Logitech G Cloud 2は当面開発せず|クラウド携帯機がSteam Deckに勝てなかった価格差50ドルの理由
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クラウド携帯機がSteam Deckに勝てなかった理由
「Steam Deckより安いクラウド専用の携帯機」として2022年に登場したLogitech G Cloudですが、後継機の話はいつまで経っても出てきません。今回、その理由がLogitech G自身の口から語られました。
Logitech Gのグローバル責任者を務めるRobin Piispanen氏は、海外メディアの取材に対し、現時点でG Cloud 2に相当する第2世代モデルを開発していないと明言しました。理由として、携帯ゲーム機事業より優先すべき分野があることを挙げています。
気になるのは「これは実質的な開発中止なのか」「なぜSteam Deckに競り負けたのか」「今使っているG Cloudは今後どうなるのか」という3点ではないでしょうか。この記事では、Piispanen氏の発言をもとに、初代G Cloudが苦戦した理由と、初代ユーザーへの影響を順番に整理します。
目次
結論「G Cloud 2」は中止ではなく凍結|Steam Deckとの価格差わずか50ドルが分かれ目
今回判明した内容をまとめると、次のようになります。
- Logitechは現在、G Cloud 2を開発していない
- 第2世代モデルより優先度の高い事業がある
- 携帯ゲーム機市場からの永久撤退を決めたわけではない
- 将来的なクラウド携帯機の可能性は残している
- 再参入する場合は、MicrosoftやTencentなどとの協業が有力
- 初代G Cloudのサービス終了は発表されていない
Piispanen氏は、携帯型ゲーム機の発想そのものを否定していません。一方で、現在のLogitechが単独で第2世代G Cloudを開発し、Steam DeckやXbox Allyシリーズなどと競争することには慎重な姿勢を示しています。
したがって、「Logitech G Cloud 2の発売が正式に中止された」と表現するのは正確ではありません。現時点での適切な解釈は、G Cloud 2は少なくとも当面登場せず、再参入の時期も決まっていないというものです。
出典:APH Networks「No More Logitech Gaming Handhelds? ‘Bigger Things to Focus On,’ Exec Says」(2026年7月29日付) / Hypebeast「Logitech Says It Has No Plans for a New Gaming Handheld to Follow the G Cloud」
製品概要携帯クラウドゲーム機「Logitech G Cloud」とはどんな端末か
Logitech G Cloudは、LogitechとTencent Gamesが共同開発し、2022年10月に北米で発売したクラウドゲーミング向け携帯端末です。本体に高性能なPC向けAPUを搭載するのではなく、Xbox Cloud GamingやGeForce NOW、Steam Linkなどから映像を受信してゲームをプレイする設計でした。主な仕様は次のとおりです。
| 項目 | Logitech G Cloud |
|---|---|
| CPU | Arm Cortex-A76×2+Cortex-A55×6(Snapdragon 720G) |
| GPU | Adreno 618 |
| メモリ | 4GB LPDDR4X |
| ストレージ | 64GB UFS |
| ディスプレイ | 7インチ・1920×1080 IPS |
| リフレッシュレート | 60Hz |
| 無線LAN | Wi-Fi 5、2×2 MIMO |
| バッテリー | 6,000mAh・公称約12時間 |
| 重量 | 463g |
| 発売価格 | 349.99ドル(2022年10月・北米) |
スペックだけを見ると、Steam DeckやROG Allyのような携帯ゲーミングPCより大幅に低性能です。ただし、G Cloudはゲームを本体で描画する製品ではありません。クラウドや自宅のゲーミングPCで実行したゲーム映像を受信するだけなので、Snapdragon 720GクラスのSoCでも役割を果たせます。高性能APUや大型冷却ファンを必要としないため、軽量化と長時間駆動を実現できることがG Cloudの強みでした。
出典:Tom’s Hardware「Logitech’s G Cloud: A $349 Android Powered Game Streaming Handheld」
幹部証言Logitech幹部「購入者の約80%は引き出しに入った」
