コーエーテクモHD、2027年3月期1Qは営業利益51.3%増、経常利益は79.2%増|通期計画320億円は据え置き【2026年8月】
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経常利益は79.2%増の157.19億円|通期計画320億円は据え置き、Wo Long 2など新作はSteam対応
2026年8月だけでもカプコン・バンダイナムコホールディングス・スクウェア・エニックス・ホールディングスと大手パブリッシャーの決算が相次いで発表される中、コーエーテクモホールディングスの決算はやや地味な印象を持たれがちです。しかし2026年7月27日発表の2027年3月期第1四半期決算では、営業利益が前年同期比51.3%増えた一方で、経常利益はそれを上回る79.2%増という数字が並びました。同じ「増益」でも伸び幅にこれだけの差が出た理由を確認せずに見出しの数字だけを追うと、決算の実態を見誤ります。
決算資料によると、連結売上高は173.68億円(前年同期比17.4%増)、連結営業利益は54.07億円(同51.3%増)、経常利益は157.19億円(同79.2%増)、当期純利益は113.48億円(同86.9%増)という増収増益でした。牽引役はコンソール・PC分野を含むエンタテインメント事業で、ダウンロード販売の伸びが利益率を押し上げています。一方で通期の業績計画は据え置かれたままで、営業利益320億円は前期実績比13.9%減という、第1四半期の勢いとは逆方向の数字も併記されています。
この記事では、決算短信・決算説明会資料の一次数値にもとづいて、エンタテインメント事業の内訳、コンソール・PC分野の四半期別販売本数の推移、そして通期計画が据え置かれた背景までを整理します。あわせて、2027年初頭発売が決まった大型新作『Wo Long 2: Wings of Ember』を含む公表済みパイプラインを1本ずつ確認し、PC・Steamゲーマーとしてどのタイトルに注目しておくべきかまで解説します。
目次
全社全社は増収増益、経常利益は前年同期比79.2%増
2026年7月27日発表の2027年3月期第1四半期(2026年4〜6月)決算で、コーエーテクモホールディングスの連結売上高は148億円から173.68億円に、連結営業利益は35.74億円(利益率24.1%)から54.07億円(利益率31.1%)に伸びました。増収増益の主因はエンタテインメント事業の伸びで、費用面では人件費が増加した一方、外注費・広告宣伝費は前年並みだったと説明されています。
注目したいのは、営業利益の伸び率(51.3%増)よりも経常利益の伸び率(79.2%増)の方が大きいという点です。決算資料では営業外収支について「機動的に運用を行い伸長」と説明されており、保有する金融資産の運用益が経常利益を大きく押し上げたことがうかがえます。経常利益率は前年同期の59.3%から90.5%まで上昇しており、本業の儲けである営業利益以上に、財務運用の巧拙が四半期ごとの経常利益を左右する構造になっている点は覚えておきたいところです。
セグメント別に見ると、主力のエンタテインメント事業は売上高135.83億円から159.3億円(前年同期比17.3%増)、営業利益37.06億円から52.88億円(同42.7%増)に伸びました。アミューズメント事業もSP(遊技機)事業で開発受託3タイトルが稼働したことや既存のAM施設が好調だったことで、売上高10.54億円から11.2億円(同6.3%増)、営業利益1.03億円から1.65億円(同60.2%増)に拡大しています。KT Zepp Yokohamaの運営が堅調な不動産事業は、売上高3.12億円から3.34億円(同7.1%増)、営業利益は0.75億円で横ばいでした。
内訳エンタテインメント事業の内訳
会社全体の伸びを支えたエンタテインメント事業について、決算資料はさらにコンソール・PC分野とオンライン・モバイル分野に分けて開示しています。とりわけコンソール・PC分野は、パッケージ・ダウンロード・DLCの内訳を見るとダウンロード販売の伸びが際立ちます。
コンソール・PC計の売上高は前年同期比24.7%増の75.5億円でした。決算資料はこの伸びについて「前年度発売タイトルおよびバックカタログの販売が好調」と説明しており、当四半期に大型の新作が発売されたわけではない点がポイントです。パッケージ版が微減する一方でダウンロード版が38.1%増、DLCが51.8%増と伸びており、販売の中心が徐々にダウンロード・追加コンテンツへ移っていることがうかがえます。
オンライン・モバイル分野は売上高74.3億円から82.8億円(同11.4%増)に伸びました。内訳はモバイルが73.5億円から82.2億円(同11.8%増)とほぼすべてを占め、オンラインは0.8億円から0.6億円(同25.0%減)とごくわずかです。決算資料は既存タイトルの貢献や許諾ロイヤリティの堅調さを理由に挙げています。イベント・グッズは1億円で横ばいでした。
