LGスマートTVは本当に「盗聴」している?音声収集疑惑をLGが否定、HDMI接続したPC・PS5もACRの対象に
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音声収集疑惑をLGが否定、HDMI接続したPC・PS5もACRの対象に
出典:LG公式ニューズルーム声明「Understanding Privacy on LG Smart TVs」(2026年9月12日) / RTINGS「Why Smart TVs Track What You Watch」 / Ars Technica / Gamers Nexus「216,000,000 Spy TVs」。価格・事実関係はいずれも2026年9月17日時点の一次情報にもとづきます。
「LGのテレビが部屋の会話を盗聴している」——そう聞けば、多くの人がリビングに置いたテレビを見直したくなるはずです。この疑惑の発端は、PCハードウェア系メディアGamers Nexusが2026年9月6日に公開した約135分の調査動画でした。
LGはこれに対し2026年9月12日、詳細な公式声明を公開し、通常の状態で家庭内の会話を継続的に録音してサーバーへ送信することはないと明確に否定しています。現時点の証拠から、「LGテレビがユーザーに無断で常時盗聴している」と断定できる状況ではありません。
一方で、LG自身が認めているACR(Automatic Content Recognition:自動コンテンツ認識)という仕組みは、条件を満たせばテレビ放送だけでなくHDMI接続機器のコンテンツも認識対象になります。RTINGSが2026年8月に行った独立調査でも、LG G5にPlayStation 5やノートPCをHDMI接続した際にACR関連の通信が特に活発になったことが確認されています。LG OLEDをゲーミングモニターとして使っている人にとっては、「盗聴の有無」以上に身近な論点です。
今回の調査動画が指摘した「家庭内の会話を無断で常時録音している」という主張は、LGが公式に否定しています。ただしACRについては話が別です。LGは公式声明で、ACRが有効な場合にHDMI接続機器のコンテンツも認識対象になりうると説明しており、RTINGSの独立調査でもPS5・ノートPC接続時に通信量が増加する結果が出ています。「盗聴か否か」で終わらせず、両方を区別して理解する必要があります。
目次
調査の概要500時間以上・約7万ドルをかけた調査動画
今回の調査動画「216,000,000 Spy TVs | The LG Smart TV Problem」は、PCハードウェア系メディアGamers Nexusが2026年9月6日に公開したもので、制作には500時間以上、約7万ドルが費やされたとしています。編集長のSteve Burke氏に加え、Level1TechsのWendell Wilson氏、セキュリティ研究者のMrBruh氏・uturn氏が参加し、市販されているLG製OLEDテレビ(フラグシップのG5を含む)を対象にネットワーク通信やファームウェアを解析しました。タイトルの「216,000,000」は、LGの広告事業「LG Ad Solutions」が販促資料で謳う「米国内で到達可能な2億6,300万台のアドレサブルデバイス」という数字を踏まえたものです。
調査ではWiresharkによる通信解析とファームウェア調査の両方が行われ、ローカルネットワーク上のデバイス探索、ACR、音声処理、webOSのセキュリティなど複数の論点が指摘されました。特に大きな反響を呼んだのが、「テレビが周囲の音声を取得できる」という指摘です。
ネットワーク探索スタッフのスマートウォッチまで発見したLAN探索
今回の調査で確認された挙動の一つが、テレビによるLAN内デバイスの探索です。Burke氏はArs Technicaの取材に対し、「(G5は)我々のネットワーク全体をクロールし、この調査に関わっていることを知らなかったスタッフのスマートウォッチやスマートフォンを含む、数十台の無関係なデバイスを発見した」と説明しています。Wiresharkでの解析とファームウェア調査の結果、LGテレビは利用者のIPアドレス・おおよその地理的位置・周辺Wi-Fiネットワークの名称と信号強度・近隣Wi-Fiのチャンネル番号・テレビへ直接接続していない他デバイスの内部IPアドレスまで特定できる状態にあったとされています。
これに対しLGは、「LGテレビは、デバイス接続・コンテンツ共有・スマートホーム機能などを実現するため、同一ネットワーク上の対応デバイスを識別できます」「これはスマートTVやスマートホーム機器に共通する標準的な機能です」と説明しています。Burke氏自身も「これはテレビのネイティブ機能であり、脆弱性を突いたものではない」と述べており、この探索機能自体がLGだけの欠陥というより、スマートTV全般に共通する設計であることは双方が認める形になっています。
出典:Ars Technica掲載のSteve Burke氏コメント・LG声明にもとづきます。
