5090は1200〜1300Wを推奨していますが、これは通常のゲーミング用途を想定した数字で、mVolt+のような極端なチューニングを前提にしたものではありません。CPU側もPower Limitを解放するような極端な構成にしない限り、この範囲の電源で十分に足ります。
使い分けベンチマークスコア狙いか、毎日のゲーム用途か
mVolt+の680W/700Wという数字をどう受け止めるべきかは、GPUの使い方によって変わります。
- 3DMarkなどのベンチマークスコアを1点でも伸ばしたい
- 水冷やハイエンド電源をすでに用意している
- クラッシュやハードウェア故障のリスクを理解した上で自己責任で試せる
- 200W以上増やしても性能差は最大10FPS程度にとどまる
- 消費電力・発熱・コネクタへの負荷を抑えたい
- 毎日ゲームをする用途で、保証やハードウェアへのリスクは避けたい
毎日ゲームをする使い方なら、電力を上げる方向より下げる方向の調整の方が実利につながります。具体的な設定手順はGPUアンダーボルト完全ガイドで解説しています。
FAQよくある質問
Blackwell向けチューニングツール「mVolt+」のv0.36で、水冷化されたASUS ROG Astral GeForce RTX 5080 OCがFurMark実行時に680Wを超え、RTX 5090も約700Wまで消費電力を引き上げたという報告が、どちらもシャントMODなしで確認されています。RTX 5090の700Wは、NVIDIA公式のTGP575Wを約22%上回る数値です。
ただし、200W以上の追加電力で得られる性能の伸びは最大でも約10FPS程度にとどまるという報告があり、日常のゲーム用途で追いかける価値がある数字とは言えません。GPUカード全体の消費電力とコネクタを流れる電流は別物である点、mVolt+がハードウェアの物理的な限界そのものを変えるわけではない点にも注意が必要です。
通常のゲーミングPCであれば、680W/700Wという数字を理由に1200Wや1600Wクラスの電源へ買い替える必要はありません。ベンチマークスコアを狙うなら高電力設定、毎日ゲームをするなら低電圧化という使い分けが、2026年8月時点での現実的な結論です。