Piispanen氏によると、初代G Cloudには熱心に使い続けたユーザーがいた一方、多くの購入者にとって継続的に利用する製品にはなりませんでした。同氏は大まかな表現として、購入者の約80%が試した後、G Cloudを引き出しに入れて使わなくなったと述べています。
この80%という数字について、Logitechが正式な販売統計や利用状況調査を公表したわけではありません。具体的な集計期間、対象地域、アクティブ率の定義なども示されていないため、正式な利用停止率として扱うべきではないでしょう。それでも、Logitech Gの責任者自身が、初代G Cloudで想定していた利用方法が大多数の購入者には定着しなかったと認めた点は重要です。
本体価格Steam Deckとの差はわずか50ドル、それでも競り負けた理由
G Cloudが苦戦した最大の要因は、クラウド専用端末としての価格が高かったことです。G Cloudの北米発売価格は349.99ドルでした。一方、当時のSteam Deckは最も安い64GBモデルが399ドルから販売されていました。両者の価格差は約49ドルです。
| 項目 | Logitech G Cloud | Steam Deck(64GBモデル) |
|---|---|---|
| 本体価格 | 349.99ドル | 399ドル |
| ゲームの実行方式 | クラウド/リモートプレイ受信専用 | 本体でPCゲームを直接実行 |
| オフライン利用 | 原則として通信環境が必須 | インストール済みゲームは可能 |
| 公称バッテリー駆動 | 約12時間(クラウド利用時) | 2〜8時間 |
| 重量 | 463g | 669g(LCD) |
Steam Deckは、AMD製のZen 2 CPUとRDNA 2 GPU、16GBのLPDDR5メモリを搭載し、多くのPCゲームを端末上で直接実行できます。Wi-Fiがない場所でも、事前にインストールしたゲームであればプレイでき、SteamOSのデスクトップモードを使えばPCに近い用途へ広げることも可能です。50ドルを追加すれば、インターネットに依存せずPCゲームを実行できるSteam Deckが買える状況では、G Cloudの価格面での説得力が弱かったと考えられます。
利用条件本体を買うだけで完結しない仕組みが乗り換えの壁に
Steam Deckは、本体とSteamアカウント、購入したゲームがあれば基本的なプレイ環境が完成します。一方、G Cloudでクラウドゲームを本格的に利用するには、端末本体とは別にクラウドサービスの契約が必要になる場合があります。
サービスごとに条件が異なる
Xbox Cloud Gamingを利用するには対応するXbox Game Passプランが必要です。GeForce NOWも無料枠は存在するものの、高解像度、高フレームレート、優先アクセスなどを利用するには有料メンバーシップが必要になります。さらに、サービスごとにプレイできるゲームや条件が異なります。あるゲームがXbox Cloud Gamingに対応していても、GeForce NOWでは利用できない場合があり、反対にSteamで所有しているゲームでも、GeForce NOW側が対応していなければクラウド上で起動できないことがあります。本体を購入した後も、サービスの対応状況、ゲームライブラリ、月額料金を確認しなければならない点が、一般的なゲーム機より分かりにくい要因になりました。
通信環境で操作感が変わる
クラウドゲーミングでは、サーバー側でゲームを実行し、圧縮した映像をインターネット経由で端末へ送信します。プレイヤーの操作情報は端末からサーバーへ送られ、処理された結果が映像として戻ってきます。そのため、自宅回線の遅延、Wi-Fiの混雑、パケットロス、クラウドサーバーまでの距離といった要素によって、操作の遅れや画質低下、音切れ、カクつきが発生することがあります。特に格闘ゲームや音楽ゲーム、競技系FPSなど入力タイミングが重要なゲームでは、わずかな遅延でも違和感が生じかねません。G CloudはWi-Fi 5までの対応で、後発のSteam Deck OLEDが採用したWi-Fi 6Eには対応していませんでした。これが直接的な失敗原因だったと断定はできませんが、通信品質が体験を左右する端末としては将来性を疑問視されやすい仕様でした。
インフラ課題クラウド事業者側のインフラ拡大が想定より進まなかった
Piispanen氏は、初代G Cloudが苦戦した背景として、主要なクラウドゲーミング事業者が十分な速さでインフラを拡大しなかったことも挙げています。クラウドゲームでは、利用者がプレイしている間、データセンター側でゲームを実行するためのCPUやGPUを確保する必要があります。動画配信とは異なり、あらかじめエンコードした同じ映像を多数の利用者へ一斉配信することはできません。利用者ごとにゲームを実行し、操作に応じて異なる映像をリアルタイムで生成する必要があるため、利用者が増えるほどサーバー、GPU、電力、通信帯域、データセンターの増設コストも大きくなります。