音声取得の実態「6秒間の録音」は通常利用とは別の検証条件
今回の疑惑の中でもっとも衝撃的だったのが音声関連の指摘です。Level1TechsのWendell Wilson氏は、テレビがネットワークから切断された状態でもマイク音声を取得できることを実演し、「その音声はプレーンテキストでローカルに保存されており、再びオンラインになればLGへ送信されうる状態だった」とBurke氏は説明しています。Wilson氏は「テキストを永久に保存しておくコストは大きくない」とも述べています。
ここで区別が必要なのは、この実験がセキュリティ研究者によるファームウェア解析・脆弱性検証の条件下で行われたものだという点です。「購入したままの状態のLGテレビが、ユーザーの許可なく24時間すべての会話を録音している」と解釈するのは飛躍があります。LGはこの点について、テレビがスタンバイ状態で電源オフに見える場合でも、ユーザーが事前にハンズフリー音声認識(Far-Field機能)を有効にしていない限りウェイクワードの監視自体を行わないと説明しています。さらに、ウェイクワードが検出されなかった場合、検出処理用の音声はテレビ内部でローカル処理されたのち直ちに削除され、LGのサーバーへ送信されることはないとしています。LGは「ユーザーが意図的に音声機能を有効化しない限り、家庭内の会話を収集・録音・送信することはない」とも述べています。
出典:Ars Technica掲載のWendell Wilson氏コメント・LG声明にもとづきます。
LGの反論「家庭内の会話を常時録音していない」と全面否定
LGは動画公開から6日後の2026年9月12日、「Understanding Privacy on LG Smart TVs」と題した詳細な声明を公式ニューズルームで公開しました。声明の核心は「LG製スマートTVは、ユーザーの会話を継続的に録音・送信することはない」という一文です。
LGによれば、音声認識が動作するのは、ユーザーがLGのViewing Information Agreementとは別の音声関連規約に同意したうえで、リモコンのマイクボタンを押すか、対応モデルでハンズフリー音声認識を有効にして「Hi LG」などのウェイクワードを発した場合に限られます。ハンズフリー音声認識を有効にしたテレビは、ウェイクワード検出のために音声を監視しますが、この処理はテレビ本体でローカルに行われ、ウェイクワードが検出されなければ音声はテキスト化も保存もされず、LGのサーバーへ送信されることもなく即座に破棄されるとしています。対応モデルでは、マイク自体をハードウェアスイッチで無効化することも可能です。
ACRとは何かマイクで部屋の会話を聞く仕組みではない
今回もっとも誤解されやすいのがACRです。ACRはAutomatic Content Recognitionの略で、日本語では「自動コンテンツ認識」と呼ばれる、テレビに現在何が表示されているかを識別する技術です。LGの説明によると、LGのACRはテレビ内部のオーディオプロセッサーからコンテンツの音声的特徴を抽出し、「デジタルフィンガープリント」と呼ばれる識別データを生成します。このフィンガープリントを外部のデータベースと照合し、視聴中のコンテンツを識別する仕組みです。
重要なのは、LGが「ACRはテレビ画面のスクリーンショットや映像そのものを収集する仕組みではない」と明言している点です。また、ACRが解析するのはテレビで再生されているコンテンツの音声信号であり、テレビやリモコンのマイクが拾う家庭内の会話とは別物だとしています。「ACRが音声を扱う」という説明だけを見ると部屋の会話を録音しているように読めますが、LGが説明するACRはあくまで映像・音声コンテンツそのものの識別技術です。
背景LGは以前からACRを広告事業に利用している
ACR自体は今回新しく登場した技術ではありません。LGは2022年、自社の広告部門LG Ads Solutions独自のACR技術をLG製スマートTVへ世界的に展開すると公式発表しています。当時の発表では米国ですでに導入されており、その後ヨーロッパ・アジア太平洋・ラテンアメリカ・オーストラリアなど27カ国へ順次展開するとしていました。
現代のテレビメーカーにとって、テレビ本体の販売だけで完結するビジネスモデルではなくなっています。広告・コンテンツ推薦・ストリーミングサービス・視聴データなど、販売後も継続的に収益を得られるプラットフォームとしての性格を強めています。RTINGSも2026年8月の調査で、ACRを含む視聴情報がスマートTVメーカーの広告ビジネスを支えていると指摘しており、今回の問題はLG固有の特殊事情というより、スマートTV業界全体が抱える構造的な論点だといえます。
出典:LG Ads Solutions ACR展開の公式発表・RTINGSにもとづきます。
PC・PS5への影響HDMI接続機器もACRの対象になりうる
