Denuvoが匿名クラッカー「voices38」を提訴|26作品のDRM回避を主張、Reddit・Steamから実名特定へ?
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26作品のDRM回避を主張、Reddit・Steamから実名特定へ?
出典:Justia裁判記録、TorrentFreak、VideoCardz、米国著作権法17 U.S.C. §1201・§1203、Denuvo公式にもとづきます(2026年9月17日時点)。
PCゲームのコピー対策「Denuvo」を提供するDenuvo GmbHが、匿名のゲームクラッカー「voices38」を米国で提訴したことが分かりました。米カリフォルニア北部地区連邦地裁の裁判記録によると、事件番号は「5:26-cv-10423」で2026年9月14日に提出されています。
今回の訴訟で特に興味深いのは、著作権を持つゲーム会社ではなく、Denuvo自身が原告になっている点です。TorrentFreakによれば、Denuvoが米国でクラッカーを直接提訴するのはこれが初めてとされています。
現時点では訴状などが提出された初期段階で、被告の実名も裁判所による事実認定もまだありません。なぜDenuvo自身が訴えられるのか、そして匿名の被告をどう特定しようとしているのかを整理します。
目次
概要Denuvoがvoices38を米国で提訴
公開されている裁判記録では、原告はオーストリアのDenuvo GmbH、被告は「voices38」と記載されています。ただしDenuvoは、voices38という名称を使用している人物または組織の実体をまだ把握していません。TorrentFreakによると、訴状ではvoices38を「unknown individual or entity(未知の個人または組織)」としたうえで、さらにDoes 1〜10と呼ばれる未特定の被告も記載されています。つまり今回の訴訟は「voices38という人物を特定してから訴えた」のではなく、先に訴訟を起こし、その後の法的手続きを使って正体を特定しようとしている点が重要です。
主張内容26作品でDenuvoを回避したと主張
Denuvo側は、voices38がDenuvo Anti-Tamperを搭載した少なくとも26作品で保護機能を回避したと主張しています。報道されている対象には「Need for Speed Heat」「FIFA 20」「Star Wars: Squadrons」「Hi-Fi Rush」「Hogwarts Legacy」「Black Myth: Wukong」「DOOM: The Dark Ages」「Resident Evil Requiem」「Stellar Blade」「007 First Light」など、発売時期の異なる多数のPCゲームが含まれ、EA・Ubisoft・Capcom・Sonyなど複数のパブリッシャー作品にまたがっています。ただし、この26作品はあくまでDenuvoが訴状で主張している対象であり、2026年9月17日時点で裁判所がvoices38による回避行為を事実認定したわけではない点には注意が必要です。
法的根拠なぜゲーム会社ではなくDenuvoが訴えられるのか
通常、海賊版ゲームを巡る訴訟と聞けば、ゲームの著作権を持つパブリッシャーが原告になるイメージがあります。しかしDenuvo自身は、基本的にこれらのゲームの著作権者ではありません。そこで今回の訴訟で重要になっているのが、米国著作権法17 U.S.C. §1201の「技術的保護手段の回避」に関する規定です。同条は「著作物へのアクセスを実効的に制御する技術的手段を、権限なく回避してはならない」と定めており、回避を目的とした技術・製品・サービスの提供も禁止しています。この反回避規定を根拠に、Denuvoは自社のAnti-Tamperを回避されたことで事業に損害が生じたと主張しています。なお、DMCA第1201条が「技術的保護手段の回避」を禁じる規定であること自体は、任天堂がSwitchエミュレーターのGitHubリポジトリへ送ったDMCA通知を扱った別記事でも解説しているため、詳細はそちらに譲ります。
Denuvo公式もAnti-Piracyについて、PCゲーム発売直後の重要な販売期間を海賊版から保護し、発売時の収益を守ることを製品のメリットとして掲げています。つまりDenuvo側からすると、「他社のゲームがコピーされた」だけでなく、「Denuvoという商品が提供している保護機能そのものを回避され、それが公に配布された」ことが自社への損害になるという構図です。