端末メーカーのLogitechは、このインフラを直接所有していません。G Cloudの体験品質は、Microsoft、NVIDIA、通信事業者など、外部企業の投資状況に左右される構造でした。
事業構造Logitechには独自プラットフォームがなく、利益率も低い市場
Piispanen氏は、携帯ゲーム機事業で成功するには大きな販売規模が必要であり、主要メーカーの多くがゲームコンテンツやプラットフォームを所有していると指摘しています。Nintendoは自社ハードに加え、『マリオ』『ゼルダの伝説』『ポケットモンスター』などの強力なゲーム資産を持っています。ValveはSteamストアを運営し、Steam Deckの販売後もゲーム販売手数料から収益を得られます。SonyやMicrosoftも、ゲーム機、アカウント、ストア、サブスクリプション、クラウドサービスを同じエコシステム内で提供できます。
一方、Logitechの強みは、マウス、キーボード、コントローラー、ステアリングホイールなどの入力機器です。Logitech自身が大規模なゲームストアやクラウドゲームサービスを持っているわけではありません。G Cloud本体を一度販売した後、ゲーム販売や月額サービスから継続的に利益を得にくいことも、後継機を開発しにくい理由と考えられます。
さらにPiispanen氏は、携帯ゲーム機事業について、利益率が低く他社との協力が欠かせない難しい市場だとも説明しています。Steam Deckは、ValveがSteamストアの利用者を増やすための端末として、本体単体の利益率を抑えても販売できます。Logitechが同じ価格帯で高性能な携帯ゲーミングPCを作る場合、AMDやQualcommからSoCを調達し、WindowsやAndroidを採用し、外部のゲームストアと連携する必要がありますが、本体販売後のソフトウェア収益を確保しにくいLogitechにとって、Steam Deckとの価格競争は不利です。Piispanen氏も、Logitechがローカル実行型の携帯ゲーム機を開発する可能性は否定していませんが、自社の中核能力はデザインと入力機器であり、実現するなら他社との共同開発になる可能性を示しています。
代替手段スマートフォンでも近い環境を再現できてしまう
G Cloudのもう一つの課題は、クラウドゲーム専用端末の機能を、既存のスマートフォンやタブレットでも再現できることです。Xbox Cloud Gaming、GeForce NOW、Steam Linkなどは複数の端末で利用できます。スマートフォンへゲームパッドを接続すれば、G Cloudに近い環境を低い追加費用で作れます。
G Cloudには、大型画面と一体型コントローラー、長時間駆動、通知に邪魔されにくい専用端末という利点があります。しかし、すでに高性能なスマートフォンやタブレットを持っている人にとって、クラウドゲームだけを目的に349.99ドルを追加で支払う理由は弱くなります。これはLogitechが明言した直接的な失敗原因ではありませんが、Steam Deckとの小さな価格差や、クラウドサービスのマルチデバイス対応を考えると、G Cloudの用途が限られた一因だったと推測できます。
端末の強みG Cloudが製品として劣っていたわけではない理由
初代G Cloudが市場の主流になれなかったからといって、端末としてすべて劣っていたわけではありません。特に次の点では、Steam Deckより優れた部分がありました。
G Cloudが一部のユーザーから高く評価されたのは、この軽量性、画面、バッテリー、操作性の組み合わせが理由でしょう。加えて、Logitechは発売後もG Cloudへ複数のソフトウェアアップデートを提供してきました。主な追加内容には、Moonlightのプリインストール、USB-C経由の映像出力、スティック感度とデッドゾーン調整、仮想ボタンマッピング、Xbox Cloud Gamingの1080p表示、G Cloud Hub、画面録画機能などがあります。Logitechの公式リリースノートによると、2026年6月にも最新のファームウェア更新が配信されており、発売から3年以上が経った現在も対応が続いています。ただし、今後どこまで長期的なOSアップデートやセキュリティサポートが保証されるかは明確ではありません。
出典:Logitechサポート「Logitech G Cloud Update – Release notes」
成功例との対比PlayStation Portalが伸びている理由との違い
クラウド型携帯端末のすべてが苦戦しているわけではありません。SonyのPlayStation Portalは当初、PS5からのリモートプレイを中心とする端末でしたが、その後PlayStation Plusプレミアム向けのクラウドストリーミングに対応しました。Sonyによると、2026年1月時点でPlayStation Portalのクラウドストリーミング月間利用者数は前年同月比162%増となり、Portal利用者の50%以上がPlayStation Plusプレミアムへ加入しています。