推移コンソール・PC分野の販売本数は四半期別にどう推移したか
コンソール・PC分野の売上高がどのように積み上がっているかを見るために、決算資料が開示する四半期別の販売本数を過去2年度分さかのぼって確認します。
この3年分の推移を見ると、コンソール・PC分野の販売本数は新作、特に大型タイトルの発売時期に大きく左右されるパターンが繰り返されていることが分かります。直近2年度はいずれも第4四半期(1〜3月)に販売本数が跳ね上がっており、これは年度末に大型タイトルを集中投入する編成が続いていることを示しています。今回の第1四半期は大型新作なしで245万本(前年同期比57.1%増)を確保しており、バックカタログだけでもこの水準を維持できる体力があることは確認できますが、通期の業績を左右するのはやはり新作、とりわけ後述する『Wo Long 2: Wings of Ember』のような大型タイトルがどの四半期に計上されるかです。
通期通期計画は営業利益320億円のまま据え置き、なぜ前期比13.9%減なのか
第1四半期だけを見ると好調な決算ですが、会社が示す2027年3月期の通期計画は据え置かれたままです。売上高は900億円(前期比1.8%増)である一方、営業利益は320億円(前期比13.9%減)、経常利益は420億円(同26.3%減)、当期純利益は310億円(同27.6%減)と、いずれも前期実績を下回る計画になっています。
この計画は為替レート1ドル142円を前提としており、決算資料では1円の為替変動あたり営業利益に1億円以上の変動が生じるという為替感応度も示されています。前提には年度内発売予定の新作を含む一方、一過性の大きな費用計上等のリスクは想定していないとしています。決算資料は第1四半期時点で営業利益が社内計画を上回って推移していると説明しつつも、世界経済や金融市場の動向、新作の売上次第で結果が変わるとして、現時点では計画を据え置くとしています。
第1四半期の経常利益は前年同期比79.2%増という大きな伸びでしたが、その押し上げ要因は営業外収支、つまり金融資産の運用益という性質を含んでいます。四半期ごとの運用成績は市場環境によって変動しやすく、通期を通じて同じペースで積み上がる保証はありません。会社が通期計画を据え置いているのは、こうした一過性の要因を除いた実力ベースで保守的に見積もっている可能性があります。
新作公表済みパイプライン、Wo Long 2ほか新作はほぼ全てWindows(Steam)対応
コーエーテクモホールディングスは「世界No.1のデジタルエンタテインメントカンパニー」を長期ビジョンに掲げ、2025〜27年度の第4次中期経営計画ではコンソール・PC分野で大型6本・ミドル19本のパイプラインを計画しています。このうち公表済みの主なタイトルと対応プラットフォームを整理すると、Windows(Steam)対応が標準になっていることが見えてきます。
公表済みのこれら11本のうち、Windows(Steam)に対応していないのは上記の4本のみです。残り7本はいずれもWindows(Steam)対応で、コンソール・PC分野の新作はSteam同時発売が事実上の標準になっていることが読み取れます。この体制を支える背景として、コーエーテクモホールディングスは第4次中期経営計画で3カ年累計1,100億円以上の成長投資を計画しており、前中期計画の725億円から拡大したその大半を人的資本(人件費や新オフィス取得を含む職場環境整備)に振り向けています。開発職の人員数は2023年3月末の1,449人から2026年3月末には1,793人まで増え、グループ従業員数も2026年6月末時点で3,015人に達しました。開発体制の拡充が、複数プラットフォーム同時対応のパイプラインを支えている格好です。
視点PC・Steamゲーマーが押さえておきたいポイント
今回の決算とパイプラインを、PC・Steamゲーマーの視点で整理しておきます。
FAQよくある質問
コーエーテクモホールディングスの2027年3月期第1四半期決算は、連結売上高173.68億円(前年同期比17.4%増)・連結営業利益54.07億円(同51.3%増)という増収増益でした。経常利益は157.19億円で前年同期比79.2%増とさらに大きく伸びましたが、この差は営業外収支、つまり金融資産の運用益による押し上げが大きく影響しています。
一方で通期の営業利益計画は320億円(前期比13.9%減)のまま据え置かれており、第1四半期の勢いをそのまま通期に当てはめることはできません。公表済みのパイプラインでは、2027年初頭発売の大型新作『Wo Long 2: Wings of Ember』を含む11本のうち7本がWindows(Steam)対応で、コンソール・PC分野の新作はSteam同時発売が標準になっています。コンソール・PC分野の販売本数は例年、大型新作が集中する第4四半期に跳ね上がる傾向があるため、通期計画の達成度はWo Long 2をはじめとする下期以降の新作投入時期にかかっていそうです。