任天堂のDMCA通知はGitHubへのリポジトリ削除要請でしたが、今回はDenuvoが米国著作権法17 U.S.C. §1203にもとづき、匿名の個人を相手に連邦地裁へ民事訴訟を起こしています。同条は§1201違反によって損害を受けた者が差止命令や損害賠償を求められると定めており、GitHub上のコンテンツ削除とは仕組みも狙いも異なります。
法的根拠法定損害賠償の考え方
17 U.S.C. §1203では、裁判所は差止命令を出せるほか、実損害または法定損害賠償を認めることができます。§1201違反に対する法定損害賠償は、一つの回避行為・回避装置・製品・提供・サービス提供などについて200ドル以上2,500ドル以下と規定されています。ただし、「26ゲーム×2,500ドルが今回の最大請求額」という単純な計算はできません。法律上の単位はゲーム本数ではなく「act of circumvention(回避行為)」「device(装置)」「product(製品)」「offer(提供)」「performance of service(サービス提供)」などになっており、具体的な損害額や違反数は今後の訴訟で争われる可能性があります。
最大の焦点voices38を特定できるか
Denuvoにとって最大の問題は、現時点でvoices38の正体が分かっていないことです。一方、完全に手掛かりがないわけではありません。訴状ではvoices38と関連するとDenuvoが考えているRedditアカウント、DiscordのユーザーID、さらに7つのSteamプロフィールが記載されているとTorrentFreakは報じています。今後Denuvoが裁判所の許可を得て情報開示を求めることができれば、Valve・Reddit・Discordが保有するアカウント情報が重要になる可能性があります。特にSteamアカウントが本人につながるのであれば、購入履歴やアカウント作成情報などが身元特定の手掛かりになる可能性があります。
ただし現時点では、Denuvoが挙げたアカウントが実際に同一人物のものなのかも裁判所によって認定されていません。「Steamプロフィールが書かれている=本人特定済み」と考えるのは早いでしょう。
反応voices38は「Everything will continue as normal」と反応
訴訟報道後、voices38を名乗るRedditアカウントから反応も出ています。TorrentFreakによると、投稿されたコメントは「All is fine. Everything will continue as normal.(すべて問題ない。今まで通り続ける)」という内容で、少なくとも表向きには活動を止める様子を示していません。ただし、このコメントが今後の法的対応を示しているとは限りません。実際にDenuvoがアカウント所有者を特定できるのか、被告へ訴状を送達できるのか、米国の裁判所がどこまで管轄権を行使できるのかなど、まだ多くの段階が残っています。
今後Denuvo対クラッカーが「技術戦」だけではなくなる可能性
これまでDenuvoとクラッカーの対立は、DenuvoがAnti-Tamperを更新し、それをクラッカー側が解析するという技術的な競争として語られることがほとんどでした。しかし今回の訴訟が進めば、構図が変わる可能性があります。Denuvo公式の現在のAnti-Piracyサービスを見ると、単純なAnti-Tamperだけでなく、P2PやWebを監視する「Game piracy intelligence」や、削除申請・支払い経路への対応・法的措置を含む「Game piracy disruption」までサービスに含まれています。Denuvoの海賊版対策が、「破解されにくいコードを作る」だけでなく、「破解後の配布や関係者まで追跡する」方向へ広がっていることが分かります。今回のvoices38訴訟は、その流れを象徴するケースになる可能性があります。
誤解に注意「Denuvoが破解されたから敗北した」と単純には言えない
今回のニュースに対して海外では、「技術で止められないから裁判に切り替えたのではないか」という反応も出ています。しかし、この見方だけでDenuvoの技術的な成否を判断するのは難しいでしょう。Denuvo自身はAnti-Piracyについて、ゲームを永久に破解不可能にすることより、発売直後の重要な販売期間に破解を遅らせることを大きな目的として説明しています。そのため、一度でも破解されたらDenuvoの意味がなくなるという製品ではありません。一方で、特定のクラッカーが短期間に多数のタイトルを継続的に攻略できるようになれば、出版社側から見たDenuvo導入価値に影響する可能性があります。だからこそ今回Denuvoが、技術的な更新だけでなく法的な手段まで利用し始めたと見ることもできます。