ゲーミングPCユーザーにとって特に重要なのがここです。「Netflixやテレビ番組を見ないから、自分にはACRは関係ない」とは限りません。LGは公式声明で、ACRが有効になっている場合、Live TVやLG Channelsだけでなく、対応するHDMI接続機器のコンテンツでも動作する場合があることを明らかにしています。一方で、LG Apps経由で利用するNetflixやYouTubeなど一部のサードパーティ製ストリーミングアプリの内部ではACRを動作させないとしています。テレビ内蔵アプリでNetflixを見ている場合よりも、HDMIから入力されるゲーム機やPCの画面の方がACRの対象になりうるという、直感に反する仕様です。
この構造を裏付けるのが、RTINGSが2026年8月に行った独立調査です。RTINGSはSamsung・LG・Sony・Hisense・TCL・Vizioなどのテレビやストリーミング端末を実際に購入し、Wiresharkでネットワーク通信を検証しました。LGについてはLG G5 OLEDを使用しています。テレビがアイドル状態・内蔵アプリ利用時・USBメディア再生時のいずれでもACR関連とみられる通信が確認された一方、もっとも活発な通信が確認されたのはHDMI入力でした。PlayStation 5を接続してゲームをプレイしたり、ノートPCを接続してWebサイトを閲覧したりすると、ACR関連通信の頻度と通信量が明確に増加したとしています。通信自体は暗号化されているためRTINGSも内容までは特定できておらず、「特定のゲームをプレイしていることが必ずLGへ送信される」とまでは断定していません。それでも、TVレベルのACRがHDMI入力まで対象にできることを示す結果です。
出典:RTINGS「Why Smart TVs Track What You Watch」(2026年8月調査、Gamers Nexus動画公開より前に実施された独立調査)。
モニター利用者への影響LG OLEDをPCモニターとして使っている人も無関係ではない
LG製OLEDテレビは、4K表示・高リフレッシュレート・VRR・低入力遅延などゲーム向けの機能が充実しているため、大型ゲーミングモニターとして使われることも珍しくありません。ゲーミングPCをHDMI 2.1でLG OLEDへ接続し、普段はWindowsのデスクトップやSteamのゲーム画面しか表示していないという使い方をしている人もいるはずです。
しかし、ACRが有効になっているテレビでは、この「モニターとしてしか使っていない」という利用形態でもACRと無関係とは言えません。RTINGSのテストでは、LG G5へ接続したノートPCでWebブラウジングを行った際にもACR関連通信が増加しています。テレビメーカーが把握しうるのはテレビ番組だけではなく、HDMI経由で画面に表示されるほぼすべてのコンテンツが対象になりうるということです。スマートTVをPCディスプレイとして使うという行為自体が、従来の単純なPCモニターとは異なるプライバシー上の性質を持つ点は、今後webOS搭載のゲーミングモニターを選ぶ際にも意識しておきたいポイントです。
業界全体の問題ACRはLGだけの仕組みではない
LGだけを避ければ解決するかというと、そう単純でもありません。RTINGSの調査では、Samsung・Sony・Hisense・TCL・Vizioなど、テストした多くのスマートTVプラットフォームでACRまたは相当する仕組みが確認されています。厄介なのは、メーカーごとに名称がまったく異なることです。
| メーカー・プラットフォーム | ACR相当機能の表記 |
|---|---|
| LG | Viewing Information Agreement |
| Samsung | Viewing Information Services |
| Sony | Samba Interactive TV |
| Vizio | Viewing Data |
| Hisense(VIDAA) | Enhanced Viewing Service |
| TCL | Interactive Service |
出典:RTINGS(2026年8月調査)
名称が統一されていないため、一般ユーザーが「これは視聴履歴を取得する設定だ」と気付きにくいこともRTINGSは問題視しています。さらにHisense・TCLの一部モデルでは、ACR関連の同意画面が「映像・音質の自動最適化」のような表現とセットになっており、何に同意しているのか分かりにくいケースもあるとしています。RTINGSのテストでは、ACRの同意を撤回すると該当の通信が停止または大幅に変化したモデルもあれば、他のバックグラウンド通信と区別がつかず変化を確認できなかったモデルもありました。今回の問題をきっかけに確認すべきなのは「LG製品を避けること」ではなく、自分が所有するスマートTVで実際にどのデータ利用へ同意しているかです。
日本での扱い海外モデルの結果がそのまま日本向けに当てはまるとは限らない