ただし、この数値はPlayStation Portal本体の販売台数や市場シェアではなく、クラウドストリーミング利用者の伸びを示したものです。それでも、Sonyが端末、アカウント、クラウドサービス、ゲームカタログ、サブスクリプションを一体化できる強みは明確です。PlayStation Portalでは、ユーザーが利用するサービスやゲームの入手先がPlayStationの中で完結します。PS5を所有していれば、最初は自宅内リモートプレイ端末として利用し、後からクラウドストリーミングを追加することもできます。複数の外部サービスを組み合わせなければならないG Cloudとは、同じストリーミング端末でも事業構造が異なります。
再登場条件クラウド携帯機自体の将来性とG Cloud 2が戻るために必要なこと
Piispanen氏は、クラウドゲーミング端末の利点として、重量、バッテリー、グラフィック性能の問題を解決できることを挙げています。ゲームを端末上で処理しなければ、大型バッテリー、高性能APU、高速メモリ、大型冷却機構を搭載する必要がありません。理論上は、携帯ゲーミングPCより軽く、安く、長時間使える製品を作れます。特に、メモリやストレージの価格が上昇している状況では、クラウド専用端末はハードウェアコストを抑えやすいという利点があります。一方、端末価格を抑えられても、クラウド側のサーバー費用が高ければ、サービスの月額料金や利用制限としてユーザーへ転嫁されます。
Logitechが再びクラウド携帯機を開発するには、少なくとも次の条件が必要になると考えられます。
- Xbox Cloud GamingやGeForce NOWの利用地域・対応ゲーム・サーバー数が増え、遅延や混雑が改善されること
- 携帯ゲーミングPCとほとんど変わらない本体価格ではなく、クラウド専用端末らしい価格差を示せること
- Microsoft、Tencent、NVIDIAなどと組み、端末・サービス・サブスクリプションを一体化できる強い提携があること
- 本体の売り切りだけでなく、サービス契約やゲーム販売からLogitechにも利益が入る仕組みがあること
Piispanen氏は、LogitechがMicrosoftやTencentなどの大手企業と、クラウドゲーミングの将来について話し合っていることを明らかにしています。具体的な新製品は発表されていませんが、G Cloudの考え方そのものを捨てたわけではないようです。
既存ユーザー初代G Cloudを持っている人への影響は
今回の発言は、G Cloud 2の開発優先度に関するものであり、初代G Cloudのサービス終了を知らせるものではありません。G CloudはAndroidベースの端末なので、Xbox Cloud Gaming、GeForce NOW、Steam Link、Moonlightなど、それぞれのアプリやサービスが対応している限り利用できます。
ただし、今後もLogitechからOS更新やセキュリティ更新が継続的に提供されるかは不明です。クラウドサービス側がAndroidの対応バージョンを引き上げた場合、将来的に一部アプリが利用できなくなる可能性もあります。現在のユーザーは、G Cloud 2が登場しないことよりも、初代モデルのソフトウェアサポートがいつまで続くかを確認しておいたほうがよいでしょう。
総括まとめ|G Cloud 2は凍結、Steam Deckとの価格差50ドルが明暗を分けた
Logitech GのRobin Piispanen氏は、現在、第2世代のG Cloudを開発しておらず、ほかに優先すべき事業があると説明しました。G Cloud 2が正式に中止されたわけではありませんが、近いうちに後継モデルが発売される可能性は低いと考えられます。
初代G CloudがSteam Deckほど普及しなかった最大の理由は、349.99ドルという価格です。わずか約50ドルを追加すれば、インターネット接続なしでもPCゲームを実行できるSteam Deckが購入できました。さらにG Cloudは、安定した通信環境、クラウドサービスの契約、対応ゲーム、外部企業のサーバー投資に依存します。Logitech自身がゲームストアや独自コンテンツを持たず、本体販売後の継続収益を確保しにくいことも、後継機を開発しにくい理由です。
一方、G Cloudの463gという軽さ、約12時間のバッテリー駆動、7インチ・フルHD画面は、現在でもリモートプレイ端末として魅力があります。クラウドゲーミング携帯機という発想が間違っていたのではなく、2022年のサービス環境と349.99ドルという価格では、Steam Deckより説得力のある選択肢になれなかったと見るべきでしょう。