今後の注目点Reddit・Discord・Valveへの情報開示が焦点
今回の訴訟はまだ始まったばかりです。2026年9月17日時点の公開裁判記録には、訴状、利害関係企業に関する書類、召喚状案などが掲載されている段階です。次の重要なポイントは、Denuvoがvoices38の身元特定を目的として第三者への情報開示を求めるかどうかでしょう。Reddit・Discord・Valveへの召喚状やDiscovery関連の文書が裁判記録に追加されれば、事件は一段階進んだことになります。逆に本人を特定できなければ、Denuvoが実際にどこまで訴訟を進められるのかという問題も残ります。
PCゲームユーザーに直接影響するニュースではありませんが、Denuvoを巡る長年の「保護技術対クラッカー」という競争が、米国の裁判制度まで巻き込む段階へ移った点では興味深い事例です。今後は「どのDenuvoゲームが破解されるか」だけでなく、匿名で活動するクラッカーをプラットフォーム側のアカウント情報から特定できるのかが、この裁判最大の注目点になりそうです。
FAQよくある質問
いいえ。2026年9月17日時点で被告は「unknown individual or entity」として提訴されており、実名は判明していません。訴状にはvoices38に関連すると見られるRedditアカウント・DiscordのユーザーID・7つのSteamプロフィールが記載されていますが、これらが同一人物のものかも裁判所による認定はまだです。
米国著作権法17 U.S.C. §1201の反回避規定は、著作権者でなくても保護対象になり得るためです。Denuvoは自社のAnti-Tamper技術そのものを回避されたことが自社の事業損害にあたると主張し、§1203にもとづき民事訴訟を起こしています。
TorrentFreakによると、把握している範囲では米国でDenuvoがクラッカーを直接提訴するのは今回が初めてとされています。これまでは技術的なAnti-Tamper更新による対抗が中心でした。
現時点では確定していません。DMCA第1201条の法定損害賠償は「回避行為・装置・製品・提供・サービス提供」などの単位ごとに200〜2,500ドルと規定されており、単純に26作品×上限額とはなりません。具体的な金額や違反数は今後の訴訟で争われます。
単純にそうとは言えません。Denuvoは発売直後の重要な販売期間を守ることを主目的としており、一度破解されたら無意味になる技術ではないためです。ただし特定のクラッカーが多数のタイトルを継続的に攻略できる状況は、法的措置という新たな対抗手段につながったと見られます。
まとめまとめ|匿名クラッカーを法廷から追跡する新しい局面
Denuvo GmbHが、匿名のゲームクラッカー「voices38」を米カリフォルニア北部地区連邦地裁へ提訴しました(事件番号5:26-cv-10423、2026年9月14日提出)。26作品でDenuvo Anti-Tamperを回避したと主張していますが、裁判所による事実認定はまだで、被告の実名も判明していません。
今回の訴訟で重要なのは、著作権者であるゲーム会社ではなくDenuvo自身が、米国著作権法17 U.S.C. §1201の反回避規定を根拠に原告となっている点です。TorrentFreakによれば、Denuvoが米国でクラッカーを直接提訴するのはこれが初めてとされています。最大の焦点は、訴状に記載されたReddit・Discord・7つのSteamプロフィールから、Denuvoが裁判所の情報開示手続きを通じてvoices38の実名を特定できるかどうかです。
Denuvo GmbHが匿名クラッカー「voices38」を米国で提訴しました(事件番号5:26-cv-10423、2026年9月14日提出)。26作品でのDRM回避を主張していますが、2026年9月17日時点で被告の実名は判明しておらず、裁判所による事実認定もまだです。ゲーム会社でなくDenuvo自身が米国著作権法17 U.S.C. §1201の反回避規定にもとづき原告となっている点、そしてReddit・Discord・7つのSteamプロフィールを手掛かりに匿名の被告を特定できるかが今後の焦点です。Denuvoが技術的対抗だけでなく法的措置にも軸足を広げつつある事例として注目されます。