ここは慎重に見る必要があります。LGの公式声明では、ACRについて「提供している地域」で利用可能な機能とされており、ACRを提供していない市場ではACR関連情報を収集・処理しないと説明しています。実際、LG Taiwanは2026年9月10日に独自の声明を公開し、台湾で販売されているLGスマートTVにはACR機能自体が搭載されていないと説明しています。つまり「海外のLGテレビで確認された内容が、日本で販売されているすべてのLGテレビにも当てはまる」とは限りません。
LG Japanが公開しているサポート情報からは、日本市場におけるACRの提供有無を明確に特定することはできませんでした。一方でLG Japanは、テレビの利用規約に関するサポート情報を用意しており、テレビ本体から利用規約やプライバシー関連の同意を管理する仕組み自体は存在します。日本のユーザーは海外モデルの設定手順をそのまま当てはめるより、実際に所有しているテレビの設定メニューで「プライバシー」「利用規約」「視聴情報」などの項目を個別に確認するほうが確実です。モデルやwebOSのバージョン、販売地域によって表示される項目は異なります。
出典:LG Taiwan公式声明(2026年9月10日) / LG Japanサポート情報(利用規約への同意方法)
ゲーム性能への影響ACRを無効にしてもフレームレートは落ちない
PCゲーマーにとって気になるのは、ACRを無効にするとゲーム性能へ影響するのかという点でしょう。ACRはゲームのレンダリング、HDMI 2.1の帯域、VRR、ALLM、120Hz・144Hz表示などを実現するための機能ではありません。LGの説明でも、ACRはコンテンツ識別や視聴傾向分析を目的とするオプション機能として扱われており、初期状態では無効です。LGは、ACRや広告関連の任意規約に同意しなくても、対応する市場であればストリーミングアプリ・テレビ放送・HDMI入力・ソフトウェアアップデートといった基本的なスマートTV機能は利用できると説明しています。
したがって、PCやPS5を接続してゲームをするだけであれば、ACRを無効化することでフレームレートが下がったりVRRが使えなくなったりする理由は基本的にありません。ただし、一部の音声操作では、現在使用している入力ソースを特定するためにViewing Information Agreementへの同意が必要になる場合があるとLGは説明しており、音声操作やパーソナライズ機能を積極的に使っている場合は一部機能に影響する可能性があります。
対策プライバシーを優先するならテレビをオフラインで使う方法もある
設定を細かく見直すだけでは不安が残るという場合、スマートTV自体をインターネットへ接続せず、単なるHDMIディスプレイとして利用する方法もあります。RTINGSがテストしたテレビは、インターネット接続を切った状態でもHDMIディスプレイとしては問題なく利用できています。ゲーミングPCやPS5を接続する用途に限るなら、現実的な選択肢です。
映像配信サービスが必要な場合はApple TV・Fire TV・Google TVなどの外部デバイスを利用する方法もありますが、外部ストリーミングデバイス自体にも別のデータ収集・広告ビジネスが存在する点には注意が必要です。RTINGSも、外部ストリーミング端末の利用は「プライバシー問題を解消する」というより「データを扱うプラットフォームをテレビメーカーから別の企業へ移すことに近い」と位置付けています。PCやゲーム機の映像だけを表示するのであれば、テレビをネットワークから切り離すのがもっとも分かりやすい対策です。
対応の目安タイプ別に見る確認ポイント
- LG OLEDをPC・PS5用のゲーミングモニターとして使っている人(ACRの対象範囲を確認)
- ハンズフリー音声認識やAI機能を有効にした記憶がない人(設定メニューで実際の状態を確認)
- ACRやViewing Information Agreementに同意した覚えが曖昧な人(一度規約を見直す)
- ACRを無効化してもゲームのfps・VRR・HDMI 2.1機能への影響は基本的にない
- 「常時盗聴」自体はLGが明確に否定しており、通常利用でそのまま該当するわけではない
- テレビをネットワークに接続しない運用にすれば、ACR・LAN探索とも実質的に無効化できる
500時間以上をかけた大規模な調査動画をきっかけに、LGスマートTVのプライバシーが大きな注目を集めています。LGは2026年9月12日の公式声明で、家庭内の会話を常時録音しサーバーへ送信しているという主張を明確に否定しました。現時点の証拠から、通常利用のLGテレビがユーザーを常時盗聴していると断定するのは適切ではありません。
一方でLG自身、ACRが有効な場合にはテレビ放送・LG ChannelsだけでなくHDMI接続機器のコンテンツも認識対象になりうると説明しており、RTINGSの独立調査ではPS5・ノートPCをHDMI接続した際にACR関連通信が実際に増加しました。LG OLEDをゲーミングモニターとして使っているだけでも、ACRを有効にしている場合はPC・ゲーム機のコンテンツが認識対象になる可能性があります。必要としないなら、テレビのプライバシー設定・利用規約を一度確認しておくとよいでしょう。

